人工知能は私たちのテクノロジーを激変させ、イノベーションやメモリの進歩によって生活を一変させるでしょう。
これは、サンフランシスコを象徴するゴールデンゲートブリッジの絶景を望む開放的でモダンなPier 27において、2018年10月10日に開催されたマイクロンインサイトで発信されたメッセージです。陽光が降り注ぐサンフランシスコ湾をヨットやフェリーが行き交う中、350名を超えるゲストと数百人ものマイクロン従業員が集い、ケータリングのラップ、サンドイッチ、サラダを囲んで交流しました。ステージ上でのプレゼンテーションの後は、アルコールやオードブルを楽しみながら、マイクロンのメモリが生活、ビジネス、健康にもたらすAIの可能性について語り合いました。
マイクロンのCEO兼社長であるサンジェイ・メロートラはカンファレンスの開会挨拶で、予定されている講演に触れ、「情報をインサイトに変え、インサイトをインテリジェンスに変える」人工知能の能力において、マイクロンのメモリテクノロジーが重要な役割担うことを強調しました。
メロートラによると、メモリとストレージは、AIがリアルタイムでデータを分析し、対処することを可能にします。
彼は次のように述べました。「CPUは脳で、メモリとストレージはAIの可能性をフルに発揮するために必要となる心臓です」
意欲をかき立てる開会の挨拶の後は、11人の業界エキスパートによる7つのプレゼンテーションが実施され、チャットボットから自動運転車、DNA、精密医療まで、テクノロジーのさまざまな側面について話しました。主なハイライト:
- Alexaの未来。アマゾンのプレム・ナタラジャン副社長が、世界中で大人気を博しているバーチャルアシスタント「Alexa」と、開発者が「彼女」の能力をさらに高めるために行っている取り組みについて語りました。
- より有能に。言葉でのやり取りでは文脈が重要ですが、アマゾンは会話の流れを絶やさない記憶力を持つアシスタントを創出することを目標としています。
- より博識に。50ファクトタムの計算を行いますか? 問題ありません!
- より自然に。ナタラジャン氏は「顧客と同じ言語を語らなければ、顧客と関わり合い、喜ばせることはできません」と語ります。
- より多くの自己学習を。ユーザーを観察し、自らの誤りから学習することで、Alexaを改善できます。
これらの目標を達成するため、アマゾンでは、Alexaがユーザーの話し方を反映する「ささやきモード」、ユーザーがAlexaと他のデバイスの画面を同時に操作できる「マルチモーダル」、どのデバイスで映画の再生を始めるかをAlexaが把握できる「デバイスコンテキスト」(ヒント:コマンドを出したときに、自分の一番近くにあるデバイス)、Alexaがユーザーを認識し、それに応じて設定を調整することが可能なスピーカーIDなどのパーソナライズ機能を導入しています。
ナタラジャン氏によると、今後、Alexaは真のパーソナルアシスタントとして機能し、ユーザーが車のキーをどこに置いたかを教えてくれたり、休暇を過ごす場所や夕飯のメニューを決めたりする手助けをしてくれるようになるかもしれません。また、真の自律性を目標として掲げているとも語ってくれました。たとえば、Alexaの汎用人工知能で、人間が行えるあらゆる知的作業を行えるようになることが、AI開発者にとっての「究極の目標」なのです。
「これは自転車レースのようなものです」とナタラジャン氏は言います。「まだスタートを切ったばかりで長丁場になることはわかっていますが、とても面白い道のりになりそうです」
- 誰もが使えるチャットボット。マイクロソフトのリリ・チェン副社長は、「会話型」AIとその用途に関する活気のある考察において、チャットボットは特にアジア諸国を中心に世界中で絶大な人気を誇っていると述べました。WeChatアプリケーションは、プライベートやビジネスで中国を訪れる人には必須だそうです。このアプリは音声で起動し、生活のあらゆる場面で人々を助けてくれます。特に広く使われているチャットボットであるXiaoice(「シャオアイス」と発音)は個性を持ち、広く知られているため、「彼女」独自のYouTubeチャンネルやテレビ番組まであります。
しかし、自然で知的な会話を交わせるようチャットボットを訓練するのは、想像よりもはるかに複雑だとチェン氏は説明します。人間は直線的に話すことはありません。話題を変えたり、互いに口をはさんだり、突然話し始めたり、話すのをやめたり、質問したり、議論したり、あるいはただ聞き役に徹したりします。共感を示すことは関心を維持することに役立ちます。質問されると、自分自身をうまく表現することにつながることがあります。人々のニーズに応え、生活をよりよくすることが、テクノロジーに対してマイクロソフトが掲げている目標だとチェン氏は語ります。
「AIを日常生活の中に取り入れるのであれば、人間の会話をモデル化することをさらに深く学び、試行錯誤を何度も繰り返す必要があります。それに、単に仕事をこなすだけでなく、社会的・感情的なスキルについても考えなくてはなりません。声を出して発言すれば、人間はそこに感情を抱くからです」
- メモリに感謝。生成されるデータの量が、空に輝く星の数を超える日も近いかもしれません。マイクロンの副社長であるスミット・サダナによると、今やデータは宇宙からも来ており、生命が宇宙の他の場所に存在するかどうかを判断することに役立てられるかもしれません。オーストラリアの新しい電波望遠鏡は、毎秒7.5テラバイトの速度でデータを取得しています。この速度は、2025年前に100倍になると予想されています。
しかし、データの「急激な増加」は体内でも起きていると、サンダナは指摘します。DNAシーケンシング、病歴、人々の消化器系に生息する微生物(マイクロバイオーム)の研究など、人間が処理・分析しきれないほどのデータが生成されているのです。従来のCPU処理型のコンピューターも、一生かかっても処理することはできません。高速処理が可能で、大容量かつアクセスしやすいメモリを備えたAIがあってはじめて、答えが見つかりそうもない難問、すなわち人類が太古から解明しようとしてきた謎、たとえば 「宇宙には人類とは異なる知的生命体が存在するのか?」 「病気の原因は何か?」 「加齢を止めることはできるか(もちろん死なずに)、あるいは若返りは可能か?」などに向き合うことができるのです。
サダナが指摘したように、特に膨大な量の非構造化情報を選別する場合など、AIが機能するためには高速な大容量のメモリが必要不可欠です。
私たちの体内には、人間の細胞の10倍以上の微生物細胞が存在しており、マイクロバイオームは数百万もの遺伝子で構成されています。ALSやがんなどの治療法を見つけるには、このようなデータの分析と分類が欠かせません。それができるのはAIだけなのです。
「人工知能が医療を変えでしょう」とサダナは言います。そして低電力・高密度DRAM、高速NANDフラッシュメモリを備えたマイクロンの先進のメモリチップが、その先頭に立つでしょう。
- ムーアの法則を受け継ぐもの。何年もの間、テクノロジー業界の関係者やメディアは、ムーアの法則は時代遅れであると主張してきました。これは、回路のトランジスター数は2年ごとに倍増すると提唱する法則で、従来のコンピューターのプロセッサー(CPU)にはもはや当てはまりません。トランジスター数は倍増しなくなりましたが、他の機能が倍増するようになりました。
クアルコム、NVIDIA、ヴェリリーのエキスパートによるパネルディスカッション「AI Opportunities for Consumer & Business(コンシューマーとビジネスにおけるAIの可能性)」では、人工知能を中心にこれらの進歩の多くを取り上げ、ムーアの法則を刷新する考え方として、電力、性能、メモリは18~24か月ごとに倍増する一方、技術コストは縮小するという認識が提案されました。
パネリストは、次のことについても話し合いました。
- AIによる医療診断、処置、監視の進歩
- 携帯電話やその他のハンドヘルドデバイスを、本当の意味でスマートにする5Gテクノロジーの可能性
- AIがやがて「フェイク」ニュースサイトと「リアル」ニュースサイトの違いを見分けられるようになるかどうか
言い換えると、高密度・高速メモリを使用して格納および処理される膨大な量のデータによって、このテクノロジーは近々ユビキタスになるでしょう。
NVIDIAの副社長であるPremal Savla氏は次のように述べています。「AIはブレーク目前です。今や、AIはどの分野でも活躍しています」
- AIの中核にはメモリがある。人工知能は医療を激変させ、医療診断と治療をこれまでになく大きく迅速に進歩させると、マイクロンの副社長であるリンダ・ソマーヴィルは予想しています。しかもそれは、ソマーヴィルがAIの「心臓」と呼ぶメモリのおかげで実現するのです。
「プロセッサーは脳で、メモリが心臓です」
それを説明するために、ソマーヴィルは、自身の10代の息子がまれな形のがんに罹患した体験談を共有しました。彼は標準治療を受けて経過は良好だそうですが、最初に診断を耳にしたときは、科学者としてすぐさま研究に没頭したいと思ったそうです。ヘルスケアの未来について読んだこと、個人の生物学的特徴やその他の要因に応じて治療法を調整する「精密」医療またはオーダーメイド医療が、彼女をとりわけ奮い立たせました。
「私は技術者として、オーダーメイド医療の発展においてメモリがいかに重要であるか理解しています」とソマーヴィルは言います。
AIは精密医療による治療を推進するでしょう。DNAシーケンシングも迅速に行えるので、医師は腫瘍を分類し、それに応じた治療計画を立てるのに役立てることができます。AIテクノロジーは、侵襲がはるかに少なく、より良い結果をもたらす新薬や治療法の発見にも役立てられることが期待されています。
データはAIの生命線だと、ソマーヴィルは言います。マイクロンのメモリは、テクノロジーの中心として、人工知能を駆動し、動かし続ける情報を提供します。
彼女は、マイクロンのテクノロジーを使用した、以下の2種類の医療研究プロジェクトを紹介しました。
- がんの精密治療のための3D腫瘍イメージング。オレゴン健康科学大学のナイト癌研究所の研究者たちは、機械学習を利用して、電子顕微鏡で撮影した高解像度画像から癌細胞の3D画像を作成しています。カスタマイズされたマイクロンのFPGAベースのアクセラレーターボードと高密度の広帯域メモリが、機械学習の推論エンジンを加速化します。3D画像のレンダリングも、切断やスプライスから成る多段階のプロセスから、シームレスな1段階のプロセスに変換され、腫瘍ごとのがん治療が改良されます。
- 退役軍人のデータの選別。米国エネルギー省とルイス・ローズ研究所は、マイクロンのカスタムハードウェアを使用して、米国の退役軍人の非構造化データを分析しています。このデータセットは非常に大規模なので、AIのパワーがなければ解釈が困難です。主治医のメモ、検査結果、画像ファイル、その他のデータの中に、心血管疾患を含む病気の発見や治療に役立ったり、自殺を防いだりできる情報が隠れているかもしれません。
ソマーヴィルは次のように述べています。「このような膨大な遺伝子データベースには、より高性能で効率的なメモリと、大容量のストレージメモリが必要になります。メモリテクノロジーは、より短時間で正確な診断を下し、より低コストで良好な結果をもたらす治療にも役立てることができます。メモリテクノロジーとAIのパワーを駆使して、医療におけるこのような重要な課題も解決することができます。そのため、私たちがマイクロンで取り組んでいることに誇りに思っています」
- 毎日の通勤も自分らしく。やがて、自分の車が職場まで自動的に連れて行ってくれる日もくるでしょう。自動車メーカーは、自律自動車向けのAIテクノロジーにますます多額の投資を行うようになっているので、それは当然のことでしょう。しかし、急いでいるときや、高速道路ではなくのんびりと景色を楽みながら移動したい場合はどうすればいいでしょうか。
「AI and Automotive(AIと自動車)」では、BMWのシモン・ユーリンガー氏とビステオンのヴィジェイ・ナドカルニ氏が、AIテクノロジーが自動車の中で真にパーソナライズされた経験を提供できることに触れました。個々のドライバーに合わせた音楽やメディアだけでなく、運転スタイルのパラメーターを設定することも可能になります。
ユーリンガー氏は次のように述べています。「運転の仕方は、個人によって異なります。AIは雰囲気、状況、背景に適応します」これには、天候、交通状況、時間帯などの可変要素も含まれます。「ドライブの始めか終わりのどちらに給油するべきか、また、好みのガソリンスタンドなども把握しています」
また、AIは多くの人が思っている以上に急速に自動車業界に浸透していること、2021年にはレベル4(つまり、「マインドオフ」運転)が実現していたことも指摘しています。
- 心を持つAI。1日を締めくくるプレゼンテーションを担当したテグマークは、AIは人々の生活を豊かにし、生命をも救う能力を秘めている反面、テクノロジーが人類を滅ぼす現実的な可能性に焦点を当てました。
『Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence』の著者でもあるテグマークは、「もし私たちが準備不足のままAIを扱えば、それはおそらく人類史上最大の過ちとなり、我々自身の絶滅をもたらすでしょう」と警告しました。
「最初から正しく扱うのが最善策です」
AIの「究極の目標」と謡われる汎用人工知能が実現する可能性は低いと一笑に付す人が多い一方で、テクノロジーのエキスパートたちは、私たちを取り巻くデバイスが私たちと同じように知能を持つようになるのも時間の問題だと考えている、とテグマークは述べています。次のレベルである「超知能」とは、AIが自らを設計して改良を加え、人間が舵取りをしている今よりも、はるかに高速に進歩することを意味します。
テクノロジーが私たちよりも賢くなったらどうなるでしょうか。テグマークは問いかけます。「機械が人間よりも何でも上手にできるようになったら、人間はどのような役割を果たすべきでしょうか」
その答えは私たち次第です。
「最終的に、人工知能で目指すことは何でしょうか」 テグマークは、この問いを「誰もが認識しているが、あえて誰も口にしない難題」としています。
「私たちはどのような社会をつくろうとしているのでしょうか。胸の躍るような未来を思い描き、そこに向かって舵を切りましょう」
マイクロンのアワードとして1億ドル以上を支給
カンファレンスの期間中、マイクロンはAIの研究と教育、およびAI分野の多様性の推進のために、1億ドル以上の資金を提供することを発表しました。
この資金の受給者は以下のとおりです。
- スタートアップ企業。自動車、製造業、その他の産業向けのAIアプリケーションの開発を手掛けているスタートアップ企業を対象に、新たに1億ドルの資金を支給します。
- 多様性。その1億ドルのうち2000万ドルを、女性やその他の少数派グループが率いる団体に支給します。この金額は、女性、マイノリティ、低所得、その他の少数派グループを対象とした技術教育のために、バージニア州の高等教育機関に100万ドルを支給するという、マイクロン財団は去年8月に発表した声明を強化するものです。
- 好奇心。マイクロン財団が新設した「Advancing Curiosity」助成金は、AI研究に取り組む大学や非営利団体に100万ドルを支給します。カンファレンスで、以下の受給者が発表されました。
- AI4All:若い女性、少数派グループ、社会経済的な立場が低い家族に特別な配慮を行う、10代の若者たちを対象としたAIサマーキャンプを開催しています。
- カリフォルニア大学バークレー校工学部のバークレー人工知能研究所(BAIR):研究員と大学院生が連携し、コンピュータービジョン、機械学習、自然言語処理、計画、ロボットなどの根本的な進歩を後押ししています。
- Stanford Precision Health and Integrated Diagnostics Center:精密医療におけるAIの活用方法を研究しています。
マイクロンのCEO兼社長であるサンジェイ・メロートラはカンファレンスの講演の部を締めくくる挨拶で、AIの「体験ゾーン」と懇親会への参加を呼びかけました。
体験しましたか? ゾーンの模様
講演の後、参加者は階下の体験ゾーンに移動しました。体験ゾーンでは、参加者は農業、医療、ファッション、監視、ペットに至るまで、18のインタラクティブな展示でAIやその他のテクノロジーに触れました。同時に、夜まで提供されているバーで飲み物や美味しいアペタイザーを楽しみました。以下に、評判が良かった展示を紹介します。
- オーナーを学習し、適応する、ソニーの犬型ロボット「アイボ」
- データ収集用のカメラとセンサーを搭載したBMWの自律走行車
- 侵入者を監視し、人間を「事件現場」へと急行させることができる、チューリングビデオ監視ロボット
- 建築、エンジニアリング、建設プロジェクトが完了した後の様子を確認できる、仮想的な「プレビュー」をクライアントや顧客に提供し、工事に着工する前から調整する、Silverdraft Supercomputingの「Demon」バーチャルリアリティ体験
- 顔をスキャンして気分を判断する、NVIDIAの人工知能カメラ
日が暮れるころには、既に活気に満ちていた参加者の盛り上がりは電子音楽と渦巻く照明で最高潮に達し、テグマークが強く説く「AIは私たちを圧倒するのではなく、力を与えてくれる」未来を実現するためのインスピレーション、興奮、アイデアを与えて閉会となりました。