Cephは通常、HDDストレージを使用したオブジェクトストアとして配置され、Bluestore(メタデータとログ先行書き込み)用に少量のNVMeを使用します。マイクロンは最近、データとBluestore両方のストレージ用として、Micron 6500 IONを使用した全NVMe Ceph構成のテストを完了しました。6500 IONのSolidigm P5316に対するパフォーマンスについては申し分なかったですが、私たちはHDD+NVMeが使用されたより一般的なCeph実装のものと、Micron 6500 IONを使用した配置のパフォーマンスの差異を知りたいと思ったのです。
大手HDDベンダーが、12台の12TB 3.5インチSATA HDDと1台のBluestore用NVMeアドインカードSSDを使用した、4ノードのクラスターにおけるCephのパフォーマンスを詳細に説明した技術概要を公開しました。両ソリューションが、クライアントまたはS3ゲートウェイからオブジェクトスループットを測定するCephツールであるRADOS Benchでテストされました。このレポート内には、アーキテクチャーの違いがいくつか詳述されていますが、それらを考慮に入れたとしても、Micron 6500 IONを使用したCephと、HDD+NVMeを使用したCephの差には劇的なものがありました。
パフォーマンス
・Micron 6500 IONのCeph構成は、読み取りパフォーマンスで11倍、書き込みパフォーマンスで27倍を示しました。
・HDD+NVMeのCephでは、読み取りレイテンシーが8倍、書き込みパフォーマンスが37倍高くなっています。
・Micron 6500 IONベースのCephクラスターは、使用可能なTBあたりのパフォーマンスがより高く、TBあたりの読み取りパフォーマンスは4倍、TBあたりの書き込みパフォーマンスは10倍となっています。
省電力性能
・Micron 6500 IONベースのCephは、ストレージの省電力性能(TBあたりワットまたはW/TB)が2倍、電力/スループット比は、読み取りパフォーマンスで16倍、書き込みで46倍高くなっています。
コスト
・両ソリューションの使用可能な容量あたりのコストは、NVMeストレージのパフォーマンスが大幅に高いため、ほぼ同等となっています。このスケールでは、全NVMeクラスターで4+2のイレイジャーコーディングを使用できますが、HDDで同様の構成は推奨されず、代わりに3倍のレプリケーションが必要となります。
- 6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成の使用可能な容量に匹敵するには、16のHDD+NVMeのCephノードが必要となります。
- 6ノードのMicron 6500 ION Cephの読み取りパフォーマンスに匹敵するには68のHDDノードが必要となり、Micron 6500 ION Ceph構成の書き込みパフォーマンスに匹敵するには161のHDDノードが必要となります。
テスト環境
ハードウェア構成 |
Micron 6500 ION Ceph |
HDD + NVMe |
OSDノード数 |
6 |
4 |
サーバーサイズ |
1 RU |
1RU / 2RU |
CPU |
AMD 74F3(24コア) |
記載なし |
DRAM |
64GB |
|
NVMe |
6基のMicron 6500 ION 30TB |
1基のNVMe AIC |
HDD |
なし |
12台の3.5インチHDD 12TB |
ネットワーク |
200GbE | 10GbE |
ソフトウェア構成 |
Micron 6500 ION Ceph |
HDD + NVMe |
OS |
Ubuntu 20.04 HWE(Kernel 5.15) |
情報提供なし |
Cephバージョン |
Quincy(17.2.5) |
情報提供なし |
ベンチマーク |
RADOS Bench 4MB |
RADOS Bench 4MB |
Cephプール構成* |
4+2イレイジャーコーディング |
3倍のレプリケーション
|
*NVMeテストでは、4+2イレイジャーコーディングが3倍のレプリケーションに対して読み取りパフォーマンスで15%の減少、書き込みパフォーマンスが27%の増加を見せました。詳細は以下のマイクロン技術概要をご覧ください: 低レイテンシーのNVMe™ SSDが、高性能で耐障害性のあるCeph®オブジェクトストアを実現
結果詳細
HDD+NVMeのテストでは、より少ないノードを使い、4+2イレイジャーコーディングの代わりに3倍のレプリケーションを使用したため、これらの差異を考慮に入れて公平に比較をしたいと考えました。
ノード差異(ノードパフォーマンス乗数):
・HDD+NVMeの帯域幅結果に1.5を乗じて、6ノード構成をシミュレートしました(線形のパフォーマンススケーリングを仮定)
・平均レイテンシーについては、HDDの技術概要と同じ値に保ちました。
データ保護の差異(データ保護パフォーマンス乗数)
・読み取りパフォーマンス:4+2イレイジャーコーディングに、クラスターの読み取りパフォーマンスにおいて15%のペナルティを与えました。Micron 6500 IONのテスト結果は変更しませんでした(増加)。HDD+NVMe構成のパフォーマンス値も減少させませんでした。このアプローチは、HDD構成にとって有利になります。
・書き込みパフォーマンス:4+2イレイジャーコーディングは、全NVMeテストにおいて、3倍のレプリケーションに対してパフォーマンスが27%増加しました。HDDでは同水準のパフォーマンスは達成できないと考えますが、潜在的な増加を考慮してHDDの結果を1.27で乗じました。このアプローチも、HDD構成にとって有利になります。
データ保護の差異は、マイクロンによって計測され、詳細についてはこちらでご覧いただけます。
読み取り・書き込みパフォーマンス
The Micron 6500 ION Ceph構成は、読み取りパフォーマンスで11.5倍、書き込みパフォーマンスで27倍となっています。
|
ノードパフォーマンス |
データ保護 |
測定 |
読み取り帯域幅(MB/秒) |
測定 |
書き込み帯域幅(MB/秒) |
HDD+NVMe Ceph |
1.5 |
1.27 |
3055 |
4,583 |
506 |
964 |
Micron 6500 ION Ceph |
1 |
1 |
52,540 |
52,540 |
25,800 |
25,800 |
差異 |
|
|
|
11倍 |
|
27倍 |
レイテンシー
HDD+NVMe Ceph構成は6500 ION Ceph構成と比較して、読み取りレイテンシーで8倍、書き込みレイテンシーで37倍となっています。
|
読み取りレイテンシー(ミリ秒) |
書き込みレイテンシー(ミリ秒) |
HDD+NVMe Ceph |
290 |
1,760 |
Micron 6500 ION Ceph |
35 |
48 |
差異 |
8倍 |
37倍 |
TBあたりのスループット
ストレージのパフォーマンスと効率の指標として、TBあたりの利用可能なパフォーマンス程度を使用できます。ここでは、物理容量と使用可能な容量の両方について、MB/秒でスループットを測定します。
|
使用可能な容量 |
TBあたりの読み取り帯域幅(MB/秒) |
TBあたりの書き込み帯域幅(MB/秒) |
HDD+NVMe Ceph |
192TB |
16 |
3.3 |
Micron 6500 ION Ceph |
760TB |
69 |
34 |
差異 |
|
4倍 |
10倍 |
Micron 6500 ION SSD Ceph構成は、使用可能なディスク容量を考慮すると、TBあたりの読み取り帯域幅で4倍、TBあたりの書き込み帯域幅で13倍高くなっています HDD+NVMe構成における3倍のレプリケーションでは、物理容量が3分の1に減少(576TB/3=192TB)する一方で、Micron 6500 ION Ceph構成の4+2イレイジャーコーディングでは、物理容量が6分の4に減少(1,152TB*0.66=760TB)することを考慮に入れるようにしてください。
消費電力
HDDの技術概要によると、12TBのHDDはドライブあたり7.25W、4ノードソリューションのストレージコンポーネントでは348Wの電力を消費します。Micron 6500 IONについては、テスト中の平均ディスクスループットを測定し、読み取りで1.5GB/秒、書き込みで1.2GB/秒となり、そのパフォーマンスレベルでのドライブあたりの電力消費を算出しました。結果は、読み取りで10.1W、書き込みで10.6Wでした。HDDには1つの電力消費値しか示されていなかったため、比較用により高い10.6Wを選択しました。
電力(W) |
ドライブあたり |
ノードあたり |
クラスターあたり:6ノード |
HDD 12TB |
7.25 |
87 |
522 |
Micron 6500 ION |
10.6 |
64 |
382 |
差異 |
1.5倍 |
0.7倍 |
0.7倍 |
30TBのMicron 6500 IONは12TBのHDDと比較して、ドライブあたり1.5倍の電力を消費しました。容量の差異により、Micron 6500 ION Cephソリューションは、HDD+NVMeと比較してノードあたりで70%の電力を消費しました。
容量あたりの電力効率(W/TB)
電力消費は、ストレージソリューションの効率を測る上で良い指標です。HDDの技術概要では、CephソリューションでのHDDのJBOD部分のみの平均瞬時電力消費が記載されていますが、CephストレージノードのCPU、メモリ、ネットワークによる消費電力は考慮されていません。
Micron 6500 ION構成については、スループットに基づいてドライブあたりの消費電力を算出しました。結果は、読み取りで10.1W(1.2GB/秒の時)、書き込みで10.6W(1.5GB/秒の時)でした。
ストレージコンポーネントのみを比較すると、Micron 6500 ION Ceph 構成ではTBあたりの消費電力が半分強となっており、HDD構成と比較してNVMe SSD構成の電力効率が上回っていることが示されています。
パフォーマンスあたりの電力効率(W/GBps)
電力について検討すべきもう一つの指標は、電力をスループットで割った値です。ソリューションが提供するGBpsあたりの電力効率が分かります。ここでも引き続き、Micron 6500 IONではドライブあたりの読み取り10.1W、ドライブあたりの書き込み10.6Wを、12TBのHDDでは技術概要の7.25Wの消費電力を使用します。
電力とパフォーマンスを考慮に入れると、HDD+NVMe構成では読み取りで16倍、書き込みで46倍多い電力を使用していました。
ソリューションのコスト分析
全NVMe Ceph構成を使用することで、本番環境でのイレイジャーコーディングの使用が可能となります。HDDでは、依然として3倍のレプリケーションの使用が強く推奨されています。使用可能な容量あたりのコストを考慮に入れると、Micron 6500 ION構成のコストはHDD+NVMe構成と同等になります。
ノードあたりのコスト |
HDD+NVMe Ceph |
Micron 6500 ION Ceph |
サーバー、CPU、NIC |
1倍 |
1.3倍 |
DRAM |
64GB:1倍 |
256GB:4倍 |
HDD |
12台の12TBのHDD(1個あたり200ドル):2,400ドル |
なし:0ドル |
NVMe |
1台のNVMe SSD AIC(1.6TB):200ドル |
6台のMicron 6500 ION 32TB(1個あたり2,000ドル):1.2万ドル |
総システムコスト |
1倍 |
2.7倍 |
容量(物理) |
144TB |
192TB |
容量(使用可能) |
48TB |
127TB |
TBあたりのコスト(物理) |
1倍/TB |
2倍/TB |
TBあたりのコスト(使用可能) |
1倍/TB |
1倍/TB |
テストされた6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成の使用可能な容量に匹敵するには、16のHDD+NVMeノードが必要となります。読み取りパフォーマンスで匹敵するには、68のHDD+NVMeノードが必要となります。書き込みパフォーマンスで匹敵するには、161のHDD+NVMeノードが必要となります。
ノードあたりのパフォーマンス |
読み取り帯域幅 |
書き込み帯域幅 |
HDD+NVMe Ceph |
764MB/秒 |
161MB/秒 |
Micron 6500 ION Ceph |
8,757MB/秒 |
4,300MB/秒 |
1ノードのMicron 6500 IONに匹敵するのに必要なHDDノード |
11 |
27 |
6ノードのMicron 6500 ION Cephに匹敵するのに必要なHDDノード |
68 |
161 |
まとめ
Micron 6500 IONは、NVMeを使用したCephオブジェクトストアに非常に適しています。イレイジャーコーディングを使用した際は、HDDで3倍のレプリケーションを使用した際と同一水準のコストを達成しています。
CephにおけるMicron 6500 IONは以下の利点があります。
- HDDより優れたパフォーマンス
- パフォーマンスは書き込みで27倍、読み取りで11倍高い
- レイテンシーは書き込みで37倍、読み取りで8倍低い
- 使用可能な容量あたりのスループットは書き込みで10倍、読み取りで4倍高い
- HDDよりも効率的
- TBあたりの消費電力は半分
- ストレージシステムの消費電力は70%(Micron 6500 IONの方がパフォーマンスが高いことを考慮せず)
- GBpsあたりの書き込みは46倍、読み取りで16倍低い
- HDDよりも高いコスト効果
- テストされた6ノードのMicron 6500 ION Ceph構成と同様の書き込みパフォーマンスに匹敵するには161のHDD+NVMeノードが必要となり、読み取りパフォーマンスでは68ノードが必要となる
最後に重要な点として、Micron 6500 ION Ceph構成は大幅にパフォーマンスが向上しているため、リクエストを迅速に処理でき、アイドル状態により早く戻ることができます。また、システムの設置面積が大幅に小さくなっており、「急いでアイドル状態に戻る」という哲学と、Micron 6500 IONのようなコスト効果が高く大容量のNVMe SDDによって、ようやくオブジェクトストレージからHDDを排除することが理にかなうようになりました。
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