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自動車

世界初のクアッドポートSSDが自動車にもたらす変革

プニート・シャルマ | 2024年4月

現代の自動車は「車輪のついたデータセンター」と呼ぶにふさわしくなってきました。高度な機能やコンピューティングアーキテクチャの進化により、その呼称が日々現実味を帯びています。

例えば、コネクテッドカーは現在、約1億行ものコードで構成される最も複雑なソフトウェア駆動マシンであり、車載AIの進展によって、この数は近い将来10億行にまで拡大すると考えられています。

しかし問題は、現在の既存の自動車用アーキテクチャーが、コネクテッドカーの急増するデータ量を支えるだけの拡張性を備えていないことです。自動車は進化する必要があり、ストレージも付随して進化する必要があります。では、それには何が必要なのでしょうか?

Micron 4150AT SSDを用いた自動車用の新しい中央集中型/ゾーン型アーキテクチャーと、従来のアーキテクチャーソリューションとの比較 アーキテクチャー図1:Micron 4150AT SSDを用いた自動車用の新しい中央集中型/ゾーン型アーキテクチャーと、従来のアーキテクチャーソリューションとの比較

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中央集中型/ゾーン型アーキテクチャーへの移行

現在のコネクテッドカーは、従来のドメイン分散型アーキテクチャーから、設計を簡素化するために意思決定を一元化したドメインアーキテクチャーやゾーンアーキテクチャーに移行しつつあります。実際、マッキンゼーは2030年までに、ゾーンアーキテクチャーを採用した自動車の世界シェアが約18%に到達し、その先も伸び続けると予測しています。

既存のドメインアプローチでは、自動車用アーキテクチャーシステムは車載インフォテインメント(IVI)、コネクティビティ、パワートレインなど、車内の各機能ごとにグループ化されています。この方式はかつては有効でしたが、コネクテッドカーが高度化するにつれて、センサー、カメラ、電子機器の数が指数関数的に増加し、中には150個もの電子制御ユニット(ECU)を搭載する車両も登場しています。これにより、より複雑で重い配線が必要となり、コストと重量を増やしています。

ゾーンアーキテクチャーは、システムやデバイスを制御するECUの近くの物理的なゾーンに効率的にグループ化することで、電子部品の接続方法を簡素化します。これらのゾーンのローカルコントローラは、データセンターサーバーのような中央の高性能コンピュータークラスターに接続され、プレミアムコネクテッドカーでは、最大4つのシステムオンチップ(SoC)を備えたクラスターが使用されます。

開発中の新型車の多くは、すでにこの集中型アーキテクチャーの採用を予定しています。しかし、現在の車載ストレージソリューションは、多数のSoCをサポートし、最適なシステム効率を実現するまでには進化していません。

これらのことから、私たちは新たな車載ストレージのパラダイムとなるMicron 4150AT SSDを発表できることを誇りに思います。この製品は、データセンター向けSSDがもつ柔軟性と拡張性を基盤に開発されました。

4150ATは、データセンターで一般的に利用されているデュアルポート機能をさらに進化させ、業界で初めて4ポート構成を実現しました。さらに、シングルルート入出力仮想化(SR-IOV)の技術を組み合わせた初のSSDでもあります。

これらの画期的な機能により、業界は集中型アーキテクチャーへの移行を加速させ、よりスマートで安全なSoC搭載車両の実現を推進することができます。その方法と理由を理解するために、ボンネットの中を覗いてみましょう。

Micron 4150AT SSD 画像1:マイクロンの車載グレード、クアッドポートSR-IOV対応SSD「4150AT」

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車載AI時代に向けて構築されたドライブ

マルチポートSSDとSR-IOVテクノロジーの融合は、データ分離とデータ共有を同時に管理する強力なソリューションを提供します。4150ATの各ポートはSoCに接続可能で、最大16台の仮想マシン(VM)をサポートできるため、車載AIなどのアプリケーションでデータアクセスをきめ細かく制御することができます。

4150ATのクアッドポートは複数の独立したデータパスを提供し、ホストシステムと同時通信を可能にします。これらのポートは異なるVMまたはワークロードに割り当てられ、データトラフィックの厳密な分離を保証します。レイテンシーに敏感なアプリケーションでも、高スループットのワークロードでも、マルチポートSSDは高い柔軟性を発揮し、インサイトを得るまでの時間を短縮します。

一方で、4150AT SSDはSR-IOVによって何十ものVMを支えることができます。現在の主力SoCのマルチタスクに対する仮想化の使用が増加していることから、これは極めて重要です。さらに注目すべきは、各VMが独立したストレージ領域(ネームスペース)を持ちながら、他のVMとデータプールを共有できる点です。

システムの自動車用アーキテクチャーでは、ポートを選択的に割り当てることができるため、重要なデータを分離した状態で保持しつつ、必要に応じて効率的なデータ共有を実現できます。個人の名前空間とSR-IOVを組み合わせることで、名前空間に接続された仮想マシンまたはホストのみがデータにアクセスできるようになり、重要なデータのプライバシーとセキュリティが維持されます。クラウド環境やエッジコンピューティング、データセンターのいずれにおいても、このアプローチは正確なストレージ管理を推進します。

また、マイクロンでは4150ATの設計にあたり、セキュリティを最優先に考え、ハードウェアベースのデータ暗号化、デバイス認証、セキュアブート、暗号署名付きファームウェアなど、デバイスレベルでの最新の保護機能を搭載しています。

現在の最新自動車用アーキテクチャーの効率性を高める

では、これらの技術がどのようにコネクテッドカーのゾーンアーキテクチャーを実現するのでしょうか。従来のストレージソリューションは一般的に単一のSoCにしか接続できないため、そのストレージデバイスの容量は特定のドメインや機能(例えばIVI、ADAS、コネクティビティなど)にしか利用できません。

一部の状況下において、例えば512ギガバイトから1テラバイトのように、使用可能な次の容量に倍増しなくてもいいよう、コードをフットプリントに収めるために、多大な時間とエネルギーを費やし、妥協を許すことになります。また、特定の機能(IVIなど)のストレージデバイスに、別のSoC(ADASやコネクティビティなど)で活用できたはずの未使用領域が残ってしまう場合もあります。

マイクロンの4150AT SSDは、最大で4つのストレージデバイスを1台に置き換えることが可能です。これにより、自動車用アーキテクチャーの効率化を図りながら、システム全体のパフォーマンス、総所有コスト(TCO)、およびギガバイトあたりのコストを大幅に改善します。

なお、SoC間でストレージを共有する別の方法としては、複数のコネクテッドカーSoCを1つのストレージドライブに接続するために、高コストな車載グレードのPCIeスイッチを使用するアプローチもあります。しかしこれらはたいてい消費電力が大きく、貴重な基板面積を圧迫します。4150ATなら、マルチポート機能によってスイッチが不要となるため、自動車メーカーは車両設計の柔軟性を高められると同時に、熱発生と消費電力の両方を抑制することができます。

複数のSoCを接続できる4150ATの能力により、データの冗長性コピーを維持する必要性も軽減します。例えば、1つの都市のナビゲーションデータだけでも最大100ギガバイトに達することがあり、これらのデータは通常、ADASとIVIの両方で共有されます。

ここで既存のアプローチだと、各SoCに連動する車内のローカルストレージで、このデータを少なくとも2回保存する必要があります。それを何都市分も掛け合わせると何百ギガもの不要なストレージ容量が発生し、余分なコストや貴重なスペース・ストレージの浪費といった問題を招いてしまいます。しかし、4150ATではそのような制約はなくなります。

少しずつでも地球を救う

ここまでで、マイクロンの最新車載用SSDがもたらす画期的なメリットはよくご理解いただけたと思います。私たちがさらに注目しているのは、集中型アーキテクチャーへ移行することで実現する、よりスケールの大きなメリットです。

Vicor Powerの調査によると、配線の簡素化による軽量化によって、ゾーンアーキテクチャーは従来の自動車用アーキテクチャーと比べて電気自動車の年間航続距離を最大約6,400km延伸可能で、車両重量も最大約18kg軽減できることが確認されています。燃料自動車にとって、これは燃費向上(ドライバーにとってはガソリン代の節約)を意味し、地球温暖化が加速する中で二酸化炭素排出量の削減に役立ちます。

気候変動が深刻化する中、わずかなエネルギーの節約でも大きな意味を持ちます。私たちは、業界のエコシステムが4150ATを自動車用アーキテクチャーにどのように組み込み、より軽量で効率的、環境に優しい車両を実現していくのか、今後も注目していきたいと思います。

新時代に向けた将来性のある車両

新たな課題には新たなソリューションが必要です。だからこそ私たちは、車載用ストレージを根本から再構築し、世界初のクアッドポートSSD「Micron 4150AT」を開発しました。

そのマルチポート機能とSR-IOV仮想化によって、Micron 4150ATは自動車用アーキテクチャーのエコシステムに、これまでにない柔軟性と高い処理能力をもたらします。これにより、生成AIや完全自律走行が普及する未来のコネクテッドカーにおいて、ますます増大・高度化していく自動車データワークロードの複雑さにようやく対応できるようになります。

集中型アーキテクチャーを可能にすることによって、私たちのSSDが自動車エコシステムを強化し、スケーラブルで持続可能な方法で、これらの破壊的技術に対応する自動車の将来性を向上します。4150ATは、自動車メーカーの開発ツールキットの中では小さな存在かもしれません。しかし、その性能は非常に強力であり、業界のエコシステムが未来の自動車を再構築・再設計するうえで、無限の可能性をもたらします。

私たちはこの胸躍る変革のスタート地点に立っています。そして、よく言われるように、大切なのは目的地ではなく、その道のりなのです。

Sr. Director, NVM Product Management

Puneet Sharma

Puneet Sharma is the senior director of non-volatile memory (NVM) product management in the Embedded Business Unit at Micron Technology. He manages the NVM portfolio, including UFS, eMMC and SSD products for the automotive, industrial and consumer markets. He has been working in the industry for 18 years and has experience in NAND design, fab integration and application engineering. He currently holds 18 U.S. and international patents.

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