デジタル技術が事実上生活と仕事のあらゆる側面を接続している今、第4次産業革命が目前に迫っています。カメラやセンサー、ソフトウェアなどの技術によって生成されたデータを使用して、自動車から冷蔵庫、製造機器に至るまで、無生物の「スマート化」が進んでいます。私たちの作業を支援するだけでなく、私たちの代わりに作業を行い、より良い作業を行う方法をトランザクションごとに学習し、人工知能(AI)を使用して自律的に意思決定することもあります。
この革命的な新時代を切り開く技術のなかでも、AIは間違いなく最も重要であり、最も複雑です。
AIは、自動運転車の「自律性」を可能にし、自動車に乗客や荷物をA地点からB地点まで安全かつ効率的に運ぶ方法を教え、必要とされる多くの行動、反応、決定を独自に実行します。
AIは、農場で働くドローンが作物に水や肥料、農薬が必要である時期を判断し、適切な量を散布し、食べ頃になった作物を収穫する手助けをします。
AIによってロボットが人間と協調して働くだけでなく、独立して稼働することも可能になり、いつか工場がサイバーフィジカルシステムとして稼働し、在庫管理、修理、需要の変化に応じて生産スケジュールを調整するようになるでしょう。
しかし、AIが機能するには「速い」データが必要です。つまり、データが生成、収集されてから1日後や1時間後に処理、分析されるのではなく、人間の知能にその能力があるように、リアルタイムで瞬時に処理、分析される必要があります。インダストリー4.0はAIに左右されるため、高速データこそが新たな革命を推し進める原動力とも言えます。原動力に必要な燃料は、処理能力とメモリの膨大なリポジトリです。
はじめの三大革命
人類の歴史の大半において、採取した材料からすべてが手作りされ、また約1万年前の農耕時代の幕開けからは栽培されるようになりました。動物の家畜化と利用はそれ自体が革命的でしたが、生産工程に機械を導入することで工業化が本格的に始まりました。
マイクロンのITディレクター、ティム・ロングによると、最初の3つの産業革命はこのように分解できます。
- 機械化。18世紀半ばから19世紀半ばの約100年で起こった第一次産業革命は、水と蒸気の力を利用して製造工程を機械化することから始まりました。
- 電化。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、工場に電力が供給されるようになり、組み立てラインと大量生産が可能になりました。
- 自動化。20世紀半ば、ロボット工学を含むデジタル技術が製造工程に導入され、それまで人間が行っていた多くの作業が自動化されました。20世紀後半のコンピューターの普及と1990年代のインターネットの台頭は、事業のグローバル化を可能にし、消費者はマウスをクリックするだけで世界中で買い物できるようになりました。これらの革命はいずれも、事業が商品やサービスを生産する方法において、以前よりも速く、安く、より大量に生産するという、歴史的な大変革をもたらしました。変革が起こるたびに市場が拡大し、潜在的な利益が増え、より安価な製品が広く利用できるようになりました。
現在進行中のインダストリー4.0は、ビジネスモデルや従来のやり方に新たな大変革を約束しています。この時代を象徴する特徴は、接続です。コネクテッド時代には、自動車からコンピューター、ロボット、トースターに至るまで、あらゆるものが繋がり、互いに、そして私たちと通信し、あらゆる産業でユーザーエクスペリエンスのカスタマイズと単純作業の自動化に適応していくでしょう。単調な仕事から解放された私たちは、より複雑でミッションクリティカルな仕事に集中することができます。
人々はウィジェットを作る代わりに、自動で動く工場を設計するでしょう。人々はトラックを運転する代わりに、トラックが自動で動くようプログラムし、問題のトラブルシューティングを行うでしょう。農家は、耕し、植え付け、収穫をする代わりに、それらの仕事を代わりに行う一連の技術を管理し、作物の収穫量の最大化に時間を費やすでしょう。
そして、互いに依存し、連動するデジタルエコシステム全体が、あらゆる過程のあらゆる段階で情報を提供するデータに依存することになります。
データの爆発的増加
世界中に存在する全データのうち、約90%が直近2年間で作られたものです。私たちのデバイスは毎日2.5兆バイト、つまり2.5エクサバイトのデータを生成しており、この数字は携帯電話、タブレット、コンピューター、その他の接続デバイスの数が年々指数関数的に増加するにつれて増大しています。
インターネットユーザー数は2018年、世界人口76億人の半分を上回る40億人を突破すると見られています。センサー、カメラ、アプリ、インターネット、Bluetooth、その他のデジタル通信手段を通じて、ものが互いに、そして私たちとつながるネットワークである「モノのインターネット」に接続されたデバイスの数は、2018年には231億4,000万台、2025年には744億台に達すると予想されています。
これは膨大なデータであり、例えば、顧客の欲求、ニーズ、購買に関する洞察を取得し、製品サービス全体やマーケティングアプローチを改善したいと考える企業にとっては、まさに宝の山ともいえるデータです。多くの企業がこのような方法でデータを活用しており、数週間あるいは数ヶ月前のデータを分割して処理し、その結果を分析して、どこをどう微調整するかを決定しています。「ビッグデータ」の膨大なリポジトリは、選別され、精査されるまで未開発の「レイク」で待機しますが、一生閲覧されないことも多くあります。
今日、データを放置するのはもったいないことのように感じます。データレイクは長く放置されればされるほど、停滞し、使い物にならなくなります。
とはいえ、第4次産業革命で、レイクそのものが全くの無駄になります。保存データはすぐに時代遅れになるでしょう。速さこそが重要になります。
スピードが命
煙が立ち込め、警報機が鳴り響く中で目が覚めたら、家を出るかどうか決める前に座ってじっくり考えるでしょうか? もちろん違います。何が起きているのか、火事を瞬時に処理して判断し、ドアを飛び出します。
同様に、人工知能が真の知性を持つには、情報、つまりデータを処理し、その行動をリアルタイムで、あるいは可能な限りそれに近い形で適応させる能力が必要があります。
工場であれば、部品の欠陥や破損を検知すると、ロボットがその部品を別の部品に交換してから作業を進めます。ソフトウェアが情報を処理する間、マシンは何週間も何カ月もアイドル状態というわけにはいきません。またロボットは、製造品が故障した時に後で精査するとして、その情報を放置し、壊れた部品を無視して組み立てを続けてはなりません。
コネクテッドエイジで競争するには、「高速データ」が必要不可欠となります。時間を無駄にしたり、遅れたり、優柔不断になっている暇はありません。工場の現場では、一時停止すると損害が出る恐れがあります。スローダウンはシャットダウンに繋がる可能性があり、自動車産業では1分あたり22,000ドルもの大金がかかると言われています。
後ろ向きな姿勢の「分割」データ処理は、トレンドの発見や内省的な意思決定には適していますが、事業がインダストリー4.0で競争するには明らかに不十分でしょう。ロボット工学、ドローン、自動運転車などの「スマート」デバイスに組み込まれたコンピューターは、人間の脳と同じようにデータが生成されたらすぐに有益な方法でデータを処理する必要があります。
思考速度での処理
私たちの脳はどのように動くのでしょうか? 情報は私たちの五感を通して入り、私たちの頭はそれを処理して分析します。熱いスキレットに触った時、次に何をするか考える必要はありません。豊かな花の香りを感じる時、鼻と「バラ」の間にタイムラグはありません。
私たちの心は、思考、感覚、感情などのデータを、非常に速く処理することができます。コンピュータは複雑な数式を我々よりはるかに速く計算できますし、チェスも上手いかもしれません。しかし、情報を取り込み、可能性のある一連の回答から選択することについて、スピードと賢さで人間の脳に勝るものはないでしょう。今のところ、ですが。
第4次産業革命では、コンピュータをこれまで以上に人間の能力に近づけることが約束されています。自動運転車が玉突き事故を回避するには、瞬く間に事故を処理して迂回路を選択する必要があります。工場ロボットは、コストのかかるシャットダウンが発生する前に、摩耗した部品を検出して修理することができるべきでしょう。ドローンは、子供や動物が畑に飛び込んだ瞬間に農薬散布を停止しなければなりません。
このような計算を迅速に行う機械の能力は、私たちの頭脳同様、処理速度とメモリにかかっています。インダストリー4.0には、膨大な量のデータを秒やミリ秒ではなく、ナノ秒単位で取り込み、分類し、分析できるコンピューターが必要です。マイクロンはAIを完全に実現するために、これまでで最も高速で効率的なメモリーソリューションの研究開発を強化しています。
「私たちは、AIアプリケーションの分野でメモリがより重要な役割を果たす多くの機会があると考えています」と語るのは、マイクロンのシニアフェローであるマーク・ヘルムです。「データはAIを実現する重要な通貨です」
コンピューティングシステムが電子メールの確認やインターネットの閲覧といったトランザクションタスクを実行する方法(「以前の」ワークロード)と、人工知能が機能する仕組みを比較すれば、データがAIにとってはるかに重要な要素であることがすぐに分かるでしょう、とヘルムは話します。
「マイクロンがデータの管理者になるチャンスです」とヘルムは語ります。「私たちのGDDR6グラフィックスメモリは、我々の脳と同じように、グラフィックプロセッシングユニット(GPU)に、もしくはシステム内でデータをストリームするDRAMおよびNANDメモリ製品に、超高速でデータを供給することが可能であることから、マイクロン製品はAIデータの門番と言えます」
人工知能の未来は、思考速度で動くデータにかかっています。コンピュータが、少なくとも人間の頭脳が処理できるのと同じくらい速くデータを処理できるようになれば、文明を飛躍的に前進させる偉大な起爆剤になるでしょう。人類を新たなフロンティアに導くために、私たちエンタープライズがさらに速く進まなければならないことをマイクロンは分かっています。「常に時代の先を行くのです」とヘルムは話します。