近年、データの量とタイプ、新種のサービスが急速に増えた結果、データセンター、および関連するクラウドインフラストラクチャへの多大な投資が行われています。それに加えて、この貴重なデータから価値とインサイトを引き出すうえで、人工知能(AI)ワークロードの進化が中心的な役割を果たすようになりました。結果的に、このような需要を満たすために必要なインフラストラクチャの構築に、企業はますます注力しつつあります。オンプレミスでも、インテリジェントエッジでも、クラウドでも、効率性とスケールが追求されています。こうした状況から、クラウドサービスプロバイダーにとって、またとない機会が訪れています。
変革への課題
ワークロードの進化に適応するためのリソースのスケーリングは、多くのプロバイダーにとって厄介な問題を提起しています。現時点で既知のニーズに対応しながら、今後のスケール、効率性、パフォーマンス要件の高度化に備えるには、どうすればよいかという問題です。
この問題の解決は、「典型的な」エンタープライズクラスのデータセンターの性質によって、さらに難しくなります。これらのデータセンターの多くは、長い年月にわたって構築されたものです。巨大なレガシーシステムから、よりオープンで近代的な仮想化環境、さらに最近の傾向として、クラウドネイティブなコンテナ化インフラストラクチャまで、さまざまな技術アーキテクチャの連続体の様相を呈しています。
柔軟なインフラストラクチャの必要性
効率的なスケーリングの観点から、こうしたニーズの増大に対する1つの解決策が提起されます。ワークロードが進化し、インテリジェントエッジにおける画像認識、ハイパフォーマンスクラスターにおける機械学習、クラウドにおける自然言語処理、コンテンツ配信ネットワークにおけるビデオエンコード/デコードなど、AI機能を活用した複雑なタスクが含まれるようになった今、従来のコンピュートとメモリ/ストレージアクセスおよび接続性(I/O)とのバランスを変化させる必要が生じています。つまり、残念ながら既存のデータセンターインフラストラクチャの一部は、これらの新しいワークロードに適さない可能性がある、という意味です。
今日の新しいインフラストラクチャ投資における必須課題は、柔軟性です。効率性を目指したデータセンター設計も重要です。より効果的にアプリケーションを処理し、パフォーマンス、スケール、レイテンシーの要件がそれぞれ異なる、幅広い個別のソースからデータを活用する能力が、かつてないほど重要になっています。
パフォーマンスボトルネックのない変革の立案
過去に行われたインフラストラクチャのイノベーションは、より多くのコンピュート、より多くのコアを熱狂的に追求するものでした。結果として、より多くのコストが発生しました。今、訪れつつある機会は、それとはかなり違う感じがします。問題に対し、より多くのコンピュートリソースを単純に投げ与えても、システムアーキテクチャーの制約によって、その有効性は限られたものになるからです。今回、業界が採るべき対応は、コンピュート、メモリ、ストレージ、I/Oリソース間のパフォーマンスボトルネックを最小限に抑えながら、データとサービスを迅速かつ効率的に提供し、貴重なリソースを最大限に活用するとともに、可能であればこれらのリソースをプールする、バランスの取れたアプローチに焦点を合わせる必要があります。
進化するワークロードへの対応
従来のデータセンターにおけるワークロードの特性評価で見られた「コンピュートファースト」のヒエラルキーは、進化しつつあります。これらのリソース(CPU、GPU、IPU、DPU、アクセラレータ)が増加しながら多様化し、市場に続々と出現しつつあります。コンピュートおよび進化するワークロードの異種混在性から、今後の効率的なデータセンターインフラストラクチャの導入に関する限り、革新的なメモリ、ストレージ、インターコネクトテクノロジーは、従来のコンピュート以上ではないとしても、それと同じように重要であることは明らかです。
データセンターにおける新しいメモリとストレージのヒエラルキーは、Compute Express Link(CXL)などの将来的なイノベーションにつながる鍵であり、今後のデータセンターで価値やリソース利用率を最大化するうえで中心的な役割を果たします。CXLは、システム内のデバイス間における通信に使用できる、高性能、低レイテンシー、メモリ中心型のプロトコルです。コンポーザビリティの可能性を解き放つために、業界全体で行われている取り組みの1つです。
一例として、リソースプーリングについて考えてみましょう。プーリングによって、ワークロードに応じてさまざまなホストにメモリリソースを提供できます。さまざまなホストにメモリの割り当てと割り当て解除を行うことができます。これにより、データセンターにおけるオーバープロビジョニングが最小限に抑えられると同時に、メモリパフォーマンスが向上します。
鍵を握るのは、コンポーザブルなデータセンターアーキテクチャー
そこでマイクロンの登場です。マイクロンは、これらの課題を解決する革新的なメモリおよびストレージテクノロジーを開発し、広範なパートナーのエコシステムおよび規格リーダーシップを通じてこれらを提供しています。メモリとストレージにおける40年以上のイノベーションを基に、データセンターの新時代を迎えた業界を支援しています。
実際、マイクロンによる現在のテクノロジーイノベーションは、今後の可能性を切り拓くものです。
マイクロンはメモリとストレージにおいて、業界をリードする史上初のプロセスノードリーダーシップを実現しました。176L NANDおよび1 alpha DRAMの発表は、マイクロンにとって大きなテクノロジーブレイクスルーであり、集中的なR&D投資を反映するものです。
マイクロンは今年前半に、世界で最も進歩したメモリノードである、業界をリードする1 alphaメモリノードを発表しました。この成果は、マイクロンの標準コンピュートDRAMおよび低消費電力DRAM製品ラインで実現され、前世代のマイクロン製品と比べて著しく高いメモリ密度を提供します。
マイクロンはさらに、世界初の176層NANDも開発しました。これは電力効率と書き込み時間の改善、データ転送速度の向上につながります。
マイクロンはさらに、データセンターにおける低消費電力DRAMを実現するイノベーションの先駆けとなることで、CXL接続メモリの時代でも業界をリードしつつあります。しかし、成功するには業界との強力なコラボレーションが必要です。CXL接続メモリは、主要なコンピュートプラットフォームと共同で最適化する必要があります。そのため、マイクロンはエコシステムパートナーとともに、および業界コンソーシアムを通じて、上記およびその他の作業に取り組んでいます。
業界のコラボレーションによって課題が解決され、未来のデータセンターが提供されつつあります。必要に応じて動的にリソースを割り当てる能力と柔軟性を企業に与える、コンポーザブルなデータセンターアーキテクチャーです。このコンポーザブルな未来においては、インフラストラクチャのさらなる効率化、必要に応じたワークロードの拡大と縮小、今よりも迅速で効率的なデータの提供と保存が可能になります。
新しい可能性を解き放つ、未来のデータセンター
こうした課題は、気が遠くなるほどの難題に思えますが、コンポーザブルな未来に向かって、私たちは着実に前進しています。現在のアプリケーションやプロセスをより速く、より効率的に実行できるようになるだけでなく、リソースが効率よく最大限に活用され、企業がインフラストラクチャ投資からあらゆるメリットを引き出すことのできるコンピュート環境が成立します。
最も重要なポイントとして、未来のデータセンターは、データサイエンティスト、イノベーター、研究者が、私たちにとって最大かつ世界的な課題を解決できるよう支援します。たとえば気候変動、ゲノム研究、癌治療、サンゴ礁の保護など、科学の分野で行われている最先端の研究です。未来のデータセンターは、よりスマートな都市や工場を実現し、すべての人々の生活を効率化するための鍵でもあります。より多くのサービス、インサイト、さらなるイノベーションの実現は、未来のデータセンターに全面的に依存しています。それは非常に深く、生活を一変させます。
業界インサイダーからさらに詳しく学ぶ
詳細については、トークセッション:「データセンターの未来を拓く」をご覧ください。このトークセッションでは、司会役のパトリック・ムーアヘッド(Moor Insights and Strategy所属)が、マイクロンのラジ・ハズラおよびジェレミー・ワーナーとともに、未来のデータセンターがもたらす課題と可能性、およびこの分野で先行するマイクロンの取り組みについて語ります。