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フラッシュメモリの進化:40年にわたるメモリのイノベーションを称賛

マイクロンテクノロジー | 2024年12月

これまでに何かを忘れてしまったことがある人なら、実体験として人間の記憶の限界が分かるでしょう。情報の保存に対する最初の試みは、旧石器時代の部族にまでさかのぼることができます。人々は、物資や取引活動を記録するために棒や骨に切り込みを入れて印を付けていました。

幸い、ストレージは棒や骨をはるかに上回る進化を遂げました。現代の私たちは、フラッシュメモリと呼ばれるものを使用しています。
 

フラッシュメモリとは何か、またなぜあらゆるところで使用されているのか
 

気付いているにせよ、気付いていないにせよ、フラッシュメモリはいたるところにあります。フラッシュメモリは、スマートフォンにも、デジタルカメラにも、車の中にさえも使用されています。フラッシュメモリがなければ、私たちが現在享受しているテクノロジーによる利便性の多くは機能しないでしょう。では、フラッシュメモリとは何なのでしょうか。また、なぜこれほど普及しているのでしょうか。

フラッシュメモリの40周年を記念して、こうした疑問にお答えし、このテクノロジーの影響とその開発におけるマイクロンの役割を説明します。
 

フラッシュメモリの仕組み。テクノロジーの中身を解説


まずは、フラッシュメモリの定義をお伝えします。フラッシュメモリとは、電源が入っていない場合でもデータを保持する不揮発性ストレージの一種です。これは、電源が切断されるとデータを消失する揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)とは異なります。

不揮発性ストレージは、最初に開発されて以来、大きな進歩を遂げました。フラッシュメモリが登場する前、データはEPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)と呼ばれるチップに保存されていました。EPROMから現在のフラッシュメモリに至るまでの一連のイノベーションによって、USBドライブ、メモリカード、SSDなどのコンパクトで信頼性の高いストレージソリューションへの道が切り開かれました。
 

フラッシュメモリの発明:データストレージに変革をもたらすテクノロジー
 

EPROMでは長期保存が可能でしたが、コストが高く、大量の電力を消費するなど、いくつかのデメリットがありました。また、新しいデータに書き換える前に、保存されたビットを紫外線で完全に消去する必要がありました。

何十年もの間、EPROMはほとんどの電子機器において標準的な保存手法でした。しかし、ご想像のとおり、手動で情報を消去して書き換えるというのは、あまり効率的ではありませんでした。

そこで、1980年代に入り、東芝の舛岡富士雄博士は別のテクノロジーを探し始めました。舛岡博士とそのチームは、最終的に、カメラのフラッシュのようにデータを素早く消去するストレージデバイス、フラッシュメモリを開発しました。
 

フラッシュメモリが最新のデバイスに不可欠な理由


それ以降、フラッシュメモリは信頼性が高く効率的なデータストレージ手段を提供し、業界に変革をもたらしました。フラッシュメモリは、セルのグリッドを使用して動作します。各セルには、浮遊ゲートまたは置換ゲートトランジスターが含まれています。これらのトランジスターは電荷を保持し、データを読み取ったり消去したりするバイナリデータ(0と1)を表します。

「フラッシュメモリが電気的に消去およびプログラム可能になったことで、システム設計やテストの観点から、新製品を開発する際に非常に機敏に適応する能力が得られます」とマイクロンのマーケティング担当ディレクターであるウィリアム・スタッフォードは話します。

機敏性というその特性により、フラッシュメモリは現代の多くの電子機器で汎用性の高い不可欠なコンポーネントとなっています。たとえば、モバイルデバイスは、フラッシュメモリを使用して、オペレーティングシステム(OS)、写真、アプリなどのデータを保存します。現代の自動車では、ナビゲーションの地図、校正設定、インフォテインメントシステムのユーザー設定などの重要な情報がフラッシュメモリに保存されています。
 

フラッシュメモリの種類:NORとNANDの比較


フラッシュメモリには2つの種類があり、用途はそれぞれ異なります。NORフラッシュメモリは「Not OR」論理ゲートを採用しており、読み取り速度が速く、小さなデータセットを読み取って実際にコード(ソフトウェア)を実行するのに便利なランダムアクセス機能を備えています。この種類のメモリは、マイクロコントローラ、産業機器、自動車用電子機器のような基本テクノロジーに使用されています。

一方、「Not AND」論理ゲートを使用するNANDは、書き込み速度が速く、ストレージ容量が大きいという特徴があります。このメモリは、ノートパソコン、モバイルデバイス、データセンターなど、大量のデータとコードを保存する必要があるテクノロジーで、SSDなどの製品に使用されます。
 

フラッシュメモリにおけるマイクロンの歩み:RAMからストレージのグローバルリーダーへ


NANDストレージソリューションとNORストレージソリューションの両方を販売するマイクロンは、現在、フラッシュメモリのグローバルリーダーです。そのため、マイクロンがストレージ製品に参入したのは業界の中でも遅い方であったということに、驚かれるかもしれません。NANDフラッシュメモリ市場に初めて参入したのは、IM Flash Technologiesという合弁事業をIntelと開始した2006年でした。

マイクロンには、SRAMメモリデバイスとDRAMメモリデバイスの製造において長い歴史がありました。フラッシュメモリソリューションでは、多くの場合、同じシステムで両方のテクノロジーが必要とされるため、マイクロンのビジネスモデルにうまく当てはまります。

「マイクロンには、メモリとストレージは一緒に発展すると認識している先見の明のあるリーダーが常にいました」とスタッフォードは話します。「大量のコードが実行され、大量のデータがDRAMを介して送られてくる場合、それを保存する場所が必要です。そのため、それらすべてをまとめた完全なソリューションを考え出したのです」

マイクロン、第9世代NANDをSSDに搭載したMicron 2650を他社に先駆け出荷開始。

3D NANDテクノロジー:ストレージの限界を押し広げるマイクロン


2015年、マイクロンのチームは、メモリセルを垂直に積み重ねてストレージ密度を高め、コストを削減する3D NANDテクノロジーを発表しました。2020年には、これまでにない業界最先端の密度と性能を実現する、世界初の176層3D NANDフラッシュメモリの大量出荷を開始しました。マイクロンは、3D NANDテクノロジーの成功を基盤として、2022年に世界初の232層NANDの提供を開始し、ストレージ密度と性能の新たな基準を打ち立てました。こうした革新的な開発が、クライアント、モバイル、データセンター市場に新たな機会をもたらしました。

初期段階でフラッシュメモリに携わっていたマイクロンのセールスイネーブルメントマネージャーであるマット・ウォカスは、今後も積層数の増加は続くと予想していると語っています。ウォカスは次のように話します。「最初は24層であった積層数が、今では10倍に増加しています。今後の改善によってさらに層が増加し、より多くのデータを格納できるようになるでしょう」

NANDフラッシュメモリに積み重ねる層を増やすことで、メーカーは同じ物理的な設置面積でより多くのデータを格納できます。また、小型デバイス(スマートフォン、タブレット、IoTデバイスなど)でも、大型のストレージコンポーネントを使用することなく、大容量のストレージを確保できます。つまり、データセンターのような大規模なアプリケーションの場合、1平方メートルあたりに保存できるデータ量が増え、スペース効率を向上できる可能性があります。

マイクロンの9550 SSDは、3D NANDテクノロジーのイノベーションと進化の素晴らしい一例です。このSSDは、AI、性能重視のデータベース、キャッシング、オンライントランザクション処理(OLTP)、高頻度取引など、超高速性、スケーラビリティ、かつ電力効率を必要とする重要なワークロードを管理できるように設計されています。さらには、クラウド、データセンター、OEM、システムインテグレーターの設計において、上記をはじめとするワークロードの柔軟な展開も可能にします。

マイクロンのNORフラッシュメモリのイノベーションとアプリケーション
 

マイクロンが2010年に開発を開始したNORデバイスも、その高い性能と信頼性で広く知られています。自動車、産業、コンシューマー、ネットワーキングなど、幅広いアプリケーションで使用されています。

これらのデバイスは、読み取り速度が高速で消費電力が低いため、効率が求められる高性能アプリケーションに最適です。
 

40年にわたるフラッシュメモリのイノベーション:マイクロンの影響とビジョン


全体として、マイクロンにおけるフラッシュメモリの歴史は、継続的なイノベーション、戦略的な成長、そして幅広いアプリケーション向けに性能と信頼性の高いメモリソリューションを提供するという取り組みを特徴としています。

現在、マイクロンは、メモリとストレージ製品の強力なポートフォリオを有しています。これには、クアッドポートとSR-IOV(4150AT SSD)を備えた世界初の車載グレードSSDなど、データ量の多い自律型およびAI対応の車載ワークロードを高速化するために設計された専用SSDも含まれます。

フラッシュメモリの40年間の歴史を振り返ると、耐久性のあるストレージソリューションの構築において私たちが大きな進歩を遂げたことが分かります。最新のNANDフラッシュメモリは、1つのデバイスにテラバイト単位のデータを保存できます。このデータ量は、初期のメモリカードの数百万倍です。今や、NANDフラッシュメモリは、スマートフォンやノートパソコンからエンタープライズストレージソリューションやクラウドコンピューティングまで、幅広いデバイスに普及しています。また、AI、ビッグデータ、IoTなどのテクノロジーを実現するうえでも重要な役割を果たしています。そして、第9世代の3D NANDテクノロジーであるG9によって、マイクロンは明るい未来を維持できるでしょう。このテクノロジーは、競合他社に比べて、データ転送レートを最大50%高速化するとともに、読み取りおよび書き込み帯域幅を大幅に改善します。また、AIからクラウドコンピューティングまで、データ中心のワークロードの要求に応えるように設計されています。

大きな進歩を遂げてきましたが、これからも更なる進化を達成できると私たちは考えています。マイクロンは、世界の情報活用のあり方を変革し、すべての人々の生活を豊かにするために、最先端のテクノロジーの革新と開発を今後も続けていきます。

「現在のマイクロンには、私がこの会社で見てきた中で最高水準の製品ポートフォリオがあると思います。ここ数年で、私たちはフラッシュチップとSSDの両方でテクノロジーリーダーとなりました」とウォカスは話しています。

マイクロンのNANDおよびNORフラッシュメモリの詳細については、micron.comで製品情報とアプリケーションに関するインサイトをご覧ください。