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マイクロン、機能安全のリーダーシップを自動車から産業市場へ拡大

イグナツィオ・マルチネス | 2025年8月

マイクロン、機能安全のリーダーシップを自動車から産業市場へ拡大

自動車、ロケット、ロボット、飛行機などの便利さと有用性を享受する私たちは、それらが安全であることを期待し、その安全性を当たり前のものと思っているかもしれません。しかし、これらのシステムの設計者にとって、安全性とそれに伴う要件は、製品の機能において極めて重要な要素です。

マイクロンは30年以上にわたり、車載用メモリおよびストレージの市場における信頼できるリーダーとして、チップセット(SoC)ベンダー、相手先商標製造会社、ティア1サプライヤー、エンドユーザーの進化するニーズに応える革新的な製品を提供してきました。卓越した品質と安全性の実績により、マイクロンは業界のベンチマークとなっています。マイクロンでは、車載用アプリケーションとミッションクリティカルな産業用アプリケーションの両方において、機能安全規格をサポートするように、また、インテグレーターが開発期間を大幅に短縮し、安全システムの認証を簡素化できるように設計された最先端のメモリを使用することが不可欠であることを理解しています。

機能安全の定義

機能安全の目的は、システムが故障した場合でも、入力に応じて安全かつ正しく動作させ続けることです。半導体分野における機能安全には、危険な状態につながる可能性のある故障を検出、管理、軽減するためのコンポーネントの設計と検証が含まれます。車載システム向けのISO 26262や産業用アプリケーション向けのIEC 61508などの業界規格は、構造化されたプロセスと安全度水準(自動車安全度水準(ASIL)と安全度水準(SIL))を定義するものであり、安全性が極めて重要なコンポーネントを開発する際の指針となるものです。

自動車の安全システムにおけるメモリの役割とは

先進運転支援システム(ADAS)と自動運転の急速な進化に伴い、車載電子機器の複雑さは最新のデータセンターに匹敵するレベルに達しています。かつては周辺的な存在と考えられていたメモリコンポーネントは、このようなシステムのパフォーマンスや安全性の核心的な要素となっています。

2022年、マイクロンは業界で初めてISO 26262 ASIL-D認証を取得しました。これはLPDDR5X DRAMに対する認証であり、メモリの機能安全における新たなベンチマークを確立しました。この画期的な出来事によって、メモリは複雑な半導体として再定義され、安全性が極めて重要なアプリケーションでプロセッサーやSoCと同じくらい重要視されるようになりました。これは単なる技術的成果にとどまらず、ADAS、インフォテインメント、自動運転プラットフォームにおいて安全で信頼性の高いパフォーマンスを実現するというマイクロンの戦略的な取り組みを示すものです。

現在、マイクロンは製品レベルでASIL-D認証を取得したDRAMを提供する唯一のメモリベンダーであり、機能安全におけるリーダーシップをさらに強化しています。産業市場への拡大を進める中、安全性と信頼性に関してこのような功績を残したことで、安全性もパフォーマンスも譲れない急速な変革期にある分野において、マイクロンは信頼できるサプライヤーとしての地位を確固たるものにしています。

表1:産業安全と機能安全のコンプライアンス 表1:産業安全と機能安全のコンプライアンス

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IEC 61508 SIL-3認証による産業安全の向上

産業分野は、スマートファクトリー、ロボティクス、エッジAIの台頭によって、抜本的なデジタル変革を遂げています。このような進歩は、新たな複雑さや重要性をもたらし、自動車業界と同等の安全基準が求められるようになっています。産業オートメーションシステムが製造、エネルギー、輸送分野に拡大するにつれて、システムの故障による影響はますます大きくなります。機械、インフラ、モビリティを管理するシステムは、フェイルセーフ設計が必須であり、厳格なSIL基準を満たすコンポーネントから順にそのように設計していく必要があります。

このニーズに対応するため、マイクロンはASIL-D対応LPDDR5Xポートフォリオを拡張し、安全度水準3(SIL 3)の要件を満たすことで、自動車と産業の両分野における機能安全への取り組みを強化しています。マイクロンのLPDDR5X製品シリーズは、系統的な能力でSIL 3に準拠していることをexidaから評価され、IEC 61508認証を取得しました。このマイルストーンにより、マイクロンは最高レベルの安全性の確保が求められるミッションクリティカルな産業用アプリケーションにメモリソリューションを展開できるようになりました。

マイクロンのLPDDR5Xソリューションは、外部安全メカニズムを使用したシステムレベルでのSIL-3準拠と、内部安全機能のみを使用したSIL-2準拠をサポートします。

2022年、マイクロンはISO 26262の製品認証とプロセス認証の両方を取得しました。製品認証はASIL準拠のメモリソリューションを提供する能力を検証するものでしたが、プロセス認証はより戦略的な評価であり、マイクロンの開発プロセス自体がASIL準拠製品を一貫して生産する能力があることを確認するものでした。この2つの認証によって、マイクロンは車載用ポートフォリオで機能安全を拡大できるようになりました。

マイクロンでは今、同じアプローチを産業分野に適用しています。代表的なLPDDR5X製品に対するIEC 61508の認証(詳細は下記参照)を取得し、それをプロセス認証と組み合わせることで、より広範な展開の基盤を確立しています。つまり、今後のマイクロン製品はこれらの認証済みプロセスに従って開発するため、IEC 61508準拠をより効率的に継承でき、市場投入までの時間を短縮でき、新製品ごとに再認証を取得する負担を軽減できます。

マイクロンは車載製品の場合と同様、産業分野の顧客にも、安全性についての文書(安全マニュアル、FMEDAに基づく安全分析レポートなど)を提供しています(表1)。これらのリソースを提供することで、透明性とトレーサビリティの確保、そして安全性が最優先される設計への容易な統合を実現させています。

産業システムがますますインテリジェント化、自律化していく時代において、SIL規格準拠のメモリはもはや選択肢ではなく、基盤そのものです。

表2:ISO 26262とIEC 61508の 簡単な比較(出典:ISO 26262、ISO 21434) 表2:ISO 26262とIEC 61508の 簡単な比較(出典:ISO 26262、ISO 21434)

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IEC 61508を理解する

前述のように、ISO 26262規格は車載システムに適用され、IEC 61508は電気、電子、プログラマブル電子(E/E/PE)システムの機能安全を実現するための世界的に認知された規格です(表2)。IEC 61508は、システムベースかつリスク主導型のフレームワークとして、工場自動化やロボット工学から医療機器、鉄道、エネルギーシステムに至るまで幅広い産業分野に適用可能です。また、IEC 61511(プロセス産業)、IEC 62061(機械)、IEC 61800-5-2(動力駆動装置)といった分野別の規格の基盤でもあります。

IEC 61508では、安全機能の信頼性の評価方法とSILの計算方法が、その動作モードによって決まります。動作モードには以下の3つがあります。

  • 低要求モード:作動頻度が低く、通常は年に1回以下(例:緊急停止)。
  • 高要求モード:作動頻度が高く、年に1回を超える可能性あり(例:安全インターロック)。
  • 連続モード:常時作動し、安全な状態を継続的に維持(例:リアルタイム制御システム)。
表3:車載用と産業用の比較:使用モードは異なるが、安全性に関する責任は同じ(マイクロンのコンポーネントに関連)(出典:ISO 26262、ISO 21434) 表3:車載用と産業用の比較:使用モードは異なるが、安全性に関する責任は同じ(マイクロンのコンポーネントに関連)(出典:ISO 26262、ISO 21434)

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Micron LPDDR5Xメモリは、最も厳しいケースである連続モードに対応し、ミッションクリティカルな産業用システムにおいて故障をリアルタイムに検出、軽減できるように設計されています。

マイクロンはIEC 61508を採用することで、規制遵守とサプライチェーンの効率化をサポートしながら、産業分野の顧客が自信を持って安全性目標を達成できるよう支援しています。

ISO 26262とIEC 61508は機能安全の原則という共通の基盤を共有していますが、それぞれの環境の性質により、モードは大幅に異なります(表3)。

表4:ランダムハードウェア故障の指標(出典:ISO 26262、ISO 21434) 表4:ランダムハードウェア故障の指標(出典:ISO 26262、ISO 21434)

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これらの違いにより、産業用システムでは、より広範な相互運用性、より長いライフサイクルサポート、より柔軟な障害処理が求められることがよくあります。マイクロンはIEC 61508 SIL-3認証を取得することで、メモリソリューションが、車載グレードの安全性に十分対応できる堅牢性を備えているだけでなく、ミッションクリティカルな産業オートメーション、ロボット工学、制御システムの固有の要求にも適応可能であることを実証しています。

Micron LPDDR5X製品は、以下の範囲でランダムハードウェア故障(RHWF)の目標指標(表4)を満たしています。

  • 内部安全機能を使用することで、数FITという故障率を達成し、SIL-2に対応。
  • 外部安全機構を使用することで、ゼロコンマ数FITという故障率を達成し、SIL-3に対応。

これらの指標は、ISO 26262 ASIL-CおよびASIL-Dの目標と一致しています。

図1:E/E/PE安全関連システム(提供:exida)、内部にMicronのメモリソリューションを搭載 図1:E/E/PE安全関連システム(提供:exida)、内部にMicronのメモリソリューションを搭載

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SIL-3認証ソリューションの活用事例

Micron LPDDR5Xメモリは、安全性が最優先される重要なコード、パラメータ、リアルタイムデータ向けの信頼性の高いストレージを提供することで、E/E/PE安全関連システムにおいて重要なイネーブラー(実現役)となっています。図1のSoCサブシステムに示されているとおり、CPUやロジック制御機能と併用されるのが一般的ですが、入出力モジュール、スマートトランスミッターやセンサー、最終要素の制御ロジックにも同様に効果的です。SIL-3認証を受けた系統的な能力によって設計されたマイクロンのメモリは、エラーを検出・軽減する堅牢な機能により、整合性の高いデータフローを可能にします。また、集中型アーキテクチャと分散型アーキテクチャの両方で幅広い安全機能をサポートし、保存されるすべてのデータは、安全性が最優先され、故障の防止、検出、制御のための広範な安全策によって保護されます。

Micron LPDDR5X製品は、システム全体の寿命期間中、いつでもリスク低減対策を発動できるよう、連続モードでの使用を想定して設計されています。この設計により、適切な故障検出と反応時間が可能になり、危険なイベントの発生を防ぐことができます。連続モードは最も厳格なケースであり、適用可能な安全対策はシステム稼働中に継続的に動作するものに限定され、定期的なオフラインメンテナンスや診断の中断に依存するものは除外されます。

LPDDR5Xに最適化されたマイクロンの画期的なエラー訂正コード(ECC)方式は、システムのインラインECCペナルティを軽減し、帯域幅を最大15%~25%拡げます7。LPDDR5Xに最適化されたこの新しいECC方式はダイレクトリンクECCプロトコル(DLEP)と呼ばれ、パフォーマンスが向上するだけでなく、故障率(FIT)の低減によりLPDDR5XメモリシステムがISO 26262 ASIL-DおよびIEC 61508 SIL-3のハードウェア指標を達成できるようになります。この新製品はさらに、pJ/b(1ビット当たりピコジュール)で約10%の消費電力を削減し、アドレス可能なメモリ空間が最低6%増加します。

組み込み安全性に関する統一ビジョンの共有

マイクロンの戦略は明確です。自動車と産業の両市場において、安全規格に準拠したメモリおよびストレージソリューションの模範的サプライヤーとなることです。マイクロンの統一されたフレームワークは、ISO 26262規格とIEC 61508規格を統合しており、安全性を第一に考える姿勢を明確に示しています。

マイクロンは、顧客向けの安全パッケージやトレーニング資料による一次サポートを提供する専門の機能安全オフィスを設けるなど、インフラへの投資を続けています。システムレベルの安全目標の達成は顧客自身の責任となりますが、マイクロンは機能安全の実現におけるメモリの役割について専門的なガイダンスを提供します。

今回の拡張は、自動車業界の顧客に向けて、最も安全なメモリソリューションを提供するというマイクロンの取り組みをさらに後押しするものです。産業の顧客にとっては、これは新たな時代の幕開けとなり、マイクロンの実証された安全性、信頼性、イノベーションを、ミッションクリティカルな産業システムにもたらします。

次世代の自動運転車を設計する顧客にとっても、信頼性の高い産業システムを構築する顧客にとっても、マイクロンは安全性において信頼できるサプライヤーです。

マイクロンの車載用メモリおよびストレージについて、また安全性とセキュリティに対する私たちの責任に関する重要なトピックスについてはこちらをご覧ください。
 

Micron Y4BM LPDDR5 SDRAMに対するexidaによるISOおよびIEC証明書 Micron Y4BM LPDDR5 SDRAMに対するexidaによるISOおよびIEC証明書

  

マイクロンのSDRAM ICハードウェア開発における機能安全管理プロセスに対する、exidaによるISOおよびIEC証明書 マイクロンのSDRAM ICハードウェア開発における機能安全管理プロセスに対する、exidaによるISOおよびIEC証明書

  

1 システム設計(「V」の左側)と、それに対応する妥当性検査と検証の活動(「V」の右側)をマッピングする開発モデルで、トレーサビリティと体系的なテストを重視。

2 欠陥、放射線、その他の物理的影響によって発生する予測不可能なハードウェア故障。冗長性と診断メカニズムによって対処。

3 特定の条件下で一貫して発生する、設計またはプロセスに関連するエラー。厳格な開発プロセスと検証によって軽減。

4 システムレベルで評価。

5 車載システムでは即時対応が求められることが多いのに対し、産業システムでは冗長性やグレースフルデグラデーションに依存する場合がある。産業システムでは、システムレベルで冗長性が期待され、マルチチャネルでの運用が求められる。また、一方のラインで安全機能を提供しながら、もう一方のラインでメンテナンスを行うことが可能。

6 PFH:1時間あたりの危険側故障の確率。1 FIT:10億時間あたり1回の故障。PFHはシステム全体の要件。FITは通常、システムのすべてのコンポーネントに割り当てられる。マイクロンのメモリに関しては、これまでシステム全体のFIT予算のごく一部、通常は数パーセントしか占めないことが想定されてきた。

7 車載用強化ECC搭載LPDDR5Xで課題の解決に挑む

Director of AEBU Standards, Functional Safety (FuSa), and Cybersecurity

Ignazio Martines

Ignazio Martines is the Director of AEBU Standards, Functional Safety (FuSa), and Cybersecurity at Micron Technology. Since joining Micron in 2010, he has held several leadership roles, including Director of Automotive Product Development and Senior Manager for Automotive Application Engineering. Prior to that, he spent 16 years at STMicroelectronics as a Design Manager. Ignazio has led global initiatives in ISO 26262, ISO/SAE 21434, ASPICE, and IATF 16949 deployment, and actively contributes to international standards bodies such as IEC, ISO. He holds more than 22 U.S. patents and earned his degree in Electronics from Università degli Studi di Palermo.