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メモリソリューションと共に進化するニューラルネットワークのインテリジェンス

マイクロンテクノロジー | 2018年11月

地震やハリケーン、火事、洪水、その他の自然災害があなたの住む市や町を襲うという最悪の事態を想像してみてください。すべてが壊滅状態にあります。人々はあちこちに逃げ惑い、混乱が支配しています。安全を確保するためにどこに行きますか? 愛する人の居場所をどうやって探しますか? または、救助隊はどうやってあなたを発見するのでしょう?

もしくは あなたは救急隊員で、人命がかかっています。建物は崩れ落ち、悲鳴や助けを求める声が聞こえますが、視界が悪く、犠牲者の位置も、どうすれば安全に辿り着けるかも分かりません。助けを必要とする人を見つけたら、バイタルサインを確認し症状を診断しなければなりませんが、他の人が必死に助けを求める貴重な時間を使うことになります。とはいえ、同時にすべての場所に行くことはできません。

人工知能(AI)を含むデジタル技術のおかげで、近い将来これらの必要性がなくなるでしょう。

これと同じシナリオにAIが加わった場合を想像してみてください。あなたの携帯電話は『ポケモン GO』風の拡張現実オーバーレイを使って、最寄りの避難所まであなたを案内してくれます。また道中でも、煙が迫っている時は鼻と口を覆う、洪水が近づいている時は高台に向かうなど、危険回避の警告をします。

ドローンは空中や水中、瓦礫の山や燃え盛るビル、その他の危険な場所を出入りしながら飛行します。センサーや赤外線装置、ソナー、カメラからのデータは、被害者の捜索を手助けします。人を発見したら、インテリジェントな航空機は、閉じ込められたり負傷した人のバイタルサインや体の状態、その人に辿り着くための最も安全なルートを示した警告メッセージを救急隊に送信します。

さらにロボットは、壊滅的な状況下で応急処置を施し、閉じ込められたり負傷した人や動物を救助します。重い瓦礫を持ち上げて道をあけ、火を消し、傷に包帯を巻き、生死を分けるような咄嗟の決断を下します。人間の医療救助隊はロボットやドローンの間を動き回り、これらの機械はデータや拡張現実を使って仮想的に壁の向こうを見たり、メディボットが提供できる以上、あるいは異なるケアが必要な、最も困難で複雑な症例を支援することができます。

より多くの危険が潜む世界

自然災害や人為災害は増加傾向にあります。2018年、米国だけでも14の自然災害が発生し、その被害額はそれぞれ少なくとも10億ドルに上りました。2017年はさらに悪く、自然災害による被害額は3,060億ドルで、米国海洋大気庁によると記録上被害額が最も高額な年だったそうです。

大災害が世界中でより大きな壊滅的な被害をもたらし日常化するにつれ、捜索救助隊員、消防士、救急救命士(EMT)は、人命救助という使命を果たす上で大きな困難に直面しています。幸いなことに、人間の脳を模倣した特殊な形の人工知能を含むデジタル技術の進歩は、緊急対応と救急医療のスピード、効率、効果に革命をもたらすと期待されています。

この待望の技術は何によって実現するのでしょうか? 面白いことに、それは人間の思考と処理を支える同じ機能、すなわち記憶であり、これがなければ人間も機械も学習することができません。

人間の脳を模倣する

ニューラルネットワークが私たちの脳のように機能するためには、環境を素早く分析し、文脈上のヒントを認識し、最適な行動を判断できなければなりません。これはつまり、データを取り込み、ある意思決定アルゴリズムから次のアルゴリズムへ移行することでデータを処理し、ベストな行動を最終決定するということです。

我々の脳は、情報を伝達するために設計された細胞であるニューロンを使って、この回路を完成させています。電気信号は何層にも重なったこれらの細胞を通過し、メッセージを毎回照合して適切なニューロンを活性化させ、物理的世界の形状、パターン、特徴を認識し、それに応じて反応します。燃え盛るビルという問題を目にしてから、違う屋内に逃げ込むまたはその場から離れるなどの反応を示す瞬間に至るまで、このプロセスはほぼ一瞬であり、訓練を受けた緊急救助隊員であれば数ミリ秒かそれ以下でしょう。

この構造を模倣して、コンピューターのニューラルネットワークは、ニューロンのようにノードを層状に並べて作られています。

  • データを収集する入力層
  • データを処理する隠れ層
  • 処理されたデータを外部に転送する出力層

人工ニューラルネットワークは、カメラ、レーダー、LiDAR、ジャイロスコープ、加速度計などから感覚データを取り込み、一連のコード化されたアルゴリズムの隠れ層にフィルタリング、選別と分析を行った後、出力層に送信し、そこでマシンが判断を下し行動を起こします。

AIの課題は、瞬時に人間が行うようになるべく早く正しい判断を下す点にあります。その「究極の目標」を探求する上で、研究者たちはニューロンをマッピング、人間がどのように情報を処理するかを学び、人工ニューラルネットワークに応用しています。それと同時に、マイクロンはより高速で高密度のメモリ技術を開発し、文字通り思考の速度、またはそれ以上のスピードによるデータ処理を実現しようとしています。

AIによる救助

すでにこれらの進歩は、より多くの危険が潜む世界で、人命と財産を守るための大きな可能性を示しています。

  • 建物から緊急避難をする場合、コンピューターニューラルネットワークは、複数の人に最適な避難経路を選択し、それぞれの場所と能力に応じて安全な場所に誘導することができます。
  • デンマークのコペンハーゲンにあるニューラルネットワークベースのAIプラットフォームは、911通報者の話を聞き、彼らが話した内容だけでなく、その話し方を分析し、心臓発作や脳卒中のような重大な病気をリアルタイムで検出します。「Corti」という名のこのプラットフォームは、派遣手配者や緊急救助隊がより迅速かつ効果的に通報者を援助する手助けをすると報告されています。
  • 米国では、NASAと米国防総省が消防士のために開発した「AUDREY」(推論、抽出、分析によるデータ理解アシスタント)が、燃え盛る建物の中で温度と危険度を測定し、消防士や他の救助隊を誘導することで人命救助に役立てています。
  • AIはさらに、地域の人々と緊急救助隊が「洪水の深刻さを予測」できるように、リアルタイムの洪水予測を発信し、派遣手配者による最適な支援リソース配置を可能にします。
  • AIを搭載したドローンは、人間が行けない場所、あるいはその危険性から行くべきではない場所に赴き、レスキュー隊が被害状況を把握して行方不明者を発見する支援を行うこと、また物資を届けることで、人命を救っています。
  • ニューラルネットワークは、ロサンゼルスやサンフランシスコを含む都市全体に対する災害評価や気候変動の影響分析を提供しており、あるプラットフォームは災害発生後15分以内に85%の精度で予測を行っています。

革命の到来

これらの話を聞いて、あまりに出来すぎていると感じた方は、もう一度考えてみてください。ニューラルネットワークは、緊急対応だけでなく、日常生活のあらゆる側面を変革する最前線にいます。専門家は「AIニューラルネットワーク革命を、電気が導入された時代の変革期に見立ています」と、

マイクロンのクラウド部門カスタマープログラムマネージャー、グレッグ・ウルフは話します。

グレッグ・ウルフ、シニアカスタムプログラムマネージャー、マイクロンテクノロジー

「AIは電気と同じように、緊急対応のような一部の産業が、いかに利用可能な情報を処理、活用するかを根本的に変えようとしています」

いかなる緊急事態においても、人命救助に最も重要な要素はレスポンスタイムです。AIを含むデジタル技術において、利用可能なデータ量の多さだけでなく、データへのアクセスの速さも重要であり、スピードはメモリに依存します。

ニューラルネットワークの意思決定アルゴリズムは、集中的な数学的処理とデータ分析を必要とし、どちらもより高速なメモリとストレージの必要性を高めています。この必要性は、マイクロンの超帯域幅ソリューションのようなメモリ製品がGPUやFPGAベースのビッグデータの高速化や処理において重要な役割を果たす、ハイパースケールデータセンターのクラウドにおいて特に重要となります。データが行き来するために、マイクロンのDRAMとSSDのポートフォリオは、データセンター全体のデータの流れをスピードアップします。

「データセンターには膨大な量のデータが溢れており、人間があらゆる機能やコードを定義し、すべてのデータをやり取りするのは非常に困難です」とウルフは話します。「高性能のハードウェアを兼ね備えたスケーラブルなニューラルネットワークを通じて大量の情報を流すことができると、その情報から可能な限りリアルタイムに近い値を抽出できます」

ストーブが熱いという手の信号を脳が読み取ることで、体が手を引っ込めるように、ニューラルネットワークはカメラから大量のデータポイントを読み取り、ロボットが瓦礫を移動できる場所を正確に示し緊急対応を支援することができます。ウェアラブルセンサーの場合、環境全体をよりよく理解し、最も困難なタスクにロボットを派遣するために、複数のソースからデータが収集され中央データセンターで相関処理されます。

マイクロンのメモリがこれを可能にします

頭の回転を速めるには、記憶を呼び起こす力を高める必要があります。反応速度を上げたい人は、無数にあるアプリ、数独ドリルなどのツールを利用することができます。

同様に、ニューラルネットワークの性能も、データ処理のパフォーマンスが上がるほど向上します。マイクロンはパフォーマンスの限界に挑戦し、より高速なDRAMNANDフラッシュ、および超帯域幅ソリューションを継続的に開発しています。マイクロンのGDDR6Xのようなグラフィックメモリは、ニューラルネットワーク推論に使用されるGPUベースのグラフィックカードに最適な技術です。しかしながら、より大変なプロセスはニューラルネットワークの学習であり、可能な限り広いシステム帯域幅を必要とするため、マイクロンのHBM2Eがそのワークロードに最適な選択肢になるかもしれません。

「時間が経つにつれ、誰もが適切なハードウェアフットプリントを見つけようとするでしょう。その際、メモリはこのプロセスで非常に重要な要素にとなります」と語るウルフ。「マイクロンは、ニューラルネットワークの学習および推論の実装において、特に広帯域幅のニーズに対応する付加価値の高いソリューションの発見に取り組んでいます」

未来はニュートラルネットワークにあります。コンピューターが人間のように反応するようになれば、高い水準のスピードと効率性で、私たちの生活の基盤となるインテリジェントな構造を形成するでしょう。その間、マイクロンはよりよい社会のためにこの革命を推進し、これらのネットワークを実現します。

マイクロンのメモリおよびストレージソリューションによって実現するAIは、ロボットが救急隊と協力し合い、生死に関わる状況にアクセスし、生命や財産を救う行動ができるよう支援します。

もちろん、すべては素晴らしい人間の脳の力とデザインから始まります。昔からの言い伝えはよく言ったものです。賢人は皆同じように考えるものだと。