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マイクロンとWestern Digital:全米半導体技術センターの未来

スコット・デボア | 2022年8月

私たちは日々の生活で何千もの半導体に触れています。この小さなテクノロジーは、私たちの生活に欠かせないものです。心臓ペースメーカーや携帯電話からGPSシステムや自動車の安全機能まで、極小でありながら非常に強力なマイクロエレクトロニクスが命を救い、家庭に電力を供給し、データを保存し、国を守っています。2021年11月、米国議会は全米半導体技術センター(NSTC)の創設を求める国防権限法(NDAA)を可決しました。NSTCに資金を提供するCHIPS法案を可決することによって、半導体の国内供給を確保するための多大な投資を行った米国議会にマイクロンは賛辞を送ります。幅広い支援と財源が整った今こそ、NSTCの創設と運営を前に進める時です。

NSTCは、先端半導体テクノロジーの実現に焦点を合わせた官民コンソーシアムになります。米国のテクノロジーイノベーションとリーダーシップを長期的に推進する上で極めて重要な役割を果たすのがNSTCです。また、米国がテクノロジーと半導体に関する世界的なリーダーシップを磨き高められるよう支援します。NSTCの柱としてMemory Coalition of Excellence(卓越したメモリ協力体制。MCOE)を設けることは、基盤となるメモリテクノロジーにとって極めて重要であり、米国の経済競争力と国家安全保障をさらに強化します。MCOEは、産業界のリーダー、大学、米国立ラボを結集し、米国がテクノロジーと半導体に関する世界的なリーダーシップを磨き高められるよう、さらなる支援を行います。マイクロンとWestern Digitalは、「Memory Coalition of Excellence: Recommendations for the National Semiconductor Technology Center(卓越したメモリ協力体制:全米半導体技術センターの推奨事項)」と題する提案において、卓越したメモリ協力体制の推奨事項とNSTCの重要性についてまとめています。以下はそのレポートからの主な抜粋です。

米国内の半導体製造とメモリの役割

過去20年間、産業界ではデータが爆発的に増加しました。世界の半導体業界の売上にメモリとストレージが占める割合は2000年の10%から、今日では約30%を占めるまでに成長しています。メモリは電子システムの至る所に存在していることから、メモリセルは半導体の製造における全デバイス数の約85%を占めます。メモリは至る所に存在するだけでなく、半導体製造の最先端にあり、物理法則を新しい視点から見つめ直す先進テクノロジーによる生産が求められます。新しいメモリとストレージのアーキテクチャーに向けた今後の挑戦では、こうした電子システムやコンピューティングシステムの内部やシステム同士でデータを移動・保存する方法について再考し、再発明しなければなりません。CHIPS法案の可決とそれに続くNSTCへの資金提供は、私たちにとって半導体業界のリーダーシップを取り戻す歴史的な好機となります。MCOEの創設は、米国内におけるメモリテクノロジーの持続的なイノベーション支援を強化し、世界をリードする持続的なテクノロジーの進歩を支え、最終的には、米国の経済・国家安全保障を持続させます。

推奨事項 Memory Coalition of Excellence(卓越したメモリ協力体制)

NSTCは、次世代半導体テクノロジーの未来を見据えた長期(5年超)ビジョンとロードマップを策定し、明確に示すべきです。私たちがMCOEに推奨するのは、半導体業界における現在の課題を克服してNSTCの目標全体を支えるために、明確に定義した目標を掲げ、産学官を横断して重点的に取り組むことです。MCOEに求められるのは、テクノロジーにおける米国のリーダーシップに欠かせないロジック、パッケージング、相互接続のテクノロジーに関して、想定される他のCOE(センターオブエクセレンス)とシームレスに連携することです。

次世代ソリューションの実現に向けたMCOEの主な活動には、以下のようなものがあります。

  • 材料、プロセス/計測テクノロジー、新しい分析手法の研究開発
  • モデリング方法とツール
  • 次世代3Dメモリテクノロジーの開発
  • 新しいメモリ設計コンセプトに対応
  • 近接メモリやメモリ内コンピューティングのプロトタイピング
  • ウエハーレベルやチップレベルでの異種統合
  • 最先端パッケージング

データ密度、帯域幅能力、電力管理における継続的な改善は、メモリとストレージ業界の新たな優先事項です。MCOEの創設は、AI、5G、データセンターの基盤となる機能を提供することによって、医療、自動車、通信、防衛など複数の業界を横断するイノベーションに拍車をかけるでしょう。

世界は私たちが追いつくのを待ってはくれません。米国がテクノロジーリーダーであり続け、国際競争力を維持していくために産業界に必要なのは、NSTCとMemory Coalition of Excellenc(卓越したメモリ協力体制)が可能にする基礎研究、製造テクノロジー、インフラ、エコシステムへの持続的な投資です。

詳細はこちらから。

テクノロジー・製品担当エグゼクティブバイスプレジデント

Scott DeBoer

スコット・デボアは、マイクロンのテクノロジーおよび製品部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めています。デボアは、シリコン設計からイノベーティブで高価値なシステムソリューションにいたるまで、マイクロンのグローバルなテクノロジー開発とエンジニアリングの取り組みを先導しています。

マイクロンのテクノロジー・製品部門では、メモリソリューションの提供を通じて、現在のメモリテクノロジーの規模の拡大、新しいメモリテクノロジーの実現、マイクロンがターゲットとする市場全体でのメモリソリューションへの統合を中心として業務を進めています。同部門は、シリコンテクノロジー開発、製品エンジニアリング、メモリ設計、システムエンジニアリングから、SSDエンジニアリング、ファームウェア、IP、ASIC開発まで、マイクロンのエンジニアリングチームのイノベーティブな能力のすべてを網羅しています。彼が今の職に就任したのは2019年のことでした。

デボアは1995年、プロセステクノロジーエンジニアとしてマイクロンに入社し、技術関連およびマネジメント関連のさまざまな役職を経て、2007年にプロセス研究開発担当バイスプレジデント、2015年に研究開発担当バイスプレジデント、2017年にテクノロジー開発担当エグゼクティブバイスプレジデント、2019年にテクノロジー・製品担当エグゼクティブバイスプレジデントに任命されました。

デボアは120件を超える米国特許を取得しており、技術関連の出版物を数十冊執筆しています。さらに、現在では、JUMP/nCORE Research Initiativeの運営審議会のほか、Hastings College、SRC、Micron Semiconductor Italia S.r.l.、Idaho Business for Educationの理事を務めています。

デボアは、ネブラスカ州ヘイスティングスのヘイスティングス大学で学士号を取得しました。また、アイオワ州立大学で物理学の修士号と電気工学の博士号を取得しました。