セーフティクリティカルな車載アプリケーションは、その性質上、高い信頼性と安全性の両方を必要とします。機能安全要件はこれまで自動車のティア1や相手先商標製造会社が対応してきましたが、現在そして未来の自動車に関連するシステムレベルの複雑性とエレクトロニクスの増加に伴い、半導体サプライヤーにとって確実にますます大きな焦点になっています。
メモリサプライヤーを含む半導体サプライヤーは、自動車のティア1や相手先商標製造会社による機能安全への取り組みを支援するため、より充実したサポートを提供しています。マイクロンは11月にビデオ「DRAMの機能安全に関するメモリサプライヤーへの質問」を公開し、全体的な安全レベルに影響を与えるメモリの役割の増大と、安全戦略を策定する際に考慮すべき問題について説明しました。
ISO 26262は、機能安全を「電気/電子システムの誤動作で生じる危険による不当なリスクがないこと」と定義しています。故障は以下の2種類に分類されます。
- 決定論的故障:決定論的に発生する故障であり、通常、製品の設計または開発中に原因がある。この故障には一般に、安全計画、安全コンセプトの文書化、要件トレーサビリティ、予見な安全分析ツール、厳格な検証、運用手順、その他の関連要因を含む、十分に文書化したプロセスや方法を採用することで対処する。
- ランダム故障:デバイスの寿命期間中に無秩序に発生する故障。ランダム故障はさらに、過渡故障(単一イベントのアップセットやソフトエラー)と永久故障(ロジックレベルでのスタックなどのハードエラー)の2つに分類できる。このタイプの故障には一般に、故障の特定を支援する安全メカニズムを導入することによって対処し、システムが故障を修正したり、安全な状態を維持したりできるようにするなど、適切な措置を取れるようにする。
ハードウェアレベルやシステムレベルで取り入れる以下のような安全メカニズムがあります。
- 冗長性:このメカニズムは通常、ハードウェアレベルで導入可能。
- 巡回冗長検査:このメカニズムは通常、エラー検出で使用される。
- エラー訂正コード:このメカニズムは通常、エラー検出と訂正の両方に使用される。
- 内蔵セルフテスト:このメカニズムは、継続的または電源投入時に、デバイスの正確な動作を検証する追加回路になる。
時間内のランダム故障(FIT)を検出するために使用される安全メカニズムの有効性とリスクの可能性は、単一点故障指標(SPFM)や潜在故障指標(LFM)など、さまざまな指標で測定されます。これらの指標をして、特定のハードウェアコンポーネントの機能安全を測定します。
自動車部品の安全要件を確立するASIL
ASILはAutomotive Safety Integrity Level(自動車安全水準)の略で、道路を走行する車両の機能安全に関するISO 26262規格で定められたリスク分類システムです。ASIL Aシステムは求められるリスク低減レベルが最も低く、ASIL Dが最も厳しいレベルです。ASILレベルが高くなるほど、一般にコストと複雑性が増すため、あるシステムに要求されるASILレベルは、そのシステムの故障が車両の動作に与える影響に比例して大きくなります。
ハードウェアシステムの場合、ASIL要件は、以下の表に示すように、障害指標に必要な値を明らかにします。
ASIL | 故障率(FIT) | LFM | SPFM |
---|---|---|---|
A | < 1,000 | — | — |
B | < 100 | ≥ 60% | ≥ 90% |
C | < 100 | ≥ 80% | ≥ 97% |
D | < 10 | ≥ 90% | ≥ 99% |
マイクロン、業界をリードする自動車用適格ソリューションポートフォリオを発表して安全性を追求
マイクロンでは、自動車市場と安全アプリケーションにおけるメモリの役割と重要性を深く理解しています。このたび、業界に先駆けて、安全性を基本としたソリューションのポートフォリオを発表します。これらのソリューションは、自動車市場にリーダーシップソリューションを提供するというマイクロンが30年担ってきた責任を明確に示すものです。また、これらのソリューションは、安全規格に準拠したソリューションを求める新たなニーズに対応するために過去2年間、マイクロンが多方面で行ってきた以下のような広範な投資を反映しています。
- 業界の安全に長年携わってきたスタッフによる専門の機能安全室の設置
- ISO 26262に準拠したプロセスと方法をマイクロン全体で採用
- 相談支援のため、システムアーキテクトやアプリケーションエンジニアを含む安全管理責任者チームを発足
- 業界をリードする安全専門会社、exidaによる業界初の独立した評価を導入。マイクロンの車載用LPDDR5はASIL Dを含む安全システムに適していると評価される
- サプライヤーによる、ISO 26262-8第13条に準拠したハードウェア評価レポートの取得
- 広範な機能安全分析を実施し、並行して顧客による解析を大幅に簡素化
電子デバイス技術合同協議会準拠のLPDDR5は、自動車規格に準拠したマイクロンの多種多様なメモリ・ストレージ製品ラインナップの中で初めて、ASIL水準で安全システムに適格とみなされた製品です。システムインテグレーターは、すべての電子部品とサブシステムが安全関連システムとして適格であることを証明する最終的な責任を負います。メモリ開発者であるマイクロンは、システムインテグレーターのその証明を裏付ける専門知識と設計データを利用できる立場にあります。マイクロンのLPDDR5製品には、業界初のサプライヤーによるハードウェア評価レポートや、安全アプリケーションノート、分析レポートなど、製品安全に関する資料が添付されています。さらに、安全規格に準拠したLPDDR5メモリファミリーには、独自の革新的な「セーフティエンジン」を搭載しており、システムレベル、消費電力、パフォーマンス、コストにおいて大きなメリットを実現します。マイクロンのセーフティソリューションを利用するシステムインテグレーターは、システムパフォーマンス、消費電力、コスト、可用性の大幅な向上を実現しつつ、DRAMに決定論的故障が発生しないようにすることができます。
DRAM、車載市場、関連アーキテクチャ、機能安全に対する広範な理解があるからこそ、マイクロンはこの革新的な製品ファミリーを提供できます。現在、車載規格に適合した初のパッケージ構成が入手可能です。同製品は、マイクロンの製造施設において量産中です。
業界をリードする独立した機能安全専門会社であるexidaのコメントは以下のとおりです。「機能安全は先進自動車システムの開発にとってなくてはなくなりません。しかしこれまで、メモリはCOTS(商用オフザシェルフ)としてやや軽視されてきました」。exidaの最高執行責任者兼プリンシパルセーフティエキスパートのアレキサンダー・グリーシングの言葉です。「マイクロンはISO 26262に細心の注意を払いながら、業界をリードする車載用LPDDR5を発表し、メモリ業界に新たな基準を打ち立てました。機能安全に対するこのような関心の高まりは、自動車メーカーから、先進的かつ安全な自動車を必要とするコンシューマーまで、すべての人や会社にとってメリットがあります」
詳細
マイクロンのセーフティソリューションポートフォリオの詳細など、安全について詳しくは、こちらをご覧ください。このハードウェア評価レポートやマイクロンの業界をリードする機能安全支援についての詳細は、こちらをご覧ください。https://www.micron.com/Fusa