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自動車

7年間を振り返って、自動運転車について予想通りになったことと、予想通りにならなかったこと

ダン・クーム | 2025年8月

半導体業界で製品管理やコンテンツマーケティングなどの観点から、私はたくさんの見通しを立てたり、予測や予想を行ったりしてきました。製品需要の予測から、新興テックトレンドの予想までさまざまでしたが、当たったものもあれば、外れたものもあります。

少し前、2018年5月に執筆した「自動運転車の仕組み」という記事を久しぶりに読んでみました。私が書いたマイクロン記事の中で、今まで最も読まれている記事の1つです。今回は、自動運転と自動車向けソリューションが注目を集める中で、この記事ならではの視点を振り返ってみましょう。書いた当時は特別なことのようには感じませんでした。自動運転の未来や、お客様に知っておいていただきたいメモリおよびストレージソリューションについて、事実に基づいた見通しを語ったにすぎなかったのです。何が予想通りで、何が予想通りではなかったのかを、章ごとに確認していきましょう。

「人工知能が自動運転車を動かす」

 

判定:予想通り
 

自動車が自律走行するには、常に周囲の状況を把握している必要があります。まず、周囲の状況を認識し(情報を識別し、分類する)、次にその情報に基づき、車の自律的なコンピューター制御を通して動く必要があります。自動運転車には、運転環境の詳細な理解に基づいて瞬時に判断できる、安全でセキュア、かつ応答性の高いソリューションが必要です。運転環境を把握するには、車全体にある、無数にあるさまざまなセンサーで膨大な量のデータを取得し、それを車の自動運転コンピューターシステムで処理する必要があります。

この章の内容は現在でも変わっていません。自動運転車の核はAIであり、現在の自動車にはかつてないほどにAIが組み込まれています。大量のデータ処理は依然として自動運転車とAIワークロードの課題の1つである一方、自動運転を可能にするコンピューティング、メモリ、ストレージの能力も向上してきました。ストレージとメモリの容量が大きくなることで、AIシステムの正確性と応答性が向上し、より大きなデータセットをより複雑なアルゴリズムで処理できる自動車が実現します。こうした進化によって、7年前には想像もできなかったような、より複雑なトレーニングモデル、より高速な推論、新しいAIアプリケーションが可能となっています。生成AIやエージェント型AIが台頭したことで、想像できなかったような形でAIが自動車に導入され、インフォテインメントシステムやADASシステムの変革が進んでいます。今や車載用AIは、「自宅に電話をする」といった基本的な指示への対応にとどまらず、より洗練された会話型の体験を求められています。

自動化の5つのステージ

「自動化の5つのステージを示すインフォグラフィック」

 

判定:予想通りだが更新が必要


ブランドカラースキームとマイクロンのロゴが古いという点を除けば、5つのステージは現在でも正確かつ適切です(懐かしいですね)。この自動化の5つのステージはマイクロンが独自に作成したものではなく、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が制定した業界基準です。主に更新が必要なのは、図の「Today」の位置です。多くの新型車が「Partially automated」(一部自動化済み)のステージに到達しており、最新鋭の電気自動車(EV)の中にはステージ4の自律性を実現しているものもあります。ステージ5のテクノロジーも実現しており、一部の都市ではパイロットプログラムが実施されています。ただし、通常こうしたプログラムが実施されるのは、温暖で天候の予測が可能な環境に限られています。真の意味でステージ5であると判断されるためには、どのような状況や気候条件にも対応できることが求められます。では、なぜすべての新型車が自動運転車にならないのでしょうか? 障害となっている項目は数多くあり、例えば、政府による規制、安全性、総所有コストなどが挙げられます。7年以内にはステージ5に達しているかもしれません。マイクロンがメモリ帯域幅や自動車向け集中型ストレージアーキテクチャーにおいて画期的なイノベーションを重ねることで、さらに現実味を帯びてきています。メモリ帯域幅と集中型アーキテクチャーにより、ステージ5の自律性に不可欠なパフォーマンス、信頼性、安全性が向上します。

自動車データ

「自動運転の陰の立役者であるメモリ」と「自動運転に欠かせない要素である高速メモリ」

 

判定:予想通りで、これまでと変わらず正しい

 

メモリとストレージのテクノロジーは、自律性のレベルにかかわらず自動運転車には不可欠です。車載用AIは、高速走行中に迅速に判断を行うため、大量のデータを処理する必要があります。自動運転において、過剰な遅延とレイテンシーは許されません。交通状況を見る限りそうは思えないかもしれませんが、人間は瞬時の判断を下すのが意外と得意です。問題は、簡単に注意散漫になってしまうことです。コンピューターなら注意散漫になることはありません。カメラ、LiDAR、センサーは常に監視を続けます。高性能な車載コンピューティングプラットフォームが、運転中にうたた寝をすることはありません。メモリと車載用ストレージから必要なデータが供給される限り、安全を維持するために計算と判断を続けます。こうしたデータに関する課題に対処し、システムをスムーズで効率的かつ安全に稼働させるためには、高帯域幅メモリと集中型ストレージソリューションが非常に重要となります。

メモリは、複雑なAIトレーニングモデルや、推論の応答の高速化にも不可欠です。マイクロンは、イノベーションを通じて、負荷の高いAIタスクに必要とされる信頼性の高い基盤を提供します。マイクロンは、信頼性と効率性の高いメモリとストレージを構築することで、自動運転能力の発展に貢献し、自動車にAIを組み込む際に重要な役割を果たしています。

「自動運転の未来におけるGDDR6の重要性」

 

判定:予想通りにはならなかった
 

当時、マイクロンのGDDR5Xメモリは、自動車向けソリューションに使用されていました。当初はゲーム向けであったGDDR5XとGDDR6は、その高速な性能により、自動車向けソリューションやネットワーキングアプリケーションにも使用されるようになりました。現在、グラフィックやAIアプリケーションには、最新グラフィックスメモリ規格であるGDDR7が採用されています。当時は、画面の巨大化が進み、より高い画質が求められるインフォテインメントシステムが中心で、自動車向けソリューションにおいて、こうしたトレンドが続くものと思われました。テスラのModel 3やCybertruckなどの自動車では、テスラアーケードという車内ゲーム機能まで搭載されていました。インフォテインメントシステム上で、ペダルやハンドルを使ったビデオゲームもプレイできるようになっていました(安全上の理由により、運転中はプレイできません)。それではなぜ、予想通りにはならなかったのでしょうか。より広い帯域幅、より大容量のグラフィックスメモリが求められるようになるのは、当然の流れですよね?

メモリと帯域幅に対する需要は今も続いており、自動運転のレベルが上がるごとにその必要性はさらに増しています。ただし現在では、そのニーズは低電力型のDDRメモリ(LPDDR)へと移行しています。元はスマートフォン向けの低消費電力ソリューションとして構築されたLPDDR(具体的にはLPDDR5X)でしたが、現在の自動車に最適なものとなりました。

スマートフォンと自動車の間には多くの類似点があります。電源に常時接続しておくことができず、バッテリーで駆動する点、センサーが多数搭載されている点、常にデータを収集、監視して演算処理を行う点などです。ユーザーからは、AIとの対話を求められるようになりました。マイクロンは、こうした期待に応えるため、パフォーマンスを高めながら消費電力を抑える低電力メモリソリューションの革新を続けています。

直近の例としては、ダイレクトリンクECCプロトコル(DLEP)搭載LPDDR5X DRAMの導入があります。LPDDR5X向けに最適化されたエラー訂正コード(ECC)方式は、システムのインラインECCのあらゆる制約を軽減し、帯域幅を15%~25%1向上させます。DLEPはパフォーマンスを向上するだけでなく、故障率(FIT)の低減を通じて、LPDDR5XメモリシステムはISO 26262 ASIL-Dハードウェア指標の達成に貢献します。他にも、この新製品はpJ/b(1ピコジュール/ビット)あたりで約10%の消費電力を削減し、アドレス可能なメモリ空間も最低6%拡張されています2。マイクロンのISO 26262 ASIL-D認証を取得したシステマティックLPDDR5X DRAMを基盤として構築されており、きわめて重要な自動車向け機能安全(FuSa)要件にも容易に対応可能です。端的に言えば、DLEPは帯域幅を拡大しつつ消費電力を抑えるという、自動運転ワークロードにおいてまさに理想的な最適解の1つといえます。

また、データストレージにおいても、予測していなかった多くの進化がありました。Micron 4150AT SSDなどの集中型ストレージSSDが、自動車向けストレージアーキテクチャーを根本的に変えています。このアーキテクチャーでは、インフォテインメント、ADAS、シートポジションなど、用途ごとにストレージチップを分けるのではなく、最大4つのシステムのデータストレージを1つの高耐久SSDに統合しています。このSSDは、自動車向けの過酷な要件にも対応できる認証を取得しています。AIと組み合わせることで、自動車アプリケーション向けの車載ストレージアーキテクチャーの種類がさらに多様化しています。

それでは、次に自動車に使用されるのはどういったメモリとなるのでしょうか? LPDDRは今後7年間継続して使われるのでしょうか?それともマイクロンのHBM3EのようなAI向け高帯域幅メモリが自動車にも使用されるようになるのでしょうか? AIが普及するにつれてその可能性は高まりますが、自動運転車でまず採用されるのはHBM4やHBM4Eになるかもしれません。最後に1つ、予想したいと思います。マイクロンのHBM製品が自動車ソリューションに導入されるまでに、7年もかかることはないでしょう。

結論

私は将来、何が予想通りで、何が予想通りにはならなかったかの答え合わせをするつもりはありません(プライドが持たないかもしれません)。しかし、未来のテクノロジーやトレンドに対する見解を見直すには有益な作業です。最も重要なのは、自動車におけるAIへの注目度と価値、そしてAI搭載車両向けの高性能なメモリとストレージソリューションの重要性が、過去7年間で飛躍的に増加してきたということです。具体的なメモリやストレージのソリューションは変化し、進化し、向上していくかもしれませんが、それらが解決すべき課題は変わりません。データはあらゆるAIの核であり、そのデータはマイクロンのメモリとストレージソリューションに収められています。しかし、マイクロンの製品はデータの保存にとどまらず、データを実用的なインテリジェンスへと迅速に変換する役割を果たしているのです。

一般的なインラインシステムECCスキームとDLEPを比較測定

システムECCパリティを保存するために使用される回復されたメモリ密度に基づく「アドレス可能な追加のメモリ空間」

グローバルコミュニケーションおよびマーケティング担当マーケティングキャンペーンマネージャー

Dan Combe

自称マーケティングの達人のダンは、半導体業界で13年以上の経験を有します。その経験は製品マーケティングからマーケティングキャンペーンの管理まで多岐にわたり、メモリ業界のさまざまな側面に深く関わってきました。冒険、ランニング、フットボール、オートバイが趣味です。一方で、妻や2人の子どもたちと時間を過ごすことも大切にしており、オタク的な遊び、ビデオゲーム、レゴの組み立て、ファンタジー小説も楽しんでいます。