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さまざまに広がる用途

世界のデータを格納できるDNAの驚くべき潜在能力

マイクロンテクノロジー

2020年3月 | 最終更新日:2026年2月

人類はかつてないほどの規模での情報爆発期へ突入しようとしています。しかし問題は、私たちが生み出す膨大なデータをどう扱うかということです。

これは軽視できない問いです。日常的に使うコンピューターやスマートデバイスから、自動車やロボットといった先端技術に至るまで、あらゆるものが飛躍的に増加する量のデータを生成し、利用しています。

5年前、デジタル技術が生み出した全データの総量は4.4ゼタバイト(ZB)でした。これは4.4セクスティリオンバイトという、もはや想像を絶する巨大な数値です。今日、私たちはその数値をすでに上回っています。現在では年間約16ZBものデータが生み出されており、この数値は今後も増加し続ける見込みです。

そのデータは、主に砂に含まれるシリコンで作られたマイクロチップを用いて収集、処理、保存されます。シリコンは地殻で2番目に豊富な元素であるにもかかわらず、多くの種類のコンピュータチップの製造に必要な純粋な形態のケイ素は希少であり、供給量全体の10%未満に過ぎません。

しかも、その貴重な資源は急速に消費されています。ある研究によれば、必要なシリコンウエハーの総量は2040年までに利用可能なシリコン供給量全体を上回ると予測されており、これは新たなテクノロジーとデジタル進歩の重大な課題となっています。

この惨事を回避する1つの方法は、シリコン精製プロセスの向上です。さらに、研究者らは窒化ガリウム(GaN)やグラフェンなど、データ処理やストレージのための代替材料を模索しています。

しかし代替材料の中に、もう1つの可能性があります。それがデオキシリボ核酸、すなわちDNAです。

DNAデータストレージ:自然界のデータプロセッサー

あらゆる生物は、特定の情報を備えてこの世に生を受けます 私たちの髪や目の色、右利きか左利きか、かかりやすい病気、そしておそらく気質までもが、遺伝子として受け継がれた形質にコード化されています。遺伝子はDNAで構成されており、DNAは私たちが何者であるかを決定づける情報を運んでいます。

DNAの分子構造は二重らせん、つまり糖とリン酸からなる2本の分子鎖が互いにねじれ合った形をしています。その鎖の間には水平な棒状の窒素塩基が配置されており、それぞれが異なる化学物質で構成されています。塩基には4つの種類があります。

  • アデニン(A)
  • チミン(T)
  • グアニン(G)
  • シトシン(C)

DNAの仕組みや、情報が私たちの体内でどのように保存されるかが分かったところで、電子機器の中でどのように情報がDNAに保存されるのかを見ていきましょう。

「人体は最も洗練された情報保存装置である」と、マイクロンテクノロジーのシニアフェロー兼バイスプレジデントであるガーテジ・サンドゥは語ります。サンドゥは幅広い技術分野で1,300以上の特許を保有しています。彼の個人的な関心事であり研究分野の1つが、DNAを用いたデータ保存技術です。

サンドゥのひらめきは、私たちの体にあるたった1つの細胞分のDNAに蓄えられる「巨大な量の情報」に気付いたことから生まれました。

サンドゥは次のように語ります。「自然界は、驚くべき規模でデータ圧縮を行っており、その仕組みは未だ完全には解明されていません。だから私はこう考えました。『DNAを情報格納のための手段として使えないだろうか』と。」

ガーテジ・サンドゥ

「人体は最も洗練された情報保存装置である」

シニアフェロー兼バイスプレジデント、マイクロン・テクノロジー

データがDNAにどのように保存されるか

 

デジタルデータをDNAに保存することの多くのメリット

科学者がDNA分子についてより深く理解し、合成版を作成する方法を見出すなかで、DNAとデータ保存についても大きな可能性が見えてきました。核酸メモリ(NAM)ストレージとして知られる次世代メモリは、数多くのメリットをもたらす可能性があります。

密度:一人の人間のDNAに保存されている情報量は膨大であるとサンドゥは言います。私たちの体には5TB(または5兆バイト)の情報が入っています。サンドゥによれば、DNAのデータストレージ密度は、現在知られている他のどのストレージテクノロジーよりもはるかに高いということです。

あるシステムでは、わずか1グラムのDNAに2億1,500万ギガバイトのデータを保存でき、角砂糖よりも小さな容量のDNAにこれまでに制作された全ての映画を保存できる計算になります。さらにスケールアップすると、乗用車2台ほどの大きさのDNA容器に、世界中でこれまでに生成された全データを収めることができることになります。

サンドゥによれば、この圧倒的な密度の理由の1つは、DNAの4種類の塩基(A、T、G、C)にあるといいます。これは、現在のコンピューティングが採用する0と1のバイナリシステムとは対照的です。この倍増により、保存される情報量の「飛躍的な増加」が可能になります。NAMストレージは、分子に情報をエンコードし、情報の勢いを非常に小さな包みの中に収めています。

耐久性:DNAは非常に長期間保存できます。永久凍土に凍結された場合、最大150万年程度保存されます。DNAは、データストレージの手段として、何千年、あるいは何百万年も使用することが可能でしょう。対照的に、最も一般的に使用されるデータの長期保存手段である磁気テープは、10年後には交換する必要があります。

サステナビリティ:DNAは、NAMで使用される合成DNAであっても、その保存、処理、読み取りに必要となるエネルギーはごくわずかです。理由はDNAが自己再生し、また完全に再利用が可能だからです。さらに、それは容易に自身の複製を多数生成できるため、DNAデジタルデータストレージのほぼ無限の供給源を生み出すことができます。

「NAMははるかに少ない空間とエネルギーで世界の情報を将来の世代のために保存できる」と、サンドゥとジョージ・M・チャーチ、ビクター・ジルノフら共同研究者は2016年のNature Materials誌に掲載された論文に記しています。

DNAストレージ技術の長期的な可能性

研究者らはまず、医療記録、監視カメラ映像、歴史的文書、その他のアーカイブ資料の長期保存技術として、DNAの利用を模索しています。

膨大なデータライブラリを埋める磁気テープという旧式の手法は、比較的少量のNAMで置き換えられ、はるかに長期間の保存が可能になります。最終的に研究者らが目指しているのは、コンピュータにおけるシリコンの使用を完全に代替するNAM技術の開発です。

ガーテジ・サンドゥ

「だから私はこう考えました。『DNAを情報格納のための手段として使えないだろうか』と」

この目標を達成する上での主な障害はコストです。

「DNAを用いてデータを読み取り、書き込み、パッケージ化し、保存するアプリケーションでは、コストを大幅に削減する必要がある」とサンドゥは語ります。あるプロジェクトでは、2MBのデータの合成に7,000ドル、その読み取りにさらに2,000ドルのコストがかかりました。DNAへの読み書きは、他の種類のメモリストレージよりも低速です。

サンドゥは、こうした課題はいずれ解決されると楽観視し、DNAのシーケンシングの価格は大幅に下がっていると指摘します。2002年には、メガベース(100万塩基対)あたり31,250ドルでしたが、2024年時点ではわずか50セントまで下がっています。

NAMに関する研究はさらに加速しています。ハーバード大学、欧州分子生物学研究所、半導体研究コンソーシアム(Symbio)などの研究グループからの資金提供を受け、各組織がDNAベースのデータストレージテクノロジーの開発を進めています。

DNAデータストレージの明るい未来

もし今日、コンピュータグレードのシリコンが枯渇すれば、世界は停止してしまうかもしれません。私たちがデータを生み出すスピードを考えると、世界のシリコン供給が枯渇することは現実的に懸念される問題ですが、マイクロンはこの課題の解決に向けて積極的に取り組んでいます。コンピューターのメモリテクノロジーのリーディングメーカーであるマイクロンは、より良く、より速く、よりサステナブルなデジタルメモリソリューションを目指す取り組みにおいても、市場をリードするポジションを占めています。

サンドゥは、DNAベースのNAMがマイクロンDRAM、NAND、その他のシリコンベースのメモリ技術を補完する準備が間もなく整う可能性があると考えています。いつか、NAMによるメモリストレージが、現状主流のシリコンベースによるものから取って替わり標準となる可能性があります。

ガーテジ・サンドゥ

「DNAを用いてデータを読み取り、書き込み、パッケージ化し、保存するアプリケーションでは、コストを大幅に削減する必要がある」

そうしているうちに、まさにNAM開発のプロセスが、その他の同じくらい重要な結果を生みだす可能性もあります。サンドゥは次のように説明します。

「100年前のメモリ、つまり磁気コアが使われていた時代を想像してみてください。その後、電子メモリ、ディスクドライブ、小型磁気メモリへと進化していきました。それらには、機械的な側面に関する知識が必要でした。

しかし、DNAはその10倍複雑です。私たちはインクルーシブでなければなりません。メモリ、マイクロ流体工学、化学、分子生物学が必要です。このテクノロジーを機能させるには、多様な人々による膨大なコラボレーションと技術的、科学的な関与の広がりが不可欠です。これを実現するには、あらゆるスキルセットを結集させる必要があります。」

マイクロンはメモリメーカーであるからこそ、新たなメモリテクノロジーを構想し、創造することで業界をリードしています。しかし、DNAデータストレージのような技術を実用化するには、多様な分野の専門家による協力が必要です。

「私たちの業界だけでなく、他のどの業界においても、過去にこのような例はありません」とサンドゥは言います。「これは、素晴らしいコラボレーションの機会となるでしょう。そして私たちは今やっと初期の研究を始めたばかりなのです。」

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