PCゲームの高度化と人気の高まりに伴い、ゲーマーは高性能なグラフィックスカードに最大限のパフォーマンスを発揮して、なめらかなアニメーション、鮮明な映像、高いフレームレート、リアルタイムのレイトレーシング(リアルな光の反射や映画のようなエフェクトを実現するために不可欠なレンダリング技術)を実現することを求めるようになりました。この10年間で、テクノロジー企業は、ゲームアニメーションの動作に用いられる画像処理装置(GPU)が人工知能(AI)などのデータセンター用アプリケーションや、高性能コンピューティング(HPC)のモデリングや視覚化にも適していることに気付きました。これは、それらのワークロードでGPUが処理する数学的計算やグラフィック計算が、高度なゲームのGPU機能と似ているためです。
ゲーム、AI、HPCアプリケーションのすべてに共通するものは何でしょうか? これらはメモリのパフォーマンスに大きく依存しています。
そのことから、マイクロンはGDDR6X超帯域幅ソリューションの設計、開発、提供が必要であると判断しました。GDDR6X超帯域幅ソリューションは世界最速のディスクリートグラフィックスメモリソリューションであり、最大1TB/秒のシステム帯域幅を実現した初のソリューションです。
GDDR6Xの画期的なパフォーマンス
2006年以降、マイクロンのエンジニアと研究者は、メモリインターフェイスへの多重伝送方式の適用と、システム帯域幅の大幅な拡大を追求してきました。マイクロンは45件を超える特許の取得後、業界で初めて4値パルス振幅変調(PAM4)をメモリに導入し、次世代グラフィックスメモリの新しいベンチマークを確立しました。マイクロンのGDDR6Xメモリは、PAM4を採用した初の量産メモリ入出力アーキテクチャーです。
GDDR6XはPAM4多重伝送技術を用いることで、データ転送速度が大幅に向上し、I/Oデータ転送レートが2ビットから4ビットに倍増しています。これまで、グラフィックスメモリはコンポーネントごとに72GB/秒に制限されていました。GDDR6Xは従来のバイナリ標準を上回り、4値を用いて一度に2ビットのデータをメモリと送受信できます。その結果、マイクロンのGDDR6Xではコンポーネントごとのメモリ帯域幅が84GB/秒に増加し、システム帯域幅が最大1TB/秒になりました。
さらに、GDDR6Xは従来のメモリを凌駕するデータ転送速度を誇っており、大量のデータを必要とするゲームやAIのアプリケーションの要望にも適切に対応できます。GDDR6Xはグラフィックスメモリの新しいベンチマークを確立します。
GDDR6Xによる効率性の向上
マイクロンのGDDR6Xは、最先端のI/O研究を商業化したPAM4を採用している唯一のメモリデバイスであるだけでなく、量産化を実現した唯一のメモリデバイスでもあります。GDDR6Xの基板設計とパッケージングは、マイクロンのグラフィックスメモリの専門家が入念に調整を加えて効率化を実現したものです。そのような基板設計とパッケージングを採用したGDDR6Xは、市場に存在する他の高帯域幅ソリューションよりも顧客が導入しやすく、簡素化されています。GDDR6Xは必要な動作周波数を2倍にすることなく、DDRメモリよりもデータ転送速度が2倍になっており、なめらかなグラフィックエクスペリエンスをユーザーに提供します。GDDR6Xは1ビット伝送あたりの消費電力の削減を実現しており、前世代のメモリよりも低くなっています。そのため、超高速で低消費電力のメモリを必要とするゲームやその他の高帯域幅グラフィックアプリケーションなど、電力負荷の高いワークロードに最適です。また、GDDR6Xは消費電力の拡大縮小機能も備えているため、ユーザーがパフォーマンスを抑えて消費電力を節約できます。
業界とのコラボレーションとイノベーション
GDDR6Xなどのソリューションの実現には、業界との深いコラボレーションが必要です。2020年9月、マイクロンは、超帯域幅ソリューションポートフォリオの1つとして、8GBの密度を備えたGDDR6Xメモリの発売を発表しました。NVIDIAはGeForce™ RTX 3090とGeForce RTX 3080 GPUでこのテクノロジーを採用すると発表しました。搭載されるGDDR6Xは臨場感のある高性能ゲーム用アプリケーションが要求する高速性能をサポートできるようにカスタマイズされています。2021年6月には、NVIDIA GeForce RTX 3070 TiとGeForce RTX 3080 Tiに搭載されました。
GDDR6XはNVIDIAのGeForce RTX GPUとの連携により、フレームレートを低下させることなく、高精細で反応性に優れるエフェクトによってゲーマーを仮想世界に引き込むための画期的な速度を実現しています。
メモリによるAI環境の変革
GDDR6Xは一般にグラフィックスとの連携で使用されてきましたが、グラフィックスカードだけでなく、AIのような高度なメモリを必要とする他のアプリケーションにも広がっています。最近、マイクロンはInnosiliconと連携して、世界初となるシリコン実証済みの商用GDDR6X IPを発売しました。InnosiliconのGDDR6XベースのPHYチップは、AIアプリケーションの要求を満たすため、PAM4伝送を使用して効率性とデータ転送速度を向上させています。AIとのコラボレーションは、GDDR6Xが単なるグラフィックス向けのソリューションではなく、驚くべき有用性を備えていることを裏付け、GDDR6Xの革新的な帯域幅と伝送インターフェイスの用途の可能性を広げるものです。
次世代のグラフィックスアクセラレーションの推進から、画期的なAIソリューションのサポートまで、マイクロンはメモリを通じたまったく新しい方法でテクノロジーの限界を押し広げます。マイクロンは自社のリーダーシップと、規格委員会との連携によってコラボレーションの精神を育み、厳しい要件を抱えるアプリケーションや顧客からのPAM4といった高度技術の採用を拡大しています。帯域幅、電力、設計のしやすさを兼ね備えることで、そのようなアプリケーションや顧客が抱えるエンドシステムの厳しい要件を満たすことができます。
2021 AspenCore World Electronics Achievement Award(WEAA)
エンドユーザーエクスペリエンスの実現においてメモリの重要性が高まっている中、マイクロンはGDDR6X超帯域幅ソリューションが評価され、2021 AspenCore World Electronics Achievement Award(WEAA)を受賞しました。
WEAAでは、世界で極めて革新的な複数の新規エレクトロニクス機器が表彰の対象となります。受賞者は、AspenCoreのグローバルシニア業界アナリストのほか、アジア、ヨーロッパ、米国のオンライン投票者によって選ばれます。
グラフィックスアクセラレーションとメモリパフォーマンスの限界を押し広げているGDDR6Xにより、マイクロンの創造的なアプローチが評価されたことを誇りに思います。このアワードの受賞により、メモリのイノベーションにおける新領域を開拓するリーダーになるというマイクロンの約束を改めて表明します。