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C-V2X:ADASと自動運転車に第六感を与える

マイクロンテクノロジー | 2021年8月

自動車の先進運転支援システム(ADAS)や自律走行技術は、車両の周囲で何が起こっているかを検知する際、通常はカメラ、レーダー、ライダーなどのセンサーに依存しています。これらのセンサーのデータは車載システムに送信され、車載システムはそれを処理して瞬時に反応します。その結果、車両は近づきつつある障害物を検知し、人間のドライバーよりもはるかに速く、加速やブレーキなどの反応を自動的に行うことができます。

従来の知覚センサーでは車両の周囲360度を見渡すことができますが、それでも限界があります。例えば、カーブの先や街を見渡すことはできませんし、道路上で危険や減速に出くわす前にドライバーに警告することもできません。その上、これらのシステムは受信した視覚データを解釈する際、人工知能(AI)に依存しているため、一部のエッジケースでは対象物を誤認する恐れがあります。

自動車に「第六感」、つまり周辺環境を把握し、目の前の道を案内する全く新しい方法であるC-V2X(Cellular vehicle-to-everything)通信は、知覚センサーを基にしたシステムの欠点に対処します。

視線能力を超える

C-V2Xコネクティビティソリューションで業界をリードするサプライヤーのAutotalksが説明する通り、C-V2Xは専用ワイヤレススペクトラムを使用して、自動車同士や、信号機や歩行者を含む周囲のC-V2X対応オブジェクトとの通信を可能にします。C-V2Xは、視覚を複製する従来のセンサーとは異なり、半径1マイル(約1.6km)以内のカーブや障害物のその先を「見る」ことができます。

「C-V2Xは、ライダーやレーダー、カメラ、そして超音波のようなセンサーです」と説明するのは、AutoTalksの研究開発担当VPであるアモス・フロイントです。「しかし、C-V2Xには『向こう側』に通信する相手、V2V(Vehicle to Vehicle)、またはV2I(Vehicle to Infrastructure)がいます。また、C-V2Xは非視線方向機能を持つ唯一のセンサーで、障害物の裏側を見ることができます。加えて、霧、夜間、直射日光など、あらゆる天候や照明条件下で作動し、『見る』ことができます」 つまり、C-V2Xは運転体験に第六感をもたらすのです。

C-V2Xシステムは、ミッションクリティカルなパフォーマンスと信頼性を実現する必要があり、Autotalksはより高い受信感度とメッセージの最大数に対応する通信距離と計算帯域幅が必要であると予測しています。他の車からのメッセージは、近い遠いに関わらず受け取らないわけにはいきません。

Autotalksは、双方向のC-V2X通信は視覚AIシステムよりもはるかに高い精度で対象物を識別できると言います。次世代C-V2Xでは、ある車の知覚センサーがオブジェクトを検出、その車の処理エンジンがオブジェクトを分類し、その結果をC-V2Xシステムに中継して他の車に全送信します。このシステムは、プロセッシングサブシステム、ハードウェアアクセラレーター、内部および外部メモリーサブシステム、知性を与えるソフトウェアスタックなどのハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されます。

Autotalksによると、C-V2X技術が他の車や交通インフラと効率的に通信することで、ドライバーの衝突やその他の危険な状況の回避を助け、交通安全を劇的に向上することができます。これらの通信を通じて、ドライバー支援システムや自律走行システムは、道路上のトラブル回避のためのルート変更やその他の対応を促すアラートを受け取ります。米国運輸省道路交通安全局は、C-V2Xシステムを完全に導入することで、年間約450万件の衝突事故が軽減できると推測しています。Autotalksでは、自動車が選択されたルートを調整して渋滞を緩和、解消することから、移動性の向上がこの技術の直接的な成果になる日も近いと期待しています。

車のルーフ

C-V2X接続数に合わせてメモリパフォーマンスを向上

この新しい技術では、途切れるこのない通信で信頼性の高い一定のデータフローが要求されます。一定の通信を確保するには、小型のシャークフィンアンテナのフットプリントに収まるだけでなく、最も過酷な環境にも耐えられるメモリソリューションが必要です。

幸いなことに、マイクロンの車載用途認定済みのDRAMは、C-V2Xのようなミッションクリティカルなアプリケーションに対し、優れた性能、耐久性、システムの信頼性を保証します。

「2026年までに、通信は自動車以外にも、歩行者や自転車にまで広がるでしょう」とフロイントは話します。「これは、スマートフォンやウェアラブルデバイス、バックパックに取り付けられたタグで実現可能です。継続的な更新でドライバーだけでなく全てのユーザーに安全性を提供する、完全なダイナミック視覚ネットワークです」

2022年末までにV2Xノードは580万個になり、2021年末までに推定されたノード数の3倍に及ぶという予測もあります。他の自動車や交通インフラからのデータが加わると、必要な帯域幅は劇的に増加します。現在、これらのC-V2Xネットワークは20MHzです。このような未来のシナリオでは、高度な自動運転を支える特定の5G機能と共に、少なくとも追加で40MHzの帯域幅が必要になります。そしてこれは、ネットワーク単体に必要な値です。ネットワークに加え、新しいアプリを使って機能を追加し始めたら、メモリ要件は増え続けます。

「より高度になればなるほど、メモリパフォーマンスも向上する必要があります」とフロイントは続けます。「しかし、バッテリー寿命だけでなく温度条件のためにも、低消費電力が必要となります。デスバレーを走行するなら、ミネソタとは違います。そのため、消費電力は極めて低くないといけません。最後に、車のルーフの板金とヘッドライナーの間に収まるよう、全てが超小型、極めて小さいフットプリントである必要があります。シャークフィンアンテナには、C-V2Xの機能に必要なモデム、プロセッサー、メモリなどのネットワークアクセスデバイス全体が装備されるので、小型メモリはAutotalksにとって最も重要です。

C-V2Xのもう1つの重要な要素はセキュリティです。不正データのインジェクション、つまりハッキングは、C-V2Xダイナミックネットワークを使い物にならなくする可能性があります。このため、ネットワーク上を流れる情報はすべて認証されています。自動車メーカーが新しいシステムを導入する際は常に、セキュリティを確保するために認証情報を受け取らなくてはなりません。Autotalksは、これらのネットワークを保護するハードウェアおよびソフトウェアのセキュリティモジュールを提供し続けることをお約束します。

現在と未来のコンピューティング集約型自動車の実現

Autotalksは、C-V2Xが安全性と交通渋滞に与える影響は驚異的なものになると予測しています。C-V2Xにより、より安全で渋滞の少ない道路を実現する新たな道筋が期待されています。メモリが非常に重要なコンポーネントであることから、Autotalksはイノベーション推進のために、最先端で信頼性の高いパートナーを選びました。Autotalksは、C-V2Xのようなミッションクリティカルなアプリケーションの実現に向けて、マイクロンの車載用途認定済みDRAMの性能と信頼性を信じています。

マイクロンはAutotalksと協力して、現在および未来の自動車による新しい通信方法、つまり第六感の強化を目指しています。近い将来、これらの車は完全な相互接続ダイナミックネットワークの一部となり、ほぼリアルタイムでデータを共有できるようになります。C-V2X技術は、すべての利用者に効率的で安全な移動体験をお届けするための基盤となります。

マイクロンは30年にわたり、この変革を支える車載用メモリおよびストレージソリューションの業界リーダーであり続けてきました。マイクロンの自動車ソリューションに向けた継続的な出資と包括的な車載用ポートフォリオは、今後30年間におけるグローバルエコシステム全体を通して、信頼されるアドバイザーとしての私たちの役割を強化します。

Autotalksの最先端C-V2Xソリューションの詳細については、auto-talks.comをご覧ください

業界を牽引するマイクロンのメモリソリューションと自動車市場に対する30年の実績については、micron.com/automotiveをご覧ください。

1:出典 米国道路交通安全局「Vehicle-to-Vehicle Communications:Readiness of V2V Technology for Application(車両間通信:V2V技術適用に向けた準備)」2014年8月