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U.2は成功を収めたが、これからはEDSFFの時代

アンソニー・コンスタンティン | 2025年3月

U.2は、10年以上にわたってサーバーの主要なSSDに使用されてきました。2.5インチHDDフォームファクタを活用し、SATA、SAS、NVMeに対応するコネクターを備えたこのコネクターとフォームファクタは、SSDの採用に不可欠でした。業界で使用されているフォームファクタはほかにもありますが、今日のサーバーに搭載されているSSDユニットとビットのほとんどはU.2であり、このフォームファクタの使用はしばらく続くでしょう。

とはいえ、PCIe® 5.0とPCIe® 6.0に対応するように製造されている新しいシステムには、克服しなければならない課題がいくつかあります。こうした課題が、あらかじめそれらを考慮して設計されたEDSFFフォームファクタなどの他の選択肢に比べてU.2の導入を困難にしています。

実を言えば、私はEDSFFに好意的な考えを持っています。数年にわたってこの仕様に取り組み、推進してきた経験があるためです。ただし、この先入観は、この仕様が最初に開発された理由そのものに基づいて生まれたものです。エンタープライズ環境やデータセンターでは、コンピューティング、ストレージ、そして新しいAIアプリケーションに合わせてSSDの導入が多様化し、急速に成長していました。これに対応するために、ストレージ業界は共通の構成要素を備えた柔軟なフォームファクタを必要としていました。

U.2とEDSFF

図1:U.2とEDSFFに使用される一般的な3コネクタートポロジー

システムSIに関する課題:

図1は、ホストポートからデバイスへの一般的なバス型トポロジーを示しています。このトポロジーは、コネクターの数を取って、3コネクタートポロジーと呼ばれます。このトポロジーはPCIe® 3.0と4.0では問題なく動作しますが、PCIe® 5.0では信号アイ(「1」または「0」を判断する測定)に影響を与える信号の速度が増加するため、導入が非常に困難となっています。

一般的な2コネクターおよび1コネクタートポロジー

図2:EDSFFに使用される一般的な2コネクターおよび1コネクタートポロジー

3コネクタートポロジーを改善する唯一の方法は、トポロジーの合計長さを短くするか、より高価なコンポーネント(PCB、ケーブル、リタイマーなど)を使用することです。EDSFFは図1に対応しますが、直交コネクターを使用することで、図2に示す2コネクタートポロジーと1コネクタートポロジーにも対応します。これらのトポロジーでは、信号アイに影響を与えるバックプレーンとコネクターを取り除くことができるため、この問題を解決するのに役立ちます。

EDSFFのピン配列

図3:EDSFFのピン配列

PCIe® 6.0では、この課題がさらに困難なものとなります。信号レベルが1値から4値となり、信号アイが従来の4分の1のサイズに縮小されるためです。信号損失の問題がはるかに深刻になるだけでなく、送信ペアと受信ペア間のノイズといった要因が大きな問題となります。EDSFFコネクターのピン配列(図3)では、送信ペアと受信ペアがコネクターの反対側に分離されます。

U.2のピン配列

図4:U.2のピン配列

U.2コネクター(図4)では、こういった分離はできません。そのため、クロストークが大きくなります(NEXTと呼ばれます)。こうした制約により、SSDとシステムのどちらの観点からも、U.2は導入コストの高いソリューションになります。

E3.S 1TとU.2の温度の比較

図5:E3.S 1TとU.2の温度の比較

温度に関する課題:

高い性能が必要になるほど、SSDとその基盤となるコンポーネントの冷却に必要なサーマルヘッドルームが制限されます。図5は、E3.S 1TとU.2を比較した結果を示しています。電力消費量が同じ場合、E3.Sは、同じ容量・消費電力のU.2をさまざまな温度の入力空気で冷却する際に必要となる空気の体積よりも、少ない空気量で冷却できます。これにはいくつかの要因があります。E3.S 1TはU.2よりも小さいため、押し出して循環させる必要のあるエアフローが少なくなります。また、E3.S 1Tでは、エアフローがSSDをより効率的に通過します(経路を塞ぐコンポーネント/コネクターの数が少ないため)。

E3.Sを否定する意見として、E3.Sは同じスペースにU.2よりも多くの数を配置できるため、E3.Sを使用したシステムはU.2を使用したシステムよりも必要となるエアフローが多くなる可能性があるという考え方があります。ですが、これは設計上の選択の問題です。システムのデバイス数を減らし、E3.S SSDをまとめてグループ化して重要なコンポーネントに空気が流れるようにすることもできます。また、システムに図2の直交コネクターを使用すれば、エアフローの改善にも役立ちます。これらは、システムの熱性能にも大きなメリットをもたらします。

投資に関する課題:

EDSFFの開発が始まったとき、参加企業はこれが将来への投資であることを分かっていました。問題は、同じ投資を必要とする2つの競合するテクノロジーが現在あることです。それがEDSFFとU.2です。EDSFFについては、システムとエコシステムへの投資がすでに始まっており、仕様の整備、SSDの開発、システムのEDSFF対応計画が進められています。U.2では同じような投資は行われていません。

最後に:

テクノロジーには3つのフェーズがあります。高額な初期投資/導入コストが必要な段階、最小限のコストでテクノロジーが急速に改善されていく最適な状態、高額なコストをかけて従来のテクノロジーを最適化しようとする段階です。EDSFFは、PCIe® 5.0によってテクノロジーの最適な状態に入りました。SIの制約、温度に関する課題、投資に関する課題によって、U.2のフェーズは最適な状態ではなくなりました。今こそ、業界はU.2への投資を中止し、EDSFFフォームファクタに移行する時だと私は考えています。

マイクロンのストレージビジネスユニット、テクニカルスタッフ優秀メンバー

Anthony Constantine

テクニカルスタッフの優秀メンバーであるアンソニー・コンスタンティンは、マイクロンのSSDビジネスユニットでストレージ標準を担当しています。数々の仕様書の作成に携わり、貢献してきただけでなく、SNIAのボードメンバーおよびSNIA SFF TWGの共同議長も務めています。