デザインツール
アプリケーション

生成AIとは? 今後の動向は?

マイクロンテクノロジー | 2023年9月

生成AI(人工知能)とは正確には何でしょう?  これまでのAIとどう違うのでしょう?

まず、特定のタスクを知的にこなす能力のある従来のAIから始めましょう。その方法は?  膨大なデータセットを取り込み、顕著なパターンを特定してから、そのデータに基づいて意思決定や予測を行うことが得意です。ストリーミングサービスで次に見るべき映画を提案するアプリケーションや、顧客サービスのチャットボット、クレジットカード詐欺の予測・防止などがその例です。

2020年代初期、Transformerを基盤とするディープニューラルネットワークの進歩により、ChatGPT™、Bing Chat™、Bard™、LLaMA™、DALL-E™といった生成AIプラットフォームへの道が開かれました。こうしたテクノロジーは独自のもので、入力したトレーニングデータからパターンを学習するだけでなく、そのトレーニングセットに似た特徴を持つ新しいデータを生成する追加機能を備えています。(優れた機能です。この最後の文章はBardを使って書きました)

この「世代」は他と一線を画しています。先日のForbesの記事によれば、「独創的でクリエイティブなコンテンツを考えてくれる想像力豊かな友人のような存在」です。

生成AIの出力は、テキスト、画像、音楽、さらにはコンピューターコードなど、さまざまな形で行うことができます。生成AIはすでに、アート、執筆、ソフトウェア開発、製品設計、ヘルスケア、金融、ゲーム、マーケティング、ファッションなど、さまざまな業界で活用されています。

大規模言語モデルトレーニング(LLMトレーニング)は、ChatGPT™といった現在広く普及している生成AIツールの実現に貢献しています。LLMトレーニングは、言語を解釈し、理解して、テキストベースで自然な答えを返すように作られています。大規模言語モデルトレーニングで使用されるデータセットがより包括的なものになるにつれ、そこから得られる結果はさらに「自然」なものになっています。

マッキンゼーの予測では、生成AIは「分析した63件のユースケース全体で、年間2.6~4.4兆ドルに相当する価値を生み出す可能性がある」としています。比較対象として、2021年の英国全体のGDPは3.1兆ドルでした。これらのユースケース以外のタスクに現在使用されているソフトウェアに生成AIを組み込むことによる影響を含めると、この見積もりはおよそ2倍になるでしょう。

アプリケーションはほぼ無限です。実際、多くの大企業がそうしたアプリケーションに気づき、すでに生成AIを活用しています。

スマートマニュファクチャリング

DeLoitteによると、メーカーの86パーセントが、今後2年以内にスマートファクトリーが競争の主な原動力になると考えています。すでに150億台以上のIoTデバイスがネット接続されており、2030年にはその台数が2倍の290億台以上になると予想できます。ビッグデータを使用するビッグマシンは、急速に増加するセンサーデータを管理するために複雑な生成AIワークロードを利用して、産業市場を変革しています。

マイクロンでは、生成AIの用途で重要となるメモリ/ストレージソリューションを供給するだけでなく、自社の製造プロセスでもAIを活用しています。シリコン製造は非常に複雑なプロセスで、その期間は数か月に及び、1,500もの工程が伴います。マイクロンでは、このプロセスのすべてのステップで高度なAIを採用し、精度と生産性を劇的に向上させています。生産量や歩留まり、品質の向上、より安全な作業環境、効率の改善、サステナブルな事業など、そのメリットは多岐にわたります。

自動車

生成AIは、設計者が簡単なスケッチを作成すると、システムが詳細な3Dモデルを生成する加速プロトタイピングで自動車業界を変革しています。そのモデルは、外部の市場トレンド、空気力学的効率データ、衝突シミュレーションや人間工学的シミュレーション、新しいスタイルなどを取り入れて、繰り返し改良されます。

生成AIにはまた、テクノロジーが成熟するまでの間、一般市民を危険にさらすことなく、自律走行車を安全に普及させる道を開く可能性があります。生成AIは画像や動画を生成して実世界のシナリオを構築できるため、自律走行車は管理された環境の中でさまざまな環境を学習し、それに適応することができます。つまり、自律走行車の意思決定モデルをトレーニングするためのフィールドテストや、より直感的なアルゴリズムをこれまでよりも安価に行えるということです。

生産面では、材料の分配、廃棄物の削減、組み立てプロセス、製造がより簡単でコスト効率の高い部品設計を求めて生成AIが最適化を行います。

科学

生成AIは科学的発見に大きな影響を与えており、創造的なコンテンツから合成データ、生成工学や生成設計まで、あらゆるものを変革しています。

実際、ガートナーの予測では「生成AI技術を使って体系的に発見される新薬や新素材は、現在の0%から、2025年には30%以上を占めるようになるだろう。創薬のコストと時間を削減できることを考えると、生成AIの製薬業界での利用には将来性がある」といいます。

マッキンゼーが分析したのは63のユースケースです。マッキンゼーは、あらゆる業種の中でも特に顧客業務、マーケティングや営業、ソフトウェアエンジニアリング、研究開発が、多数のAIツールを基盤とする生成AIやLLMトレーニングの影響を非常に大きく受けると予測しています。

今後の動向

知的財産権の侵害、サイバー犯罪、ディープフェイクなど、生成AIが悪用される可能性についてはもっともな懸念があるにせよ、生成AIを有効利用できる可能性は極めて大きなものです。

マイクロンのクラウド部門シニア事業開発マネージャーであるエリック・ブースは、ボイシ州立大学の博士課程に在籍し、このテクノロジーが言語に障がいのある子供たちを支援する方法について研究しています。

「言語療法では、療法士が生徒にコンテンツを渡して読んでもらい、ツールを使って発音や発声の達成度をスコア化するものだと思っていました」とエリックは説明します。「でも、生成AIを使うと、そのツールでプロセス全体を処理することができます。パターンの識別に長けているので、たとえば、ある生徒が一貫してO(オー)の発音を間違えているといったことを判別できます」

つい最近まで、音声認識には大容量のメモリを搭載した大規模サーバーが必要で、すべてをクラウドに送らなければなりませんでした。今では、音声認識は手元のスマートフォンに搭載されています。コンピューティングが高速化し、メモリが高速化し、かつてのデータセンタープロセスは今やスマートフォンなどのエンドポイント機器に入っています。

大規模言語トレーニングを基盤とする生成AIプロセスは、近いうちにスマートフォンで実行できるようになるでしょう。なぜなら、AIモデルのLLMトレーニングプロセスは、より複雑なモデルをつくるだけでなく、簡素化してスマートフォンやPCなどのエンドポイント機器で動かすことも重要だからです。このような大規模言語モデルが成長すると、クラウド環境以外でのトレーニングは不可能になります。しかし、LLMトレーニングがいったん完成した後に簡素化すると、エンドポイントデバイスに移行できます。

その結果、日々の生活を助けてくれるツールとして、コンパニオン(友)として、生成AIの力を文字どおり手中にすることができます。未来のバーチャルアシスタントは、個人に寄り添うコンパニオンとしてのAIになり、あなたの経験やあなたが生成したデータから学習して個人的な好みの予測度や理解度を高め、あなたと一緒に成長して適応することができるようになるでしょう。

このコンパニオンが最初からあなたと一緒にいると想像してみてください。あなたの旅の一歩ごとにともに進化し、あらゆるステージで人生を豊かにする、あなたとともに成長するAIコンパニオンです。

赤ん坊のころは、AIコンパニオンがあなたの好奇心を育み、物語を読み聞かせ、教育効果のあるゲームをして、想像力をかき立てます。あなたの成長に伴い、AIコンパニオンはデバイスからデバイスへとあなたについてきて、あなたと同じように、時とともに知性を高めていきます。あなたならではの学習スタイルに適応しつつ、教育の過程であなたを導くことができます。あなたが情報を吸収するのに最適な方法を学び、その方法を調整し、あなたの心に響くやり方で考え方を示し、教育の効果を高めて楽しめるものにすることで、優れた成果を挙げる手助けをしてくれるのです。コンパニオンはコーチとして教育上の改善を取り入れ、あなたが情報に基づく決定を行い、生涯にわたって自分の道を切り開いていけるように支援します。

大人になってからも、AIコンパニオンはあなたのスケジュールと日々のタスクを最適化し、ワークフローを合理化して、生産性を高めます。あなたが日々生成するデータは、AIデバイスがそのスキルを磨き続けるために使用されます。この種のテクノロジーやエクスペリエンスは、生成AIや、今後発明される派生的なAI手法によって推進されるでしょう。

製造、自動車、科学、またはその他のどんなアプリケーションであっても、生成AIとその派生技術は、想像もつかないような方法で未来を方向付けていくでしょう。そして、あなたの手の中や手首、クラウドにあるデバイスを駆動するAIデータの中心に、マイクロンが存在します

生成AIは、膨大な量のデータに一度にアクセスして吸収し、膨大なメモリを使用して、適切な対応を判断する必要があります。これには、HBM3E、高密度DDR5 DRAM、マルチテラバイトSSDストレージといったマイクロンのテクノロジーが必要であり、これらはすべて、クラウドにおける生成AIのトレーニングと推論に必要な速度と容量を実現します。モバイルフォンなどのエンドポイントデバイスの場合、電力効率とパフォーマンスを巧みに両立させることがAI中心のユーザーエクスペリエンスを成功させるうえで重要です。マイクロンのLPDDR5Xは、強力な生成AIを手元に確保するために必要な速度と帯域幅を提供します。

生成AIの能力は急速に進歩しており、適切なユースケースはまだ開発途上ですが、日々の生活を変える可能性があることは容易に理解できます。マイクロンのビジョンは、このテクノロジーがすべての人々の生活を真に豊かにすることです。