データ認識を加速する
デジタル技術は、すでにフィットネスを変革しています。スマートフォンは日々の歩数をカウントします。軽量でワイヤレス対応の時計やその他「ウェアラブル」端末は心拍や身体統計情報をモニタリングします。トレーニングのトラッキング機能やビデオモニター機能が内蔵されたジム機器を使うことで、地球上のあらゆる場所でトレーニングを行うことができます。
家庭用バーチャルスピンクラスで一休みしたり、スマートウオッチで睡眠アプリや毎時解析データを同期したりする前に、バーチャルリアリティ(VR)のスペースを確保してください。VRは全体的にトレーニング体験を強化するだけでなく、やる気の低下や、エネルギーを温存し運動を避けようとするような私たちが自然にしてしまう選択など、トレーニングの妨げになるものにも対処できます。
VRは、インターネットやモバイルデバイスの出現に続く、次の大きなコンピューティングおよびコンシューマプラットフォームとして浮上しつつあります。このことから、アーキテクチャー、メンタルヘルス、教育などの業界を越えて、VRがイノベーションを推進しているのは当然のことと言えます。このように、あなたのトレーニングや今日行ったはずの場所でVRが活用されない理由はありません。
VR用ヘッドセットをノートパソコンやスマートフォンと同じくらい自然に使用できるようになったらどうなるでしょう? それはあなたの日常生活、特にジムでの毎日のトレーニングにどのような影響を及ぼすでしょうか?
VRのビジネスチャンス
ライアン・デルーカとプレストン・ルイスは、17年を費やして、スポーツとフィットネスに関する情報を提供し、栄養補助サプリメントを販売する主要なeコマースサイトを成長させました。このサイトは、毎月3,000万人以上の熱心なフィットネス愛好者が訪問するまでに成長し、大きな成功を収めました。
2015年、この2人はフィットネスとテクノロジーを融合させた新事業に着手しました。3年後、バーチャルリアリティジム「Black Box VR」を立ち上げました。
「私たちが取り入れたのは、フィットネス業界から学んだこと、つまり、ほとんどの人がトレーニング計画を根気よく続けられないということです。1月にジムに申し込んだ人は、3月には行かなくなります。そして脱落していき、週に一度も通わなくなります。最先端の科学者や医師さえも、この問題の解決策をいまだ見つけることができていません。
私たちにはフィットネスに関する豊富な知識があり、ゲームの中毒性を把握していたため、『従来のジムのトレーニングをゲームに変えて、そのゲームを最新のコンピューティングプラットフォームであるバーチャルリアリティに構築しよう!』と決めました。」
VRフィットネス市場に参入してきたのは、Black Box VRだけではありません。
- WalkOVRは、現実世界にいながら仮想環境でランニングするための、膝、足首、および胴体に装着して下半身の運動を記録するセンサーシステムを開発しました。この製品はフィットネスを念頭に置いて設計されましたが、フィットネスに関連しないゲームにも使用できます。
- BoxVRは、ユーザーがリズミカルなビートでパンチできる家庭用VRボクシングトレーニングで、VR Fitness Insiderの「2017年度ベストVRフィットネスゲーム賞」を受賞しました。フィットネスインストラクターによって開発されたこの製品は、VR Tae-Boビデオのような製品です。送料と手数料がかからず、19.99ドルの3回払いで利用できます。
- VirZOOMの「VZfit Sensor Kit」は、固定したサイクリングマシンに取り付けて、VRでサイクリングを体験できます。VRの世界では、実在する数々の目的地を通り抜けたり、ペガサスのように峡谷を飛び越えたりすることができます。
トレーニングでは肉体的な結果が出るまでに数日または数週間かかりますが、トレーニングをゲームに変えるという方法、これはゲームから得られる即時の報酬と達成感に対する人間の欲求を利用した天才的な進展です。
トレーニングは苦しいものであり、「煩わしい」というよりもむしろ「苦痛」に近い感覚だというのが正直なところです。トレーニングの目的は、筋肉を疲弊させ、破壊して、以前より強靱な筋肉を作ることです。「痛みなくして得るものなし」は、根拠があってできた古い格言です。VR環境でエクササイズすることは面白い体験であるため、苦痛を乗り越えるように私たちの脳を騙すことができます。
VR Institute of Health and Exerciseの創始者であるアーロン・スタントンは次のように述べています。「VRが本当に得意とするのは気を逸らすことですが、これがエクササイズにとって極めて重要なことなのです。気を逸らされていると、目標を達成しようとしているときや、何かに集中しているときと同じように不快を感じません。」
即席のチームを組んでバスケットボールの良い試合をした後、1日中スキーで斜面を滑降した翌日、午後にガーデニングを楽しんだ翌朝などに筋肉痛で目覚めたことはありませんか? これも似たような考え方です。何か楽しいことをしているときは、あともう1回行うことの苦痛に焦点を合わせるのではなく、そのアクティビティや達成目標に集中するのです。
アスリート向けのVRトレーニングのメリットは明らかですが、VRフィットネスの夢を追っている多くの企業はどうでしょうか?
VRフィットネス市場のポテンシャルは驚異的です。International Health, Racquet & Sportsclub Associationによると、米国の300億ドル規模の健康およびフィットネス業界は、ここ10年間は少なくとも年間3%~4%成長しており、減速する兆しはありません。スポーツクラブは、2017年に7,000万人を超える消費者の関心を集め、スポーツクラブの個人会員数は合計6,090万人となりました。米国には約38,000か所のジムがあります。市場のポテンシャルを見れば、この市場に莫大な投資が行われている理由を容易に理解できます。
50,000のデータポイント
VRトレーニングの主なメリットは整合性とトラッキングです。市場全体がトレーニングのトラッキングに熱中しています。今、あなたも手首にデバイスを装着しているかもしれませんね。バーチャルリアリティのハードウェアは、ユーザーが仮想環境と対話できるように動きを追跡するように設計されています。この種のセンサーと加速度計は非常に微細な運動も追跡できるため、トレーニングのトラッキング用として非常に効率的な媒体です。
たとえば、Black Box VRトレーニングでは、50,000以上のデータポイントを取得し、人工知能(AI)でトレーニングを即座に処理します。AIは、その人の能力を超えないように負荷レベルを即座に変更したり、間違った動作を繰り返し行わないようにしたりするパーソナルトレーナーです。
ところで、このすべてのデータをどう処理するのでしょうか? デルーカとルイスは、今日の起業指向経済において、クラウドが企業の形成と成長を加速することを目の当たりにしてきました。すべてのトレーニングデータと個人データをどこかに保存する必要があります。Black Box VRはそれ自体にデータを保存するのではなく、クラウド専門業者を活用しています。デルーカとルイスの説明によると、最初に立ち上げた会社とは異なりサーバーに関する問題の対処に貴重な時間を費やす必要がなくなり、そのような問題をクラウドプロバイダーに任せることが可能になりました。
クラウドプロバイダーは、膨大な量のデータを移動、処理、保存する必要があることから、DRAMとNANDストレージソリューションの最大の利用者です。幸い、VRフィットネス企業各社と各トレーニングで生成される50,000のデータポイントに関しては、Micronがメモリソリューションと技術的な専門知識を駆使して、クラウドの効率を最大限に高めるために全面的にサポートしています。つまり、ダウンタイムなしにデータポイントに常にアクセスできるのです。
「VRは、フィットネスと個人の健康のイノベーションを超えた重要な意味を持っていると考えています。今後、VRがヘルスケアと教育を含むさまざまな重要分野を変革していくことを目にするようになるでしょう。VRの領域や適用事例は、起業家達や開発者達がその可能性を最大限に活用するにつれて大いに拡大し、多大な影響を及ぼすことが予想されます。データ収集、機械学習、インテリジェント・フィードバックを含むVR体験のインタラクティブな特性によって、コンシューマー、企業、およびインフラに対するさまざまなソリューションの可能性が広がります」とMicronの組み込みビジネスユニット部門マーケティングのバイスプレジデントであるKris Baxterは述べています。
創造的思考と勇敢な起業家達、そして先端テクノロジーが人生を豊かにするために世界を変えています。VRがフィットネスゲームにもたらすものは、人々のトレーニング方法を変革することです。キャラクターのレベルアップは、まったく新しい意味を持つようになります。VRトレーニングに注いだ努力は、ゲーム内では即座に報酬として報われ、そして健康に対する長期的なメリットももたらされます。もちろん、ゲームをプレイして楽しむこともできるでしょうが、実際には、自分自身という最も重要なキャラクターの価値を高めていくことになるのです。
VRフィットネスシリーズのパートII「ビデオゲームをプレイすることは、ツール・ド・フランスで走ることに匹敵できるか?」に続く