マイクロンが自動車業界で30周年を迎えるにあたり、集団としての私たちの成功の基盤となった緊密なパートナーシップ、コラボレーション、人間関係なくして、これまでの歩みは不可能だったことを改めて認識し、感謝しております。この機会に、私たち全員から、この過程に参加していただいたすべての方々に心からの感謝の言葉を捧げます。また、最近お知り合いになった方々も、これからどうぞよろしくお願いいたします。
自動車業界の変革に拍車をかける車載用メモリとストレージ
T型フォードが組み立てラインで初めて生産されて以降、パワートレイン向けに16KビットEEPROMを認定したことが自動車業界最大の転換の端緒になることを、30年以上前にいったい誰が想像できたでしょうか。それから100年以上が経ち、インテリジェンスが自動車業界の新たな馬力になっています。自動車のデータ生成量とソフトウェアの複雑さは指数関数的に増大しており、今日の高級車には約1億行のコードが含まれています。業界が完全自動運転車を目指す中で、この行数は3億行を超えると予想されています。1
コネクテッドカーは、1時間に最大25GBのデータを生成します。2車両のアーキテクチャーにもよりますが、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車(AV)のセンサーは、1日に4TBから20TBのデータを生成します。3このデータは、計算中心の人工知能(AI)を搭載したシステムが瞬時に反応できるようにリアルタイムで処理する必要があり、最新の車両は究極のインテリジェントエッジデバイスとなっています。こうしたデータ集約型システムの駆動に必要なメモリとストレージの量は2023年には推定50億ドル規模にまで成長するとみられ4、半導体市場で最も急速に成長している分野の1つとなっています。
今後、完全自動運転車(レベル5)では、メモリ帯域幅の合計が毎秒1テラビット(Tbps)を超えると予測されています。5メモリ、ストレージ、システム帯域幅の合計はまさに驚異的で、16KビットのEEPROMが高密度デバイスと見なされていた時代から著しく変化しています。
自動運転車に関する最初期の夢
T型フォードが組み立てラインで初めて生産されるとほぼ同時に、世界は自動運転車を夢見るようになりました。個人所有の自動車が変革をもたらすことは証明されましたが、大量生産車の導入後100年あまりの間、自動運転車というビジョンの実現に関しては、実際の進展はほとんど見られませんでした。自動運転車を設計する試みの最も古い事例の1つとして記録されているのは、1920年代のことです。6しかし、センサー、コンピュート処理、AIアルゴリズム、メモリ帯域幅、無線通信など、複数のテクノロジーの進歩と有効性が重なり、昔からあった自動運転車というビジョンが現実に近づいたのは、やっとここ10年ほどのことです。
今日、自動運転車の大量生産は文字どおり「すぐそこ」まで迫っています。ただし、このビジョンを実現するには、路上の物体の行動を検出、認識、追跡、予測するために使用されるさまざまなセンサーからの膨大な量のデータを処理する必要があります。完全自動運転車は、毎秒最大5ギガバイトのセンサーデータを必要とする可能性があります1。完全自動運転には、毎秒300テラ(兆)オペレーション(TOPS)をはるかに超える極めて高いリアルタイムAIコンピュートパフォーマンスが必要です2。
車内エクスペリエンスの静かな革命
自動運転(AD)は当然ながらあらゆる鳴り物入りの機能を備えていますが、完全な自動運転車よりもはるかに先行して、ADASと機能豊富な車室が今日の半導体コンテンツの成長の大部分をけん引していると認識することが重要です。自動車のインテリア/コックピットと「車内エクスペリエンス」(IVE)は、コンシューマーの購買決定やOEM(相手先商標製造会社)のブランドアイデンティティにおける重要な要因となっています。
コンシューマーが期待するのは、コネクティビティの向上、すぐ手の届くところにある情報、スマートフォンのようなシームレスなユーザーエクスペリエンスであり、お気に入りのスマートフォンアプリケーションがすべて車内でネイティブサポートされることです。これらのアプリケーションには、没入感のあるエクスペリエンスを提供する高解像度ディスプレイの数とサイズがますます大きくなる中で対応する必要があります。情報や乗客エクスペリエンスが豊富な車室がますます重視されるようになるとOEM(相手先商標製造会社)が認識する中で、IVEのイノベーションはとどまるところを知りません。自動運転車の未来では、実際の運転エクスペリエンスから個人の嗜好、エンターテインメント、生産性に基づくエクスペリエンスにフォーカスが移るためです。
ソフトウェアコード、ユーザーペルソナ、5G
業界が「サービスとしてのモビリティ(MaaS)」を提供する足がかりを得るにつれ、コンシューマーが交通サービスプロバイダーを選択する際には、車内エクスペリエンスの継続性だけでなく、車両の見た目にも影響されると予想されます。これも、歴史的に「金属を曲げる」という視点に基づいてやってきた業界が、今や「シリコンを切る」ことでブランドとアイデンティティを確立する業界へと大きく変化していることを反映しています。
自動車のソフトウェアフットプリントが3億行を超えるコードに拡大する中で、更新情報や機能強化についていくには、Over-the-Air(OTA)アップデートへの対応が不可欠になります。また、月額利用料とソフトウェアのダウンロードによって自動運転その他の機能を有効にできる、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)のような機能に対応することも重要です。MaaSの場合、ユーザーペルソナはクラウドに保存され、ドライバーが自分の車や同じブランドのレンタカーに乗り込むたびにその情報を読み出します。この機能を実現するには、高性能な5Gコネクティビティとシステムレベルのセキュリティが極めて重要となり、そこに妥協の余地はありません。
自動車の安全な未来の確保
ハードウェアとソフトウェアがどちらも安全性と信頼性を確保できるように、セキュリティと機能安全は両方とも重視されています。この複雑で高性能な車輪付きソフトウェアコンピュートプラットフォームには、最大限の信頼性が要求され、基盤となる車両アーキテクチャーは全面的に見直されつつあります。私たちは現在、インフォテインメント、ADAS、その他のシステムを1つのアーキテクチャーに統合する、分散型から集中型/ゾーンベースのアーキテクチャーへの進化を見守っています。
必要な機能安全(FuSa)レベルを達成するには、その複雑性を増す組込みソフトウェアプラットフォームにおけるメモリの影響と役割にいっそう焦点を合わせる必要があります。従来のシステムオンチップ(SoC)とメモリの両方にISO 26262で評価したソリューションを採用することは、これらのFuSaレベルを満たすために不可欠であることがわかるでしょう。もちろん、そのすべてはゼロ欠陥レベルの品質を達成・提供することを目指すマインドセットの上に成り立っています。
今後長きにわたるリーダーシップの計画
マイクロンは30年にわたり、自動車業界の変革の最前線に立つことができたことを光栄に思っています。自動車業界でメモリのトップサプライヤーとして、世界市場シェア39%7を占めるまでに成長できたのは、一貫したフォーカス、投資、コラボレーションによるものです。その緊密なコラボレーションを通じて、私たちは、現在と今後30年にわたり、データ駆動型の自動車に拍車をかける半導体についての見解を確立しました。効率的な設計サイクルは、マイクロンが新しいテクノロジーを高品質、低コスト、かつ短期間で実現し、規模を拡大するのに役立ちます。
マイクロン製メモリを使用した数兆マイルに及ぶ走行実績から、マイクロンは自動車業界の最前線に位置付けられており、馬力や加速度ではなく、コンピュートパフォーマンスや車内エクスペリエンスで評価される態勢が整っています。
安全性、セキュリティ、パフォーマンス、品質、長寿命、イノベーション、カスタマーサポートのいずれに重点を置くにせよ、マイクロンは次の30年間も車載用メモリのリーダーであり続け、現在と未来の要件に対応する革新的な車載用DRAM/NAND/NORベースのソリューションで業界をリードするポートフォリオを提供することを約束します。
マイクロンとともに歩みを進めてきたすべての方々に改めて感謝します。次の30年がどんなものになろうと、これからもよろしくお願いいたします。
1. https://blogs.sw.siemens.com/polarion/the-data-deluge-what-do-we-do-with-the-data-generated-by-avs/
2. https://www.nvidia.com/en-us/self-driving-cars/drive-platform/hardware/
3. https://iotnowtransport.com/2019/02/12/71015-data-storage-key-autonomous-vehicles-future/
4. 複数のアナリストレポートと2023年10月以降のその他の社内財務データとの三角比較によるマイクロンの市場推計
6. 戦略アナリティクスレポート:OEM自動運転車の戦略とロードマップ:新型コロナウイルス感染症の影響、2020年7月
7. ガートナーのリサーチレポート:Market Share: Semiconductors by End Market, Worldwide, 2022(世界のエンドマーケット別半導体市場シェア2022年版)