LPDDR5X:可能性の限界を押し上げるメモリの性能

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半導体業界で30年近く働いてきたなかで最もエキサイティングなのは、メモリやストレージでのイノベーションがユーザーエクスペリエンスをどれほど変えてきたか思いを巡らせることです。マイクロンのモバイル事業部門を率いるなか、マイクロンが最近発表した LPDDR5X DRAMのリリースによって、このイノベーションを直接目の当たりにし、経験しました。

モバイル用の低消費電力ダブルデータレート(LPDDR)DRAM技術の進歩が、日々持ち歩くスマートフォンの機能やアプリケーションを実現するためのデータ基盤を作っています。スマートフォンのメモリやストレージサブシステムにおける技術革新は、人工知能(AI)を活用したアプリケーションの急増や5Gネットワークの高速化と相まって、現在および将来の可能性を変える、独特な新しいユーザーエクスペリエンスをもたらしています。

低消費電力DRAMのイノベーションが支える広帯域のユーザーエクスペリエンス

モバイルメモリが新たな世代を重ねるたびに、よりパワフルで効率的なモバイル体験の可能性が広がってきました。JEDECが初めてLPDDR3メモリの仕様を発表した2012年を思い起こしてみると、携帯電話のGPSセンサーがターンバイターン方式のナビゲーションをしてくれて、日常生活で車を運転する時に当たり前のように使えるようになるなど、誰が予想できたでしょうか? この機能1つだけでも、ライドシェアや宅配サービスといったさまざまな業界を立ち上げる基盤となり、輸送や飲食業界の可能性を大きく変えて、私たちの生活は少しずつ便利になっています。

ここから2020年にまで話を進めると、LPDDR5 DRAMは5G対応スマートフォンのメモリ性能をさらに向上させ、大量のデータをAIエンジンに送り、データの高速処理を行って、データのボトルネックを解消できる十分なレベルまでメモリ帯域幅を拡大しました。メモリ帯域幅が拡大したことで、シームレスな4K動画のライブストリーミング、高度なモバイルゲーミング、AIを活用したコンピュテーショナルイメージングがスマートフォンでも可能になっています。

このような性能を基盤にして構築されているLPDDR5Xは、この先もあらゆる分野のデバイスでAIや5Gに対応した多くの機能を生み出していくでしょう。

将来の可能性を拓くLPDDR5Xの性能と電力効率

マイクロンでは、LPDDR5Xの性能をベースに、多くのスマートフォンメーカーやチップセットベンダーがより効率的でパワフルな機能を実現していくと見ています。Micron LPDDR5Xは、前世代のLPDDR5と比較して[1]最大33%高速な[2]8.533Gbpsのデータ転送速度に対応する世界最速のモバイルメモリです。さらに、電力効率が前世代と比べて最大24%向上しているため[3]、ユーザーはクリエイティブな作業からSNSのシェアまで、1日1回の充電で長時間のモバイル体験を楽しむことができます。

LP5X Gbps Data Transfer Rates Graph Chart Image
各世代LPDDR DRAMのデータ転送速度 [4]
 

図部分 ----------------------------------

データ転送速度(Gbps)

モバイルの新たな用途の登場:

LPDDR1   LPDDR2   LPDDR3   LPDDR4   LPDDR4X   LPDDR5   LPDDR5X

33%高速化

高度なカメラ機能

720p HD動画

ターンバイターン方式のナビを備えたGoogleマップ

人生で最も貴重な瞬間がマイクロンのメモリで蘇る

LPDDR5Xの性能は、コンピュテーショナルイメージングの未知の潜在能力を引き出します。帯域幅が33%拡大したことで、システムオンチップ(SoC)上のAIエンジンから写真や動画へのアクセスが高速化し、撮影速度が上がるため、複数のカメラから同時に動画フィードをキャプチャできるようになりました。

この帯域幅の拡大によって、格安のスマートフォンからフラッグシップモデルまで、あらゆるレベルのスマートフォンでカメラの機能が格段に向上します。より大きなイメージセンサー、複数のカメラレンズ、そしてプロのような写真や動画の撮影を可能にするコンピュテーショナルイメージングの最新機能など、今よりもはるかに高機能なスマートフォンで、人生の最も貴重な瞬間を切り取るところを想像してみてください。このLPDDR5Xの性能ならば、ナイトモードの解像度が最大50%高くなり、より鮮明でクリアな写真を撮影でき、撮影速度も最大35%[5]向上します。

またLPDDR5Xでは、動画にポートレートモードや低照度モードなどの機能を適用できるようになり、低照度の条件下であっても、写真と同じように美しい高精細な動画の撮影が可能になります。

パーソナライズされたスマートフォン体験はユーザーそれぞれに同様に固有のもの

機械学習(ML)と融合したAIは、日常のルーティンやユーザーの好みを学習して、スマートフォンの可能性を今後もますます広げていくでしょう。スマートフォンはこうした学習を通して、よりパーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを提供し、日常生活を合理化していくと考えられます。ユーザー、状況、そしてさまざまな環境変数を理解するこのような能力が、「コンテキストアウェアネス」と呼ばれているものです。

コンテキストアウェアネスによって、スマートフォンが生成/消費した、さまざまなスマートデバイスを経由して取り込まれた膨大な量のデータは、スマートフォンの強力なAIエンジン内に収集/処理されます。日常生活でスマートフォンをどのように使用しているかに応じて、そのユーザーに特化した専用の予測インサイトが作られ、結果としてスマートフォンはさらにスマートに、より直感的になり、予測精度が高まっていきます。ユーザーごとにブラウジングや視聴などの行動が異なるように、スマートフォンはその持ち主から学習したとおりにそれぞれ別の動きをし、おすすめをパーソナライズして動作するようになります。

コンテキストアウェアネスを活用した日常の可能性をイメージしてみましょう。スマートフォンがユーザーのカレンダーにアクセスして、その日の最初のスケジュールを認識すると、このコンテキスト(状況)を理解して起床時間を提案し、キッチンに入るタイミングで好みのコーヒーを淹れるようにスマートコーヒーマシンを予約したり、お気に入りのポッドキャストや朝のプレイリストをスマートスピーカーで再生するなど、これらすべてが何をせずともユーザーの代わりに先を見越して行われ、さらにはオフィスに向かう時間まで知らせてくれます。いずれスマートフォンは、車のエンジンをかけ、車道に出て最短ルートでオフィスに向かうように指令を出せるようにもなるでしょう。この最短ルートは、Cellular Vehicle-To-Everything(C-V2X)通信を通じて、他の車のカメラや信号機と通信を行い、スマートフォンが学習します。車に乗ると、カメラやセンサーで気分を察知して、好みの音楽やポッドキャスト、ニュースを流してくれます。こうしたパーソナライズの性能と効率を次のレベルへと引き上げてくれるのが、LPDDR5Xモバイルメモリです。

かつてないほどのスマートフォンのイノベーションを阻む唯一のボトルネックは想像力の欠如

モバイルエコシステムのイノベーションにとって、今はエキサイティングな時と言えます。予測できることはもちろん、想像の域を超えた可能性にも大きな期待が寄せられます。LPDDR5Xの性能と電力効率によって最大化される新しいAIや5Gの機能は、インフラの構築や投資を行う通信事業から、この新たな帯域幅の能力を活用するデバイス製造のOEMメーカー、そして半導体業界全体に至るまで、モバイルエコシステムのあらゆる面において、絶えず連携とイノベーションを行わない限り実現はできません。こうした構成要素すべてが、個々の役割の限界を超える必要があり、AIと5Gの可能性を最大限に引き出すための重要な役目を担っています。マイクロンの最先端のメモリやストレージ技術は、スマートフォンの未来の体験を再定義するための基盤となります。マイクロンはこの技術を活用して、前例のないイノベーションを阻む唯一のボトルネックは自分たちの想像力だという認識の下、この時代を切り開いていきます。

[1] データ転送速度は、電子デバイス技術合同協議会(JEDEC)の公開仕様に基づいています。

[2] ピーク時のデータ転送速度は、JEDECの公開仕様に基づき、LPDDR5X(8.533Gbps)と前世代LPDDR5(6.4Gbps)DRAMを比較した結果です(8.533/6.4 = 1.33)。

[3] 電力効率の向上は、LPDDR5Xの最大速度(8,533Mbps)と前世代LPDDR5X(6,400Mbps)を比較したシミュレーション結果です。

[4] JEDEC仕様に基づくデータ転送速度:https://www.jedec.org/standards-documents

[5] 8,533Mbpsの速度を想定し、LPDDR5を5,500Mbpsと6,400Mbpsの速度で動作させ計測したスマートフォンのデータに基づいて高速化をシミュレーションした結果です。

 

Picture of Raj Talluri

筆者経歴

Raj Talluriは、マイクロンテクノロジーのシニアバイスプレジデント兼モバイルビジネス部門担当のゼネラルマネージャーです。テクノロジストして、テキサスインスツルメンツ社やクアルコム社で、カメラチームを設立した経歴があります。テキサス大学オースティン校での博士論文は、画像技術をテーマにしたものでした。そして何より、彼は写真家でもあることから、撮影した作品を自宅に持ち帰ることを楽しんでいます。
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