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オブジェクト認識開発キットによるエッジアプリケーションの進化

ドナート・ビアンコ | 2022年6月

2021年は、ダンテ・アリギエーリの没後700周年でした。彼の名作「神曲」は中世の詩における最高傑作の一つに数えられ、ダンテ自身もイタリア語の父として知られています。

高校生の頃から私の心に刻まれている「神曲」の有名な三行連は、新たな地平を探求して知識を深めることの大切さを思い起こさせてくれます。

 

Renesas

つまり、振り返らず常に前へ進み続け、新しいことに挑戦するということです。

文学からシステムオンチップ(SOC)、そして食料品店へ

実は、私がこの三行連を思い出したのは、産業市場における将来のインテリジェントエッジアプリケーションを検討していた時でした。私は多くの潜在的な応用方法をレビューしました。そのうちの一つであるRenesasの評価キットは、食料品店のスマートレジを模したシステムです。オブジェクト認識テクノロジーを使用して、購入した商品を識別し、それぞれの値段を合計していった総額を提示します。この応用について考える時、自分がチェックアウトエリアを効率的かつ迅速に通過する姿が思い浮かびました。普及しているテクノロジーを用いたスムーズな体験です。これらRenesasの新しいマイクロプロセッサー(MPU)により、高精度オブジェクト認識テクノロジーを容易にコスト効率よく導入できるようになります。

インテリジェントエッジでの応用向けのRenesas RZ/G2LとRZ/G2LC

Renesasは、RZ/G2LとRZ/G2LCによりRZ/G2ファミリー製品ポートフォリオを拡充しました。Renesasによると、最新のエントリーレベル、汎用MPUには、Arm® Cortex®-A55コアが搭載されています。これら新たなチップセットには、3Dグラフィックエンジン、ビデオコーデック(H.264)、カメラ入力インターフェース、ディスプレイ出力、USB 2.0、ギガビットイーサネット、GUIレンダリングといった特徴があり、これら全てが産業用製品で使用するヒューマンマシンインターフェース(HMI)と人工知能(AI)エッジの応用に理想的な機能です。

レジ待ちの列での例としては、カメラ入力インターフェースが購入した商品を撮影し、埋め込みビジョンアプリケーションを促進します。購入した商品の画像はビットストリームに変換され、3DグラフィックスエンジンとビデオコーデックによってサポートされたMPUに処理されます。3Dグラフィックスエンジンとビデオコーデックによって、データの圧縮と解凍が非常に容易になっています。ビットは処理・分析され、データは全てリアルタイムで外部画面に返されて表示されます。

インテリジェントエッジにおけるAIの応用により、データをクラウドに送らずにローカルで生成・処理することができるため、レイテンシーを削減しデータセキュリティを強化できます。ローカルでのデータ取得・処理は、クラウドとの接続を必要としません(AIのトレーニングとストレージには使用できます)。レイテンシーを(数秒ではなく)数ミリ秒まで削減することにより、データをリアルタイムに近い速度で迅速に処理することができ、ネットワークトラフィックの遅延を緩和します。このアプローチでは、機密データをシステム内のローカルで処理できるため、プライバシー保護も向上させます。

RZ/G2L・RZ/G2LC評価キット

Renesasは、新しいデバイスの評価を始める際に使用できる完全なシステムの提供を発表しました。RZ評価ボードには、対象のMPUを搭載したSMARCボードとキャリアボードがあります。同じキャリアボードをRZ/G2LとRZ/G2LCのいずれにも使用することができます。この機能により、SMARCボードを切り替えるだけでMPUの評価を行えます。Renesas評価ボードは、MPUのパフォーマンスと機能を評価し、プロトタイプと概念実証の開発を容易にするためのソリューションです。

Renesasボード Renesasの RZ/G2L・RZ/G2LC評価ボードキットには、マイクロンのメモリの部品が搭載されています。

RZ/G2LRZ/G2LC評価キットは、すぐに使用できる状態で提供され、開発に必要なインターフェースとツールが揃っています。これらのボードは、産業用製品向けのエントリーレベルのHMI製品の開発に使用できるほか、産業用のHMIとビデオ、インターホン/ドアベル、ポイントオブサービスのターミナル、家電、ホームセキュリティカメラなど幅広いアプリケーションにおけるAI処理の向上にも使用できます。

マイクロンとRenesas

Renesasは同社の開発ボード向けに、マイクロンのメモリとストレージテクノロジーを採用しました。これはマイクロンが、高い信頼性、長い耐用年数、高い耐久性といった産業市場独自のニーズを理解しているからこそです。開発ボードには、以下の3つのマイクロン製品が搭載されています。

  • 512MB Quad SPI-NORフラッシュ:一般的に信頼性の高いブートコードストレージに使用されるNORフラッシュは、ランダム読み取りの高速なパフォーマンスと低ピン数を備えており、埋め込みシステムのメモリとして最適です。低ピン数により、開発コストと物理的フットプリントを削減することができます。過酷な環境(掘削リグや自動車の環境と同様の大きな温度変化にさらされるその他の屋外機器など)で動作する産業用アプリケーションに有用です。
  • 8GB DDR4:幅広い産業環境に適した優れたメモリです。マイクロンの高性能かつ高密度なメインストリームDRAMソリューションであり、エッジデバイスにおける高速なデータ取得を実現します。
  • 64GB eMMC:データが生成される場所で保存できる、大容量で高性能のソリューションです。この大容量ストレージデバイスは、クラウド接続が非常に限られたシステムに適しているのみならず、工場/ビルオートメーション、POS、エネルギー、輸送、航空宇宙と防衛、映像セキュリティ、医療機器などの産業用アプリケーションにも最適です。NANDフラッシュメモリデバイスと、電子デバイス技術合同協議会準拠のコントローラを業界標準のボールグリッドアレイ(BGA)パッケージに組み合わせています。この単一のパッケージソリューションにより、ウェアレベリング、不良ブロック管理、デバイスマッピングといった操作を内部で管理し、システム開発作業を簡素化することができます。

 マイクロンのNORフラッシュ、DDR4、eMMCソリューションは産業用途に加えて、温度範囲が広い車載グレードのバージョンも提供しています。

マイクロンは産業市場における世界のリーダーであり1、産業用アプリケーションの要件を深く理解しています。そのため、Renesasのような革新的な企業がマイクロンを選ぶのです。マイクロンは、多様な産業用アプリケーションに対してパフォーマンスと価値のバランスを両立させた製品を製造しています。製品の品質、信頼性、長寿命に加えて、過酷な環境での使用に対する耐久性の向上にも取り組んでいます。こうした核となる取り組みは、お客様が産業用システム向けにメモリを選ぶ際に不可欠な役割を果たし、長期的な信頼性を確保して製品ライフサイクルの管理を簡素化するのに役立ちます。

  • 広範な品質テストにより不安定性を最小化し、厳しい要件の産業用製品が埋め込み型およびミッションクリティカルなアプリケーションで求められる一貫性のある高品質メモリを保証します。厳格な製品レベルテストと正確なスクリーニングを、組み立てとプロセスモニタリングともに一貫して実施しています。
  • 高い信頼性により、メモリの耐久性を向上させることで、より長期の製品ライフサイクルにおける信頼性と性能の安定性に関する要件を満たし超えられるようにします。厳正な設計ルール(仕様ガードバンドなど)と厳格なテストプロセス(時間あたり故障率[FIT]、平均故障間隔[MTBF]、耐久性など)を設定することで、こうした成果を実現することができます。
  • 長寿命により、最先端ファブでのプロセス移行を最適化し、生産終了や部品交換通知を最小限に抑えることで、広範なデザインインや再クオリフィケーションが必要な埋め込みアプリケーションに、安定性と長寿命を提供します。マイクロンの長期製品供給プログラム(PLP)を通じて、適格な製品に対しても長寿命をサポートしています。PLPでは、導入日から最低でも10年、フォーム、フィット、機能の互換性を提供し、部品番号の変更や生産終了の場合に2年間の移行期間を延長することで、標準的な製品ライフサイクルサポートを拡張します。
  • 耐久性は、厳格な温度と衝撃の仕様、腐食、湿度、放射線、その他の影響に関する基準に適合するように設計されることで実現しています。産業用アプリケーションにおいて典型的である過酷な環境下において、一貫したパフォーマンスを提供します。


インテリジェントエッジアプリケーションにおけるイノベーション

レジでのオブジェクト認識など、Renesasのソリューションによって可能となった新たなソリューションの実現は、早すぎることはありません。食料品店のレジで並ぶたびに、買い物体験がもっと効率的になる日のことを考えます。私は早く実現することを願っています。店長の方々が、Renesasが実現するスマートレジアプリケーションを採用するのに、早すぎるなどというものはありません。

1. Omdia Industrial Semiconductor Market Tracker – 4Q21 Analysis(オムディア「産業用半導体マーケットトラッカー」2021年第4四半期分析)

Sr. Ecosystem Enablement Manager

Donato Bianco

Attracted to technology since the era of 300 baud modems, Donato Bianco works to drive and develop business with ecosystem partners in EMEA. He endeavors to positively influence the conditions of our communities and the environment in both his personal and professional life. Donato holds a master’s degree in electronics.