長年にわたり、クアッドレベルセル(QLC)NVMeデータセンターSSDには、ある問題が蔓延していました。仕様が不十分で広く採用されるに至らなかったのです。利用者は手頃なSSDを求めていましたが、QLC技術はパフォーマンス、耐久性、電力効率を犠牲としていたため、魅力的な選択肢とはなり得ませんでした。端的に言えば、最高の価値を提供できていなかったのです。マイクロンは今日、データセンターSSDが持つこの問題を解決します。
マイクロンは、世界初の200層以上のSSD1となるMicron 6500 ION SSDの出荷を発表しました。マイクロンが長く築いてきたNAND積層のリーダーシップを活用し、QLCの価値とトリプルレベルセル(TLC)技術を融合することで、QLC SSD競合製品が抱える多くの欠点を解決しています。この革新的な製品の発表は、わずか1年前に発表した世界初の176層データセンターSSDと世界初の176層QLC SSD、5年前に発表したデータセンター向けの世界初のQLC SSDに続く形となります。初のQLC SSDのプロダクトマネージャーであった私は、Micron 6500 ION SSDの誕生にまつわる興味深い背景を独自の視点で見てきました。その物語の始まりは、2018年5月21日に最初のIONドライブであるMicron 5210でQLCクラスカテゴリーを立ち上げた時にまで遡ります。
初めてQLCを発表した時、世界中が技術的な飛躍と、より大容量で低コストのSSDを手に入れられることに胸を躍らせました。しかし、お客様は当然、QLCデータセンターSSDを使用することに伴う隠れコストについて懸念もしていました。QLCを採用することで当初のドライブの購入費用は抑えられるものの、セルプログラミングの複雑さにより消費電力が増加して、結果的により運用コストが上昇してしまったというお客様もいました。そのため、現在のQLCベースのSSD競合製品は、マイクロンの同等のTLCベースSSDと比較して、耐久性が5~10倍低く、ランダム書き込みパフォーマンスが10~20倍低く、シーケンシャル読み取り以外の全ての領域で少なくとも20%は低い性能となっています。QLC技術が成熟し、将来のSSDとストレージのシステムがQLCならではの大容量に最適化するよう設計されるようになれば、今日のデータセンターにおけるQLCの欠点は次第に問題にならなくなるでしょう。しかし、現在のデータセンターの大多数は、QLCベースのSSDが持つ課題を克服するように設計されていないため、お客様はいくつかの重要な問いについて考える必要があります。つまり、「これにいくら払うのか」「見返りに何を得られるのか」 「得られるものは自分のニーズを満たすのに十分か」です。全ての問いに対する答えがイエスである場合に、購入に至るのです。
マイクロンの初代QLC製品の4年間のライフサイクルを通じて、多くのお客様が、特に従来の10K RPMハードディスク(HDD)との置き換えにおいて、妥協することも厭わないことが分かりました。これを裏付けるものとして、マイクロンは2020年4月のプレスリリースにおいて、世界の主要な相手先商標製造会社の大多数が、この目的でQLC製品の認定を行ったことを示しています。強い採用傾向が見られるなか、私たちはお客様のコスト削減をさらに大規模に支援できないかと考えました。QLCの初期費用削減を実現しつつ、データセンターでQLCを使用する際に発生する年間の電力・冷却コストを抑える方法を模索し始めました。
この「どうすれば実現できるか」という問いが、Micron 6500 ION SSDの開発につながります。本製品では、お客様がQLCに求めるコスト削減と容量拡張を実現しています。また、消費電力を20%削減しつつ、より高いパフォーマンスと耐久性プロファイルを実現することで、長期的なQLC使用に対するお客様の懸念を払拭しています。1日あたり30TBのシーケンシャル書き込み(1SDWPD、つまりシーケンシャルドライブ書き込み回数/日)の能力と、1日あたり9TBのランダム書き込み(0.3RDWPD、つまりランダムドライブ書き込み回数/日)の能力を備えているため、6500 IONでは従来のQLCの耐久性に関する問題は解消されました。0.3RDWPDとなっており、標準的な7.68TBの1DWPDのSSDよりも高い耐久性を実現します。2
これはまさに、マイクロンが目指してきた大きなパラダイムシフトです。世界初のQLC SSDを発表して以来、マイクロンの使命は、内部のNANDがTLCであれQLCであれ、基準を引き上げ、これまで世界になかった最高の価値を持つデータセンターSSDを作り出すことでした。特定の技術に執着するのではなく、ストレージの総コストを削減するというようなお客様の問題解決にこだわったのです。NANDの層数をより速いペースで増やすことで、過去にお客様が甘受してきた妥協なしに、QLC SSD競合製品と比較して、持続可能なコスト構造を実現しました。多くの世界最大規模のデータセンターから関心が寄せられていることが、この成果を物語っています。
競合の30.72TB QLC SSDと比較して、Micron 6500 ION SSDが優れている点
- 平均読み取りレイテンシーが34%向上3
- シーケンシャル書き込みが58%高速化4
- 4KBランダム読み取りIOPSが最大62%向上5
- 4KBランダム書き込みのIOPSが30倍超え6
- 4KBランダム書き込みの耐久性が10倍超えとなり、耐用年数と柔軟性向上7
- 将来を見据えた各種機能:OCP 2.0、NVMe 2.0、NVMe-MI 1.2b、SRISなど
- 業界をリードするセキュリティ機能(FIPS、SPDM 1.2、SHA-512など)
- 上記全てを20%少ない消費電力で実現(20W vs. 25W)
- サプライチェーンの安全性確保:複数の製造拠点と貿易協定法(TAA)準拠のSKU
- ネットワークを容易に飽和可能:8
- 2つのドライブで50BbEを飽和
- 3つのドライブで100GbEを飽和
- 7つのドライブで200GbEを飽和
- 13のドライブで400GbEを飽和
Micron 6500 IONの目標は、TLCの利点を全て提供しつつ、QLC NVMeデータセンターSSDによる妥協点を解消することです。
常に容量ニーズが拡大するワークロードを展開する際には、ぜひMicron 6500 IONをお試しください。例として、オブジェクトストア、汎用クラウドストレージ、オールフラッシュアレイ、Software Defined Storage(SDS)キャパシティ層、NoSQLデータベース、コンテンツ配信、AI/MLデータレイクといったワークロードに最適です。
6500 ION SSDとその対になるドライブの新しいMicron XTR NVMe SSDの詳細情報については、以下の推奨リソースをご覧ください。Micron XTR NVMe SSDは、より高い耐久性を必要とするワークロードやオールフラッシュ構成向けに極めて高い耐久性を提供します。
推奨リソース
1. 同様の用途で使用するNVMe SSDは、本文書の発行時点で発売されていました。
2. 7.68TBのSSDユーザー容量に対する1DWPDは、1日あたり7680GBの書き込みを意味します。一方、30.72TBのSSDユーザー容量に対する0.3DWPDは、1日あたり9216GBの書き込みが可能であることを意味します。
3. キュー深度(QR)1における4KB 100%ランダム読み取りの平均読み取りレイテンシー。
4. QD32およびQD64での測定で58%向上。QD 1~256での測定では、競合他社のドライブと比較して-7%~58%の範囲で向上していました。
5. QD32では62%向上しました。QD 1~256の範囲で行ったその他の測定では、競合他社のドライブと比較して、18%~62%の範囲で向上していました。
6. QD 128における4KBランダム書き込みIOPSが30倍以上、QD1では10倍以上に向上。
7. Solidigmの資料では、耐久性は64KB、100%ランダム書き込みワークロードで0.41 DWPDと評価されています。評価されているSolidigm D5-P5316の伝送サイズ64KBでの耐久性は伝送サイズ4KBの場合と比較して16倍であり、4KBの場合に換算すると0.41/16 = 0.0256となります。Micron 6500 IONの耐久性は4KBランダム書き込みワークロードで0.3 DWPDと評価されています。
8. 表示されている飽和指標は、シーケンシャル読み取り、シーケンシャル書き込み、ランダム読み取りに関するもので、顧客における最も一般的な飽和目標です。示されている値は、ランダム読み取りパフォーマンスの飽和に基づいていません。実際の導入環境で見られる一般的な最大80%のネットワーク効率ではなく、100%のネットワーク効率を想定しています。値は概念的な比較のみを目的としているため、実際に必要なドライブ数は示されている数より少ない可能性があります。