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インダストリー5.0では、優れたAIは人間と同じように思考するようになる

マイクロンテクノロジー | 2023年1月

人間の認知能力と人工知能(AI)の合体が、第五次産業革命の顕著な特徴です。第五次産業革命とは、人とロボットのコラボレーションが社会にメリットをもたらす、今まさに始まりつつある時代のことです。インダストリー5.0は、コンピューティングの可能性を広げ、人類がかつてないほど繁栄する世界を実現しようとしています。それはすべてAIによるものです。

この進化の明白な例が、OpenAIのChatGPT™です。今までのAIモデルは、データを取り込み、パターンを識別し、診断の観点から根本原因を特定することに優れていました。今日、ほとんどのAI研究者が、その次の段階である生成AIに注目しています。その理由は単にChatGPTが旋風を巻き起こしているからだけではありません。企業にもたらされる潜在的なメリットが非常に大きいという理由もあります。

「マイクロンにおける生成AIの大きな用途の1つが、スマート検索です」と、スマートマニュファクチャリングおよび人工知能担当バイスプレジデントのコーエン・デ・バッカーは指摘します。「インターネットの検索結果を思い浮かべてください。その内容の価値を理解するには、クリックしたり、目を通したりする必要があります。また、ChatGPTの問い合わせを考えてみてください。ChatGPTは、そのような評価をすべてあなたの代わりに行い、包括的なサマリとして提示します。私たちは、このレベルのスマート機能をマイクロンに適用しています。その効率は驚異的です」

それにも関わらず、多くの人が生成AIに懸念を感じています。ロボットに仕事を奪われるのではないか? 自分で運転するのを諦めざるを得ないのだろうか? 個人のプライバシーは永久に失われるのか? インダストリー5.0では、こうした懸念はそれほど差し迫ったものには感じられないでしょう。新しいテクノロジーによって、マシンは必然的に自分が最も得意とする作業を実行し、私たちが他のもっと重要な作業に集中できるようにしてくれるでしょう。

実際、人間の仕事を奪うどころか、この新しいテクノロジーは私たちの能力を増強し、権限を与えてくれます。マイクロンでは、製造プロセスにおけるAIは、チームが日常の些末な作業に集中する必要がなくなることを意味します。その代わりに、創造的な思考をめぐらせ、効率的でサステナブルな製品の開発に役立つ、革新的なインサイトやアクションを試す自由が私たちに与えられます。

はじめの四大革命

要約:

  1. 機械化 - 1780年。18世紀半ばから19世紀半ばの約100年で起こった第一次産業革命は、水と蒸気の力を利用して製造工程を機械化することから始まりました。
  2. 電化 - 1870年。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、工場に電力が供給されるようになり、組み立てラインと大量生産が可能になりました。
  3. 自動化 - 1970年。ロボットを含むデジタルテクノロジーが、1970年ごろから製造プロセスに導入され、それまで人間が行っていた多くの作業を自動化しました。また、インターネットによりグローバル化が実現されました。
  4. 接続とデジタル化 - 2011年。コネクテッドな時代を迎え、自動車からコンピューター、ロボット、トースターに至るまで、あらゆるものがバーチャルにつながり、人間の介入を最小限に抑えながら、互いに通信し、互いを制御するようになりました。工場は自律的な稼働に向かいつつあります。「サイバーフィジカルシステム」が製造だけでなく、購買、メンテナンス、修理も担当しています。モノのインターネット(IoT)、ロボット、そしてAIは、こうした自律性のすべてを実現可能にしているテクノロジーであり、人間の脳と同じように、データ、アナリティクス、メモリによって駆動されています。

知っての通り、デジタルテクノロジーは時間を短縮します。今ではあらゆる出来事が早く起こるようになりました。これは、四番目の革命(コネクテッドな時代)が、三番目の革命である自動化の時代の直後に起こった理由を説明しています。私たちがすでにインダストリー5.0に、すなわちコラボレーションの時代に足を踏み入れているのは、何ら不思議なことではありません。

インダストリー5.0:人間とマシンの収束

第五次産業革命は、人間とマシンの収束の始まりを目撃しつつあります。スマートフォンとアプリケーションに代わって、私たちの身体に寄り添うテクノロジーが登場しつつあります。バーチャルアシスタントが耳元で道案内をし、夕食用のレストランを提案し、私たちの代わりに予約を取ってくれる、等々です。しかし、従来のパラダイムを打ち砕くような最大の変化は、職場に起こりつつある変化です。

インダストリー5.0は、インダストリー4.0の「サイバーフィジカル」な製造プラント(すなわち、デジタルテクノロジーを利用し、人間の関与が最小限で済むような工場の運営)から、「ヒューマンサイバーフィジカル」なシステムへの変革を意味します。

この新しいパラダイムで、人間はコラボレーティブロボット(または「コボット」)と並んで働き、仕事を教え、間違ったときには訂正します。単調で反復的な、危険を伴う作業のほとんどをマシンが担当する一方で、人間は複雑で柔軟性に富んだ脳を利用し、ハイレベルな判断を行います。たとえば、今では工場、すなわち製品が作られる場所またはプロセスが使用される環境のバーチャルコピーである「デジタルツイン」を利用して、人間が製品やプロセスの設計に集中できるようになっています。その過程で、ある種の業界では、工場が顧客と直接やり取りする能力を獲得し、個々の製品のカスタマイズやパーソナライズが実現可能になるでしょう。自動車メーカーのウェブサイトにアクセスし、好きな車を選んで、その車を自分用にパーソナライズするために何千もの機能を選択できる未来を想像してください。

もちろん、スマートファクトリーをマシンだけで稼働させることは不可能です。プログラミングし、指示を与え、指導し、トラブルシューティングする人間が頼りです。センサー、オンライン注文、コンピューティングデバイス、ウェアラブルなど、さまざまなソースから送られてくるデータを工場のロボットがどれほど速く処理し、分析し、反応するかは、搭載されたプロセッサーの速度とメモリの量によって左右されます。(人間の知能に関して言えることは、人工知能にも当てはまります。)

メモリがそれを動かしている

AIは、メモリと処理速度に依存して、適切な応答を適時に生成します。たとえば自動運転車は、複数のソースからのデータをより分け、瞬時に判断を下します。どの判断も、エラーはまったく許容されません。製造プラントは自律的に生産規模を拡大または縮小し、サプライ品を発注し、完成した製品を出荷し、機器の修理や交換を行います。

インダストリー5.0は、四番目の革命と同様、データ、デバイス、生成AIに依存しています。これらのコンポーネントは、どれもメモリなしでは動作しません。実際のところ、メモリはAIに「インテリジェンス」を注ぎ込み、アルゴリズムを駆動するためのデータと、アクションやリアクションのための文脈を提供します。

私たちの行動は、昼食に行くときも、ジョークで笑うときも、「愛している」と言うときも、自動車を買うときも、すべて感覚入力の結果として起こります。これらの行動をするために、私たちは感覚(目で見たもの、匂い、味、音、感触など)からの情報に加え、自分の記憶、感情、信念、思考、直感を取り込みます。その後、すべてを一度に処理します。中央処理装置(CPU)とは違って、私たちの脳には決まった数の「コア」がありません。コアとは、データを取り込み、分析・保存し、結果を出力してアクションにつなげる場所です。私たちの脳は、入って来た情報を仕分けして、それぞれの部分を該当する専門領域に割り当てます。たとえば視覚データ、音声、感情を専門とする領域などがあります。

これと同じように、ほとんどのAIシステムは、CPUを使用してデータを処理するのではなく、グラフィックプロセシングユニット(GPU)を使用します。これはCPUとは違った種類の演算チップであり、パフォーマンスを最大化するには、別の種類のメモリが必要です。CPUの場合、チップまたはチップレットごとにプロセシングコアの数は8、16、または32であるのに対し、GPUでは数千です。そのため、GPUは何千ものデータ入力を一度に処理できます。膨大なデータを必要とするAIワークロードには、これが必要です。

マイクロンの高帯域幅メモリ(HBM)、具体的に言うと、世界で最も速く最も電力効率に優れた高帯域幅メモリである最新のHBM3Eは、膨大なデータを必要とするこれらのGPUコアに、強力な認知コンピューティングチップを満足させる十分な量のデータを供給します。業界をリードするマイクロンの232層NANDは、AI向けの大量のデータストレージを支えます。中でも最上位のMicron 9400 NVMe™ SSDは、AIワークロードにおけるグラフィックダイレクトストレージ(GDS)で、最大25%高いパフォーマンスと23%短い応答時間を示します。1 その結果、大量かつ広範なメモリおよびストレージソリューションを備えた、ほぼリアルタイムで反応するAIが成立します。

マイクロンでは、学習、インテリジェンス、応答時間に優れた、生成AI、ロボット、ドローン、自動運転車などの形式のAIを目の当たりにしています。そのため、私たちはこれを利用してプロセスを根本的に最適化しています。製造プロセスからビジネスプロセスに至るまで、マイクロンは会社全体でAIスマートエコシステムへと変革を遂げ、メモリとストレージを革新してインダストリー5.0を加速させています。基本的に私たちは、完全に差別化された、未来に大いに期待できるものを構築しつつあります。

1. 25%高いパフォーマンスと23%短い応答時間は、競合製品との比較に基づく数字であり、ビジー状態のGDSシステムで4KBのデータ転送を実行する場合を前提としています。