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データから意思決定まで:  AIにおいてメモリが果たす役割

ラフル・サンディル | 2024年8月

人工知能(AI)と人間は、皆さんが考えている以上に類似しています。AIは歩き回ったり感情を感じたりすることはできませんが、人間にも備わる重要な認知機能であるメモリに依拠しています。AIのメモリは、学習、推論、適応を可能にします。人間が記憶(メモリー)に依拠して過去の経験を思い出し、現在の状況に知識を適用するように、AIもメモリを使って特定の作業に必要な情報を保持し、取り出します。この記事では、AIにおいてメモリが果たすクリティカルな役割について、その基礎的な重要性や、倫理的に考慮すべき点、そしてAIの進化を形作る未来の進展などの面から掘り下げます。

メモリの2つの顔

AIには、短期ワーキングメモリと長期メモリ(またはストレージ)の2種類のメモリがあります。短期メモリは、計算処理中に即時的なデータ操作や意思決定を行う認知の作業空間のようなものです。この種のメモリは、リアルタイムの言語翻訳のようにAIシステムが話し言葉や書き言葉を処理し、応答する必要があるタスクに有用です。たとえば、チャットボットは短期メモリを使って会話中の文脈を維持し、応答に一貫性と関連性を確保します。

AIの長期メモリは、蓄積された知識や過去の経験の保存場所です。この種のメモリは、AIシステムのパターン認識、過去のデータからの学習、行動に基づく予測を可能にします。医療分野では、AIは長期メモリを使用して診療録を分析し、治療計画を策定します。これは医療従事者が十分な情報を得たうえで決定を下すのに役立ちます。

メモリの課題

AIのメモリは、目覚ましい進展にもかかわらず、人間の記憶と比較してまだいくつか課題があります。それは主に速度とレイテンシーです。AIは驚異的な速度でデータを処理できますが、情報を迅速に統合し、文脈を理解する能力は人間の認知よりも効率が劣ります。この反応時間の遅さが、迅速な常識的推論や適応が必要なタスクでのAIのパフォーマンスを制限します。この領域では、人間の直感や経験の方が優れているのです。しかし、メモリや計算テクノロジーの進化に伴い、この問題は次第に解消されていきます。製造業の制約理論のパラダイムのように、システムのパフォーマンスにも、一つの制約が解決すると別の制約が生まれるという同じような作用があります。高度なAIシステムの制約は、システムに供給されるエネルギー量によって、ますます制限されるようになっています。

特にモバイルデバイス小型ドローン、データセンターのようなリソースが限られた環境では、AIシステムにエネルギー消費を最小限に抑えつつ計算効率を最大化するためのメモリソリューションが求められます。こうした問題により、LPDDR5X高帯域幅メモリ(HBM)DDR5 DRAMなどの低消費電力メモリテクノロジーにおけるイノベーションが必要となります。

メモリの未来

メモリテクノロジーの進展により、さまざまな分野にわたりAIの能力を変革する準備が整っています。HBMやグラフィックスメモリ(GDDR)は、データ処理速度や帯域幅を大幅に向上させます。この進展は、大規模なデータセットのリアルタイム分析が求められるアプリケーションにとって非常に重要なものです。たとえば医療分野では、高速なメモリにより高度なAIアルゴリズムが医療画像を迅速に解析できるため、より早く、より正確な診断が可能になります。

AIメモリアーキテクチャーにおけるパラダイムシフトと言われるニューロモルフィックコンピューティングは、人間の脳の並列処理能力をモデル化したものです。脳から着想を得たこれらのアーキテクチャーは、ニューラルネットワークの分散と相互接続の性質を模倣して、AIの適応性、フォールトトレランス、エネルギー効率の向上を目指しています。ニューロモルフィックコンピューティングの研究では、汎用人工知能(AGI)の実現が期待されています。AGIでは、人間のような認知能力を持つAIシステムにより、多様なタスクを実行できるようになります。

強力なメモリのメリット

高帯域幅メモリが支える堅牢なAIモデルは、大規模なデータセットから学習できる、より自律的で汎用性のあるシステムの開発を可能にします。そうなると、新しい情報に対してより迅速な適応を促進することができ、それが個別化医療、予知保全、金融予測などの分野での進展につながります。たとえば、AIを活用した金融の予測分析では、長期メモリに保存された過去の市場データを使って未来のトレンドを予測し、投資戦略を最適化します。

長期メモリの倫理的問題

AIシステムが長期間にわたりデータを保持できるようになるにつれ、データプライバシー、バイアスの拡大、意思決定の透明性に関する倫理的な問題が重要性を増します。責任あるAIの開発を徹底するには、説明可能なAI(XAI)のような枠組みを導入し、透明性と説明責任を高めることが必要です。XAIの技術により、AIシステムは人間が理解可能な言葉で意思決定の理由を説明することが可能になり、信頼を醸成し、長期メモリに起因する潜在的なバイアスを軽減します。

AI革命に向けたメモリソリューションのリーダーであるマイクロン

マイクロンは、AIの進展のために不可欠なメモリソリューション開発の最前線にいます。DRAMNAND高帯域幅メモリソリューションにおけるマイクロンのイノベーションは、AIシステムのパフォーマンスと効率を大幅に向上させ、さまざまな業界にわたる幅広い適用を実現しています。

マイクロンは、グローバルな研究開発のプレゼンス、持続的なメモリノードのリーダーシップ、強靭なサプライチェーン、クラウドからエッジまで市場をリードするメモリとストレージの製品ラインナップにより、堅固なエコシステムパートナーシップを構築し、AIの普及を加速しています。

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Vice President of Corporate Marketing

Rahul Sandil

Rahul Sandil is vice president of Micron’s Corporate Marketing, where he leads brand management, creative studios, business and technology marketing, marketing technology and digital marketing. Passionate about creating customer-centric experiences that connect communities with technology, Rahul believes in the power of storytelling, creativity and data to drive business outcomes and social impact. He is also an avid geek and usually the first to adopt new consumer technology products. To read more about Rahul’s thoughts on AI, marketing and leadership, check out his blog, connect with him on LinkedIn, subscribe to his newsletter or follow him on Medium.

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