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モビリティを第3の次元に

マイクロンテクノロジー | 2020年3月

SF小説で予言されていたその他多くのテクノロジーのように、空飛ぶクルマを目にする未来は近いかもしれません。重力と交通渋滞を乗り越えて私たちをハイウェイからスカイウェイへと引き上げる最初のサービスプロバイダーとなるべく、多くの企業が時間と闘いながら競争を繰り広げています。

ドイツのスタートアップ企業Volocopterは、有人ドローンで業界をリードしています。

Volocopterは、世界で初めて飛行許可を得たエアタクシー会社で、2017年にアラブ首長国連邦のドバイで最初のテスト飛行を開始し、続いて2019年10月にはシンガポールでテスト飛行を開始。2022年をターゲットに、マイクロンなどの企業と協力して世界中の都市部の通勤者を空へと連れて行きます。

「準備期間は、他のどの企業よりも早く2~6年になると予測しています」と、VolocopterのCFO、レネ・グリーメンス氏は言います。Volocopterは、現世代の機体で1,000回以上ものテスト飛行を行っており、次世代機体での承認を見込んでいます。その後、商業的な運用開始を計画していますが、Volocopterは今のところどの都市で行うかを明らかにしていません。

自律飛行への道のり

グリーメンス氏によると、Volocopterの計画では、まず、他のアプリベースの配車サービス車両の地上での動作と同じように機能する電気式のエアタクシーが必要です。呼び出しに対応する人間のパイロットが、建物の屋上や駐車場などの指定された場所で乗客を乗せ、目的地まで輸送します。その移動にかかる時間は、自動車で混雑した通りを移動するのにかかる時間の数分の一に短縮でき、料金はタクシーと同等レベルになると予想されます。

「規制当局は、最初はパイロット付きのサービスを期待するでしょう」と、グリーメンス氏は言います。「初期段階のフライトには、必要がなくてもパイロットが乗る予定です。」

しかしながら、Volocopterの最終目標は自律飛行です。ますます強力なコンピューティング機能により、5G、モノのインターネット(IoT)、人工知能などのテクノロジーが進歩し続けるのに伴い、同社は機体が飛行するために必要なセンサーやカメラ、その他のハードウェアを車両に装備します。

「ニューヨークでは、屋上に着陸するVolocopterの音が地上では聞こえません」

都会に入ってくる人の数が増えるにつれて激しくなる渋滞、そしてサステナビリティという現在の都市が直面する最も差し迫った2つの交通問題を解消するにはこのサービスが必要だと、グリーメンス氏は言います。地上の自動運転車やマイクロモビリティ(電動スクーターや自転車など)をはじめ、現在検討されているほとんどのソリューションは、渋滞を悪化させる可能性があります。「私たちのアプローチは、モビリティを第3の次元、つまり都市の上空に持っていくことです。」 Volocopterのモーターはオール電化で排気ガスが出ないという利点もあります、彼は付け加えます。

現在同社はまだ初期段階にあり、車両のテスト飛行とデモ飛行を続けながら、対象都市のルート設定とヘリポートの計画に取り組んでいます。ルートは、少なくとも最初は人気の観光地と重なることになると、グリーメンス氏は見込んでいます。Volocopterの市場の60%から80%を空港関連サービスが占める可能性が高いと彼は言います。

約5年間のパイロット付き飛行運用後、2点間の自律飛行が承認されることをグリーメンス氏は期待しています。同社の最終的な構想は、顧客が買い物をする食料品店の駐車場から、またはアパートやオフィスビルの屋上から空飛ぶタクシーを呼ぶ、パイロットなしのオンデマンドサービスの提供です。

米国内外での障害の克服

連邦航空局が新しい飛行体の基準をまだ確立していないため、空飛ぶクルマが最初に飛ぶのは、米国外の空になるでしょう。欧州航空安全機関は2019年7月2日に、特定の特別な条件を満たす小型垂直離着陸(VTOL)機に対応するSC-VTOL-01を承認しました。

しかしながらグリーメンス氏は、いつか米国の都市で事業を行うことを構想しています。Volocopterのホワイトペーパーによると、ニューヨーク市ではマンハッタンのミッドタウンからケネディ空港まで車では1時間以上かかるのに対し、フライトでは20~25分です。

また、2030年までに世界の人口の60%が都市部に居住すると予想されているため、最初のターゲット市場は都市部です。

しかしながら、どのエアタクシーや空飛ぶクルマの会社も、都市によっては運営の障害に直面するでしょう。その1つは安全性についての懸念です。ニューヨーク市では、パイロットが死亡した1977年の事故がきっかけとなり、緊急サービスの用途以外でマンハッタンの建物の屋上にヘリコプターが着陸することを議会が禁止しました。その代わり、ハドソン川沿いの3か所のヘリポートが使用されています。

その他の都市では、騒音が大きいという理由でヘリコプターが禁止されました。Volocopterは典型的なうるさいヘリコプターではないと、グリーメンス氏は指摘します。ローターブレードが1枚ではなく18枚あるため、各ブレードは小さくなり、騒音は従来のヘリコプターの7分の1です。

「ニューヨークでは、屋上に着陸するVolocopterの音が地上では聞こえません」と彼は言います。地上では、50フィート離れたトラックからの騒音の方が、同じ距離だけ離れたVolocopterよりも大きいと、グリーメンス氏は言います。

マイクロンとともに共通の夢に取り組む

Volocopterがいつエアタクシーサービスを開始するにしても、マイクロンと共同で実施します。

「空中を移動することは、子供の頃からの夢でした」と彼は言います。

「空中を移動することは、子供の頃からの夢でした」と彼は言います。

2019年10月24日、人工知能とエッジコンピューティングへの継続的な注力の一環として、マイクロンがVolocopterにベンチャーキャピタルファンドを投資したことが発表されました

「Volocopterは興味深い企業で、運送市場を改革すると共にサステナブルで環境に優しい輸送インフラの構築に貢献する可能性を持っています」と、マイクロンテクノロジー法人事業開発部門担当バイスプレジデント、レネ・ハートナーは言います。「マイクロンのVolocopterへの投資は、自動運転車両および最先端コンピューティングに必要な打開策を可能にするにはメモリとストレージによるソリューションが重要な役割を果たすという自社の観点に沿ったものです。」

マイクロンは自動車産業への最大のメモリサプライヤーであり、自動運転やバーチャルリアリティ、空中走行などを促進する高性能なソリューションを提供します。マイクロンベンチャーズのVolocopterへの投資は、新しい革新的ソリューションに対するマイクロンの絶え間ない探究を反映したものです。

「私たちは、都市部での空中移動という大胆なビジョンをマイクロンとともに実現することに大きな喜びを感じています」と、VolocopterのCEOフロリアン・リューター氏は言います。「Volocopterは、大都市が移動手段のインフラをよりサステナブルで未来志向のものへ変換するお手伝いをいたします。私たちは、大都市の人々を乗せる料金の手ごろな自動運転のオンデマンドのエアタクシーサービスの提供を目指します。普通のタクシーの料金でありながら、時間を大きく節約します。」

そして、Volocopterの空飛ぶマシンのサービスは、テクノロジーを使って人々の生活を向上させるというグリーメンス氏とマイクロンの共通のビジョンなしには実現不可能です。

「空中を移動することは、子供の頃からの夢でした」と彼は言います。

マイクロンのサポートと高度なテクノロジーにより、グリーメンス氏とVolocopterはまさにその夢を実現しようとしています。