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ストレージ、テクノロジー、世界が2024年にどうなるかを予測する、パート1:AIブームは誇大広告じゃない、本物!

ジェレミー・ワーナー | 2023年12月

年末年始は、世界中の多くの国や文化において、過去を振り返る時間であり、新年や未来が何をもたらすかについて深く考える機会でもあります。過去100年間、ますます接続が進むテクノロジーの導入によって、コミュニケーション手段が豊富になり、情報転送の低レイテンシーが実現する中で、世界はかつてないほど近づいています。

つながりやすさが増したことは、世界中の多くの人々に素晴らしいメリットをもたらしました。人々を貧困から救うこと、情報入手のしやすさ、事業や教育の革命的変化、同じ考えを持つ人と地球上のどこにいてもつながれること、人類が取り組むべき世界各地の不当な行為に注目を集められること、その他にもな数多くのメリットがあります。しかし、年を重ね、これほどつながりのなかった時代を懐かしむ際にしばしば嘆きの対象となるマイナス面もあります。

現在では、スマートフォンの位置情報からオンライン検索履歴まで何でも追跡できてしまうため、プライバシーが損なわれています。常につながり、常に連絡できる状態にあることによって、多大な時間と労力を要する作業をするための私たちの集中力も損なわれます。また、ソーシャルメディアの影響力や、事実か虚偽かを見分けるのが困難だったり不可能だったりする誤解を招きかねない情報によって、人間の最悪な性質が引き出されます。憎悪、嫉妬、強欲、暴飲暴食、自己嫌悪につながることも少なくありません。

こうしたテクノロジーは、グローバルな相互接続サプライチェーンでの大量生産(これは生産性向上につながります)など、新たな能力を導入することで、世界と世界経済を作り変えています。情報革命で世界が変わった今、私たちは新たに別の大きな革命の入り口に立っています。到来しつつあるこの「インテリジェンスの時代1は間違いなく、人類の歴史上、これまでになかった大きな革命です。この世界で最も社会性が高く、独創的な存在である人類が過去に成し遂げてきた大きな飛躍という基礎の上に築かれた革命です。

それでは、最初の予測に入りましょう。

予測1:AIブームは「本物」であり、世界を永遠に変える

すべてのテクノロジーが最初に普及する時と同じく、これが本物なのか、それとも誇張なのかについて、多くの問いが投げかけられます。多くのテクノロジーは誇張であり、何年も低迷してから主流になります。中には勢いに乗って広まり、後ろを振り返ることのないテクノロジーもあります。また、歴史の1ページに埋もれ、思い出の中の遠い記憶となり、よくある「一発屋」になるテクノロジーもあります。

ガートナーはその有名な「ハイプ・サイクル」で、これについて述べています。新しいテクノロジーの立ち位置について考えるにあたって、これは良い方法だと思います。私はよく、「AIブームは誇張されているのですか?」と質問されます。答えは、「いいえ、決して誇張ではありません」。成長は必然的に鈍化するため、米国ウォール街の優秀な人々(または最近ではアルゴリズム取引のスーパーコンピューター)が、AI会社の取引を徐々に減らす可能性はあります。しかし、AIが私たちの生活、データセンターや個人用デバイスの未来、メモリやストレージテクノロジーの未来、IT支出の伸びに与える影響は計り知れません。それに、可能性はまだ始まったばかりです!

 

画像認識や広告推奨エンジンなどの分野ではニューラルネットワーク、ディープラーニング、人工知能(AI)がすでに数十年にわたって使用されてきたとはいえ、ChatGPTや1000億を超えるパラメーターを持つその他の大規模言語モデル(LLM)の登場によって、生成AI革命が幕を開けました。ただ、最新のLLMのAI能力には、それ以前とは異なる何かがあります。つまり、より高性能で、よりインテリジェントで、より思慮深く、より人間的だとさえ感じませんか?  また、これらの機能はさらにペースを上げて進化しています。世界最大規模の企業が何社も、世界を永遠に変えるLLMベースのアプリケーションを収益化・製品化しようと競い合っているのですから、なおさらです。

私たちが知っている世界を再形成するであろう、新しい短期、中期、長期の機能やアプリケーションの例をいくつか挙げてみようと思います。そのプロセスで、これらの新しいアプリケーションによるデータ作成、保存、解析に重点が置かれつつ、より高速で、大容量で、安全で、高性能なメモリ、ストレージ、ネットワーク、コンピューターデバイスのニーズが再形成されることになるでしょう。これらのテクノロジーが今日、明日、または20年後に主流となるかどうかに関わらず、その展開に向けた競争は「今」まさに始まっており、マイクロンはあらゆるイノベーションや機能向上の中心に位置しています。

基本:今後2~3年で爆発的に普及することが確実視されている短期的な機能

これらのテクノロジーのほとんどは、データセンターで実行され、コンシューマーがスマートフォンやPCからリモートでアクセスするアプリケーション、または、新製品開発の市場投入までの時間を短縮し、会社の業績を把握して改善を推進し、コスト削減や生産性向上の余地を見つけ、顧客の要望をより深く理解して顧客が興味を持つ製品と結びつけることで会社と顧客との距離を縮めるなど、ビジネスアプリケーションのバックボーンで実行されるアプリケーションです。

  • 一般的な生成AI – 会社の新しいロゴを作りたい、友人のために面白い絵を描きたい、自分のアイデアをアートで表現したい。ブログやマーケティング資料を執筆したい、法的契約書のテンプレートを探したい/作成したい、チームビルディングイベントのアイデアをブレインストーミングしたい、プレゼンテーションの流れを確認して聴衆を魅了する提案をしたい、スライドやプレゼンテーションを自分の好みに合わせて微調整したい。
    そのすべてが可能であり、今ここで、現実のものとなっています。Office 365やGoogle Docsへの展開は、主に機能をアプリケーションに統合すること、ユーザーが新しい機能の使用方法を習得すること(つまり、導入)、新しい機能を支えるバックエンドのコンピューティング能力によって実現します。(コンピューティング能力の展開は、メモリとストレージの需要にメリットをもたらします。)
  • ビデオチャットのモニタリング - 異なる言語を話すチームメンバーとの国境を越えた会議にリアルタイムの言語翻訳が必要ですか。ミーティングの議事録を取るのにうんざりしていたり、ミーティング後に、主なポイント、出席者、アクションアイテムなどの自動要約を、選択した場所に保存して送信したりしたいですか。それらは、現在すでに試験中または開発中の機能の例の一部です。
  • コード生成 – 米国におけるソフトウェアエンジニアの平均年収は約15万5,000ドルです。2コード生成は、コードの書き方を知らなくてもプログラミングができるようにすることで、起業家やクリエイターを支援します。また、ある調査によると、経験豊富なコーダーやソフトウェアエンジニアをスーパーエンジニアに変えて、生産性を平均55%向上させることも可能です。3

マイクロンでは、ITと製品開発部門のソフトウェアエンジニアを対象にAIコーディングツールの初期プロトタイプを導入して、テストと検証を行ってきました。そして、(マイクロンのデータ専門の特注トレーニングツールではない)初期のツールでさえ、ソフトウェア開発者の生産性を向上させる大きな可能性を示しています。ほとんどのソフトウェアプログラマーが評価するであろう簡単な例として、私たちが書くコードに対して、AIソフトウェアが自動的に生成し挿入したコメントが非常に正確であったことが挙げられます。このシンプルな作業のおかげで、マイクロンのエンジニアは最大20%の時間を節約でき、一方で、プロジェクトに割り当てられた、またはプロジェクトに参加した他の人のコードの一貫性、品質、読みやすさを向上させることができました。

起業、ビジネスパートナー - 新しいアイデアがあるけれど、何から始めればいいのかわからないなら、お気に入りの生成AIアシスタントが支援してくれます。ChatGPTその他の生成AIツールに「一緒にビジネスを始めたい」と伝えれば、たちまち新しいビジネスパートナーが誕生します。あなたのアイデアを説明してから、事業計画、ロードマップ、夢を実現する方法についての段階的な手順を尋ねてみてください。熱意ある有能なビジネスパートナーが見つかったことに驚くでしょう。完璧ではないかもしれませんが、そもそも完璧なパートナーなど存在するでしょうか。

今後3~7年の間に、1兆ドル規模の産業に大きな変革をもたらすであろう中期的なテクノロジー

これらのテクノロジーのほとんどは、安全性を確保するための政府規制や、新しい物理的機能の開発など、複雑な問題の解決を必要とします。そうした依存関係により、実現可能なものの導入が遅れることは避けられません。それらは、人間とその不完全性のために構築された既存の物質界に追加されるからです。

  • 自動運転 – 2021年頃にこの新しいテクノロジーが話題を集めたことを覚えていますか。自動運転車への急速な移行に備えて、ロボタクシーの配車サービスを提供するプラットフォームになると想定されたUberとLyftの株価が急騰しました。しかし実際には、レベル5(完全自動運転)の車は、失望の谷に落ち込みつつあります。遅延の理由は数多くあります。つまり、瞬間的な判断に必要な複雑性とコンピューティング能力の過小評価、運転・道路・気象条件の変化、道徳的・倫理的判断の複雑性、そして社会や規制に関する疑問点(万一事故が発生した場合の責任の所在や、乗客や歩行者の命を救う完璧な正解がない場合の優先順位の判断など)です。事故は起こるものです。そうでしょう?  とはいえ、私たちはこうした問題を解決し、最終的には路上のほとんどの車両が完全に自律走行できるようになるでしょう。これは自動車のメモリとストレージの容量に非常に大きな影響を与えます。2030年の平均的なレベル5の車両は、今日の一般的なレベル2+やレベル3の車両で使用されているNANDの約200倍の容量を使用することになるためです。2030年にはそうした自動車が約1億2,200万台4に増え、AIに依存する車載アプリケーションにおけるNANDの需要は、実に500エクサバイトにまで増加すると考えられます。これは2024年に生産される予定のNANDの半分を上回る量です。
  • 医療 – 人工知能は、放射線画像診断やがんの検出など、さまざまな面で医療を変革しています。AIアルゴリズムは、MRIスキャン画像を分析して脳腫瘍におけるIDH1遺伝子変異の有無を予測したり、前立腺がんを検知したり、がんと誤認される可能性のあるものを除外したりすることができます。4研究者たちは、がんの検出や診断の領域で機械学習を使用してツールを構築しており、医師が見逃す可能性のある腫瘍や病変を検出できる可能性もあります。5AIはCTスキャンによる肺がんの腫瘍検出にも利用されており、肺がんの検出ではAIのディープラーニングツールのほうが放射線科医よりも優れています。6また、AIは世界中の患者に最善の医療や治療をもたらすでしょう。特に、一流の医師の人数や質が不足している地域では、治療結果が大幅に改善される可能性が高くなります。
  • パーソナルAIアシスタント – 『Awaken Online7や『her/世界でひとつの彼女8など、映画や小説では、常にそばにいて自分の望みや好み、ニーズなどを本当に理解してくれるパーソナルAIアシスタントというアイデアがロマンチックに描かれてきました。「何か食べるものを用意して」、「休暇の計画を立てて」、「ToDoリストを作成して」、「今日の服装を選んで」といったあいまいな指示を出すだけでよい状態を想像してみましょう。すべて実現可能な範囲内ですが、プライバシーとパフォーマンスの観点から、クラウドではなくローカルで実現するのが最適でしょう。モデルのトレーニングや再トレーニングは演算能力の高いサーバーで行うにせよ、モデルの推論/実行、ユーザーのプライベートデータの保存は、おそらく未来のスマートフォンやPCが担うことになるでしょう。つまり、将来の個人用デバイスでは、ローカルストレージ(NAND/SSD)とメモリ(DRAM)が大幅に増加することになります。
  • ビデオトレーニング – あなたの仕事をレビューして、フィードバックを提供したり、実際に上司がするであろうアドバイスに近いアドバイスを述べたりする、上司のバーチャルアバターがいたらどうでしょう。または、学校に来て学生とまるで本物のように、かつ思慮深く交流することが可能な、お気に入りの指導者や科学者、有名人のビデオがあったらどうでしょう。ビデオでのトレーニングや、超現実的な高度デジタルAIアバターの拡張に必要なコンピューティング能力は、静止画像やテキスト生成と比較するとコストのかかる取り組みですが、コストが下がり、投資が次の生成モデルの波へと拡大すれば、テクノロジー的には実現可能です。
  • 警察と法執行機関 – 人工知能は(特にビデオ監視の分野において)警察と法執行機関の業務を変革する可能性を秘めています。AIは犯罪の検知や防止、容疑者の特定や追跡を支援し、捜査に役立つ証拠や洞察を提供することができます。ただし、AIの利用は、政府による監視と個人のプライバシー権のバランス、政府による専制と権力乱用のリスク、人間の尊厳と市民的自由にAIが与える影響など、倫理的・社会的な問題も提起します。ビデオ監視にAIを活用する方法については、各国で異なるアプローチや規制が取られており、その背景にはそれぞれの文化や政治的価値観が反映されています。たとえば、米国では個人のプライバシーが優先され、法執行機関による顔認証その他の生体認証テクノロジーの利用は法律で制限されています。一方、英国や中国では国家による監視をもっと認めており、犯罪防止や社会統制のためにAIを活用して公共の場や交通、ソーシャルメディアを監視しています。こうした対照的な例は、社会がビデオ監視におけるAIのメリットとリスクを慎重に検討し、その使用を民主的かつ透明性の高いやり方で規制・監督する方法を決定しなければならないことを示しています。つまり、現在、この用途の大半にテクノロジーは存在しているものの、テクノロジーがこの業界に完全な変革をもたらすまでの時間は、厄介な倫理的問題とそれに続く規制によって引き延ばされるでしょう。

今後10年かもう少し先に数兆ドル規模の産業を生み出すであろう長期的なテクノロジー

  • ホームアシスタントロボット - 米国の高齢化社会は、高齢者介護に関する多くの課題に直面しています。高齢化が進むにつれ、介護者の需要は大幅に高まります。しかし、高齢者介護の供給は需要に追いついていません。介護業界の人手不足は米国全体のジレンマであり、何百万人もの高齢者が、切実に必要としている手頃な価格の介護やサービスを利用できない状況にあります。米国労働統計局によると、在宅医療やパーソナルケアを担う介護人材の雇用は、2022年から2032年の間に22%増加すると予測されており、これは全職種の平均を大きく上回る増加率です。在宅医療やパーソナルケアを担う介護人材の求人は、今後10年間で毎年平均約684,600人が見込まれています。9一方で、米国疾病対策センター(CDC)によると、米国の世帯の66%(8,690万世帯)がペットを飼っています。米国で最も人気のあるペットは犬(犬を飼っているのは6,510万世帯)で、その次が猫(4,650万世帯)です。102022年にペットシッター、犬の散歩係、グルーミング、ペットホテルなど、ペットケアサービスに米国人が費やした金額は58億ドルでした11
    また、米国で毎年発生する住宅侵入窃盗事件は100万件を超えています。25.7秒に1件ということです。12人工知能を搭載したホームアシスタントロボットは、高齢者や障がい者が自力で生活するのを支援したり、外出時に家を守ったり、旅行中にペットの世話をしたりするほか、料理や掃除など、さまざまな面で役に立つ可能性があります。いずれは、アイザック・アシモフの描いたビジョンに登場したような知性と親切心を備えたロボットが現実のものとなるでしょう。
  • バトルボットと戦争の変革 – 人工知能は、現代の戦争を前例のない方法で変革し、人類に新たな機会と課題をもたらすと予想されています。AIは、抑止力を強化し、死傷者を減らし、人道的介入を可能にすることで、戦争をやめさせ、平和への手段となる可能性があります。しかし、邪悪な独裁者がAIを手にすれば、暴力の規模、速度、予測不可能性が増加し、紛争の閾値が下がり、人権や結果に対する責任を損なう危険なツールにもなり得ます。AIは、ドローン、無数のマイクロロボット、ロボットなど、人間の監督の有無に関わらず戦場で自動運転が可能な新しい兵器やシステムの開発と配備を可能にするでしょう。これらのテクノロジーは、戦争に関する倫理や法律、世界の安全保障と安定性にも重大な影響を及ぼす可能性があります。したがって、世界各国の政府が戦争におけるAIの倫理的影響を把握し、AIの責任ある平和利用を確保するための規範と規制を確立するために協力することが不可欠です。そして、(願わくば)地球を平和と繁栄の共有へと導いてほしいと思います。
  • 新しい雇用 – 自分の代わりに働いてくれるAIロボットが手に入ったときに自分が働く理由とは?  いつか、生活の中のつまらない雑用をスーパーインテリジェントロボットが管理してくれるようになり、個人としても集団としても、余暇や社交の機会が増えるようになるでしょう。社会は、この富をどのように市民に分配するのでしょうか。テクノロジーを発明した少数の人だけにメリットがあるようにするのでしょうか、それとも、全人類の生活の質が向上するのでしょうか。私たちは、手にしたたくさんの時間をどう使うのでしょうか。また、努力することや新しい何かを学ぶことなど、多くの人が重きを置いている価値観を実践する機会が大幅に減るとしたら、その価値観はどうなるのでしょう。たくさんの倫理的・社会的課題を伴う疑問が数多くあり、解決したり、現在の世界のあり方から再考したりしなければなりません。AIに仕事を奪われるのが心配かもしれませんが、おそらく、信頼できるAIアシスタントに手伝ってもらいながら週3日か4日勤務に移行し、労働の成果を楽しむ時間を増やせるのではないでしょうか。

次回のブログでは、急成長の始まりにあるAIから離れて、方向転換しようとしているテクノロジー(NAND)や衰退に向かっているテクノロジーについて取り上げます。
 

Corporate Vice President & General Manager, Storage Business Unit

Jeremy Werner

Jeremy is an accomplished storage technology leader with over 20 years of experience. At Micron he has a wide range of responsibilities, including product planning, marketing and customer support for Server, Storage, Hyperscale, and Client markets globally. Previously he was GM of the SSD business at KIOXIA America and spent a decade in sales and marketing roles at startup companies MetaRAM, Tidal Systems, and SandForce. Jeremy earned a B.S.E.E. from Cornell University and holds over 25 patents or patents pending.