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オブジェクトストレージにHDDはもう要らない:CephとMicron 6500 IONの比較

ライアン・メレディス | 2023年7月

Cephは通常、HDDストレージを使用したオブジェクトストアとして配置され、Bluestore(メタデータとログ先行書き込み)用に少量のNVMeを使用します。マイクロンは最近、データとBluestore両方のストレージ用として、Micron 6500 IONを使用した全NVMe Ceph構成のテストを完了しました。6500 IONのSolidigm P5316に対するパフォーマンスについては申し分なかったですが、私たちはHDD+NVMeが使用されたより一般的なCeph実装のものと、Micron 6500 IONを使用した配置のパフォーマンスの差異を知りたいと思ったのです。

大手HDDベンダーが、12台の12TB 3.5インチSATA HDDと1台のBluestore用NVMeアドインカードSSDを使用した、4ノードのクラスターにおけるCephのパフォーマンスを詳細に説明した技術概要を公開しました。両ソリューションが、クライアントまたはS3ゲートウェイからオブジェクトスループットを測定するCephツールであるRADOS Benchでテストされました。このレポート内には、アーキテクチャーの違いがいくつか詳述されていますが、それらを考慮に入れたとしても、Micron 6500 IONを使用したCephと、HDD+NVMeを使用したCephの差には劇的なものがありました。

パフォーマンス

・Micron 6500 IONのCeph構成は、読み取りパフォーマンスで11倍、書き込みパフォーマンスで27倍を示しました。

・HDD+NVMeのCephでは、読み取りレイテンシーが8倍、書き込みパフォーマンスが37倍高くなっています。

・Micron 6500 IONベースのCephクラスターは、使用可能なTBあたりのパフォーマンスがより高く、TBあたりの読み取りパフォーマンスは4倍、TBあたりの書き込みパフォーマンスは10倍となっています。

省電力性能

・Micron 6500 IONベースのCephは、ストレージの省電力性能(TBあたりワットまたはW/TB)が2倍、電力/スループット比は、読み取りパフォーマンスで16倍、書き込みで46倍高くなっています。

コスト

・両ソリューションの使用可能な容量あたりのコストは、NVMeストレージのパフォーマンスが大幅に高いため、ほぼ同等となっています。このスケールでは、全NVMeクラスターで4+2のイレイジャーコーディングを使用できますが、HDDで同様の構成は推奨されず、代わりに3倍のレプリケーションが必要となります。

  • 6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成の使用可能な容量に匹敵するには、16のHDD+NVMeのCephノードが必要となります。
  • 6ノードのMicron 6500 ION Cephの読み取りパフォーマンスに匹敵するには68のHDDノードが必要となり、Micron 6500 ION Ceph構成の書き込みパフォーマンスに匹敵するには161のHDDノードが必要となります。

テスト環境

ハードウェア構成

Micron 6500 ION Ceph

HDD + NVMe

OSDノード数

6

4

サーバーサイズ

1 RU

1RU / 2RU

CPU

AMD 74F3(24コア)

記載なし

DRAM

 

64GB

NVMe

6基のMicron 6500 ION 30TB

1基のNVMe AIC

HDD

なし

12台の3.5インチHDD 12TB

ネットワーク

200GbE

10GbE

 

ソフトウェア構成

Micron 6500 ION Ceph

HDD + NVMe

OS

Ubuntu 20.04 HWE(Kernel 5.15)

情報提供なし

Cephバージョン

Quincy(17.2.5)

情報提供なし

ベンチマーク

RADOS Bench 4MB

RADOS Bench 4MB

Cephプール構成*

4+2イレイジャーコーディング

3倍のレプリケーション

 

*NVMeテストでは、4+2イレイジャーコーディングが3倍のレプリケーションに対して読み取りパフォーマンスで15%の減少、書き込みパフォーマンスが27%の増加を見せました。詳細は以下のマイクロン技術概要をご覧ください: 低レイテンシーのNVMe™ SSDが、高性能で耐障害性のあるCeph®オブジェクトストアを実現

結果詳細

HDD+NVMeのテストでは、より少ないノードを使い、4+2イレイジャーコーディングの代わりに3倍のレプリケーションを使用したため、これらの差異を考慮に入れて公平に比較をしたいと考えました。

ノード差異(ノードパフォーマンス乗数): 

・HDD+NVMeの帯域幅結果に1.5を乗じて、6ノード構成をシミュレートしました(線形のパフォーマンススケーリングを仮定)

・平均レイテンシーについては、HDDの技術概要と同じ値に保ちました。

データ保護の差異(データ保護パフォーマンス乗数)

・読み取りパフォーマンス:4+2イレイジャーコーディングに、クラスターの読み取りパフォーマンスにおいて15%のペナルティを与えました。Micron 6500 IONのテスト結果は変更しませんでした(増加)。HDD+NVMe構成のパフォーマンス値も減少させませんでした。このアプローチは、HDD構成にとって有利になります。

・書き込みパフォーマンス:4+2イレイジャーコーディングは、全NVMeテストにおいて、3倍のレプリケーションに対してパフォーマンスが27%増加しました。HDDでは同水準のパフォーマンスは達成できないと考えますが、潜在的な増加を考慮してHDDの結果を1.27で乗じました。このアプローチも、HDD構成にとって有利になります。

データ保護の差異は、マイクロンによって計測され、詳細についてはこちらでご覧いただけます。

読み取り・書き込みパフォーマンス

The Micron 6500 ION Ceph構成は、読み取りパフォーマンスで11.5倍、書き込みパフォーマンスで27倍となっています。

Ceph 4MBオブジェクトスループット(MB/秒)グラフ

 

ノードパフォーマンス
乗数

データ保護
書き込みパフォーマンス 乗数

測定
読み取り帯域幅(MB/秒)

読み取り帯域幅(MB/秒)

測定
書き込み帯域幅(MB/秒)

書き込み帯域幅(MB/秒)

HDD+NVMe Ceph

1.5

1.27

3055

4,583

506

964

Micron 6500 ION Ceph

1

1

52,540

52,540

25,800

25,800

差異

 

 

 

11倍

 

27倍

 

レイテンシー

HDD+NVMe Ceph構成は6500 ION Ceph構成と比較して、読み取りレイテンシーで8倍、書き込みレイテンシーで37倍となっています。

Ceph 4MBオブジェクトレイテンシー(ミリ秒)グラフ(低いほど優れている)

 

読み取りレイテンシー(ミリ秒)

書き込みレイテンシー(ミリ秒)

HDD+NVMe Ceph

290

1,760

Micron 6500 ION Ceph

35

48

差異

8倍

37倍

 

TBあたりのスループット

ストレージのパフォーマンスと効率の指標として、TBあたりの利用可能なパフォーマンス程度を使用できます。ここでは、物理容量と使用可能な容量の両方について、MB/秒でスループットを測定します。

CephのTBあたりスループット(使用可能な容量)グラフ

 

使用可能な容量

TBあたりの読み取り帯域幅(MB/秒)

TBあたりの書き込み帯域幅(MB/秒)

HDD+NVMe Ceph

192TB

16

3.3

Micron 6500 ION Ceph

760TB

69

34

差異

 

4倍

10倍

 

Micron 6500 ION SSD Ceph構成は、使用可能なディスク容量を考慮すると、TBあたりの読み取り帯域幅で4倍、TBあたりの書き込み帯域幅で13倍高くなっています HDD+NVMe構成における3倍のレプリケーションでは、物理容量が3分の1に減少(576TB/3=192TB)する一方で、Micron 6500 ION Ceph構成の4+2イレイジャーコーディングでは、物理容量が6分の4に減少(1,152TB*0.66=760TB)することを考慮に入れるようにしてください。

消費電力

HDDの技術概要によると、12TBのHDDはドライブあたり7.25W、4ノードソリューションのストレージコンポーネントでは348Wの電力を消費します。Micron 6500 IONについては、テスト中の平均ディスクスループットを測定し、読み取りで1.5GB/秒、書き込みで1.2GB/秒となり、そのパフォーマンスレベルでのドライブあたりの電力消費を算出しました。結果は、読み取りで10.1W、書き込みで10.6Wでした。HDDには1つの電力消費値しか示されていなかったため、比較用により高い10.6Wを選択しました。

パフォーマンス効率(W/GBps)グラフ(低いほど優れている)

電力(W)

ドライブあたり

ノードあたり
12台のHDD
6台のMicron 6500 ION

クラスターあたり:6ノード
72s HDD
36台のMicron 6500 ION

HDD 12TB

7.25

87

522

Micron 6500 ION

10.6

64

382

差異

1.5倍

0.7倍

0.7倍

 

30TBのMicron 6500 IONは12TBのHDDと比較して、ドライブあたり1.5倍の電力を消費しました。容量の差異により、Micron 6500 ION Cephソリューションは、HDD+NVMeと比較してノードあたりで70%の電力を消費しました。 

容量あたりの電力効率(W/TB)

電力消費は、ストレージソリューションの効率を測る上で良い指標です。HDDの技術概要では、CephソリューションでのHDDのJBOD部分のみの平均瞬時電力消費が記載されていますが、CephストレージノードのCPU、メモリ、ネットワークによる消費電力は考慮されていません。 

Micron 6500 ION構成については、スループットに基づいてドライブあたりの消費電力を算出しました。結果は、読み取りで10.1W(1.2GB/秒の時)、書き込みで10.6W(1.5GB/秒の時)でした。

平均瞬時電力(W/TB)グラフ(低いほど優れている)

ストレージコンポーネントのみを比較すると、Micron 6500 ION Ceph 構成ではTBあたりの消費電力が半分強となっており、HDD構成と比較してNVMe SSD構成の電力効率が上回っていることが示されています。

パフォーマンスあたりの電力効率(W/GBps)

電力について検討すべきもう一つの指標は、電力をスループットで割った値です。ソリューションが提供するGBpsあたりの電力効率が分かります。ここでも引き続き、Micron 6500 IONではドライブあたりの読み取り10.1W、ドライブあたりの書き込み10.6Wを、12TBのHDDでは技術概要の7.25Wの消費電力を使用します。

電力とパフォーマンスを考慮に入れると、HDD+NVMe構成では読み取りで16倍、書き込みで46倍多い電力を使用していました。

平均瞬時電力消費(W)グラフ

ソリューションのコスト分析

全NVMe Ceph構成を使用することで、本番環境でのイレイジャーコーディングの使用が可能となります。HDDでは、依然として3倍のレプリケーションの使用が強く推奨されています。使用可能な容量あたりのコストを考慮に入れると、Micron 6500 ION構成のコストはHDD+NVMe構成と同等になります。

ノードあたりのコスト

HDD+NVMe Ceph
3倍のレプリケーション

Micron 6500 ION Ceph
4+2イレイジャーコーディング

サーバー、CPU、NIC

1倍

1.3倍

DRAM

64GB:1倍

256GB:4倍

HDD

12台の12TBのHDD(1個あたり200ドル):2,400ドル

なし:0ドル

NVMe

1台のNVMe SSD AIC(1.6TB):200ドル

6台のMicron 6500 ION 32TB(1個あたり2,000ドル):1.2万ドル

総システムコスト

1倍

2.7倍

容量(物理)

144TB

192TB

容量(使用可能)

48TB

127TB

TBあたりのコスト(物理)

1倍/TB

2倍/TB

TBあたりのコスト(使用可能)

1倍/TB

1倍/TB

 

テストされた6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成の使用可能な容量に匹敵するには、16のHDD+NVMeノードが必要となります。読み取りパフォーマンスで匹敵するには、68のHDD+NVMeノードが必要となります。書き込みパフォーマンスで匹敵するには、161のHDD+NVMeノードが必要となります。 

ノードあたりのパフォーマンス

読み取り帯域幅
ノードあたり

書き込み帯域幅
ノードあたり

HDD+NVMe Ceph

764MB/秒

161MB/秒

Micron 6500 ION Ceph

8,757MB/秒

4,300MB/秒

1ノードのMicron 6500 IONに匹敵するのに必要なHDDノード

11

27

6ノードのMicron 6500 ION Cephに匹敵するのに必要なHDDノード

68

161

 

まとめ

Micron 6500 IONは、NVMeを使用したCephオブジェクトストアに非常に適しています。イレイジャーコーディングを使用した際は、HDDで3倍のレプリケーションを使用した際と同一水準のコストを達成しています。

CephにおけるMicron 6500 IONは以下の利点があります。

  • HDDより優れたパフォーマンス
    • パフォーマンスは書き込みで27倍、読み取りで11倍高い
    • レイテンシーは書き込みで37倍、読み取りで8倍低い
    • 使用可能な容量あたりのスループットは書き込みで10倍、読み取りで4倍高い
  • HDDよりも効率的
    • TBあたりの消費電力は半分
    • ストレージシステムの消費電力は70%(Micron 6500 IONの方がパフォーマンスが高いことを考慮せず)
    • GBpsあたりの書き込みは46倍、読み取りで16倍低い
  • HDDよりも高いコスト効果
    • テストされた6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成と同様の書き込みパフォーマンスに匹敵するには161のHDD+NVMeノードが必要となり、読み取りパフォーマンスでは68ノードが必要となる

最後に重要な点として、Micron 6500 ION Ceph構成は大幅にパフォーマンスが向上しているため、リクエストを迅速に処理でき、アイドル状態により早く戻ることができます。また、システムの設置面積が大幅に小さくなっており、「急いでアイドル状態に戻る」という哲学と、Micron 6500 IONのようなコスト効果が高く大容量のNVMe SDDによって、ようやくオブジェクトストレージからHDDを排除することが理にかなうようになりました。

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Director, Storage Solutions Architecture

Ryan Meredith

Ryan Meredith is director of Data Center Workload Engineering for Micron's Storage Business Unit, testing new technologies to help build Micron's thought leadership and awareness in fields like AI and NVMe-oF/TCP, along with all-flash software-defined storage technologies.