現在の世界の潮流として、多くの人々が、これまで以上にモバイルデバイスを使用して、地域社会や世界とつながっています。特に「ニューノーマル」として自粛生活を続ける中で、記録を残したり誰かとつながったりするのにスマートフォンのカメラが活躍しています。皆さんは、携帯電話にカメラが付いていなかった時代を覚えていますか?
最高のカメラとは
ずいぶん前のことですが、私は当時のことをはっきりと覚えています。私はこれまで、テクノロジーの分野、特にモバイルデバイスの設計に関わる分野に携わってきました。Texas Instrumentsで初期のデジタルカメラの技術開発に関わっていたころ、当時の上司と、カメラ付きの携帯電話の需要はあるだろうかと議論したことを覚えています。その後、Qualcommにいたときにも、焦点や露出などが自動調整され、シャッターを押すだけですむ当時最新のデジタルカメラに、スマートフォンのカメラが太刀打ちできるのかと、同様の議論をしていました。当時は、電話関連の相手先商標製造会社でさえ、普段使いのカメラとして消費者がスマートフォンのカメラを選ぶことには懐疑的でした。当時、いつも聞かれていた質問は「最高のカメラとは?」でした。私の答えはいつも同じで、「あなたが今手元に持っているものです」というものでした。カメラがスマートフォンに搭載されたのは理に適っていると思いました。
今では、カメラは人々がスマートフォンをアップグレードする主な理由の1つになっています。これから5年以内に、皆さんが手に持つスマートフォンは完全に違ったものになるでしょう。その変化はカメラから始まります。5Gの新機種には、カメラが5つ搭載されたものや8K録画に対応したものも出てくるでしょう。将来は、スマートフォンの背面全体がカメラになっているかもしれません。
ここまでの重要ポイント:今やスマートフォンは、かつてないほど最も重要なコンシューマーデバイスになっています。
スマートフォンへのカメラ搭載を実現したもの
お気付きでない方もいらっしゃるかもしれませんが、画像を作成するにも、指先でデバイスの人工知能(AI)や機械学習を動作させるにも、それを可能にする処理能力が必要です。例えば、モバイルデバイスのカメラは、「写真の被写体は人間か?顔の位置はどこか?太陽は出ているか?」といったことを常に分析しています。なかには、複数枚撮影した後、その中からベストショットと判断した1枚を選び出すカメラさえあります。
5Gの実用化で、こうしたカメラの用途は増えるでしょう。最近登場した折りたたみ式スマートフォンの画面は従来よりもさらに大きいので、ノートパソコンのようにスマートフォンで複数のウィンドウを立ち上げ、複数のアプリを使うようになるでしょう。これらの各ウィンドウには専用の帯域幅が必要です。つまり複数のアプリを処理するプロセッサーが必要だということです。この処理を行うためには、プロセッサーに匹敵する、高速かつ高帯域幅のメモリが必要になります。これがないと、処理能力は大幅に低下します。
市場に投入され始めた5Gスマートフォンは、途方もない量のデータ処理能力と、従来よりもさらに増大したメモリとストレージ容量を誇ります。最新のスマートフォンには、複数のヘテロジニアスプロセッサーを搭載したものもあり、なかには、3GHz以上、DRAM 16GB、ストレージ1TBに及ぶものもあります。処理速度が向上するたびに、デバイスメーカーはより低い消費電力、より低いレイテンシー、そしてより高性能のメモリとストレージを求め始めます。この動きこそ技術革新の原動力であり、そこにこそマイクロンが活躍する場があります。次にどのようなものが登場しても、それを動かせるだけの幅広いポートフォリオの製品・技術があるからです。
マイクロン製品がスマートフォンの未来をどのようにパワーアップするか
先日発表されたXiaomi Mi 10は、マイクロンのLPDDR5を採用しています。LPDDR5は世界初の量産型低電力DDR5 DRAMで、これにより5Gスマートフォンは、複数の高解像度カメラ、マルチプレイヤーゲーム、AR/VRアプリケーションなどをサポートするのに欠かせない、超低レイテンシー・低電力モードでの動作が可能になります。
マイクロンが未来のモバイルを支えるイノベーションを推進しているのは、この分野だけではありません。メモリとストレージだけでなく、プロセッサーにも注目しています。マイクロンの現行製品では、データ処理を行うプロセッサーとメモリは互いに別のものと捉えられています。しかし、私は、人間の脳の情報処理領域と記憶領域を区別するのは難しいという生物学上の知見からヒントを得ました。
私たちは、テクノロジーの分野でもやがて同様のことが起きると予測しています。DRAMなどのメモリは、超低レイテンシーかつ超高速を実現していますが、永続性がなく高コストでもあります。一方、NANDは低速かつ高レイテンシーです。これら2つの中間に位置するものはないのか? DRAMのパフォーマンス特性を有しながら、NANDのような永続性を併せ持つものはないか? こうした、メモリとストレージの境界線が揺らぐ場所に市場が進化する可能性があります。
もう1つ、私が今後定着するトレンドと見ているのは、ユーザーに合わせたモバイルデバイスのコンテキスト化です。デバイスの使い方は人それぞれ違います。デバイスはよりスマートになり続けており、将来的には、誰が使っているのかを認識し、そのユーザーのコンテキストに適応するようになるでしょう。何を閲覧するか、何を視聴するか、そして通勤のルートや方法は何かに応じて、あるユーザーのスマートフォンは他のユーザーのものと異なった挙動を示すでしょう。AIと機械学習は、私たちのデバイスが私たちの何を認識し、私たちのために何ができるかについての可能性を広げ続けるでしょう。コンテキスト化は、次の数年間でさらなるレベルに進化するでしょう。デバイスは完全な認識能力を獲得し、ユーザーのニーズに合わせ、ユーザー好みにカスタマイズされたものになるでしょう。
これがモバイルデバイスの向かう先です。Wiredの最近の記事では、もっとも価値のあるデータは、スマートフォンやウェアラブルセンサーにより、ますます携帯可能でパーソナルなものになっている、との指摘がありました。企業に「数ヨタバイト(10の24乗バイト)のデータをもたらす」データマイニングのゴールドラッシュだとも述べられています。
次世代のモバイルデバイスは、これからも、私たちの仕事をよりスマートにし、エンターテインメントの可能性を広げ、革新的な新しい方法で私たちを世界とつなげてくれるでしょう。マイクロンの私のチームが注力している仕事は、このようなトレンドを予測しながら、そのトレンドを定量化してメモリやストレージ製品に取り入れ、その製品を通して皆がつながっていられる未来を支える方法を考えることなのです。