マイクロンが発表した2021年サステナビリティレポートでは、「Fast Forward(早送り)」というマイクロン史上最も意欲的な環境目標を掲げました。同レポートのリリース後、マイクロンベンチャーズが浄水技術のスタートアップ企業「Aqua Membranes」への投資を発表しましたが、これは偶然ではありません。投資とサステナビリティレポートは連携して行われたものです。この連携は、テクノロジーの活用方法を変革してすべての人々の生活を豊かにすることを目的としています。
革新的な半導体製品の製造には膨大な量の水が必要です。詳細はレポートに記載されていますが、マイクロンは再利用・リサイクル・復元プロジェクトにより、2030年までに75%の水保全を達成することを目指しています。これはマイクロンの価値観に沿っており、人とマイクロンが事業を行っている地域への貢献を目的とした取り組みです。
マイクロンでベンチャーキャピタル担当ディレクターを務めるアンドリュー・バーンズの言葉を借りれば、この目標を達成するための手段としてマイクロンベンチャーズがAqua Membranesの浄水技術への投資を行ったことはこの上ない選択でした。
バーンズは次のように述べています。「半導体材料とプロセスの新しいイノベーションに関心がある者として、今回の投資は一生に一度の機会といえるものでした。現実世界の深刻な環境問題を解決するため、浄水技術のスタートアップ企業に投資しませんか? ぜひ参加したいです!マイクロンは単なる金銭的利益にとどまらない成果が期待できる投資先を探しています。理想としては、マイクロンだけでなく、半導体業界全体で困難な環境問題への取り組みに変化をもたらしたいと考えています。」
Aqua Membranesの浄水技術
逆浸透は新しい技術ではありません。逆浸透とは、半透膜で水をろ過し、水からイオン、不要な分子、大きめの粒子を分離するプロセスです。これは、海水の淡水化、飲料用の超純水製造、半導体製造など産業廃水のろ過に40年以上前から広く利用されています。
しかし、逆浸透テクノロジーは大量のエネルギーと空間を必要とします。エネルギーと空間はどちらも半導体ファブで貴重なリソースです。そのため、逆浸透テクノロジーはほぼ停滞状態に陥っていました。Aqua Membranesは2011年に米国で創立されたスタートアップ企業です。同社は逆浸透ろ過を効率化し、マイクロンによる水再利用の目標達成に役立つ有望なテクノロジーを開発しました。
Aqua Membranesのテクノロジーの仕組みをご紹介します。Aqua Membranesの作成する3Dプリントスペーサーを逆浸透システム内に設置します。この3Dプリントスペーサーを用いることで「膜要素を通過する流れのパターンと乱れを最適化できます。その最適化により、エネルギー消費を抑制し、システムの設置面積を減らし、浄水能力が向上するほか、要素の寿命延長につながります。」 (詳しい説明についてはウェブサイトをご確認ください) このスペーサーによって水ろ過膜の効率化が実現します。
ファブの既存インフラを、交換ではなく改修することで結果を改善できるテクノロジーに投資するのは、双方にとって利益になることだと、マイクロンのサステナビリティ担当ディレクター、マーシャル・チェースは言います。
マーシャルは次のように述べています。「Aqua Membranesの逆浸透イノベーションは、水資源の再利用率を高めつつ、マイクロンのファブですでに稼働している機器に追加して改善を実現できます。そのため、コスト効率に優れた見事な方法だと言えます。まさに、イノベーションの力による問題解決です。」
ボイシサイトで行うパイロットプログラムとは
マイクロンは今後、ボイシサイトでAqua Membranesのテクノロジーを利用するパイロットプログラムを開始する予定です。これが成功を収めれば、プログラムが世界各地のファブに拡大される可能性があります。パイロットプログラムの計画は進行中で、マイクロンの投資はプロジェクトに向けたAqua Membranesの成長に貢献するでしょう。
マイクロンは現在、自社のサステナビリティレポートに記載した水資源の再利用やその他環境関連のベンチマークの目標達成に向け精力的に取り組んでいます。今回の投資により、マイクロンは水再利用のパイロットプログラムを予定より早く立ち上げることができるとバーンズは話しています。
そして、次のように述べています。「Aqua Membranesのテクノロジーをマイクロンのファブで活用できるように調整し、実証し、拡大することが重要です。そのうえで、Aqua Membranesのテクノロジーがマイクロンの要件を満たすのをただ待たないようにすることが重要です。」