業界初の市場投入:世界初の232層NAND

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ラース・ハインネック(マイクロンのアドバンストNANDテクノロジー担当バイスプレジデント)が、市場をリードするマイクロンの232層3D NANDテクノロジーの開発における知見を共有します。

半導体業界というものは、非常に面白く、また同時にたゆまぬ努力を求められるものです。昔から言われている「トップに上り詰めるのはとても困難なことだ。しかし、そこにあり続ける方がさらに難しいのだ」という言葉はまさに真実です。物理学、化学、製造、イノベーションの限界を超えて、ロジック、メモリ、ストレージなどのコンピューティングデバイスを進歩させ続けることには常に困難が伴います。能力を向上させながら小型化、高速化、省電力化、低コストを実現するテクノロジーの構築に私たちは日々取り組んでいます。新たなテクノロジーと市場初投入の製品をもって新たなレベルに到達するときが、これまでの成果を振り返るタイミングです。

マイクロンは3D NANDテクノロジーのリーダーとして長年認められています。直近では、業界初の176層リプレイスメントゲートNANDテクノロジーの量産でそれを証明しています。それ以降、携帯電話、クライアント、自動車、インテリジェントエッジ、データセンターなどのマイクロンのストレージポートフォリオや、さまざまなフォームファクタやインターフェーステクノロジーに対して先進テクノロジーを市場に幅広く投入し、高い業務遂行能力を実証してきました。

しかし、176層テクノロジーを完成させ、実装が拡大してもなお、チームはNANDにおける一層の進歩を求めて開発に取り組みました。スコット・デボアとマイクロンの経営スタッフが次世代の232層NANDテクノロジーについて発表し、2022年末までに量産を開始すると述べたときは、チームにとって非常に誇らしく感じる瞬間でした。  この発表が、業界初の232層3D NANDについての初の言及となり、現在、一部のCrucialブランドのSSDとして出荷されています。今年の後半には、このテクノロジーに基づいた製品がさらに出荷開始となる予定です。これまでよりも大容量かつ高密度、さらに1ビットあたりの消費電力とコストの低減を実現したストレージを提供します。

横に広げるのではなく、上に積み重ねる

それほど技術的ではない人々と私たちがやっていることについて話をする際に、「層が多ければ多いほど良い」というコンセプトを容易に理解する様子をよく目にします。ですから、このような進歩の意味合いと与える影響を幅広いバックグランドの人々と共有するのは良いことだと考えています。 3D NAND の層の場合には、層は多いほど優れています。不動産価格が高く人口過密な都市のビルを想像してみてください。人口増加に対応するために、横方向に敷地を増やして密度を増加させる方法は、不可能であるか、費用対効果が低い場合があります。その代替案として多くの都市で採用しているのは、同じ面積により多くのフロアと部屋数を持つ超高層ビルやマンションを建て、上方向に成長させる方法です。このアプローチであれば、収容人数の比率がより高くなります。同様の考えで、より効率的に空間を活用するため、駐車場スペースやビルの水道そしてHVACをビルの地下に大規模に設置していることでしょう。

マイクロンの新たな232層設計は、実績のあるCMOSアンダーアレイ(CuA)アーキテクチャーに基づいて構築されており、容量の増大、密度、性能、コスト改善を目的としたスケールアップアプローチを行うことができます。NANDのビットセルアレイを積み重ねて層を多くすることで、シリコン1平方ミリメートルあたりのビット数を増やし、ビットあたりのコストを抑えながら密度の増加を実現しています。

232層テクノロジーが市場に初投入されるということは、マイクロンのNANDの第6世代が量産されるということを示しています。飛躍的に高い積層数とCuAテクノロジーにより、極めて小さい実装スペースの中に、1チップあたり最大1テラビットという膨大なストレージ容量を手に入れることができます。その結果、232層NANDデバイスの単位面積当たりのビット密度が前世代の176層と比較して45%以上高くなり、能力が驚くほど向上しています。また、密度の増加により、フォームファクタ改善パッケージも実現します。例えば、新しい11.5mm × 13.5mmのパッケージは、前世代チップのパッケージよりも28%小型です。これらのことからわかるのは、より多くデバイスのタイプで、大容量かつ高性能なストレージを搭載することができるようになったということです。

性能の向上とより良いQoSを求めて

密度の増加はほんの始まりにすぎません。業界最多層であることに加えて、232層NANDは最高速でもあります。オープンNANDフラッシュインターフェース(ONFI)の転送速度が2,400MT/秒に増加したことがこの要因の1つとなっており、これも業界をリードするものです。前世代のテクノロジーと比較すると50%高速化しています。帯域幅も両方向で向上し、前世代の176層NANDと比較すると、書き込み帯域幅は最大で100%、読み取り帯域幅は75%以上向上しています。

ストレージを改善し、性能を利用可能にするには、3D NANDデバイスのパーティショニングを6プレーンにし、パフォーマンスの向上につながる並列性を高める必要がありました。今日市場に出ているNANDデバイスの多くが備えているのは2プレーンのみです。現在最先端の設計であっても、プレーナ型の4パーティションでコマンドやデータフローを振り分けています。マイクロンが6プレーントリプルレベルセル(TLC)を市場に提供した最初の企業となります。

1ダイあたりで見ると、並行性の増加により、NANDデバイスに対して同時に発行可能な読み取り・書き込みコマンドがより多くなり、シーケンシャルとランダムアクセスでの読み取り/書き込み両方の性能が改善しています。その結果、6プレーンアーキテクチャーでは、これに対応する新たな232層NANDの独立したワード線の数と相まって、読み取り・書き込みコマンド間の衝突が減少し、サービス品質(QoS)も向上しています。高速道路のように、より多くのレーンによって輻輳を減らし、一定領域内のトラフィックの流れを改善しています。

これまでにない高さを征服する

3D NANDフラッシュにただ層を増やすのは簡単に思えますが、実はそうではありません。このようなデバイスは製造が難しく、元となるウエハーをダイやチップに仕上げるには、何百もの個別のプロセスを経る必要があります。 層を高く積み重ねていくうえで、おそらく最も大きな課題となるのは、層を上下に重ねて均一に構築する際の難しさです。しかし、この均一な構築は、すべての層を適切にアラインし、ピラーを接続するには欠かせません。さまざまな課題がありますが、その中でも、いくつか例を取り上げてみます。

  • 垂直方向のワード線層の間の距離を短くすると、セル間の容量性カップリングが高くなるため、これを克服する必要が出てきます。
  • ピラーエッチング機能のプロセスの課題は、積層数が多いため、すぐに倍増するところです。

マイクロンでは、極めて高度なエッチング技術とパターニング技術を採用することで、高アスペクト比の構造と高効率なリプレースメントゲートプロセスを実現し、製品の性能を向上しています。

「チームビルディング」

このような困難を乗り切るには、設計、テクノロジー開発、システムイネーブルメント、ウエハー製造、テスト、パッケージングを代表するチームの緊密な連携と、その他多くのサポート機能が必要です。このような機能横断チームを最適化することが、複雑なソリューションを成功させる重要な鍵となります。設計とテクノロジーの協調最適化の観点から、どのようなプロセスの影響があるかやどのように設計を調整すれば堅牢性が増すかを知ることは重要です。例えば、3D NANDでプログラムサイクルを増大するには、コントローラから高度なデータ管理とエラー修正を行う必要があります。プロセスにばらつきがあるため、電気的、出力的、および熱的仕様を信頼性をもって満たせるようにするには、適切なフロアプラン設計とモデリングが重要となります。

革新的な半導体設計を試作することも非常に難しいのですが、3D NANDを量産化することはさらに困難です。3D NANDのセルはストリングとして垂直に構築されるため、1つのセルの欠陥がセルストリングの性能に影響を与えかねません。高アスペクト比のエッチング機能には極めて高い精度が求められ、高度な不純物制御を行って欠陥を減らすのと同時に、電子移動度と伝導性を高めて問題の減少に取り組む必要があります。

マイクロンには、このようなイノベーションを推進する素晴らしい社内ノウハウがある一方で、製造業のOEMベンダーや、材料メーカー、サプライヤーと緊密にコラボレーションして、超微細なメモリセルを精密に製造することができるようソリューションを開発しています。


SSDに搭載される日はもうすぐです

 
232層NANDは、デバイスからクラウド、インテリジェントエッジまで、これまで続いてきた生活のデジタル化における重大な分岐点を象徴するものです。初期の携帯電話のカメラテクノロジーをサポートする機能から、タブレットや薄型・軽量ノートパソコン、ウェアラブル機器の導入に至るまで、ソリッドステートストレージテクノロジーは、テクノロジーの進歩において重要な役割を担ってきました。アプリケーションやデータを格納する技術がなければ、テクノロジーの進歩は阻まれてしまいます。

私のチームは「初の市場投入、唯一無二の技術」という表現を好みます。この表現がリーダーシップへのコミットメントを反映しているからです。積層数において次々と進歩を重ね、マイクロンはストレージ密度の増加、エネルギー効率の向上、1ビットあたりのコストの低下を実現しました。このような改善によって、デジタル化や最適化、自動化の新たな機会が開かれます。マイクロンは、デザイン、プロセス、製造の卓越性の限界を継続的に突破し、テクノロジーにおけるリーダーシップを維持しています。このテクノロジーをもってマイクロンは水準を引き上げてきており、また、このテクノロジーが新たな製品イノベーションの驚くような高まりを引き起こすことを楽しみにしています。

Picture of Lars Heineck

筆者経歴

Lars Heineck (ラース・ハインネック)

マイクロンの先端NANDテクノロジー担当バイスプレジデントであるラース・ハインネックは、1995年にケムニッツ工科大学(ドイツ)でマイクロシステム技術の修士号を取得しました。27年にわたる業界経験があり、うち20年はDRAMに、またNAND、CMOSロジック、先端パッケージングに数年間従事しています。フランスおよびドイツでシーメンス、インフィニオン、キマンダに勤務したのち、2009年にマイクロンに入社(Fab 4、テクノロジー開発)。複数のメモリテクノロジーで、プロセス統合、プロセス開発、TSVベースのパッケージングにわたってリーダーシップを発揮してきました。マイクロン入社後は、複数の拠点(米国、日本、ドイツ)で経験を積み、現在はアイダホ州ボイシを拠点としています。2019年より、マイクロンの先端NANDテクノロジーチームを率いています。ラースは、現在、米国で有効特許を37件取得しています。
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