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LPCAMM2:次世代ノートパソコンに妥協はありません

ジェイク・ワットコット | 2024年1月

ノートパソコンへの置き換えが進んでいます。全世界における今年の総販売台数は1億7100万台に達する見込みですが、デスクトップの販売台数は7900万台に縮小すると予想されています。ノートパソコンのパフォーマンス、持ち運びやすさ、ディスプレイ品質が向上するにつれ、より多くの人が最適なコンピューターとしてノートパソコンに信頼を寄せています。しかし、この信頼には期待が伴います。

完璧なノートパソコンの追求

ノートパソコンは、パフォーマンスを犠牲にして持ち運びやすさを実現するように設計されたローエンドからミッドレンジのパフォーマンスシステムや、インターネットのブラウジングにとどまらず、多くの作業に使用されるデスクトップの代替品へと進化しました。コンテンツ制作や、人工知能(AI)のノートパソコンへの組み込みといった新しいトレンドにより、メモリ帯域幅の増加が引き続き求められています。また、ユーザーは持ち運びやすさや洗練された薄型のフォームファクタと引き換えにパフォーマンスを妥協したくないと考えています。パフォーマンスは必須の要素なのです。

当然ながら、バッテリー駆動時間も非常に重要です。「場所に縛られない働き方」、「場所に縛られない教育」、「場所に縛られない遊び」というトレンドにより、バッテリー駆動時間は重要な要件となっています。ワークロードが進化を続けているため、バッテリー駆動時間を延ばすために最適化する際には、実際のユースケースをノートパソコンに組み込む必要があります。

さらに、「場所に縛られない働き方/教育/遊び」というトレンドでは、薄型で軽量のシステムも求められます(もちろん、バッテリー駆動時間やパフォーマンスを犠牲にしてはなりません)。こうした要件によって、ノートパソコン内のすべてのコンポーネントでは、パフォーマンスを低下させることなく、スペースを節約したり、消費電力を削減したりする新しい方法を見つけることを余儀なくされています。

これらすべての要件に加えて、システムをアップグレードできるかどうかは、長きにわたりパソコン業界での重要な柱となっています。この分野ではイノベーションが歓迎されますが、アップグレード性を犠牲にしたイノベーションは、市場での幅広い採用を制限します。サステナビリティへの懸念が高まる今日、このアップグレード機能はこれまで以上に重要になっています。たとえば、はんだ付けされたメモリを搭載することで薄型化を実現したノートパソコンは高い評価を得ましたが、メモリのアップグレードが不可能だと知ったユーザーは驚き、失望しました。

次世代のノートパソコンに最適なメモリ

現在のワークロードに対して優れた性能を発揮し、未来のAI搭載パソコンの要求に対応できる次世代のノートパソコンには、消費電力が低く、小型でアップグレード可能なメモリソリューションが必要です。これによって、パフォーマンスや薄型/軽量のフォームファクタが影響を受けることがあってはなりません。

このソリューションとなるのが、マイクロンの新しいメモリタイプであるLPCAMM2に搭載した低消費電力型のDDR(LPDDR)です。LPCAMM2は、最新のLPDDR5Xモバイルメモリをまったく新しいモジュールフォームファクタで使用することで、パフォーマンス、修理性、アップグレード性を向上させつつ、消費電力とスペースを削減します。

電力消費量の直接比較では、LPDDRはすべてのテストケースで標準のDDRよりも優れていました。LPDDRは、消費電力を削減するように特別に設計されています。その対象はアイドルモードだけではありません。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末には、すぐに利用でき、最大限のパフォーマンスを発揮し、電力をほとんど消費せずにスリープ状態に戻ることが期待されています。そしてもちろん、バッテリーが一日中持続することも求められています。これまでノートパソコンでは、低消費電力機能が不十分なDDRメモリがネックとなっていました。しかし、ノートパソコンが私たちの生活に深く浸透するにつれて、私たちはノートパソコンがスマートフォンやタブレットのように動作することを期待するようになりました。メモリサブシステムでこれを実現する唯一の方法は、LPDDRモバイルメモリを使用することです。

言うまでもなく、ノートパソコンの設計者がLPDDRを選択するやいなや、LPDDRのマイナス面がすぐに浮上します。それは、LPDDRメモリはモジュール式ではないため、マザーボードに直接はんだ付けする必要があるという点です。これは、設計、認定、製造、そしてエンドユーザーエクスペリエンス全体で問題を引き起こします。非モジュール式メモリソリューションを選択すると、製造プロセス中の何らかの不良の責任がシステムビルダーにのしかかります。マザーボード全体やその他の部品表(BOM)コンポーネントに影響が及ぶ可能性があり、再加工のコストや経費が増加するのです。さらに、メモリをはんだ付けするには、メモリ以外のBOMすべてがマザーボードに統合されている必要があるため、メモリ以外のBOMのコストとマザーボードの設計コストが増加します。最後に、メモリがはんだ付けされていると、ユーザーは、ノートパソコンの予想耐用年数に合わせてメモリ密度を選択しなければならなくなります。現在のニーズに合わせて購入し、後でアップグレードすることはできません。

そこで、LPDDR5Xコンポーネントのメリットを活用する方法としてLPCAMM2が登場しました。モジュール式フォームファクタとなったLPCAMM2では、製造プロセス中の補修やユーザーによるアップグレードが可能となりました。LPCAMM2によって、業界は初めてLPDDRベースのモジュール式メモリソリューションを利用できるようになったのです。LPCAMM2は、プラットフォーム設計者とエンドユーザーに大きな変革をもたらすでしょう。

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LPDDR5Xを搭載したマイクロンのLPCAMM2


省電力性に加えて、LPDDRではDRAMコンポーネントを1つのパッケージ内に最大16個まで積層できます。一方、DDR5では、ワイヤーボンディングによる積層で1パッケージ当たりダイ2個、シリコン貫通電極(TSV)積層技術で1パッケージ当たりダイ4個が最大です。どちらも高額な積層技術とプロセスを必要とします(TSVの場合、パフォーマンスに影響を与えるレイテンシーペナルティが追加されます)。最新のノートパソコンに採用されているメモリアーキテクチャーでは、128ビットのメモリバスに最大32個のダイを取り付けられますが、LPDDRを使用すれば現在で4個、将来的には2個に減らすことができます。

LPCAMM2はこの能力を活用し、LPDDRスタックを使用して128ビットメモリバス全体を4個のメモリ配置で満たし、最終的な密度を決定します。これにより、ノートパソコンの設計者は、4チップ、8チップ、16チップのスモールアウトライン(SO)DIMM(ノートパソコン用メモリの現在の業界標準)を搭載するために設計する必要がなくなります。LPCAMM2は、すべての密度でまったく同じフォームファクタと同じ数のメモリ配置を維持します。その結果、LPCAMM2では、デュアルスタックのSODIMMと比較してノートパソコン内のスペースが最大64%小さくなるため1(マザーボード+ソケット+メモリ)、薄型で軽量なノートパソコン設計が可能となり、より大きなバッテリー用のスペースを確保できます。

低消費電力、モジュール方式、スペース削減というすべてのメリットを考えると、パフォーマンスに影響が出るとお考えではないでしょうか。しかし、そのようなことはありません。LPDDRは、現在すでに標準的なDDR5よりも高速であり(5600MT/秒に対して6400MT/秒)、このトレンドはこの2つのメモリテクノロジーのライフサイクルを通じて続くと予想されます。DDR5の最高速度8800MT/秒に対し、LPDDR5Xは9600MT/秒に達するでしょう。高速であるというLPDDR5Xのメリットに、消費電力の最大61%削減2や64%の小型化といったその他の要素を加えると、ノートパソコンの将来のメモリソリューションとして、LPCAMM2の総所有コスト(TCO)は非常に魅力的なものになります。

TCOの計算

LPCAMM2が本当にすべてを備えたメモリソリューションであるなら、手頃な価格で利用できることはどのように保証されるのでしょうか。それは、パフォーマンス、消費電力、および全体的なTCOという同じ指標に基づきます。プラットフォーム設計者は、高性能で消費電力が最適化されたメモリソリューションとしてのLPCAMM2を選択するか、SODIMMフォームファクタを同じ速度に拡張するかという決断を迫られています。DDR5を5600MT/秒を超える速度に拡張するには、SODIMMにメモリ以外のBOMコンポーネントをさらに追加する必要があるため、コストが増加します。一方、LPCAMM2は新しいタイプのソケットを必要とする新しいフォームファクタであるため、こちらもコストが増加します。

ただし、LPCAMM2には独自の利点があります。両方のメモリチャネル(合計128ビット)を満たすように設計された単一のメモリモジュールであるということです。これに比べ、SODIMMは64ビットメモリソリューションのままであるため、2番目のメモリチャネルに装着するためには、最初のメモリチャネルに装着するために購入したものをすべて再度購入する必要があります。これは、SODIMMにメモリ以外のBOMを追加することになるため、悪化を招くだけです。LPCAMM2は、より高額なソケットを使用しますが、購入が必要となるメモリ以外のBOMは1セットのみであるため、コスト削減につながります。また、最大9600MT/秒を実現するためにメモリ以外のBOMが追加で必要になることもありません。さらに、LPCAMM2では、はんだ付けされたLPDDR5Xコンポーネントを使用しているプラットフォームに対し、モジュール方式/修理性といったオプションが加わるため、システムビルダーの製造時のコストが削減されます。

結論

私たちの業界で、これほど多くの設計とロジスティクスの問題を解決し、将来のAI搭載パソコンのエクスペリエンスを向上させるような優れたユーザーエクスペリエンスを提供する製品が登場することはめったにありません。

マイクロンは現在、パフォーマンスを最大限に高め、消費電力を最小限に抑え、最適な省スペース化を実現し、修理性とモジュール方式を提供するこの革新的なソリューションの発売に向けて、プラットフォーム設計者やパートナーと連携しています。一言で言うなら、LPCAMM2は、次世代の薄型軽量ノートパソコンに比類のないユーザーエクスペリエンスを提供する完璧なメモリソリューションです。

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デュアルスタックのSODIMMモジュールと比較して、最大64%小型化。


SODIMMメモリと比較して、同一速度のDDR5メモリにおける64ビットバスあたりの消費電力を最大61%削減。

Director, Market Development

Jake Whatcott

Jake Whatcott is director of Micron’s Client Graphics segment where he manages the business development and marketing for Micron’s Client Graphics product portfolio. Previously, Jake was a senior product line manager for Crucial DRAM modules