マイクロンベンチャーズでは、人工知能(AI)や機械学習(ML)をさまざまな問題領域やアプリケーションに応用している真に革新的な会社を常に求めています。産業・自動車分野におけるセンサースタックは、私たちが常に注視している分野の1つであり、特に低コストでソフトウェア定義の3Dセンシングソリューションを探しています。
空間認識と3Dセンシング
空間認識と環境認識は、運転やファクトリーなどの分野で自動運転の幅広い採用を妨げる重大なボトルネックです。従来のセンシングシステムには、カメラ、超音波、レーダー、LiDARなど、さまざまなテクノロジーが使用されていますが、それぞれに固有の限界があります。カメラベースのセンサーは日中はよく機能しますが、カメラは物体の検出に十分な光を必要とするため、夜間はうまく機能しません。逆に、レーダーセンサーは暗い環境ではカメラよりもよく物体の形状を認識しますが、通常、解像度に限界があります。光検出と測距(LiDAR)テクノロジーはこれまでのところ、暗い環境における物体検出と3Dセンシングのパフォーマンスを向上させることによって、そうした制限に対処することが期待されていますが、このテクノロジーはまだ、雨天や霧の中での画質と解像度に限界があります。
このため、自動運転車(AV)メーカー数社は、各センサーに固有の限界に対処するソリューションとして、センサーフュージョンを挙げています。つまり、さまざまなテクノロジーを利用し、超音波レーダー、LiDAR、カメラを組み合わせて、車両周辺の複合ビューを構築するということです。複数のセンサーテクノロジーを融合させるこのセンサーフュージョンであれば、どのセンサータイプの弱点も解消できるため、前進するための最善の方法とみなされつつあります。LiDARセンサーへの投資は活発に行われており、過去10年間で約60億ドルのベンチャー出資が行われました(出典:PichBook)。2020~2021年のSPACブームでは、LiDARの上場会社が8社(Luminar、Velodyne、Aeva、Ouster、AEye、Quanergy Systems、Cepton Technologies、Innoviz Technologies)も誕生しています。ただし、LiDARは信頼性に限界があり、コストが高く、精度や解像度にも限界があるため、自動車のセンサーフュージョンポートフォリオの一部をなす実用的なテクノロジーになるのは難しいでしょう。
今こそ、新しいアプローチが必要です。既存のLiDARメーカーは規模を拡大するために、光源からデータの変換・後処理に至るまでハードウェアの微調整に注力しているのに対し、Red Leaderは柔軟性を高める斬新なソフトウェア定義アプローチを採用して、以下を実現しています。
- 専用のシステムオンチップ(SoC)に独自の複雑なソフトウェアアルゴリズムを追加する能力 - 電力要件で妥協にすることなく、より高い解像度を実現
- 各種LiDARセンサー(メカニカルとソリッドステート、レーザー光源の波長905ナノメートルと1550ナノメートル、パルスとコヒーレント)を統合できる、ハードウェアに依存しないソリューション
Red Leaderとの飛躍
歯医者に行くと、自分の歯のレントゲン写真を見せられ、特定の箇所を指さして「ここに虫歯があります」と言われることがあります。しかし、見えるのは不鮮明な汚れだけです。
これは、訓練を受けていない人が従来のLiDARデータを分析するときに見えるものと似ています。歯のレントゲン写真がもっと鮮明に見えると役に立つのと同じように、LiDARで生成した画像がもっとはっきり見えると便利でしょう。
それを可能にするのがRed Leaderのテクノロジーです。
主にハードウェア中心のLiDAR業界において、3Dセンシングに対するRed Leaderならではのソフトウェアベースのアプローチがパフォーマンスの向上をもたらし、オープンライセンスモデルを通じてメーカー間の相互運用性を解き放ちます。この会社は、独自のAIアルゴリズムと計算のデジタル信号処理(DSP)ソフトウェアソリューションを開発し、3Dイメージングでスケーラビリティを解き放つ光波処理を可能にしました。環境に反応せず、信号生成に初歩的な1つのビームを使用する従来のLiDARとは異なり、Red Leaderは、複数のエンコードされたビームでデータ量の多いカスタマイズ波形を送信し、リターン信号を待つことなく、CDMAのように受信信号から反射ビームをデコードすることによって距離を計算します。Red Leaderは、直接パルス飛行時間(ToF)、間接連続ToF、コヒーレント完全変調連続波(FMCW)の各方式でレーザー信号を変調する信号処理技術を活用することにより、1つの受信システムで複数のレーザービームの伝送を可能にし、現行のLiDARと比べて100倍の分解能向上を達成します。
Red Leaderは、高解像度(100万ポイント/秒に対して2000万ポイント/秒)のセンシングとエッジコンピューティング(オートメーションループのレイテンシーが<5ミリ秒)を組み合わせることで空間認識を実現します。また、その3DセンサーがLiDARの機能を拡張し、現時点では実現不可能なレーダーのような測距距離とカメラのような解像度を利用できるようにすることで、あらゆる天候や照明環境に対応するため、環境的に安定しています。下の画像を見ると、業界標準の16チャネルLiDARシステムは明確な点群(LiDARで作成した画像)を生成できませんが、Red Leaderの3Dセンシングソフトウェアを搭載すると、同じLiDARシステムが測距距離やコストで妥協することなく、対象物や人間をはっきりと確認できることがわかります。従来のLiDARは、LiDARセンサーを搭載する機械が増えるにつれて、クロストーク(無数の異なる信号によって生じるノイズ)により、測距距離や解像度が低下する傾向がありました。しかし、Red Leaderの3Dセンシングソリューションは送信信号ビームのすべてのチャネルが一意であるため、この問題も解決できます。
LiDARを複数の市場セグメントへ
Red Leaderは現在、自律移動ロボット(AMR)と自動運転車(AGV)をロボット市場への足がかりとして定め、利用を促進しています。学習とネットワーク効果を活用してスケールメリットを実現することで、より広範な高性能自動運転車と大規模なコンシューマーエレクトロニクス(AR/VRヘッドセット、ドローン、スマートフォン)市場に拡大するためです。この会社は、共同開発メーカー(JDM)または契約メーカー(CM)が大量生産用のオープンハードウェアリファレンス設計のライセンスを与えるアクティベーションベースの事業モデルを取り入れることで、現在のところ、ハードウェアに焦点を合わせたLiDARメーカーでは実現不可能な規模の動きをしています。
マイクロンベンチャーズが共同主導した前回の融資ラウンド以降、Red Leaderの共同創業者であるジェイク・ヒラードとレベッカ・ウォンは、業界リーダーから優秀な人材を引き寄せ、有名な投資家や業界アドバイザーを集めて、斬新なフルスタックの3Dセンシングハードウェア・ソフトウェアソリューションを拡大に導く素晴らしい仕事をしてきました。マイクロンはシリーズAの段階でRed Leaderに投資することで、Red Leaderのエッジコンピューティングの最適化を支援するだけでなく、より広範な産業界、自動車業界、コンシューマーエレクトロニクス業界の中では新興市場でありながら大規模かつ戦略的な3Dセンシング市場において、マイクロンを主要な参加者として位置づけています。
Red Leaderの詳細については、Computex 2022でのCEOのコメントとRed Leaderのウェブサイトをご覧ください
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