住居、ビル、工場、企業、インフラなど、身の回りの環境を視覚的に感知することへの貪欲なまでの需要のおかげで、ビデオ監視市場が世界的に急成長しています。しかし、実際に導入されるシステムの数とその場所は、ビデオカメラの供給サイドの経済的な事情と、カメラの導入、管理、監視に必要なインフラの複雑性によって、より大きく制限されます。
ビデオ監視業界が急成長する最後の一押しとなった要因は、イメージセンサーの大幅な改良とデジタル化、そしてインターネットプロトコル(IP)ネットワークの広範な普及でした。ビデオ監視業界を再び変貌させ、業界のすべてのプレイヤーに次なる一押しを加えると予測されている、非常に強力ないくつかの新しい技術トレンドについて考察してみましょう。この中にはマイクロンが提供しているような3D NANDベースのmicroSDカードが含まれます。
ビデオ監視を進歩させつつある最新のトレンド
これらの強力な業界およびテクノロジートレンドは、いずれもモバイル、ストレージ、インターネット、モノのインターネット(IoT)など、他の市場で発達したものであり、今後数年のうちにビデオ監視業界に多大なメリットをもたらすと見込まれています。注目すべき点として、これらのトレンドは、それぞれお互いを基礎として成立しているため、ビデオ監視市場における成長と普及の好循環につながることが予測されます。
高解像度イメージセンサーのコモディティ化が進む
2016年、CMOSイメージセンサーの顧客向け出荷数は50億以上でした1。大部分のセンサーが携帯電話に使用されましたが、ビデオ監視など他の用途でも、これらのセンサーのスケールメリットを享受することができます。出荷されたセンサーの半数近くが、非常に高解像度の画像が得られる、5メガピクセル以上の解像度のものでした。
ビデオ監視へのメリット
ビデオカメラがかつてないほど高解像度(5メガピクセル以上)になり、同等のコスト増加を伴わずに、インテリジェンス収集およびビデオアナリティクスが改善されます。
新しいビデオ圧縮コーデックの出現
コンシューマー向けビデオの2k(1080p)から4kへの移行に伴い、高解像度ビデオの保存や伝送を高い圧縮率で行うことのできるH.265/HEVCクラスのコーデックが優れたコストパフォーマンスで使用可能になっています。
ビデオ監視へのメリット
多くのカメラOEM(相手先商標製造会社)が、ビデオ監視のユースケース向けにH.265よりも高い圧縮率を提供し、保存や伝送が必要なビデオのサイズを縮小する高度な圧縮およびダイナミックビットレート技法を採用しています。
3D NANDベースのフラッシュストレージテクノロジーの採用
フラッシュストレージテクノロジーは過去数年の間に、平面型(平屋建ての家を想像してください)から垂直スタックによる3D実装(64階建ての摩天楼を想像してください)に移行しています。たとえば、マイクロンの64層3D NANDテクノロジーの場合、59mmの小さなシリコンダイに4.3Gb/mmの密度で32GBのストレージを詰め込んでいます。同等のパフォーマンスの平面型NANDテクノロジーと比べて5~6倍の密度です2。今では、128GBや256GBといった超高密度で信頼性の高いビデオ監視用microSDカードを作れるようになっています。
ビデオ監視へのメリット
監視カメラには、かなり前からmicroSDカードスロットが装備されていましたが、前世代のコンシューマーグレードのカードの(信頼性と密度の両面での)制約により、十分に活用されてはいませんでした。ビデオ監視エッジストレージ向けのマイクロンの新しい産業用microSDカードにより、システムデザイナーはかつてないほど自由に、大規模な分散型監視システムの設計とコスト最適化を行うことができます。極めて高い密度と、シリコンレベルで信頼性の高いデータストレージを備えたこれらのmicroSDカードによって、何日分ものビデオをカメラ本体に保存することが、初めて可能になりました。
マシンビジョン/深層学習ベースの人工知能アルゴリズムの進歩と実装コストの低下
大まかな言い方をすると、画像やパターン認識に基づくアナリティクスのコストが急激に低下しています。この低下の要因は、ソーシャルメディアとインターネット動画から、医薬と自動運転車までさまざまですが、ビデオ監視を含むほとんどすべての業界が、効率的でコストパフォーマンスに優れた高度なビデオアナリティクスのために設計された広範囲の深層学習フレームワーク、アルゴリズム、半導体システムオンチップ(SoC)集積回路(IC)の可用性と成熟による恩恵を受けています。
ビデオ監視へのメリット
人間によるビデオの監視はコストが高く、ミスが発生しやすく、スケーラビリティがありません。中央のネットワークビデオレコーダー(NVR)やサーバー(帯域幅や集中型ストレージのコストに対処せざるを得ない)に高解像度ビデオを取り込む代わりに、今ではカメラ自身がビデオ分析のほとんどを実行できるようになり、集中型の機能が使われるのは、より高度な部分だけとなっています。つまり、カメラ内部で高度なビデオアナリティクスを処理することにより、データの発生源でより的確なインサイト、判断力、成果が得られるようになっています。
IoTへの移行によるクラウドベースのデバイス実装/管理サービスの進化と普及
IoTのおかげで、スマートシティ、交通インフラ、工場、企業、家庭など、多くの分野でセンサーやスマートデバイスを導入できるようになりました。ただし、IoTのスケールや管理性をめぐる要件から、クラウドを利用したデバイス導入/管理モデルへの転換が促されています。このモデルでは、クラウドから直接、デバイスのプロビジョニング、認証、管理を行うことができ、個別の物理ネットワークや中間機器が不要です。
ビデオ監視へのメリット
クラウド直接方式のビデオカメラ導入モデルの使いやすさとコスト効率によって、多くのユースケースにメリットが生じ、必要なインフラやツールがIoT実装を支える形で成熟しつつあります。コンシューマー市場のDo-It-Yourself(DIY)分野では、このモデルのメリットにより、Google® Dropcam®やNetgear® Arlo™などのデバイスの普及が加速しました。しかし、今ではエッジストレージの普及とカメラ内部のエッジインテリジェンスの増加により、業務用グレードの監視も、業務用サービスクラスやサービスレベルアグリーメント(SLA)を維持しつつ、総所有コストを削減しながら、このモデルによるメリットを大きく享受するようになっています。コンシューマーグレードのデバイスにはパブリッククラウドを使用するのに対し、業務用グレードの実装ではプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて使用し、クラウドの全体的な使いやすさとコスト面でのメリットを得ることができます。
マイクロンでエッジに進出
3D NANDテクノロジーでリーダーシップを有するマイクロンは、ビデオ監視におけるエッジストレージの使用を推進する中心的な立場にあります。カメラ内部のエッジストレージを利用する多くのメリットについては、マイクロンの技術パンフレット「ビデオ監視業界向けの革新的なストレージソリューション」など、さまざまな資料が業界に出回っています。
2017年10月31日、マイクロンは産業用microSDカードファミリーを拡大し、3D NANDベースの128GBおよび256GB密度を新たに追加することを発表しました。これらの製品は業界をさらに前進させ、カメラ内部のエッジストレージが主要なビデオストレージになる、あるいは少なくとも、従来のNVRとエッジストレージを併用したハイブリッド実装の強力な一部分になるための道を切り拓くものです。このような実装では、帯域幅、ストレージ、メンテナンスのコストが著しく削減され、クラウドベース実装の柔軟性が向上します。
個々の実装で作成される実際のビデオのサイズは非常にさまざまです。データのサイズを管理するためにOEM(相手先商標製造会社)やシステムインテグレーターが使用するツールは数多くあります。カメラの解像度に始まって、使用するビデオ圧縮コーデックの選択、1秒あたりのフレーム数、可変ビットレート、状況に基づく必要録画時間などです。証拠保全のために録画を残しておくべき日数も、国または地域の法的要件やユースケースの種類によって、それゆえシステムインテグレーターとエンドカスタマー間のSLAによって異なります。以下のグラフは、1日24時間/週7日の連続録画、固定ビットレートでの録画を前提に、各サイズのmicroSDカードでエッジストレージを保存できる日数を示しています。このグラフから分かるように、これらのカードは長期間の保存に対応しています。そのため、システムインテグレーターによる全体的なシステム設計と、この能力の活用方法に、高度な柔軟性がもたらされます。
画質の粗いビデオに別れを告げる
以前は、ビデオ監視用に高解像度カメラを導入することを難しくする要因が複数ありました。カメラのコスト、カメラからNVRまでの帯域幅のコスト、ストレージのコスト、そして高解像度ビデオに対して実行するビデオアナリティクスのコストです。そのため、業界は妥協し、画質の粗い低品質なビデオで間に合わせてきましたが、それは多くの場合、ビデオ監視本来の目的を果たすには不十分なものでした。高解像度カメラや電子部品の新しい低価格化したコスト構造に加え、ビデオのインテリジェント分析と保存をエッジでローカルに実行し、必要性のあるデータだけをクラウド/中央ステーションに送信する能力により、システムインテグレーターはビデオの品質に妥協することなく、実装に必要な帯域幅や機器のコストを最小限に抑えられるようになりました。20年にわたって普通だった画質の粗いビデオがついに過去のものとなったのです (5ドルのビデオ監視カメラを所有した場合に発生するコストについての興味深い分析については、「5ドルのカメラの本当のコストとは?」をご覧ください)。
エンベデッドエコシステムの強化
マイクロンは長年にわたりエンベデッド市場のリーダーです。マイクロンはお客様とエンドユーザーに強力な価値を提供する特定用途向けの製品の開発にフォーカスしています。革新的な新製品を市場に投入することに加えて、市場が適切なチャネルパートナーとともに全世界の市場と顧客ベースを開発・サポートできるようにすることに大きく投資しています。
使用年数全体にわたって一貫した録画パフォーマンスへのニーズを含めて、ビデオ監視業界のお客様特有のニーズをより迅速に満たすため、マイクロンは最近、Shenzhen Security and Protection Industry Association(SSPIA)および中国のチャネルパートナーJinyu Globalとのコラボレーションを発表しました。Jinyuおよび深圳の業界団体とのコラボレーションは、マイクロンが業界標準に確実に適合しながら、中国およびその他の国々へストレージ製品を広めていく上でも役立ちます。
マイクロンのメモリカードについて詳しい情報をご覧ください。
参考資料:
- CMOSイメージセンサー業界の現況(2017年)、Yole Development
- マイクロンの64層32GBのダイサイズ
- 平面型NANDのダイサイズ