「象は忘れない」ということわざがあります。同様に、ブロックチェーンが忘れることもありません。
ブロックチェーンとは、心と非常によく似た構造をした重要で革新的なコンピュータープログラミング言語であり、その中核となるのが記憶です。人の記憶は連想によって結び付いています。たとえば、チキンスープの味で子どもの頃に面倒を見てもらったことを思い出したり、香水の香りで過去の恋愛を思い出したりする人もいるでしょう。それと同様に、ブロックチェーンでは取引の「チェーン」の各「ブロック」が直前のブロックと密接に結び付いています。
そして、ことわざに出てくる象のように、ブロックチェーンの記憶がなくなることはありません。新しいブロックにはその直前のコード行(「ハッシュ値」)が組み込まれるうえ、認証済みのブロックのみが追加されるため、チェーンの改ざんは不可能です。取引の取引は後続のエントリーで行うことができます(例:送金後に返金を受ける)。ただし、取引を行った当人であっても取引の改ざんは不可能です。
ブロックチェーンの取引が増えるほど、メモリの使用量も増加します。暗号通貨のマイニングを行う人を「マイナー」と呼びます。マイニングとは、新しい取引を認証し、その取引に割り当てる一意のハッシュ値を見つけ出し、各エントリーを暗号化・圧縮して、チェーンの安全性と信頼性を確保する作業のことです。台帳を監視する金融機関などの仲介者がいないため、この作業が極めて重要となります。マイナーが作業をこなすには、多くのコンピューターメモリと高速な処理が必要となります。
すべてが記憶される仮想世界において、ブロックチェーンが長く、複雑になる中で、メモリ、ストレージ、処理能力の継続的な進歩なしにブロックチェーンの果てしない可能性を実現していけるでしょうか?
これは重要な問題です。ブロックチェーンの時代は確実に到来しています。近い将来、今は想定されていない取引も含め、私たちのすべてのデジタル取引がブロックチェーン上で行われるようになるかもしれません。開発者はすでにブロックチェーンベースのアプリを開発中です。企業はブロックチェーン技術を使用し始めています。ビットコインなどの暗号通貨を売買する消費者もいるほか、今後すぐに用途が増えていくでしょう。
ブロックチェーンはビジネスや日常生活でコンピューティングデバイスが実行できるほぼすべてのことを確実に変えてしまうでしょう。ただし、ブロックチェーンを支えるインフラを用意する必要があります。特に取引認証に使われるデバイス(「ノード」)には、十分なコンピューターメモリを用意することが重要です。そうすれば、私たち人間が台帳に預けたものを忘れたとしても、ブロックチェーンが覚えているという安心感が得られます。
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ブロックチェーンの仕組み
デジタルデバイスで実行されるタスクは、取引タスクと非取引タスクの2種類に分けられます。メール作成、動画視聴、インターネット閲覧は、ほとんどが非取引タスクであり、商品の売買や契約の締結は行われません。ただし、契約の締結、予約、商品の購入といった取引がオンラインで行われる場面が増えています。
インターネットではすでに、デジタル時代前の「アナログ」時代に人の手で行っていたときよりも、それらの取引を素早く処理できるようになっています。最近まで、私たちが商品を購入するには、店舗に足を運んだり電話をかけたりして、現金、クレジットカード、小切手で支払いを行う必要がありました (小切手を覚えていますか?)。かつて契約に署名するには、紙の契約書が郵便で届くのを待ち、手書きで署名し、郵便で返送する必要がありました。
デジタル取引は遥かに高速で、利便性が高いものの、安全性に欠ける可能性があります。その場合、サイバー犯罪者によってアカウントに侵入されたり、社会保障番号やその他の機密性の高い情報を盗まれたりする可能性があります。さらに、現在の取引には、依然として銀行、クレジットカード会社、弁護士、不動産会社といった取引を処理する第三者が必要です。ブロックチェーンの場合、第三者は不要です。
ブロックチェーンは一種の仮想公開台帳として設計されており、誰もが閲覧することができ、改ざん防止インクで書かれています。各ブロックはファイルで、10分ごとに新しいブロックが作成されます。新しいブロックにはそれ以前のすべての取引が記録されており、新しい順に並べられています。
デジタル用語を使って表現すると、ブロックチェーンは分散型データベースであり、作成、拡張、保存に中央処理装置は使用しません。その代わり、取引の処理と認証に使われるすべてのコンピューター(「ノード」)にコピーが保存されています。取引が追加されると、すべてのコピーが同時に変更されます。
多くの場合、アナログの台帳には記帳ごとに日付や場合によっては時刻も記載されています。それと同様に、チェーン内の各ブロックにはタイムスタンプが付けられているため、追加された日時を誰もが確認できます。さらに、ブロックを圧縮したうえで暗号化した「ハッシュ値」と呼ばれる暗号署名も付けられています。
ユーザーが自身の取引にアクセスするには、秘密コード(「鍵」)が必要になります。これは機密性が極めて高い仕組みです。キーを発行するシステムにもコピーは残りません。ユーザーが鍵を紛失した場合、そのユーザーのエントリーは復号できなくなり、そこに保存・記録した内容にアクセスできなくなります。秘密鍵を紛失したことで数千ドルの暗号通貨が失われました。秘密鍵を見つけ出さない限り、失われた暗号通貨を取り戻す方法は一切ありません。
ブロックチェーンの略歴
ビットコイン(仮想通貨)は最もよく知られたブロックチェーンの用途です。また、ビットコインがブロックチェーン技術の存在意義でもあります。ビットコインは、2008年に、サトシ・ナカモト(正体は現在も不明)という仮名を使った謎の人物(個人か集団かも不明)によって作成された「純粋なピア・ツー・ピア電子マネー」を説明するホワイトペーパーで初めて登場しました。世界初の暗号通貨であるビットコインは、何年もの間、人々の意識に存在しているだけでしたが、後に驚くべき展開を見せます。
2017年、年初に1,000ドルだった取引単位あたりの価値が12月中旬には20,000ドルへと高騰(20倍増)し、大々的に周知・宣伝されたことで、ビットコインの存在が広く知られることになりました。この価値の高騰は、既存の機関投資家だけでなく、新規投資家の間でも「ゴールドラッシュ」を引き起こしました。そして、マイナー(暗号通貨の管理者)たちが複雑な計算に必要なハードウェアを、先を争って購入したため、ハードウェア不足となりました。
その後の価値の急落によってビットコインへの熱狂は落ち着いたものの、デジタル通貨への関心は今後も続くことが予想されます。現在、700以上の「オルトコイン」通貨が市場シェアを争っており、そのような通貨に投資している投資家はビットコイン現象の再現を期待しています。暗号通貨ブームを支える処理能力を実現しているのはメモリです。
暗号通貨マイニング
ほとんどの場合、暗号通貨やその他の形式のブロックチェーンを使用するのに特別な処理や追加のメモリは不要です。多くの人たちが関心を持っているのは、アプリケーションやウェブサイトを用いて行う自分自身の取引だけだからです。
一方で、マイナーの場合はマイニングを行うためにチェーン全体にアクセスする必要があります。この記事の執筆時点で、ビットコインチェーンには53万2,698のブロックが存在し、8分19秒ごとに新しいブロックがチェーンに追加されており、コインあたりの価値は7,500ドルです。
ブロックを追加するには、前もって一意のコード(ハッシュ値)を割り当てる必要があります。適切なハッシュ値を発見する処理は複雑で、コンピューターだけが処理できる数学的アルゴリズムを使用します。マイニングは速度が最も重要です。マイナーは数百の取引を開いて1つのブロックにまとめたうえで、先を争ってパズルを解きます。最初にパズルを解いたマイナーは報酬を得ることができます。この記事の執筆時点では、ブロックあたり12.5ビットコインの「ナゲット」(約9万4,000ドル相当)と、そのブロック内の各取引に適用される手数料が付与されます。
上記の理由から、報酬を獲得するには超高速のコンピューターと大量のメモリが必要です。ブロックを開始するには、まず、ソフトウェアによって8ギガバイトほどのファイルを作成します。ただし、高速に処理するには大量の空きメモリが必要です。そのため、作業に必要な付加の高い処理を実行する際、多くのマイナーはビットコインマイニング専用の処理チップ(特定用途向け集積回路(ASIC))を使用します。そのような非常に特殊なASICは問題解決能力を最大化するために継続的なデータ供給を必要としますが、現在はDDR4 DRAMによってこれを実現しています。ASICの作成と設計には多大なコストがかかりますが、それでも複数の企業がこの作業を行って暗号通貨マイニングマシンを量産し、消費者市場に販売しています。
メモリによる動作
イーサリアム(最も有名なオルトコイン)などの非ビットコイン暗号通貨のマイニングでは、画像処理装置(GPU)と呼ばれるチップを搭載したグラフィックスカード(ビデオカード)を使用することで効果を最大化できます。グラフィックスカードは通常、演算能力を強化してビデオゲームのグラフィック表示を支援する目的で使用されますが、暗号通貨マイニングでも同様に重要な役割を果たしています。
マイニングの実行には、GPUごとに平均7ギガバイトのグラフィックダブルデータレート(GDDR)メモリが必要です。このメモリは特殊なコンピューターメモリであり、従来のものよりも遥かに高速です。多くのマイナーは複数のGPUを同時に使用しています。
現在のグラフィックスカードはマイクロンのGDDR5およびGDDR5xグラフィックスメモリを搭載しています。次世代のカードには、毎秒最大20GBの処理能力を誇るマイクロンの最新のGDDR6テクノロジーが搭載される予定です。GDDR6は、グラフィックス、ネットワーク、自動車用途など、高帯域幅で速度重視の多くのアプリケーションでの使用を意図しています。GDDR6が実現する高速化がマイナーに貢献することは間違いないでしょう。
最新のASICマイニングマシンは、イーサリアムマイニングでもGPUの性能を上回っていると主張しています。一部のアルゴリズムで一般に用いられる手法により、マイニングアルゴリズムが調整されることで、GPUが優位性を取り戻せるかどうかは現時点では分かりません。他にもGPUマイニングにはメリットがあります。すでにゲーム用のグラフィックスカードを所持している場合、ハードウェアへの追加投資不要で強力な暗号通貨マイニングマシンを使用できます。GPUマイナーとASICマイナーのどちらも、動作のために高速で高帯域幅のメモリが必要であるという事実が共通しています。
マイクロンでグラフィック事業開発マネージャーを務めるビル・ランドルフは次のように述べています。「マイクロンは、主にゲームやその他の従来の高性能アプリケーションに向けた、グラフィックスメモリテクノロジーを開発しました。しかし、このメモリは暗号通貨マイニングにも最適です。」
ブロックチェーンへの応用や使用が増加し続けています。
それに伴って、コンピューターメモリとより高速な処理速度を求める声が強まっています。
ビットコインの登場初期から、マイクロンのテクノロジーはブロックチェーン革命と暗号通貨マイニングの最前線に立ってきました。マイクロンのGDDRメモリはすでにビデオゲーマーから支持されており、ブロックチェーン技術を実現できるメモリ帯域幅と速度を備えています。マイクロンのGDDR6やその他のメモリテクノロジーを用いることで、ブロックチェーンによるデジタル取引の記録、管理、保護が確保されるうえ、おそらく最も重要なこととして、記憶が永久に保証されます。
多数の用途
ブロックチェーンの最もよく知られている用途は暗号通貨です。しかし、安全性と速度が高いピア・ツー・ピアメカニズムであるブロックチェーン技術は、送金やさまざまな取引(金融取引など)といった用途での活用で開発者やイノベーターから注目されています。用途の例:
- スマートコントラクト。銀行、譲渡抵当金融会社、保険ブローカーなどの機関が書類を処理し終えるまで長い期間待つ必要がなくなります。ブロックチェーンベースの「スマート」コントラクトにより、当事者間での直接取引(「ピア・ツー・ピア」)が可能になり、「if-then」条項によって自動締結されます。具体的な例:買い手が金額Xを口座Zに入金すると家の権原が買い手に移転します。
- スマートトレード。ブロックチェーンを使用すると、株式市場での取引を非常に高速かつ低コストで行うことができます。透明性に優れる非中央集権型の分散型台帳を使用することで、仲介者、取引の承認、規制が不要になり、さらには処理の遅れを引き起こす煩わしい書類作業もなくなります。
- スマートエネルギー。ブロックチェーンのデジタルテクノロジーと、「スマート」エネルギーグリッド(デジタルメーターを使用してエネルギー使用量を測定し、電力を供給する方法)、さらにはオフグリッドの太陽光・風力発電を組み合わせることで、顧客と企業が「ピア・ツー・ピア」により、電力会社を介さない直接取引で電力の販売や供給を行えるようになります。
- スマートサプライチェーン。センサーを使用し、センサーから得られるデータを活用することで、企業は供給品や製品の場所、目的地、状態をブロックチェーン上で確認できるようになります。
- スマート健康記録。ブロックチェーン台帳で医療記録の保存、保護、管理し、特定の関係者だけがキーにアクセスできるようにします。スマートコントラクトにより、医療施設は、手術の完了や患者の入退院など、特定の条件を満たした時点で保険会社から支払いを回収できるようになります。
- スマートパスポート。開発者コミュニティ「Github」ではすでに、2014年にデジタルパスポートの提供を開始しています。ユーザーは自分自身の写真を撮影し、正当性を検証する暗号化された公開鍵と秘密鍵によって刻印し、パスポートが保管されている台帳にアクセスできるようになります。
- スマートクロスボーダー送金。国際的な送金には時間とコストがかかる可能性があるうえ、多数の銀行やその他の仲介機関が関与することから、ミスが起こる可能性も高くなります。Abra、Align Commerce、Bitsparkなど、高速で低コストならブロックチェーンを用いた送金サービスを提供している企業もすでにあります。ブロックチェーン開発企業「Ripple」は銀行と提携し、即日の国際送金を実現しています。
- スマート家電。「モノのインターネット(IoT)」により、これまでより多くの家電がインターネットに接続されており、遠隔管理が可能になりました。ブロックチェーン技術は、家電の所有者情報を保護し、安全な送信を可能にするだけでなく、「if-then」の仕組みを実行することもできます。たとえば、牛乳が少なくなると自動的に冷蔵庫が牛乳を注文するように設定できます。