Micron Venturesは、マイクロンが苦労して獲得した資金を初期段階のテクノロジースタートアップ企業に投資しています。マイクロンについて、ひとことで問いかけられることがよくあります。「それはなぜですか?」
2年ほど前、Micron Venturesの存在意義に関するブログ記事を書いているとき、私は「重要なポイントとして、大企業が市場の大変革や台頭するトレンドに迅速に対応するのは非常に難しいけれども、Micron Venturesは、中核市場の範囲を超えて機敏にイノベーションを特定し、育成するためのメカニズムを提供します」と、指摘しました。
そのブログ以来、多くのことが変わりました。多くの人が在宅オフィスで仕事をし、生産性を維持しながら家族の世話をしする方法を模索しており、状況によってはパンデミックの真っ只中で世界のサプライチェーンの主要部分をリモートで実行していること人もいます。
パンデミックは極度の大変革をもたらしましたが、私たちはその大変革はいつか収束すると考えています。しかし、ベンチャー投資は、継続的に大変革が行われている分野の一つであり、適切な触媒を使用して大変革が発生する可能性がある場所を予測しています。
これから、スタートアップ企業の世界で、最も関心が寄せられているテクノロジートレンドと、2022年以降に世界とマイクロンに影響を与えるテクノロジーについての私たちの視点を共有したいと思います。「パート1」のこのブログでは、私の視点を紹介していますが、パート2ではアンディ・バーンズの展望を紹介します。
茶葉を読むことから得たG・ラダクリシュナの見解
大規模な変革を経験している分野や業界はかなりありますが、私は、近い将来に顕著な変化が見られると予想される2つの分野に注目しています。1つ目は、医療・ライフサイエンスにおけるテクノロジーの急速な普及です。2つ目は、「ソフトウェア対応ハードウェア」の継続的な革新です。モノのインターネットのことを言っているのではありません。これから、それぞれについての私の考えをご紹介します。
医療とライフサイエンスのテクノロジーの交差点
従来から医療とライフサイエンスの分野で、病気や病状の研究、診断、治療の方法にギャップがあるいことはわかっていましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、創薬から患者の治療やケアに至るまで、これらのシステムに大きな亀裂があることが露呈しました。しかし、テクノロジーがこれらのギャップの一部を埋めるのに役立つことも示されました。
パンデミックの間、慢性疾患を持つ多くの患者は、感染を恐れて医師との治療を続けることができませんでした。遠隔医療は、専門的かつ公平なケアに重点を置きながら、この課題にも立ち向かいました。MavenやTiaの例を考えてみてください。
医療分野でも、独自の方法で、人工知能(AI)と機械学習(ML)が急速に採用されています。具体的には、次の分野です。
- 放射線学(ディープAI)、病理学(PathAIとPaige)、消化器学(Micron Venturesのポートフォリオに含まれるインタラクティブスコープ)、超音波(バタフライネットワーク、 Exo、DiAイメージングアナリティクス)などの分野の画像。
- テキストや電子カルテ(EMR)などの非構造化データ。これにより推論などのパーソナライズされた診断が提供されます。
- Suki (医療版のSiriのようなもの)やCorti (患者を診察する自動Q&A機能を備えたもの)などの音声・自然言語処理(NLP)テクノロジー
- Atomwiseやinsitroなどの企業による創薬
もう1つのイノベーション分野は、デジタル治療法です。これは、従来の生物学的製剤や医薬品と同様に、ソフトウェアやその他のデジタルテクノロジーを駆使して深刻な病気を治療する新しい治療法です。様々な企業が、オピオイドの使用(Pear Therapeutics)、片頭痛(Theranica)、子供の注意欠陥多動性障害(ADHD)(Akili Interactive)などの分野をターゲットにしています。
これらのイノベーションの共通点の1つは、健康上の有意義な成果を生み出すために大量のデータを使用することです。データへの依存では、マイクロンは、それを支援する上で非常に有意なポジションにあります。つまり、「データのあるところにマイクロンあり」です!
{ut}ソフトウェア対応ハードウェアのパワー
今日、そして将来(たとえば「メタバース」)に見られるソフトウェアとサービスの進歩は、ハードウェアがイノベーションのペースに対応して、それに追いついていなければ実現できないはずです。
私はCPUに関するムーアの法則の終わりを嘆くつもりはありません。こうしたニーズがCPUを超えたハードウェアイノベーションの新たな波を引き起こすことに大きな期待を寄せています。このような動向は、SambaNova、 Mythic (どちらもMicron Venturesのポートフォリオ企業)など、AIアクセラレーションに重点を置いた新しいタイプのシリコンやシステムですでに発生しています。量子コンピューティングは昨年、急激なピッチで発展を遂げました。一部の企業は、特別目的買収会社(SPAC IPO)を通じた新規株式公開による資金調達を試みました。たとえば、RigettiやIonQ などです。プラットフォームの劇的な変革は、イノベーションのペースを加速するのに役立っています。
しかし、ハードウェアのイノベーションはエンドユーザーやアプリケーション開発者にとって何を意味するのでしょうか。多くの人にとっては、使用しているハードウェアプラットフォームのコンポーネントを、使用した経験だけに基づいて判断するのは難しいのではないでしょうか。一般的に、5年前のシステムと新しいシステムの違いを、ブラインドテストで識別するのは困難でしょう。「イノベーションのためにハードウェア イノベーションを起こすことは無意味である」という説明は、非常に示唆に富んでいます。私たちは、イノベーションによる目に見える成果を目にする(経験する)必要があります。
これこそが、ソフトウェアが果たすべき重要な役割であると私は確信します。IBMは優れたPCを構築しましたが、当時小さなスタートアップ企業だったMicrosoftのオペレーティングシステムが、最終的にPCをWindowsの代名詞にしたのです。NVIDIAは、ソフトウェアとエコシステム開発の重要な役割も認識しているハードウェアリーダーの例です。同社は2006年にCUDAと呼ばれるソフトウェアを発表しました。現在、NVIDIAでは200万人以上の開発者がこのソフトウェアを使用し、GPUのポートフォリオに最適化された新しいユースケースを推進するエコシステムを築いています。
ソフトウェアとは、基盤となるハードウェアの機能を理解してロックを解除する翻訳レイヤーであり、いわゆるソフトウェア対応ハードウェアを使いやすくします。
私は、ソフトウェアを有効化する分野が2つあると考えています。具体的には次の分野です。
- データセンターのユースケース。具体的には、WekaIO (AIとMLのデータプラットフォームを構築するソフトウェアファイルシステム)やPaperspace (開発者がソフトウェアで利用できる複雑なインフラストラクチャーをまとめたML Ops)などで、どちらもMicron Venturesのポートフォリオ企業です。
- アプリケーションドメイン。具体的には、Oculii (Ambarella が買収したソフトウェア定義レーダー)、Scopio Labs (計算イメージングを活用して顕微鏡の世界を変えている)などです。
マイクロンは、このインフラストラクチャーの変革において大きな役割を果たすことになります。そして、マイクロンをリーダーとして位置づけるために、ソフトウェア エコシステムと提携しそれを実現する準備ができています。Micron Venturesはこの取り組みの中心的な役割を果たします。
このブログを書くにあたり最も苦労したのはいくつかの分野を選ぶことでした。結局のところ、今日の市場ではあらゆるセクターで垂直方向にイノベーションが起こっています。Venturesチームはマイクロンでは小さなチームですが、マイクロンの規模は大きいため、あらゆる形態または方法で世界中のテクノロジーイノベーションと連携しています。そのため、私たちにはあらゆる魅力的なスタートアップ企業と相乗効果についてディスカッションする強力な基盤があるのです。
したがって、革新的なスタートアップ企業の動向を「常に注視する」必要があります。Micron Venturesがディスカッションする相手先企業をご存知の場合、またはそのような企業を認識したら、ぜひ私たちに教えてください。連絡をお待ちしています。
それまでの間、このブログのパート2をご覧ください。ここでは、Micron Venturesが模索している他の主要なテクノロジートレンドと機会についてアンディ・バーンズが自身の見解を共有します。