科学と医療における次世代の発見を刺激する
DNAテクノロジーによって健康を改善したり、命を救ったりできることは明らかなものの、多大なコストがかかることから、今もなお多くの人にとって縁のない存在です。
従来の方法を用いたゲノムシーケンシングやDNA分析システムの場合、100万ドル以上のコストがかかる可能性があるため、極めて大規模な機関でない限り、利用することは困難です。医師や研究者が血液やその他の体液サンプルを他の場所に送付する必要があるうえ、結果が届くまでに数週間かかることもあります。
現在、高速で正確なシーケンシングの開発が進められており、次世代のシーケンシングテクノロジーとして注目を集めています。このシーケンシング方法は誰もが安価で利用できるため、精密医療の実現に向けた重要な一歩になると期待されています。次世代のシーケンシングでは、これまでにない方法でテクノロジーを活用したり、場合によっては高度なシリコンチップも新しい方法で活用したりしています。
次世代シーケンシングテクノロジーの開発を進めている企業の1つとして、GenapSysをご紹介します。GenapSysはDNAシーケンシングとタンパク質検出の画期的な方法を実現しました。GenapSysのテクノロジーにより、体液サンプルを有用なデータに変換できる、シンプルで効率的なデバイスの開発が期待されています。そのデバイスはパン1斤ほどの大きさで、新車よりも安くなります。
GenapSysのロブ・ターボックス氏は次のように述べています。「このテクノロジーがもたらす長期的な展望は本当に、本当に魅力的です。」
ターボックス氏は、シーケンシングを必要とするすべての医療施設と診療所が携帯型のシーケンシング装置を備え、数時間や数週間ではなく数時間で結果が得られる未来を思い描いています。適切なタイミングで適切な患者に対する適切な医薬品の診断、分析、選択を素早く行えるようになるため、治療にかかる貴重な時間を節約できます。さらに、システムがスケーラビリティと適応性を備えているため、テクノロジーの進化に合わせてシステムすることも可能です。
これを実現した背景には、画期的で新しい独自のシーケンシング方法の開発があります。このシーケンシング方法では、体液サンプルを分析する際、光学式のシーケンシングテクノロジーの代わりにコンピューターチップを使用します。電気式のシーケンシングを採用することで、分析プロセスの簡素化・効率化が実現し、ユーザーによる完全な制御が可能になります。たとえば、最初にDNAフラグメントでテストを実行し、その後でゲノム全体のシーケンシングに切り替えるなど、新しいチップを読み込むだけで拡張や縮小を行うことができます。
GenapSys独自のプロセスを以下にご紹介します(内容はターボックス氏の説明に基づいています)。
- ライブラリの準備と構築:臨床医は血液サンプル内のタンパク質を分離してDNAを単離し、シーケンシングの準備を整えます。
- クローン増幅:GenapSysのシーケンシング準備システムにより、DNAフラグメントを複製して「増幅」します。これにより、DNAフラグメントを簡単かつ効果的に読み取れるようになります。増幅には約4時間かかります。
- シーケンシング:シーケンシング装置での読み込みを行うため、増幅したプロテインを目的のチップに移します。ユーザーはインターフェイスに従ってセットアップを進め、シーケンシングを開始します。約1日で結果が得られます。
- 分析:シーケンシング装置からクラウドに生データが送られます。このデータは既存のデータ分析ソフトウェアで読み取り可能です (メモリへの新しいアプローチによってクラウドでのゲノム分析を高速化する方法については、こちらをご覧ください)。
ゲノムシーケンシングテクノロジーによる精密医療の実現と普及の拡大について、ロブ・ターボックス氏からお話しを伺いました。ロブ・ターボックス氏へのインタビューをぜひご覧ください。