STEM教育の重要性および継続的な進歩が今後の人材確保に欠かせない理由
科学・技術・工学・数学(STEM)により、人間は月に到達し、救命医療が発達し、環境への負担が少ないエネルギーが開発されました。私たちの毎日の暮らしは、スマートフォンの音声アシスタントにお気に入りの音楽をかけてもらうことや、ビデオ通話で両親とつながることなど、STEMによる恩恵を受けています。これが、私たちが毎年11月8日に全米STEMデーを祝い、世界を前進させるSTEM分野の探索と追求を学生に奨励する理由です。
STEM教育の高まるニーズを理解する
2030年までにSTEM分野の求人数は飛躍的に増加するとみられています。実際、米国半導体産業協会(Semiconductor Industry Association)は、2020年代の終わりには67,000人の人材が不足すると予測しています。さらに労働統計局は、STEM分野の就業機会が2031年までに10.8%増加すると見込み、非STEM分野の職業の増加は同時期2.3%のみにとどまると予測しています。現在、このことが意味するのは、マイクロンをはじめとする半導体業界の会社にとって、STEM教育のギャップを解消し、すべてのグループの人々がSTEM教育を受けられるよう支援して、将来の労働力を確保することが事業に欠かせないということです。
STEM教育と学位取得は全体的に62%の成長率ですが、過去十年の米国における人種、性別、民族性を考慮すると、STEM人材のインクルーシブなパイプラインの構築や、女性および少数代表グループの人々がSTEM分野でキャリアを追求するのを推奨するという点では、まだ行うべきことがあります。現在、STEM人材に女性が占める割合は35%のみですが、少数代表グループの人は合わせて24%、障がいを持つ人はたった3%です。
最高人材責任者でありマイクロン財団の会長である私は、ここ何年か、STEM関連職務の急激な発展を目の当たりにしてきました。データ主導型の意思決定がますます重視され、さまざまな分野でテクノロジーの統合が進んでいます。私は、エンジニア、データサイエンティスト、マイクロンの最新機器を運用する技術者も含め、多様なバックグラウンドを持つ人々が業界にもたらす価値を、これまで見てきました。そして私は今も、マイクロンが世界中でSTEM教育に投資することで、女性と少数代表グループのコミュニティにより多くの機会が創出されるように尽力しています。
私たちは、STEM教育は平等への道筋だという前提で事業を行っています。STEM教育の労働市場への影響について教師の見解を調査した研究では、STEM教育は就労機会の増加に寄与し、それにより経済成長が向上するという結果が示されました。STEM教育の卒業生の失業率は低く、それに伴い失業による社会的コストも低くなります。これらの肯定的な結果に加え、STEM教育を受けた人々は好奇心が強く、積極的に関与を深める学習者となるため、新たなキャリアの機会を切り開く企業家としての視野が養われます。
世界の若者に刺激を与える
マイクロンもマイクロン財団も、非営利組織、学校、コミュニティカレッジ、大学との新たなパートナーシップを築くことで、K-12(幼稚園~高校)STEM教育プログラムへの投資拡大を継続します。このようなプログラムは少数派グループや地方の人材のSTEM分野でのキャリア追求を歓迎し、訓練を提供し、刺激を与えています。プログラムには、Chip Camp(7~8年生)、Girls Going Tech(8年生の女子)、Careers in a High-Tech Worldジョブシャドウ(10~12年生)、そして最近追加されたChip Camp Junior(4~5年生)が含まれます。これらのプログラムを通して、何百人ものボランティア、教育者、メンターが、それぞれのノウハウと時間を生徒に提供しながら、好きな道を進もうとする生徒たちに刺激を与えています。
プログラムにおけるマイクロンのビジョンと範囲は米国に限りません。実際、2023年にはK-12 STEM支援プログラムを2倍に拡大し、Chip Campを世界で展開し、新たに台湾、中国、シンガポール、日本で開催します。全体で、これらのプログラムには今年、4,500人以上の生徒と教育者が参加しました。日本ではガールスカウト日本連盟と連携して、初めてのChip Camp for Girl Scoutsを開催しました。シンガポールでは、生徒たちがScience Centre Singaporeを訪れ、またマイクロンの施設を見学して半導体の製造方法について学びました。
米国では、マイクロン財団はニューヨーク州中部地域で初めてSTEMプログラムを立ち上げました。STEMへの情熱に火をつけることを目的として、多数のChip CampsとGirls Going Techのイベントを実施しています。Girls Going Techフォーラムの1つは、La Liga Spanish Action Leagueとオノンダガコミュニティカレッジとのパートナーシップのもと、すべてスペイン語で行われました。この体験はシラキュース地域のラテン系生徒にSTEMを紹介するもので、私たちが現地のエージェンシーやコミュニティカレッジと協力して、多様なバックグラウンドを持つ生徒たちに対応した一例でもあります。
また、私たちの代表的なプログラムを非都市部へ拡大することができました。例えば、初めてのChip Camp Jr.をアイダホ州ワイルダーで、Title 1(低所得者が40%以上)の学校と共に開催し、他にもキャニオン郡の非都市部学区および地域でキャンプを開催しました。参加を促すため、生徒の学校からキャンプの場所までの交通手段をマイクロンが無料で提供しました。
ニューヨーク州中部地域では、マイクロンテクノロジーは、地域のSTEM重視のK-12プログラムへのサポートに加え、地域における最初のコラボSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)スクールに今後10年間で1,000万ドルを投資する誓約を発表しました。STEAMスクールは、多様な社会経済、人種、地理的背景にわたる生徒に機会を提供します。これは、ニューヨークの将来の労働力を育成するものです。
すべての人々のために高等教育の機会を創出する
過去20年にわたるK-12教育プログラムで数千人の生徒へのエンゲージメントの他、マイクロンでは高等教育プログラム/機関のサポートも行っています。最近、私たちは高等教育向けSTEM教育へのアクセス機会を増やすための3つの大学ネットワークを立ち上げました。UPWARDS for the Future(半導体の未来に向けた人材育成と研究開発のための日米大学パートナーシップ)、北西部大学半導体ネットワーク、そして北東部大学半導体ネットワークです。米国と日本の大学で構成されたこれらのネットワークは、半導体の次世代人材を共同で開発することに重きを置いています。これらの機関や全米科学財団(NSF)とのパートナーシップを通して、マイクロンはカリキュラムの刷新と充実に向けた取り組みを支援します。これらの取り組みには、業界の支援による技術コンテンツの共有、クリーンルームや教育ラボへのアクセス機会を増やす体験学習プログラム、学生の研究機会の強化が含まれます。
模範を示して業界をリードする
マイクロンでは、STEM教育へのアクセスを推進するリーダー的役割を担っていますが、もっと広範に、業界が活動を行い、従来、高度技術産業に見られなかった人々がSTEMにアクセスできるようにする必要があります。STEM教育のギャップは、市場、事業、コミュニティ、非営利団体の利害関係者を関与させる機会となります。業界の企業は、戦略に基づいてギャップを解消する重要な役割を担っています。この戦略には、教育機関とのパートナーシップ、インターンおよび実習プログラム、インクルーシブな人材採用・雇用慣行、組織内での継続的な学習機会などがあります。
全体的に、STEMのあり方については大きく進歩してきましたが、まだ取り組みは始まったばかりです。イノベーションを推進するには、女性、退役軍人、障がい者、非都市部・少数派コミュニティ出身の人々を迎え入れ、アクセスを提供するための取り組みを強化しなければなりません。そのためにはSTEAMスクールとコミュニティカレッジへの新たな道筋を開き、博物館での体験型展示を開発し(例えばマイクロンが最近ニューヨーク州シラキュースの科学技術博物館(MOST)に設置したものなど)、アイダホ州ワイルダーのような非都市部コミュニティに住む学生にSTEMを直接提供します。
また、私たちは育児や介護を行う人々が教育を受ける際の障害を取り除くことの重要性を理解しています。これが、私たちが保育の利用をサポートする理由です。子供を持つ家族は、子供たちが十分にケアされた状態で自分が教育を受け、最終的には長期的なキャリアを得ることができます。
イノベーションと好奇心を称える
今年のSTEMデーは、STEMの先駆者たちを称えましょう。次世代をインスパイアするボランティアやメンターたちは、これまでに道を切り開いてきました。STEMの学生を称えましょう。彼らは将来のイノベーターであり、特許を取得し、ブレークスルーを起こし、社会を前進させる力となります。