コンピューティング能力は、人間の「感覚」の最先端に限りなく近づいています。1980年代のメインフレームコンピューター端末はデスクトップPCに発展し、ポケットに入るスマートデバイス、ウェアラブル眼鏡、ゴーグル型デバイス、あるいは体内デバイスへと進化を遂げています。私たちとデジタル世界をつなぐユーザーインターフェースの「次なるステップ」として考えられるのは、低消費電力で高性能なDRAMソリューションと最適化された消費電力を組み合わせた拡張現実と仮想現実(ARおよびVR)製品です。
1990年代には、それまでの電話機は壁から取り払われて「携帯」端末となり、2Gネットワーク機能がモバイル通信の急成長をけん引しました。2000年代には3Gネットワークが整備され、AppleやAndroidからタッチスクリーンユーザーインターフェース(UI)を備えたスマートフォンが登場しました。ブロードバンドが比較的広く普及し、強力なコンピューティングがオンボードに搭載され、アプリケーションリッチなエコシステムや多岐にわたるデータへのアクセスが可能になった今、スマートフォンはデジタル世界につながる標準的な手段を提供しています。
能力における岐路
ブロードバンドアクセスが期待され、ほとんどの都市部ではグローバル接続が当たり前で、スマートフォンはポータブルなアクセスとモビリティをもたらします。しかし、私たちが知るインターネットは、二次元的な情報表示から三次元的へと進化しています。キャッチフレーズは「空間コンピューティング」と、インターネットの3D「仮想化」です。では、スマートフォンで3Dを見るにはどうすれば良いでしょうか。親指で少しずつ入力するのも飽きてきました。次はどのような展望が待っているのでしょうか。
2Dから3Dへの移行は、次世代UIにおいて目の役割が大きくなることを意味しています。インターフェースが(耳と口もある)頭の方へと移動するのは理にかなっています。重要な感覚器官のほとんどが脳の近くにあることを考えれば、ユーザーインターフェースもそこに置くことが実用的であると言えます。
拡張現実と仮想現実(AR/VR)
ARとVRを区別するのは、ユーザーニーズにおける重要な相違点です。たとえば、ユーザーがアプリ、データ、情報を使いながら、自分の周りの物理的な世界を見る必要があるとします。これはARです。あるいは、3D仮想化に没入する必要があり、周辺の物理的な世界を見る必要がないこともあります。これは、道路を歩いている人は自分の周囲を見る必要があるが、デスクワークをしている人は横断歩道の信号が赤であるかどうかを知る必要はない、といった違いとして理解できます。ARは一般的に眼鏡のような拡張入力で物理的現実を「透かして見る」ことを意味します。たとえば、歩道上に線を重ね合わせ、目的地までの徒歩ルートを案内するなどです。一方でVRはヘッドセットのようなもので物理的な世界を遮断し、目の前のタスクを完全に仮想化することを意味します。たとえば携帯電話の基地局から発信される電波を見たい場合は、VRを使って3D的な視覚解釈を作り出し、目に見えないものを見えるようにすることができるでしょう。
マイクロンにとってのチャンス
これは、とてつもなく複雑であると同時に、シンプルで直観的でもあります。このような優れた能力がポケット内に留まらず感覚に近づくにつれ、ユーザーが持つありふれた期待感に食い違いが生まれます。マイクロンは、そのような食い違いの解消に一翼を担います。VRヘッドセットとAR眼鏡は頭に装着するので、ユーザーとしては快適さ、スタイル、パフォーマンス、使いやすさを求めます。しかし、コードがあると動きが束縛され、バッテリーは重くて熱を帯び、サイズと見た目が問題となります。熱くて重くて使いづらい、または1時間おきに充電が必要なゴーグルや眼鏡は、誰でも使いたくはないでしょう。眼鏡は眼鏡として、そもそも期待されていることがあります。見た目が悪く、かぶり心地が悪い帽子をかぶりたいと思う人はあまりいないはずです。眼鏡も同じです。
マイクロンでは、消費電力を最適化する低電力、高性能のDRAMソリューションを提供し、能力とユーザーの期待との間の食い違いを埋めるよう支援します。マイク孫の最先端のLPDDR5 DRAMとUFS 3.1ストレージソリューションが、今日の主要なVR製品に搭載されています。つまり、バッテリーの小型化、軽量化、最終的には冷却化に加え、バッテリー駆動時間の長期化、没入型で途切れることのないVRアプリケーションに求められるパフォーマンスレベルの向上がもたらされるということです。
ARにおいては、16Gb LPDDR4 DRAMと32GB eMMCストレージが併存する「正方形ダイベース」ePoPソリューションを提供しています。これは、狭いスペースで使われる「眼鏡型」フォームファクタでは他社の追随を許さない、最適なソリューションです。さらにマイクロンは主要顧客および主要SoCメーカーの両者と連携を図り、消費電力、パフォーマンス、工業意匠、美しさ、顧客の期待に伴う共通の問題点を解決するべく取り組み、次世代のコンシューマー向けのユーザーインターフェースを推進しています。戦略的パートナーと協力することで、ARおよびVRベースのデバイスの定義と実現に貢献しています。
15年前、私たちはタッチスクリーンのユーザーインターフェースを備えたスマートフォンを初めて手にしました。これから15年後、ユーザーインターフェースはどのような進化を遂げているでしょうか。