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DRAM

フィンテックを加速させる:MRDIMMがエンタープライズ向けティック分析におけるスピードと効率を実現

スラヴァニ・ゴマタム | 2025年10月

急速に進化する金融テクノロジー(フィンテック)の世界では、パフォーマンスと効率性が何よりも重要です。証券取引システムはフィンテックの基盤を支える存在であり、膨大な量の金融データを極めて高速かつ正確に処理するよう設計されています。わずか数ミリ秒が収益性を左右する環境において、より高速で低レイテンシーなシステムは、注文実行の迅速化、スリッページ(価格乖離)の低減、他社に先んじた市場機会の獲得を可能にし、決定的な競争優位性をもたらします。本ブログでは、フィンテックの代表的なベンチマークであるエンタープライズ向けティック分析ワークロードを対象に、マイクロンのMRDIMM(マルチプレックスランクDIMM)と従来のRDIMM(レジスタードDIMM)を比較した分析結果をご紹介します。金融業界は、膨大なデータを管理・分析するために高性能コンピューティング(HPC)に大きく依存しています。こうしたシステムのパフォーマンスを左右する重要な要素が、メモリ帯域幅とレイテンシーです。

マイクロンのMRDIMM(@8,800MT/秒)は、RDIMM(@6,400MT/秒)と比較して、より高いメモリ帯域幅と、高帯域幅での低レイテンシーを実現しており、メモリ帯域に制約されるワークロードに最適な選択肢となっています。

STAC-M3 Shastaベンチマーク

550を超える金融機関と60以上のベンダー組織から構成される戦略技術分析センター(STAC)のベンチマーク評議会は、STAC-M3ベンチマークスイートを開発しました。STAC-M3は、市場の大規模な時系列データ(ティックデータ)を管理するデータベースソリューションを評価するための業界標準のエンタープライズ向けティック分析ベンチマーク群です。その中でもSTAC-M3 Shastaスイートは15項目のベンチマーク群で構成されており、データをメモリに事前に読み込んだ状態で各種クエリを実行し、アクセス速度を測定することでメモリのパフォーマンスを評価するものです。マイクロンは現在、フィンテックのワークロードにおけるMRDIMMの利点を分析するため、STACとのコラボレーションを進めています(報告書は準備中)。

主な判明事項

マイクロンは、メモリ依存度の高い2つのエンタープライズ向けティック分析ベンチマークを分析しました(Intel vTuneプロファイラーの一部であるEMONによるトップダウンパフォーマンス指標で計測)。その結果、MRDIMMの使用により、メモリ帯域幅の利用効率とレイテンシーが大幅に改善されることがわかりました。なお、これらの結果については、STACによる監査は受けていません。

Highest Bidベンチマーク:「Highest Bid*ベンチマークにおける、RDIMMと比較したMRDIMMの改善」 (画像をクリックして拡大)

Highest Bid*ベンチマークにおける、RDIMMと比較したMRDIMMの改善

  • パフォーマンスの向上:分析の結果、MRDIMM(@8,800MT/秒)はRDIMM(@6,400MT/秒)と比較して、最大13~15%の実行時間短縮を実現しました。この改善は、ミリ秒単位の差が成果を左右する金融取引において非常に重要なものです。
  • エネルギー効率:MRDIMMにより、タスクのエネルギー効率が最大26%向上しました。実行時間の短縮により、実行時間中に達成されるワットあたりの処理量で測定されるタスクのエネルギー効率が大幅に増加しており、MRDIMMはデータセンターにおけるより持続可能な選択肢となります。
  • メモリ帯域幅:MRDIMMは、メモリ帯域幅の利用効率を13%向上させました。これにより、大規模データセットや複雑なクエリをより効率的に処理できます。
  • レイテンシー:MRDIMMは、レイテンシーを25%改善しました。これは特に「時間=利益」である金融サービス業界(FSI)において大きな利点となります。

ベンチマークテストでは、メモリ内データベースであるKDB+に対してさまざまなクエリを実行し、MRDIMMによる大幅なパフォーマンス向上が確認されました。たとえば、「Highest Bid*」ベンチマーク(1年間の取引データという大規模なデータセットから最高入札価格を特定するという、キャッシュ機構を伴う複雑なクエリ処理の効率を検証するもの)では、MRDIMMの使用により実行時間が12%短縮、メモリ読み取り帯域幅の利用率が13%向上、メモリレイテンシーが25%低減する結果が得られました。

Statisticsベンチマーク:「Statistics*ベンチマークにおける、RDIMMと比較したMRDIMMの改善」 (画像をクリックして拡大)

Statistics*ベンチマークにおける、RDIMMと比較したMRDIMMの改善

同様に、一定間隔ごとの統計値を算出する「Statistics」ベンチマークでは、MRDIMMの使用により実行時間が15%短縮、メモリ読み取り帯域幅の利用率が8%向上、メモリレイテンシーが27%低減しました。

MRDIMMはさらに進化を続けています。第2世代のMicron Gen2 MRDIMMは、メモリ速度が最大12,800MT/秒へと向上し、電力効率もさらに改善。フィンテック分野において、これまで以上に高いパフォーマンス向上を実現しています。

結論

今回の分析結果は、フィンテックのワークロードのパフォーマンスと効率を高める上でMRDIMMが持つ大きな可能性を示しています。高いメモリ帯域幅、低レイテンシー、優れたエネルギー効率を兼ね備えたMRDIMMは、金融業界のメモリ依存度の高いアプリケーションに最適な選択肢です。今後も業界の進化に合わせ、MRDIMMのような先進的なメモリソリューションの採用が、競争の激しいフィンテック市場で優位性を維持するための鍵となるでしょう。

*ベンチマーク名は匿名化されています。

Systems Software Engineer

Sravani Gomatam

Sravani Gomatam is a Systems Software Engineer in the Data Center Workload Engineering group of Micron's Cloud Memory Business Unit; benchmarking the performance of memory products to help support Micron’s product portfolio in fields like the financial services industry.

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