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スマートサイト:歩留まりと品質を高めたマイクロンのAI活用法

マイクロン・テクノロジーは人工知能(AI)について語るだけではありません。マイクロンは、データ解析とAIを自社の製造プロセスに活用することで、文字通り口先だけではなく、次世代メモリとストレージソリューションで実現するテクノロジーを企業に提供し、その価値を実証しています。歩留まりの向上、より安全な作業環境、効率の改善、サステナブルな事業など、そのメリットは多岐にわたります。

マイクロンの工場では、非常に複雑で精密な工程を経て、シリコンウエハー上のメモリテクノロジーを製造しています。エラーや無駄が発生する可能性は高くなりがちです。しかし、データとAIがこの可能性を減らすことに役立っています。欠陥や機械的な問題、その他のトラブル箇所を特定し追跡することを人間の判断に頼っていた頃、企業は時間もコストも失っていました - これらは、今日の洗練されたテクノロジーで回避できる損失です。

Linus Tech Tipsのリーナス・セバスティアンは、マイクロンの研究開発ファブを訪問し、半導体製造の複雑さについて語っています。

複雑な製造プロセス

シリコン製造は非常に複雑なプロセスで、その期間は数カ月に及び、1,500もの工程が伴います。マイクロンでは、精度とカバレッジを向上させるため、工程全体で高度なAIを採用しています。

「私たちはここに、完全に差別化されたものを構築しました」と、マイクロンのスマートマニュファクチャリング・人工知能担当副社長であるコエン・デ・バッカーは述べています。「精度は格段に向上しています。生産性を10%向上させつつ、製品を従来の2倍のスピードで立ち上げることができるようになりました。これはまさに変革です。キラーアプリと言えるでしょう。」

ウエハーの作成

そのプロセスはシリコンから始まります。コンピューター・チップの基板として使われるウエハーは、砂の一種であるシリカから作られ、純度99.999%まで濾過・精製する作業が必要です。この電子グレードのシリコンを溶かし、圧縮してインゴットにし、それを厚さ0.67mmという非常に薄いウエハーにスライスします。

このウエハーを研磨して切断痕を取り除き、薄いフォトレジスト材料でコーティングし、写真と似たプロセスで回路パターンをエッチングします。回路が複雑であればあるほど、より多くのパターンがウエハーに転写されることになります。それぞれの層には、「ドーピング」と呼ばれるイオン注入工程、もしくは金属に浸す工程が施されます。完成したウエハーを薄い保護膜でコーティングした後、意図したとおりに動作するかどうかをテストします。

熱拡散工程では、ウエハーに均一にコーティングが施されます。材料(不純物)を添加する際、それぞれのウエハーを高速で回転させ(過熱環境で回転させる場合もあります)、遠心力で表面全体に材料を拡散させます。

製造プロセスは無菌製造室(クリーンルームと呼ばれます)で行われ、わずかなホコリもウエハーに付着しないように設計されています。しかしそれでも、問題は起こります。繊細なウエハーにキズがついたり、穴があいたり、保護フィルムの下に気泡ができたりするのです。

多くの場合、こうしたキズは肉眼ではまったく見えないほどの微細なものです。また、目視で確認できる場合でも、画像処理プロセスで各ウエハーの30~40枚の画像を読み込む際に、目の疲れや一瞬の不注意で欠陥を見落としてしまうことがあります。瞬きをしただけで欠陥を見逃してしまうのです。

テスト段階まで問題が発見されない場合、すでに多くの時間と費用が無駄になります。欠陥を引き起こしている問題が1枚だけではなく、場合によっては何千枚ものウエハーに影響を及ぼしている可能性もあります。

その他にも、製造にはさまざまな問題が起こり得ます。例えば、部品の磨耗や配管からの漏れ、あるいは有害な化学物質が製品や人にかかるといったことが挙げられます。これらの問題を早期に発見し、修正することが不可欠です。シャットダウンには多大な費用がかかり、売上や生産時間の損失につながります。また、半導体製造の複雑さを考慮すると、復旧に費やされる時間が長ければ長いほど、真のコストは数百万ドルに達する可能性があるのです。さらに、作業員の負傷に関連するリスクも数多くあります。そして、マイクロンが約束するサステナビリティは、プロセスを可能な限りエネルギー効率的にすることを求めています。

製品や機械の問題を検出することは、製造の効率性、有効性、安全性にとって不可欠です。しかし残念なことに、人間にはミスがつきものです。どんなに高度な訓練を受けた人であっても、何かがおかしいという非常に微細で微妙な兆候を常に見たり、聞いたり、感じたりできるわけではないのです。

一方で人工知能テクノロジーは、これらのタスクをレーザーで鋭く正確に、しかもわずかな時間で実行することができます。マイクロンでは、57万以上のソースからペタバイト単位の製造データを収集し、クラウドデータベース環境に蓄積しています。

画像解析

マイクロンのAIを活用した製造の基盤は画像解析です。「画像は半導体製造プロセスにおいて非常に強力です。各プロセスの詳細な画像を分析することができます。」と、コーエンは説明しています。

すべての段階を解析することで、どんな偏差も素早く特定することができます。この方法はすべて完全に自動化されています。」と彼は続けます。「この解析は、フロントエンド、組み立て、テストのすべてに及びます。」

マイクロンのコンピュータービジョンは、ファブおよび製造プロセス全体を通して、ミクロレベルで潜在的な欠陥を探し出します。

画像に加えて、マイクロンでは動画解析も同様に採用し、組み立てとテストにおける品質問題を排除しています。動画はデータ量が多すぎ実用的ではないと思われるかもしれません。しかしマイクロンは、再びAIを使用して、分析すべき重要な場所を特定します。AIは動画ストリームの開始と停止を繰り返し、重要なプロセスのみを捉えてデータサイズを抑えます。

ウエハーの欠陥にはさまざまな形状があり、画像と動画による解析は特に効果的です。大部分は、ウエハーエッジ付近の小さな穴、外膜の傷や気泡などといった、一般的なカテゴリのいずれかに分類されます。マイクロンのAIシステムは、製造工程でウエハーに回路をエッチングする際にフォトリソグラフィカメラが捉える画像から、これらの欠陥を発見する「コンピュータビジョン」テクノロジーを活用しています。

エンジニアが、例えばウエハーウエハーのエッジにある小さなドット(穴)や、連続した線やわずかに切れた線(キズ)をスキャンするようシステムに指示することもあれば、システムが濃淡のスポットやパターンに起因する色の変化を検出することもあります。こうした欠陥のいくつかは、システムによって画像撮影後数秒以内にアラートが鳴るなど、ほぼリアルタイムで発見することが可能です。また、画像が保存されてから数分後の二次スキャンで欠陥が発見される場合もあります。こうしたプロセスはすべて、比較対照のためにデータベース環境に保存された200万枚の画像を使用するAIシステムに依存しています。

結果として、AIコンピュータービジョンの精度と効率の高さは、エンジニアの分析よりもはるかに正確であることが証明されています。そして何よりも、エンジニアは問題に集中し、データ収集に専念できるようになりました。

マイクロンのAI自動欠陥分類(ADC)システムにより、技術者やエンジニアはウエハー欠陥を手動で分類する必要がなくなりました。代わりにAI-ADCがディープラーニング(深層学習)を使用して、毎年何百万もの欠陥を選別・分類します。マイクロンはこのシステムを、現在利用可能な最新の画像処理技術を駆使して開発しました。この技術には、観察データからコンピュータが学習することを可能にする、生物学に着想を得たプログラミングパラダイムと言われるニューラルネットワークが含まれます。

この機械学習の形態は、画像を欠陥に応じて分類し、個別のクラスターに配置します。このプロセスにより、エンジニアが製造中に問題を発見して早期に修正し、さらなる欠陥を回避するのに有効なだけではなく、AIシステムが自ら欠陥を発見し、反復するたびに結果を改善することも可能になります。

音響リスニング

AI画像処理は製造プロセスの中核をなすものですが、マイクロンでは問題を未然に防ぐために音響リスニングも採用しています。多くの場合、「異常音」は部品の摩耗や故障の兆候を示します。

マイクロンのAIシステムは、ロボット駆動装置の近くやポンプの近くに計画的に取り付けられた音声センサーによって、工場の機械の異常を聞き分けています。こうしたマイクは数週間にわたって正常な活動を記録し、検出された周波数をソフトウェアがグラフやチャートに変換して、音を視覚的なデータとして描き出します。新しいピッチや周波数が検出されると、システムは警告を発します。また多くの場合、異常の原因を特定することも可能です。

こうした膨大なデータベースの検索には時間を要します。しかし機械が故障の危機に陥った場合、プラント管理者は瞬時に知る必要があります。GPU、アクセラレータ、そして何よりもマイクロンのメモリとストレージを搭載したAIシステムにデータを送信することで、CPUベースのシステムよりもはるかに迅速に、インテリジェントな結果を結果を得ることができます。何十万ものGPUコアとメモリが同時かつ相乗的に動作するこれらのAIシステムはすべて、人間がほとんど介在することなく、瞬く間に結果を改良することができます。さらに人間の脳の働きと同じように、反復するたびに診断結果を改善することも可能です。

赤外線画像

すべての故障が音を発するわけではなく、製造環境では静寂が命取りになることもあります。しかしほとんどの場合、音ではなく温度変化が起こります。最近まで、温度の急上昇を検知する唯一の方法は、赤い光、火花、煙を目で確かめることでした。こうした現象が現れる頃には、問題はすでに危険領域に入っており、工場では作業員を避難させる必要がありました。

そのためマイクロンでは、画像解析と音響リスニングに加え、主要部品の温度を計測する赤外線画像も使用しています。

「変圧器の温度測定は過熱防止の鍵となります。早期発見が、単純な修理で済むか、高価な機器を丸ごと交換するかの分かれ目になるのです。」とコーエンは説明します。

こうした画像、音、温度のAIセンサーは、マイクロンのサステナビリティへの約束を実現します。「これらのセンサーは、品質と効率の向上だけでなく、サステナビリティにも優れています。」と、コーエンは付け加えます。「エネルギーのきめ細かな計測を実現し、大幅な使用量とエネルギーの節約につながります。」

スペック

マイクロンでは、57万個のセンサーが2億2900万点のコントロールポイントで230万枚のウエハー画像を生産しています。そのすべてが毎週AIモデルにかけられます。さらに、34ペタバイトのデータが保存され、毎日30テラバイトの新しいデータが取り込まれています。

この大規模なAI導入は、歩留まり分析、デジタルツイン、IoTと画像解析、最適化と高度なアルゴリズム、プロセス自動化、モバイル アプリケーションといった革新的なデータサイエンス アプリケーションを分析しています。

結果は*、次のとおり明白です。

  • 製造ツールの可用性が4%向上
  • 労働生産性が18%向上
  • 新製品の市場投入までの時間を50%短縮
  • 製品スクラップを22%削減
  • 品質問題の解決に要する時間を50%短縮

*2016年~2020年までに収集されたマイクロン社内のデータと分析に基づく改善点

そしてデータ解析とAIのメリットは、ファブだけではなく、セールスやマーケティング、人材、事業運営、研究開発など、マイクロンのあらゆる業務に及んでいます。

「これは製造現場だけではなく、企業そのものを変革するものです。こうした技術や手法は、社内のすべての事業プロセスに導入することが可能です。」とコーエンは述べています。

エコシステム・パートナーシップ

社内の製造プロセスを最適化するだけでなく、マイクロンはサプライヤーと直接協力し、最高のエネルギー効率を確実にするために、製品に関する詳細なフィードバックを提供しています。こうしたサプライヤーとともに、マイクロンはDIMS(マイクロンシステムへのデータ取り込み)を調整して、取り込みが最高の頻度で行われるようにしています。マイクロンのエンジニアは、この取り込みをリアルタイムで監視します。同様に、修正と最適化も非常に細かいレベルで常に行われています。

さらにマイクロンでは、サプライヤーと連携して、テレメトリデータを使い、サプライヤーのデータセンターにおける自社製品の効果を測定しています。このデータを社内のデータと組み合わせることで、特定のワークロードに合わせて製品を改善するためのリアルタイムな協力体制を支えています。

また、モデルのパフォーマンスも綿密に監視しています。入力データと再学習にAIを使用することで、エンジニアは機械学習フローの自動化に高いレベルで集中することができます。(そうでなければ、データサイエンティストの数が足りなくなり、すでに発生したイベントを追いかけることになりかねません。)

こうした取り組みは、社内のデータサイエンス・アカデミーと、社内のデータサイエンティスト、エンジニア、ソリューションアーキテクトへの継続的な投資によって支えられています。シチズンデータサイエンス モデルと共にこれらのリソースは、組織内の専門家がAlを活用したツールとインサイトを使用することを可能にします。

業界のリーダーシップ

今日のマイクロンは、豊富なコアプロセスの知識と圧倒的なAIの効率性を兼ね備えています。データの専門家によって、全社で6,000人が使用する大規模な歩留まり管理プラットフォームが誕生しました。同時に、日々の歩留まり最適化に注力する専門チームが、迅速な統合サイクルで新しいプロトタイプを構築しています。これらのプロトタイプは、主要なプラットフォームを最適化するために頻繁に実装されています。

その結果は、すでに十分実証されていると言えるでしょう。マイクロンのチームメンバーによる献身とAIを活用した製造プロセスにより、当社の1α(1アルファ)ノードDRAMと176層NANDは、マイクロン史上最高の歩留まりを達成しています。また、業界をリードする1β(1ベータ)DRAMと232層NANDは、他のどのマイクロンテクノロジーよりも早く成熟した歩留まりを実現しました。

マイクロンはAIによる製造業の変革を最適化しています。この新しいテクノロジーは、すべての人の仕事を奪うどころか、データの取得や複数のベース分析に専念する必要のないチームを強化し、権限を与えています。それにより、チームは得意とすること、すなわち業界をリードする製品を開発するためのイノベーションに集中することができるのです。