次のような場面を想定してみましょう。ビデオセキュリティシステムを導入しようとする場合、重要性の高い映像を撮影するため、消費者グレードSSDと産業グレードSSDのいずれかを選択する必要があります。消費者グレードSSDを選んだ場合、設備投資を少し抑えられるというメリットがあります。しかし、産業グレードのドライブは高温・高書き込み環境に最適化されているうえ、ヘルスモニタリング機能を備えており、それらはすべてミッションクリティカルなデータにとって極めて重要な機能です。設備投資の抑制だけに注目すると、そういった点が考慮から抜けてしまいます。消費者グレードのドライブを選択して、故障が発生したり、読み取り専用モードになったりすると、ビデオデータを記録することも、保存することもできなくなります。その状態に気付くまでに数日かかる可能性もあります。中小企業を例にすると、万引きの様子を記録した防犯カメラの映像が消失したり、HIPAAガイドライン(ビデオセキュリティにより、従業員のみが保健情報にアクセスできるようにすること)の違反を引き起こしたりする可能性があります。
上記のほか、さまざまなシナリオを考慮して、マイクロンは2020年にIndustrial Quotient(IQ)パートナープログラムを立ち上げました。このプログラムは、幅広い産業用アプリケーション向けに高品質、堅牢かつ長寿命の製品を提供するソリューションの促進を目的としています。このプログラムでは、ミッションクリティカルなアプリケーション向けに産業グレードソリューションの価値を周知するほか、産業用製品がアプリケーション固有の調整、高耐久性、高信頼性、品質テスト、長寿命、セキュリティ・バイ・デザインなど、一連の価値提案を満たすことを保証することで市場が抱える問題点に対処します。これらの具体的な価値提案を守ることで、上記のような悩みを抱える顧客の問題に対処し、回避することができます。
消費者グレードが産業用途に適さない理由
歴史的に、産業市場は極めて安定した状態を保っており、一定のサプライヤーが産業グレードソリューションを顧客に提供していました。ところが、ここ10年で、産業市場が求める厳格な要件を満たしていない消費者グレードソリューションが市場に溢れるようになりました。
各業界の顧客に話を聞いてみると、製造、輸送、さらには医療といった業界では、消費者グレードのソリューションが厳しい産業条件に耐えられずに機能しなくなり、データの消失や重要業務のダウンタイムを引き起こし、経済的損失、ブランドの毀損、安全上のリスク、信頼の失墜が生じていたことが判明しました。現在の急速に変化し続けるデータ経済の中では、数分のダウンタイムであっても、医療IoTデバイスが必要な患者データを収集できなかったり、列車のブレーキ制御システムが故障したりなど、収益の損失から身体的安全に関する問題まで、深刻な影響を引き起こす可能性があります。これらの問題を知ったことがきっかけで、マイクロンはIQパートナープログラムを立ち上げ、産業需要を満たすメモリとストレージの必要性に関する周知と啓発を促しています。
産業要件への適応
IQパートナープログラムでは、マイクロンIQ認定印により、IQ認定ソリューションが産業用ソリューションに求められる厳格な基準を満たしていることを保証します。マイクロンはIQパートナープログラムを通じてパートナーと緊密に連携し、以下のことを顧客に提供・保証しています。
- アプリケーション固有の調整 — 世界各地の顧客と幅広く連携することで、アプリケーションの用途を深く理解し、個々のアプリケーションへの要望を満たす製品と機能を提供します
- 製品の高耐久化 — 製品の強化により、高低温、熱循環、衝撃、湿度など、極限の環境でも一貫したパフォーマンスを実現します
- 高信頼性 — 高水準の耐久性と信頼性を実現する設計とテストプロセスにより、ライフサイクルの長い組み込みアプリケーションを求めるニーズに応えます
- 品質テストの徹底 — 厳しい品質テストにより、ミッションクリティカルな組み込みアプリケーションに求められる、製品・プロセス全体での一貫したパフォーマンスを確保します
- 製品寿命 — マイクロンの長期製品供給プログラムにより、対象製品のライフサイクルサポートを延長します。これは、標準のライフサイクルサポートから一歩進んで長寿命アプリケーションに対応したものです
IQパートナープログラムは、寿命と信頼性の向上を目標に掲げ、ミッションクリティカルな事業運営の耐久力の強化、データの完全性の確保、組み込みソリューションの総所有コストの削減に取り組んでいます。
IQパートナープログラムの拡大
マイクロンはIQパートナープログラムを推進し、同じ顧客価値提案を共有するエコシステムパートナーを募りました。現在のIQパートナーをご紹介します。Advantech、ATP、Greenliant、Innodisk、Kontron、Mercury Systems、Viking Technology、SMART Modular Technologies。上記のような業界のリーダーのほか、マイクロンが最近発表したとおり、組み込み・エッジコンピューティングモジュールプロバイダーのcongatecとPHYTECがプログラムに加わりました。congatecとPHYTECは医療テクノロジー、産業オートメーション、再生可能エネルギー、航空宇宙、輸送などで使用されるコンピューターオンモジュールとシステムオンモジュールに携わっており、congatecは設計、PHYTECは製造を行っています。
IQパートナープログラムは、エコシステムパートナーとの緊密な連携を育み、品質、寿命、信頼性に関する産業市場の厳格な要件をしっかりと満たしたソリューションを創造します。こうした要件は、数十年にわたって機器を問題なく稼働させることが求められる製造所など、産業実装にとって不可欠なものです。このコラボレーションを強化するため、製品ロードマップの定期共有、デザインイン用プラットフォームの早期利用、最新のマイクロンテクノロジーのサンプルの優先利用、資格・技術データの共有、製品の早期利用などを実施しています。
congatecで製品マーケティングディレクターを務めるクリスチャン・イーダー氏は次のように述べています。「デジタル化が進むにつれ、産業用IoTアプリケーションに対し、組み込み・エッジコンピューターの設計に関するまったく新たな需要が生まれています。自動化、医療、エネルギー、輸送、その他の重要インフラに関わるビジネスでは、極めて高い信頼性を備えた高性能なコンピューティングコアが求められます。最適なコンピューターオンモジュールの実現には、マイクロンの産業グレードメモリが不可欠です。マイクロンのIndustrial Quotientプログラムに参加することで、コラボレーションが強化され、極めて過酷な産業環境に耐え得るソリューションの提供が可能になります。」
IQ パートナープログラムは、複雑な産業サプライチェーン全体にわたる強力な協調とコラボレーションへのニーズを満たすこともできます。工場自動化、エネルギー管理、電力管理などのプロジェクトで長期にわたって展開する産業機器の導入には、多くの事業者(コンサルタント、コントラクター、機器製造業、サプライヤー)とコンポーネントが関与します。そのため、現在の産業ソリューションの設計ではサプライチェーン間の協調が必要となります。産業用の厳格な展開要件の中でも、長期にわたる信頼性の高い稼働が特に重視される環境では、すべてにおいて数十年にわたるシームレスな連携が必要なため、緊密な協調とハードウェアの互換性が何よりも求められます。
PHYTECのテクニカルCEOを務めるボド・フーバー氏は次のように述べています。「1985年にPHYTEC Messtechnik GmbHが設立されてからこれまで、産業環境の厳しい要求を満たすため、長期間の高可用性を備えた堅牢で信頼性が高く安全なモジュールを顧客に供給することを常に最優先してきました。マイクロンのIndustrial Quotientプログラムに参加することで、PHYTECは、マイクロンの最先端テクノロジーを活用した産業グレードソリューションの開発に同調して取り組んでいます。これにより、強力な競争上の優位性を顧客にもたらすことができます。最新の製品やテクノロジーを早期に利用できるというメリットもあります。これは、顧客による市場投入までの時間の短縮につながります。コンポーネントの不足やサプライチェーンに関するその他の問題が存在する現代、顧客への影響を最小限にとどめるには、マイクロンのような強力で信頼性の高いパートナーとの連携が不可欠です。」
congatecとPHYTECがIQパートナープログラムに加入したことで、幅広い産業市場でマイクロンの信頼性の高いメモリとストレージソリューションを利用できるようになります。IQパートナープログラムにより、産業ニーズに応じて適切なメモリとストレージソリューションを顧客が自信をもって選択できるようになります。成功を収めるには、総所有コストを最小化し、製品ライフサイクル管理の効率化によって長期的な信頼性と品質を確保することができる製品が必要です。顧客がインテリジェントエッジにおける急速な変革への対応に必要な速度と耐久力を兼ね備え、自信をもってイノベーションを推進できるようにするには、マイクロンの業界有数のテクノロジーと緊密なエコシステムコラボレーションの強力な融合が鍵となります。