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モバイルの未来を再構築する

マイクロンテクノロジー | 2025年8月

人工知能(AI)は文字どおりユーザーに近付いています。従来のようにあらゆる推論やインタラクションをクラウドインフラに依存するのではなく、AIがモバイルデバイスに直接搭載されるケースが増えています。こうした変化は、モバイルユーザーに、応答時間の短縮、エクスペリエンスのパーソナライズ強化、自身のデータに対するコントロールが高まるといったメリットをもたらします。日々のスケジュールを管理したり、夕食の献立を前もって提案したり、通話をリアルタイムで要約したりする場合など、エッジAIは、より即時的で直感的に感じられる新たな機能を実現しています。ただし、エッジAIへの移行がもたらす効果は、単なるパフォーマンスのアップグレードだけではありません。これは、アーキテクチャーの根本的な変革でもあるのです。

モバイルデバイスの優れたAIエクスペリエンスを実現するには、リアルタイムの推論、レイテンシーの最小化、バッテリー駆動時間の最大化を可能にする高性能と高電力効率を兼ね備えたメモリとストレージソリューションが不可欠です。このような需要は、高解像度の画像・動画、センサー入力、ユーザーインタラクションのパーソナライズなど、デバイス上で直接生成・処理されるデータの量と複雑さが増すにつれて高まっています。AIモデルがさらに洗練され、コンテキストを認識できるようになると、レイテンシーとエネルギー消費を最小限に抑えつつ、膨大なデータを取り扱えるメモリシステムが必要となります。しっかりとしたメモリやストレージがなければ、極めてシンプルなAIモデルであっても、レイテンシー、電力、帯域幅の限界によって制約が生じることがあります。つまり、メモリは単なる部品にとどまらず、モバイルAIを成功に導く戦略的な鍵となる存在なのです。

モバイルAIの進化を支えるには、どのようにメモリとコンピューティングを連携させ、データを移動し、保護するかを再考する必要があります。

帯域幅と電力:2つの厳しい制約

エッジAIの活用を進めるためには、帯域幅と電力という2つの根本的な制約を解決する必要があります。

モバイルAIワークロード(特にマルチモーダルや生成系のエージェントによって動作するもの)は、大量の帯域幅を必要とし、レイテンシーの影響を受けやすいワークロードです。また、熱やバッテリーの厳しい制約の中で動作するワークロードでもあります。通常、帯域幅を高めるには、より高速な信号と、より多くのアクティブデータレーンが必要となり、その結果、消費電力が増大します。このようなトレードオフのため、メモリアーキテクチャーとデータ移動戦略の両方を最適化することが不可欠となります。このニーズにより、移動するすべてのバイトやすべてのミリワットが重要な意味を持つ設計領域が生まれます。スマートフォンで4K動画を撮影しながら、AIエージェントに近くのカフェへの注文を依頼し、GPSのナビでカフェに向かう場面を想像してみましょう。こうしたシームレスなマルチモーダルインタラクションの実現には、カメラ、音声、位置データにわたるリアルタイム処理が要求されます。高帯域幅で電力効率の高いメモリがなければ、遅延、過剰な発熱、バッテリーの急速な消耗が生じます。

メモリの壁:AIが型破りである理由

AIワークロードの動作は従来のアプリケーションとは異なります。AIエージェントは、予測可能な線形パターンでメモリにアクセスするのではなく、バースト的な非線形パターンでアクセスするため、従来のDRAMシステムに多大な負荷がかかります。この違いは、しばしば「メモリの壁」と呼ばれる現象を引き起こします。これは、メモリ帯域幅とAIアクセラレーターの速度要件との間のギャップが拡大していくことを指します。

メモリの壁は単なる技術的なボトルネックではありません。リアルタイムモバイルAIにとって根本的なアーキテクチャー上の課題です。

アーキテクチャーの移行:システムの再考

LPDDR5Xなどのテクノロジーは高い帯域幅と効率性によって進化を遂げており、OEM各社は高まる需要に対応するためにメモリ容量の拡大を進めています。このような進化により、現在のデバイスが発揮できるパフォーマンスの限界はすでに押し広げられています。

業界は、AIワークロードがもたらす帯域幅、電力、アーキテクチャー上の課題を克服するため、エッジAI向けのさまざまなイノベーションを模索しています。例えば、より高帯域幅のメモリインターフェース、より効率的なデータ移動戦略、熱的・空間的な負荷を増やすことなく相互接続密度を高める最先端のパッケージング技術などが挙げられます。規格の進化でも、まったく新しいアプローチでも、目指すところは同じです。それは、モバイルAIの複雑さの増大に対応できる、より高速で、効率的で、スケーラブルなメモリシステムを実現することです。

このような大きなトレンドの中で、帯域幅、電力効率、セキュリティ、スケーラビリティのバランスを取ることを目的とした新しいメモリアーキテクチャーとインターフェースのイノベーションへの注目が高まっています。これらはすべて、モバイルAIワークロードの複雑化と要求の高まりに伴い、ますます不可欠なものとなっています。

AIオペレーティングシステムの登場

業界では、モバイルコンピューティングの新時代が始まろうとしており、そこではAIが主要なインターフェースとなりそうです。モバイルインターフェースは、テンキーからQWERTYキーボード、そしてタッチスクリーンへと進化してきました。次に飛躍を遂げるのはAIです。単なる音声アシスタントではなく、ユーザーの好みを把握し、ニーズを予測し、人に代わって行動する本格的な状況認識システムとなります。ユーザーが仕事を終えて帰宅するタイミングを感知し、指示がなくても自宅の温度を調節し、適切なタイミングでセキュリティシステムをオフにするスマートフォンを想像してみましょう。このような変化は、インテントベースのAIオペレーティングシステム、つまり従来のモバイルOSプラットフォームと並行して稼働する新たな知能レイヤーの実現へと向かっています。マルチモーダル入力を解釈し、アプリやサービス間でタスクを調整して、よりスムーズでパーソナライズされたエクスペリエンスを実現します。

このビジョンを実現するには、これまで以上に高速、効率的かつ安全なメモリとストレージシステムが必要です。このシステムには、モバイルデバイスの電力と熱の厳しい制約の範囲内で、複雑化し続ける大量のデータフローをリアルタイムで処理することが求められます。パーソナライズされたアシスタントから、外出先におけるリアルタイムの意思決定に至るまで、AIが日常のモバイルエクスペリエンスにさらに深く統合されていく中、このような需要は高まる一方です。

しかし、AIシステムが私たちの日常生活に深く溶け込んでいくにつれて、AIシステムが処理するデータの性質はますます個人的なものとなり、プライバシーや信頼に関する重要な懸念を引き起こします。

エッジにおけるセキュリティ

AIがより個人的なものになるにつれ、使用されるデータもよりセンシティブになっていきます。パーソナライズされたエクスペリエンスを提供するAIシステムは、習慣、スケジュール、好みなど、個人の詳細なデータへのアクセスを必要とします。データをクラウド上ではなく、デバイス上に保存することで、ユーザーは主体的に管理している感覚と即時性の高さをより強く得られるようになります。

とはいうものの、クラウドプラットフォームは大規模なデータの保護において飛躍的な進化を遂げており、AIエコシステムにおいて今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。エッジコンピューティングへの移行はクラウドの置き換えを意味しません。信頼性が高く応答性に優れた新しいモデルによってクラウドを補完するものです。

業界がこのようなハイブリッドな未来を模索するにあたっては、双方の環境にまたがってユーザーデータを保護する方法を入念に検討することが不可欠です。プライバシー、透明性、制御を、システムの根本からどのように組み込むかを再考することも当然必要となってきます。

依然としてクラウドはトレーニングと調整に不可欠な存在であるものの、エッジはリアルタイムAIを実現する環境であり、両者はますます相補的になっていくでしょう。

クラウドの役割:二者択一というわけではありません。

ここではっきりさせておきましょう。エッジコンピューティングはクラウドの代替ではなく、リアルタイムで局所的な知能を実現する戦略的な補完要素です。これからはハイブリッドの時代です。

クラウドは、大規模モデルのトレーニング、更新の管理、デバイス間のインテリジェンスの調整に引き続き重要な役割を果たします。これらのタスクでは、多大なコンピューティング能力と集中的なリソースが必要となります。

リアルタイム推論やパーソナライゼーション、プライバシーに配慮すべきタスクについては、エッジで実行されることになります。エッジコンピューティングは、レイテンシーを減らし、迅速な応答を可能にするため、自律走行車やモバイルアシスタントなどのアプリケーションに最適です。

要するに、AIの未来はクラウドとエッジの併用となるでしょう。クラウドが負荷の高い処理を引き受け、エッジが迅速で局所的な知能を実現することになります。

今後の見通し

モバイルAIの未来は、チップの高速化やモデルの拡張だけではありません。システムがAIエコシステム向けに設計され、よりスマートになり、帯域幅、電力、セキュリティが根本から最適化されます。

マイクロンは、このような未来を可能にするメモリとストレージの開発だけでなく、数十億人にAIを届けるアーキテクチャーの策定にも貢献しています。こうしたイノベーションはパフォーマンスだけにとどまりません。より高速な翻訳、よりスマートなカメラ、シームレスな音声対話、真にパーソナライズされたと感じられるデバイスなど、より豊かで直感的なユーザーエクスペリエンスの実現を目指しています。この実現のため、マイクロンはチーム全体でAI中心の設計を重視し、帯域幅の向上と低消費電力化を大胆かつ新しい方法で実現するイノベーションに優先して取り組んでいます。このアプローチを用いることで、モバイルAIワークロードがさらに複雑化し、要求が厳しくなったとしても、常に先手を打って対応できます。

エッジの時代はすでに到来しています。そして、それはまだ始まりにすぎません。マイクロンはこの次なる時代を実現する基盤を築いています。

マイクロンによる次世代のモバイルAIを強化する取り組みについてご覧ください。その他のインサイトやイノベーションについては、マイクロンのエッジAIページをご確認ください。