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次世代グラフィックスメモリ、いよいよ登場 GDDR7​

トッド・ビュルクル | 2024年6月

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ゲーマーに対して、より低いフレームレートでゲームをプレイしたり、遅延に耐えてもらうよう求めることを想像してみてください。データサイエンティストに対して、計算結果が出るまでさらに数時間待つように伝えたり、最先端のAIツールを利用するコンテンツクリエーターに対して、生成時間がさらに遅くなるのを想定するよう提案することを考えてみてください。速度と効率性に左右されるデジタル関連のタスクに取り組む人にとって、今より待ち時間が長くなったり、プログラムの読み込みが頻繁に中断したりすることを想定するのは明らかに望ましくありません。

変化の激しい現代において、グラフィックスメモリの性能も、ゲームやビジュアライゼーション、生成AI、そして高性能コンピューティング(HPC)など、ますます高度化するアプリケーションの要求に応えていく必要があります。

GDDR6(グラフィックダブルデータレート6)メモリは、最大20Gb/秒の高速性能を実現したことで、数世代にわたって高性能なニーズに応え続けてきました。しかし、アプリケーションに対するニーズはますます高まり続け、もはや20Gb/秒では十分ではなくなったのです。

そして、GDDR6のクロック速度はすでに可能な限り高速化しており、100ピコ秒(人間の瞬きよりも100万倍速い)に向かい、GDDR6を改善し続けることは技術的にも経済的にも見合うものではありませんでした。ゲーマーであるユーザー層に対し、すべてのフレームがなめらかに描写され、細部が生き生きとしているような没入感のある鮮明なゲーミングエクスペリエンスを提供することが、今まではできませんでした。ユーザーエクスペリエンスを飛躍的に高めるためには、グラフィックスメモリのブレイクスルーが必要だったのです。次世代グラフィックスメモリの登場:GDDR7​

GDDR7の登場で、コンテンツ制作が高解像度映像、最新の生成AI、高度な3Dモデルにも、スムーズかつ中断なく対応できるようになりました。まさに、グラフィックスメモリの革命です。ゲーマーは大迫力の視覚体験や完璧なゲームプレイを体験することができます。また、データサイエンティストをはじめとする技術専門家は、複雑なデータ処理においても迅速な応答時間を確保できるため、インサイトの発見や意思決定を迅速に行うことが可能です。

GDDR7パフォーマンスのブレイクスルーを実現 

マイクロンの業界最先端1β(1ベータ)ノードを基にしたGDDR7は、グラフィックやゲーミングのユーザーエクスペリエンスを向上する次世代のGDDRです。初期段階のメモリパフォーマンスでも32Gb/秒のデータ転送速度と最大1.5TB/秒のシステム帯域幅(GDDR6より60%向上)を実現するGDDR7が登場したことで、ストレスとなるボトルネックが解消。科学研究のためのHPCのシミュレーションからバーチャルリアリティるまで、幅広い用途で一層複雑化する問題克服に向けた基盤と汎用性がもたらされます。この素晴らしいパフォーマンスは電力効率の著しい改善によるもので、システムの確かな速度を維持しながら冷却状態を保ちます。

クロック速度はすでに限界に達しているのではないかと考えるかもしれません。グラフィックスメモリ向けにこれ以上クロック速度を上げられないとしたら、GDDR7が卓越したパフォーマンスを実現するためのブレイクスルーはどのようなものでしょうか? GDDR7を支える革新的なテクノロジーのおかげで、より高いフレームレート、処理時間の短縮、スループットの増加が実現しました。そのテクノロジーとは、多値信号です。

GDDR6XにPAM4(4つの信号を使用したパルス振幅変調)を導入したマイクロンの先駆的な取り組みによりすでに基盤が築かれていたことで、DRAM業界は多値信号の技術を引き続き探究し、次世代のGDDRをさらに拡大することができました GDDR7は、PAM3信号(3つの信号を使用)を採用した初めてのDRAMデバイスです。この信号技術により、データ転送率の高速化と、メモリ帯域幅と全体的なシステム性能の改善が実現します。

GDDR7にPAM3を採用して周期ごとに追加データを転送することで、業界はクロック速度の限界に対処しました。GDDR6の非ゼロ復帰(NRZ)技術と比較して、PAM3は3つの異なる電圧レベル(-1、0、1)を用いて、信号周期当たりの情報をより多く(1.5倍以上)エンコードします。

PAM3は、周期当たりの転送ビットがGDDR6XのPAM4よりも少ないにも関わらず、50%高い電圧マージンを実現し、エンコーダの複雑性はより低くなっています。これらの効果により、メモリバスはより高い周波数が必要なくなり、そして信号の損失が軽減されます。その結果、パフォーマンスが大幅に飛躍し、将来的にGDDRのさらなる拡大を可能にする強力なテクノロジーが生まれました。

GDDR7アプリケーションをより幅広い範囲で可能に 

ゲーミングのグラフィックがさらに本物に近づき、生成AIがエッジデバイスにより多くのワークロードを移行するにつれて、専用デバイス向けの高性能メモリのニーズは一層高まることになります。GDDR7の登場により、信頼性、可用性、保守性(RAS)の機能が向上し、デバイスの信頼性やデータの整合性が強化。そのメリットはゲーミングにとどまらず、HPCやエッジAI推論など幅広い用途に広がりました。

 

ゲーム

PC、ノートパソコン、コンソール

GDDR7は、レイトレーシングやラスタライゼーションのワークロードにおいて、フレームレート(FPS)を30%以上向上させると予想されています。1- 

ゲーミングコントローラの黒や紫のアイコン

生成AI

AI推論、機械学習、大規模言語モデル(LLM)

GDDR7の登場により、1.5TB/秒という高いシステム帯域幅が実現し、生成AIによるテキストから画像への生成応答時間が最大20%短縮されると期待されています[2]。

黒と紫の線と点のアイコン

HPC

3Dモデリング、HPCシミュレーション、CADデザイン、アニメーション、金融モデリング


超高速のデータ率と高いシステム帯域幅を要する複雑なワークロードに取り組むコンテンツクリエーター向けに、生産時間の短縮とシームレスなマルチタスキングを実現

グラフやチャートの黒と紫のアイコン

 

GDDR7の次は何が登場するでしょうか?

第一世代のGDDR7は、容量16Gb、データ転送速度は最大32Gb/秒を誇ります。しかし、マイクロンはこれにとどまらず、さらなる大容量、高性能、そして電力効率の向上を目指したGDDR7デバイスの全ラインアップを現在開発中です。

図1. PAM3のマルチレベル信号技術の実証

PAM3のマルチレベル信号技術の実証

さらに、マイクロンは業界初となる40Gb/秒 PAM3のデータアイの特性評価に成功しました。DRAM上にマルチレベル信号を実装し、40 Gb/秒のデータアイを実証できたことは、GDDR7にPAM3信号を採用した判断が正しかったことを示しています。これにより、業界全体がグラフィックス性能のさらなる高速化に向けて、着実に進化の道を歩み始めています。マイクロンは今後も、最高負荷レベルのワークロードに対しても、グラフィックスメモリの進化をけん引し続けます。

マイクロンのGDDR7に関するページで、高性能メモリの詳細をご覧ください。GDDR7の仕様と性能については、製品概要をご確認ください。

 

1. GDDR6とGDDR6Xトレンドを比較した、1080p、1440p、4Kの解像度。
2. GDDR6(20Gb/秒)の測定データを基に算出した、GDDR7(32Gb/秒)の推論処理に関する性能予測

製品管理担当シニアマネージャー

Todd Buerkle

トッド・バークルは、マイクロンのグラフィック製品ラインのシニアプロダクトマネージャーとして、コンピューター処理とネットワーキング事業ユニットで製品要件とロードマップを管理しています。以前はDRAM製品エンジニアとして、DDR3、DDR5、GDDR5に従事していました。