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SSD

AIやクラウド向けSSD開発の最先端を行くマイクロンのG9 NANDベースSSD

アルバロ・トレド | 2025年7月

マイクロンは本日、パフォーマンス、容量、効率性を飛躍的に前進させるデータセンター向けNVMe™ SSDの刷新されたポートフォリオを発表しました。全製品にマイクロンのG9 NANDフラッシュを使用したこのラインアップにより、マイクロンは、データセンター向けに第9世代NANDベースSSDを導入した世界初の会社となり、旧来のフラッシュテクノロジーに立脚している競合他社を大きく引き離すことになります。刷新されたこのポートフォリオの主力ドライブは、以下の3種類となります。

  • Micron 9650:この世界初のPCIe® Gen6 SSDは、非常に厳しい条件が要求されるワークロードで28GB/秒という記録的な速度を実現します。
  • Micron 6600 ION:マイクロンの革新的なG9 QLC NANDをベースに、122TBの容量とE3.Sのフォームファクタで業界をリードします。近日中に245TB、E3.Lフォームファクタの発売も計画されています。
  • Micron 7600:メインストリームのワークロード向けに、クラス最高のレイテンシーとサービス品質(QoS)を提供するPCIe Gen5 SSDです。AIおよびクラウドインフラの確実な拡張をサポートします。

このブログでは、各SSDのテクニカル仕様を検証し、クラウドプロバイダーやエンタープライズ顧客にとって、これらのイノベーションがなぜ重要なのかに注目しつつ、市場へのインパクトを探ります。また、G9 NANDにおけるマイクロンのリーダーシップが、パフォーマンスの向上、エネルギー効率の改善、ストレージインフラにおける総所有コスト(TCO)の削減など、具体的なメリットにどのようにつながるかも検証します。

Micron 9650:PCIe Gen6によるパフォーマンスのブレイクスルー


Micron 9650は、マイクロンの新しいフラッグシップとなる高性能ドライブであり、業界初のPCIe Gen6データセンター向けSSDです。このドライブは、AIトレーニング、機械学習、キー値キャッシュ、ベクトルデータベースインデックス、グラフベースの変換モデルなど、最もデータハングリーなアプリケーションおよびユースケースへの対応を目的として、ストレージボトルネックを排除します。Micron 9650の技術的ハイライトを以下に示します。

Micron 9650 PRO Gen6製品と競合製品を比較するインフォグラフィック

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  • PCIe Gen6 x4インターフェース:Gen5と比べてレーン速度が2倍のPCIe Gen6は、スループットの大幅な改善を実現します。Micron 9650は、最大28GB/秒のシーケンシャル読み取り帯域幅を示しており、これはSSDパフォーマンスの新記録です。実際、この数値はMicron 9550などの主要なPCIe Gen5ドライブの約2倍のパフォーマンスに相当します。ちなみに、PCIe Gen5ドライブは一般にシーケンシャル読み取りで14GB/秒前後がピークとなるので、Micron 9650が達成した速度はまさに圧巻と言えます。また、Micron 9650は最大14GB/秒のシーケンシャル書き込みも達成します。
  • 巨大な入出力(I/O)レート:Micron 9650は、マイクロンの新しいコントローラアーキテクチャーとMicron G9 TLC NANDのおかげで、高キューデプスで550万ランダム読み取り入出力操作毎秒(IOPS、4K)を達成可能です。ランダム書き込みパフォーマンスは、構成によっては90万IOPSに達します。このI/O性能により、深層学習フレームワーク(TensorFlow®、PyTorch®、CUDA®-Xライブラリ使用)、データサイエンスおよびアナリティクスライブラリ(RAPIDS™、Apache Spark™、GPUアクセラレーション使用)、科学技術計算アプリケーション、NVIDIA® GPU Direct Storageを使用するワークロードなど、同時発生的かつ混合型のワークロードでも、最小限のレイテンシーで処理できるようになります。
  • 高容量:Micron 9650は、業界をリードする6プレーンアーキテクチャーと、1ダイあたり3.6GB/秒のI/O速度を備えたMicron G9 TLC NANDを採用しています。これはさまざまなユースケースに適合するよう、6.4TBから最大30.72TBまでの容量で提供されます。読み取り集中型(1 Drive Write Per Day [DWPD])とミックスユース(3DWPD)の両方の耐久性モデルが使用可能であり、それぞれPROおよびMAXのラベル付きです。
  • エネルギー効率と冷却:マイクロンはMicron 9650の設計に際して、速度だけでなく効率性も重視しました。インターフェース帯域幅の大きさにもかかわらず、このドライブは1ワットあたりのパフォーマンスが最適化されています。また、高密度のAIサーバー向けの液冷オプションを含む、先進的な冷却を念頭に置いた設計になっています。ドライブあたりの処理容量が大きくなり、最新のコールドプレート冷却オプションに対応するMicron 9650は、AIインフラの環境フットプリントの削減に貢献します。
データプロセスワークロード研究を示すインフォグラフィック

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Micron 9650が市場に与えるインパクトは、非常に大きいものがあります。このドライブにより、来たるべき最先端のCPUおよびGPUが、その潜在力をフルに発揮することが可能になります。たとえば、NVIDIAの新しいGPUアクセラレーション付きのサーバー(今後のRubinベースのシステムなど)は、PCIe Gen6リンクをサポートしており、Micron 9650をプラグインすれば、これらのGPUへの1ドライブあたりの帯域幅が直ちに2倍になります。そのため、データ集約型のワークロードにおけるデータの取り込みと処理を高速化し、トレーニング時間を短縮するとともに、コストの高いコンピュートリソースでスループットを改善することができます。

Micron 9650をこのタイミングで発表することで、マイクロンは先頭を切ってPCIe Gen6ストレージを市場に投入し、エコシステムを積極的に築いています。パートナー各社はMicron 9650の初期サンプルを使用し、次世代ソリューションを実証しています。たとえばComputexでは、Astera Labsが2つのMicron 9650エンジニアリングサンプルを、Hopper GPUにデータを供給するPCIe Gen6スイッチに接続して展示しました。

Micron 6600 ION:容量で新記録を樹立、TCOにおけるゲームチェンジャー


Micron 9650のテーマがパフォーマンスだとすれば、Micron 6600 IONのテーマは、コスト効率に優れた大容量です。この製品は、Micron G9 NANDテクノロジーを採用したクアッドレベルセル(QLC)ベースのドライブであり、過去に発表されたどのSSDよりも密度の高いSSDとして登場しました。Micron 6600 IONには、3つのサイズがあります。U.2フォームファクタ(容量32TB~128TB)、E3.S 1Tフォームファクタ(最大で128TBを提供)、そして近日発売予定のE3.Lバージョン(ターゲットは驚異の245TB、1つのドライブで1ペタバイトの約4分の1)です。ちなみに、従来のメインストリームのデータセンター用SSDは、約30TBから60TBが上限であり、最も高密度のHDDでさえ容量は36TBでした。したがって、Micron 6600 IONは過去の容量限界をあっさりと消し去ります。これは、以下のように大きな意義があります。

Micron 122TB E3.Sフォームファクタの1ラックあたりのストレージ容量を示すインフォグラフィック

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  • ストレージの統合:E3.Sで1ドライブあたり122TBのMicron 6600 IONを使用すると、並外れたラックレベル密度を実現できます。1Uサーバーシャーシ1つで、フロントロードのE3.Sドライブを20個収容できます。2Uサーバーにこのような122TBドライブが40個あるとすれば、総容量は4.88PBとなります。それに比べて、標準の2Uサーバーに収容できるフロントロードのU.2ドライブは、24個です。つまり、Micron 6600 IONは、市場に出回っている既存の122TBドライブと比べて約67%高い密度を提供します。同じ量のデータを保存するのに必要なラック数が少なくなるため、床面積のコストやインフラ関連の諸経費が削減されます。実際、従来のU.2 SSDではなくMicron 6600 IONドライブを使用すると、1エクサバイトを保存するために必要なラックの数は7ラック少なくなり、データセンターのスペースを200平方フィート近く節約できます。
  • HDDから装換した場合の経済性とエネルギー効率:Micron G9 QLC NANDをベースとするMicron 6600 IONは、容量中心型ワークロード向けのコスト効率に優れたフラッシュソリューションとして設計されており、従来の回転ディスクに代わる説得力のある代替手段となります。E3.Sで最大122TB、さらに、近日中に予定されているE3.Lで245TBの容量を備えた6600 IONは、ストレージを劇的に統合します。たとえば、容量の観点から122TBのドライブ1つで、3つの36TB HDDを置き換えることが可能です。それと同時に、電力消費量は数分の一まで抑えられ、はるかに低いレイテンシーと優れたスループットが提供されます。AIスケールの環境で一般的な1EBの実装では、HDDからMicron 6600 IONに移行することで、25,000のニアラインハードドライブを廃止できます。これは電力とスペースの相当な節約になります。ラックレベルでは、Micron 6600 IONは最も高密度のHDD構成と比べて、最大3.4倍の密度と3,000倍以上のIOPSを提供します。こうした結果により、1ワットあたりのパフォーマンスが劇的に改善され、TCOが削減されます。上記の数字は、最適なHDDサーバー密度(例:1Uあたり20 x 36TB HDD)とE3.Sドライブを使用したE3.Sベースのサーバーとの比較など、控えめな比較に基づくものです。顧客は最終的に、パフォーマンスに妥協することなく、インフラを統合し、データセンターのフットプリントを縮小し、サステナビリティ目標を達成することができます。

技術的な観点から言うと、Micron 6600 IONはMicron G9 QLC NANDを採用しており、世界初の第9世代QLC SSDとなっています。マイクロン独自のコントローラ、DRAM、ファームウェアを組み合わせた、この垂直統合のデザインは、強力なパフォーマンスと信頼性を実現します。このSSDは、標準のNVMeと、OCP 2.6やCNSA 2.0などのエンタープライズ機能をサポートしています (このアーキテクチャーは実績のある旧モデルのMicron 6550 IONと共通ですが、新たにMicron G9 NANDによってブーストされています)。耐久性は読み取りを焦点としており(4Kランダムワークロードで≤ 0.3DWPD)、データレイク、AIトレーニングデータ、コンテンツリポジトリなど「大量の読み取り、少量の書き込み」シナリオに適しています。この種の用途では、極端な書き込み耐久性よりも、1テラバイトあたりのコストや、密度のアドバンテージのほうがはるかに貴重です。

122TB E3.Sソリューションの導入は、ストレージ設計を一新します。低速・低コストなストレージと高速・高コストなストレージを絶えず使い分けているクラウドプロバイダーは、SSDの速度でニアライン容量を提供する、新しい選択肢を利用できるようになりました。

Micron 7600:AIとクラウド向けの新たなメインストリームNVMe


Micron G9テクノロジーポートフォリオを完成させるのは、データセンターで幅広く採用される現実的なドライブに位置付けられるMicron 7600 SSDです。人気の高いMicron 7450およびMicron 7500シリーズの後継であり、PCIe Gen5インターフェース上のMicron G9 TLC NANDおよびNVMe 2.0にアップグレードされています。Micron 7600は、Micron 9650やMicron 6600 IONほど専門的ではありませんが、特に混合ワークロードのレイテンシーや信頼性の観点で、メインストリームサーバーやストレージアレイを導入する顧客から、高く評価される有意義な改善を行っています。Micron 7600の主な機能と仕様は以下のとおりです。

  • PCIe Gen5パフォーマンスの優位性:Micron 7600は、容量に応じて最大約12GB/秒のシーケンシャル読み取り、6.5~7GB/秒のシーケンシャル書き込みという、PCIe Gen5の限界内で高いスループットを提供します。このシーケンシャル書き込みは、現在市場に出回っている直近の競合他社のPCIe Gen5メインストリームドライブと比べて約27%高速です。同様に、ランダム読み取りパフォーマンスは210万IOPS(4K)に達し、他のメインストリームSSDを凌駕しています。
  • 低レイテンシーとサービス品質の優位性:マイクロンは、最新のクラウドおよびAIタスクは単に最大のIOPSだけでなく、末尾のレイテンシーにも影響されやすいことを認識し、Micron 7600ではレイテンシーの一貫性を非常に重視しました。その結果、Micron 7600は同クラスで最も低い読み取りおよび書き込みレイテンシーを実現しています。99.9999%(シックスナイン)のQoS閾値においても、キュー深度256(QD256)の4Kランダムリードで1ミリ秒未満のレイテンシーを維持します。同じ条件で比較した場合、Micron 7600の読み取りレイテンシーは、さまざまな読み取り/書き込みミックスにおいて、現在市場に出回っている競合他社のPCIe Gen5メインストリームSSDと比べて55%~67%低いことが確認されています。言い換えると、(オンライントランザクション処理[OLTP]データベースや、AI推論クエリー等でよく見られる)ヘビーな混合型ワークロードにおいて、Micron 7600は、より高速ではるかに予測しやすく、これは高速なアプリケーション応答時間と、厳格なサービスレベルアグリーメント(SLA)に直結します。これらの拡張機能により、レイテンシーの影響を受けやすいシナリオで理想的な選択肢となります。たとえば、小さなランダム読み取りを大量に実行するAIレコメンデーションエンジンの場合、Micron 7600の迅速かつ一貫性のあるデータアクセスを利用して、エンドユーザーエクスペリエンスを改善することが可能になります。
  • エンタープライズ級の機能:Micron 7600はメインストリームドライブとして、既存のエンタープライズエコシステムに適合する設計となっています。最新のOCP 2.6およびNVMe 2.0b仕様に加え、SPDM 1.2やTCG Opal 2.02など、業界をリードするセキュリティ仕様にも対応しています。さらに、物理的に分離された専用のセキュリティ処理ハードウェアを提供するMicron Secure Encrypted Environment(SEE)のおかげで、このドライブはCNSA 2.0およびFIPS 140-3 Level 2コンプライアンスに対応可能です。
Micron 7600のエネルギー効率を競合製品と比較するインフォグラフィック

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  • 電力と効率性:PCIe Gen5であるため、Micron 7600は負荷がかかると消費電力がやや増加します(約20~25W)。ただし、Micron G9 NANDの効率性とコントローラの最適化のおかげで、1ワットあたりのパフォーマンスが向上しています。たとえば、25Wで約40万の4Kランダム書き込みIOPSを実行可能です。これは、一部の競合製品と比べて1ワットあたりのIOPSが高いこと(競合製品の2倍)を意味します。また、混合ワークロードのスループットが優れているため、1個のMicron 7600で複数の旧式ドライブを置き換え、エネルギー消費を一本化しながら同じワークロードを達成できます。全体として、Micron 7600ではエネルギー使用量を抑えながらPCIe Gen5の速度を利用することができ、総運用コストを削減できます。

Micron 7600は、仮想化されたエンタープライズワークロード、クラウドインスタンス、ウェブサービスから、AI推論、エッジコンピューティングまで、幅広い用途をターゲットとしています。高速性と低レイテンシー性の魅力的な組み合わせが提供されます。つまり、トレードオフを強いられることがありません。顧客は、IOPSと一貫性を同時に手に入れることができます。

結論として、マイクロンの刷新されたポートフォリオ(Micron 9650、6600 ION、および7600)は、製品のみならず、ストレージにおける技術的リーダーシップの提示としても重要な意義があります。これら3つの製品はすべてMicron G9 NANDを採用し、TLCおよびQLCバリアントとともに、競合他社に先駆けてそのメリットを市場にもたらします。マイクロンは、データセンター向けSSDラインアップ全体をMicron G9 NANDに移行することにより、パフォーマンス、密度、効率性の向上を各セグメントで実現しています。

この先行者利益は、Micron 9650のスループットをブーストする巨大な6プレーンの並行処理、122TB E3.SのMicron 6600 IONを実現するMicron G9 QLCのビット密度の優位性、Micron 7600の改善されたレイテンシー特性など、この記事で述べた仕様に現れています。こうした優位性は、すべてマイクロンのNANDイノベーションに由来します。市場全体の観点から見ると、マイクロンが提供する速度、スケール、節約は、まさにデータセンターおよびクラウドの顧客が望んでいるものです。

Micron G9 NANDテクノロジーに基づくデータセンターSSDポートフォリオは、単なる製品発表ではありません。データセンターストレージの未来が、より高速、高密度、サステナブルになることを示すシグナルです。Micron 9650、6600 ION、および7600により、マイクロンは単に基準に遅れずについて行くのではなく、基準を設定しつつあります。

Americas VP & GM, Core Data Center Business Unit

Alvaro Toledo

Alvaro is Micron's Americas Vice President and General Manager of Core Data Center Business Unit (CDBU). He is responsible for strategy, product and technology roadmaps, technical customer engagement, and profit and loss (P&L) for core data center products. Alvaro earned a bachelor's degree in computer science from National University and an MBA from the Haas School of Business at the University of California, Berkeley.