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直感に従う:マイクロン、先駆的なヘルスケアスタートアップ企業2社を支援

ガヤスリ・(G)・ラダクリシュナン | 2021年8月

マイクロンベンチャーズチームは、まだまだヘルスケア分野への投資を始めたばかりです。私たちは、AIと機械学習(ML)を様々な課題領域に応用している真に革新的なスタートアップを常に探し求めています。ヘルスケアとライフサイエンス分野における無限の可能性に、私たちは魅了されています。

私たちの使命はシンプルです。テクノロジーの分野で最も革新的なスタートアップの力を解き放つことです。マイクロンにとって、ヘルスケア分野への投資は新たな焦点であり、多くの起業家から「なぜ半導体企業が私たちに投資したいのですか」と問われます。マイクロンは、最大規模のデータ変革を支えるテクノロジーリーダーとして、AIを通じた真のイノベーションを信じています。そして、人々の生活を変える、あるいは命を救う可能性を秘めた画期的な取り組みを支援することに対し、慎重でありながらも揺るぎない姿勢を持っています。

私たちは最近、消化器系の健康に関するイノベーションに焦点を当てたヘルスケアスタートアップ2社への投資を発表しました。DayTwoは、マイクロバイオームデータをAIと組み合わせることで、高価な医薬品を使用せず、食事を通じて慢性的な代謝異常(糖尿病、前糖尿病、臨床的肥満)を管理します。Iterative Scopesは、内視鏡ビデオの分析における常識を覆すことで、消化器学に最先端の精密医療をもたらします。従来の分析では、健康に関する決断を行う上で主観的な判断に頼りすぎていることが問題となっていました。

3人に1人のアメリカ人が前糖尿病を抱えている

タイトルの通りです。アメリカでは、8,800万人の成人が前糖尿病を抱えています。糖尿病を患っているアメリカ人は3,400万人に上り、米国人口の10.5%を占めています。その費用は安くありません。医療費の7分の1が糖尿病とその合併症に費やされています1。この分野では多くの企業が代謝疾患の問題に取り組んでいますが、その大多数が医薬品の使用と、炭水化物の摂取禁止または厳しい制限を行う食事療法の組み合わせという手法を取っています。これには、食習慣の抜本的な変化が伴うことが多くなります。すると、何が起きるでしょうか。与えられた指示に従うことに苦労します。習慣を変えるというのは難しいものです。

食べ物が答えだとすれば?

好きな食べ物を諦める必要がなく、必要な血糖バランスを達成するために役立つ食品を加える方法を学べるとしたらどうでしょうか。DayTwoは、マイクロバイオームデータと他のバイオマーカーの組み合わせにAIを適用することで、高価な医薬品を使わず、食事を通じた糖尿病の管理方法を提供しています。マイクロバイオームのサンプリングと分析は、医学界で注目されているトピックです。研究者が、そうしたサンプルが健康診断とケアにどのように役立つかを研究しています。マイクロバイオームとは、100兆を超える生物で構成された非常に複雑なものです。個人の腸内フローラの分析には、一生涯かかるかもしれませんが、高度なコンピューターハードウェアを活用することで、この作業は数分にまで短縮されました。

DayTwoの科学からは、食事が薬であることを実証されています。このプログラムは、既存の食事に小規模な調整を加えることで、血糖値を健康的な範囲に保つことを可能にします。同じ食べ物であっても、人によって食べた際の反応は異なります。例として、あなたと親友が毎朝一緒に朝食を食べているとします。これは2人の決め事であり、いつもこの時間を楽しみます。2人で同じものを食べても、それぞれの血糖値の変化は異なります。あなたの血糖値は上昇しても、親友の血糖値は変わらないかもしれません。そこでDayTwoは、好きな料理を食事から排除するよう勧めるのでなく、個人のマイクロバイオームに基づいて血糖値の上昇を抑えるため、ヨーグルトにクルミを加えたり、ご飯にバターを加えたりするような小規模な調整を勧めます。

なぜマイクロンが投資したのか

DayTwoはマイクロバイオームに基づくソリューションとして、臨床現場と実際の生活環境の両方で持続的な成果を示した唯一の企業です。この成果は、ほんの始まりに過ぎません。腸内マイクロバイオームは、糖尿病、前糖尿病、肥満、その他多くの疾患に影響を与えます。この分野の進歩は目覚ましく、近い将来に定期健康診断を受ける際には、血液や尿とともにマイクロバイオームのサンプルも採取されるようになるかもしれません。

科学者が食べ物に対する血糖反応を予測するには、高解像度のマイクロバイオーム情報と、正確な予測を可能にする規模のデータセットが必要となります。DayTwoは、世界で最大かつ最も豊富な独自の腸内マイクロバイオームのデータセットを保有しており、その科学技術とIPを他の疾患における治療成績向上にも応用できる大きな可能性を持っています。アメリカ国立衛生研究所(NIH)は「All of Us」イニシアティブにおいて、精密医療に役立てるため100万人以上の人のマイクロバイオームサンプルを含むデータの収集を目指しています。そのNIHが最近、精密栄養研究の基礎としてDayTwoの研究を引用しました。DayTwoの革新的なマイクロバイオームソリューションの詳細については、DayTwoのウェブサイトをご覧ください。

米国で2番目に致命的ながんの検出は非常に主観的な方法頼み

結腸がんは、米国におけるがんによる死因の第2位です2。2030年までに、新規症例は60%増加して220万件以上、死亡数は110万人に上ると予測されています3。内視鏡検査は、大腸がんのスクリーニングにおける代表的な手法ですが、スクリーニング時には20%のポリープが見逃されています4。現在の内視鏡検査は主に臨床医の知識に基づくものであり、結果は非常に主観的となるため、解釈に大きな差が生じます。内視鏡検査が主観的である上に、異常なポリープの種類は多く、肉眼では見逃してしまうような非常に小さいものもあります。臨床医が検査中に見逃してしまったものを、後から見つける方法はありません。

炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の慢性炎症を示す総称であり、クローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。双方合わせて米国で約300万人に影響を与えています。症状の重さは、Mayo内視鏡スコアと呼ばれる評価手法を用いて測定します。内視鏡検査を行う医師、または記録した内視鏡ビデオを確認する医師がこの評価指標を用いて、疾患の活動性を評価することがあります。この評価手法は、初期の疾患重症度、時間経過による活動性の変化、治療への反応を評価するため1987年に開発されました。残念ながら、この手法には高い主観性を伴い、患者が感じる痛みを真に捉えることはできません。

知識をデータに基づく洞察に置き換える

腫瘍学や感染症分野では素晴らしい進歩が見られました。消化器学も進歩する時です。Iterative Scopesは、ポリープ検出アルゴリズムのSKOUTを開発しました。これは、臨床医が見つけにくいポリープを特定するための支援を行い、診断の精度を高めます。SKOUTは、検査中リアルタイムでポリープの回りに境界線を表示することで、臨床医の注意を促します。この技術を腸内のGPSと呼ぶのは単純化が過ぎていますが、もしあなたが道路で「GPSがなければこの道を見つけられなかった」と思うことがあれば、この例えにも納得してもらえると思います。

IBDに関しては、重症度の評価が非常に主観的であるため、臨床試験の候補者を見逃してしまうことが多くあります。IBDは一連の症状ではなく、症候群であるため、様々な治療方法の効き目をモニタリングすることが難しくなっています。そのため、臨床試験の候補者選定と治療分析がどちらも非常に主観的になってしまいます。Iterative Scopesは、結腸内視鏡検査での解釈を自動化したことで、臨床試験の患者選定と治療効果の理解の両方を支援できるのです。

ventures-blog-secondaryimage.jpg:「Iterative Scopes」のオフィス前で立つ従業員一同

Iterative Scopesチームの画像

なぜマイクロンが投資したのか

結腸内視鏡検査のビデオは通常、記録や保存はされませんが、Iterative Scopesはデータ収集を拡大し、上述のような注釈付きデータについて最大のコレクションを生み出しました。機械学習テクノロジーの精度を向上させる際には、信頼性の高いデータの依存度が非常に高いため、このコレクションは重要性を持ちます。Iterative Scopesは、結腸がんとIBDの両方に焦点を当てており、多くの人々に影響を与える潜在性を持ちます。消化器学では、他の分野ほど機械学習を用いた精密医療におけるイノベーションが進んでいません。Iterative Scopesには、チームと諮問委員会に強みがあるほか、イーライリリーJJDCといった製薬パートナーと連携しています。これによりマイクロンは、Iterative Scopesが消化器学の世界に意義ある影響を与えるための技術と頭脳を兼ね備えていると確信しています。Iterative Scopesの詳細については、Iterative Scopesのウェブサイトをご覧ください。

腸は人体の中で最後に残された未開領域の一つと言えるでしょう。私たちは、DayTwoやIterative Scopesといった会社による進歩を目の当たりにし、人体の中で最も重要な関係の一つである脳腸相関の解明に向けて今後さらなる進展があることに期待します。

AIを活用したイノベーションを目指すテクノロジー主導のスタートアップの方々は、ぜひマイクロンベンチャーズのページで私たちが求めているものについてご確認ください。どうか、ご遠慮なくご連絡ください!

1 糖尿病のコスト

2 結腸がんは、がんによる死因の第2位です

3 結腸直腸がんの発生率と死亡率に関する世界的なパターンとトレンド - PubMed(nih.gov)

4 大腸内視鏡検査における結腸直腸の新生ポリープの見逃し率

Senior Director, Corporate Development

Gayathri Radhakrishnan

G is with Micron Ventures, investing from our AI fund. She invests in startups that use AI and ML to solve critical problems in manufacturing, health care, automotive and beyond. She brings 20 years of multidisciplinary experience across product management, product marketing, corporate strategy, M&A and venture investments.