スマートフォン上の音声アシスタントは、役に立つこともあります。最寄りのガソリンスタンドを見つけてくれたり、冗談を言ってくれたりもします。しかし、完全なソリューションとしての人工知能という観点からは、及第点に達してはいません。残念ながら多くの消費者が「音声アシスタント」という言葉から、日々の膨大なデータ、予定、関心事を処理するためのソリューションを想像してしまいます。
マイクロンでシニアコンシューマーセグメントマーケティングマネージャーを務めるハルシャ・ナガラジュが完璧な音声アシスタントを思い描く時、真っ先に頭に浮かぶのはマーベル映画『アイアンマン™』に登場するJARVIS™(Just A Rather Very Intelligent System[ただの多少優れた賢いシステム])です。
「基本的に、文字通り家全体を管理してほしいのです。そして、必要な情報をすぐに提供してほしいです。仕事で音声アシスタントを使う場合であれば、会議でスプレッドシートを開きたかったり、何か計算をしたかったりする時に『ねえ、先週の売上はいくらだった?去年の同時期とも比較して』と聞くだけで 全てを計算して即座に答えてくれるようなものがほしいのです」とナガラジュは語ります。
現在の音声アシスタントは、明らかにこの水準に達していませんが、ナガラジュが思い描くアシスタントは、将来の音声アシスタントに多くの人が求め、期待するものとそれほど離れていません。強力で効率的なメモリがあれば、至る所にあるスマートデバイスがJARVISとほとんど同等の能力を発揮できるようになり、ユーザーの貴重な時間を真に節約できるようになるでしょう。
音声アシスタントの魅力
多くの人にとって、音声アシスタントデビューは携帯電話上のものでした。ボタンを押すだけで、元気な女性の声が応答し、主に音声によるネット検索や電話の発信を行いました。欠点はありましたが、この新たなアシスタントがもたらす可能性に多くの人が心躍らせました。
「人々は、音声が新しいインターフェースになるというトレンドを感じ取りました。音声によるハンズフリー体験が可能になり、画面から解放されるのです。だからこそ、多数の人が音声アシスタントにこれほど熱狂したのだと思います」とナガラジュは述べます。
音声アシスタントがますます便利になり、モノのインターネット(IoT)デバイスが市場に登場するにつれ、開発者は同様の人工知能を家庭にも導入したいと考えるようになりました。消費者は、家の中で家族と過ごす時間にも、ハンズフリーのユーザーインターフェースにアクセスできるようになったのです。
「スピーカーは、安価であったため、家庭内導入へのきっかけになりました。それだけでなく、スピーカーはモバイルデバイス上でできる対話と同じようなことを、家に置いてあるデバイスにもたらしました」とナガラジュは語ります。
これらデバイスにおける共通の目標は、ユーザーの時間の節約、生活の効率化、俗事の排除です。多くの音声アシスタントにおいて、こうしたことがユーザーに対して謳われており、実際に洗濯機や冷蔵庫など様々な機器に搭載されつつあります。しかし、ナガラジュは目標を実現するまでには、社会的受容とハードウェアの能力の両方に置いて、まだ長い道のりがあると考えています。
音声アシスタントはセキュリティ上の脅威となるか
音声アシスタントは、多くの家族にとって重要な存在です。しかし、見知らぬ人が家の中で、あなたと、あなたの配偶者や子どもが発した言葉や、使用したメディアのリストを日々書き留めているという状況を想像してみてください。音声アシスタントをこの例の見知らぬ人のように感じ、セキュリティ上の恐ろしいリスクとして、生活に取り入れることに慎重になっている人もいます。
ナガラジュによれば、これは多くの人が考えるほど大きな問題ではありません。スマートデバイスの音声アシスタントには、デバイス上に記録を残すなどといった複数のセキュリティ対策が施されています。集められた情報の大多数は、デバイス上に保存され、クラウドには共有されることはありません。つまり、ユーザーがアシスタントに質問をしたり、何かを頼んだりしても、その情報はクラウドに転送されず、ハッキングされることもないとナガラジュは述べています。
さらに、こうした音声アシスタントは家庭内の個人ごとの音声プロファイルを作成できるため、ユーザーデータに対するセキュリティをより強化することができます。
一方で、ECサイトなど他のサイト上のアカウントを利用する際には、クラウド上で処理するために転送しなければならないデータも存在しています。
「例として買い物をする際に提供する情報は、公開情報となります。こうした情報はクラウドに送られて、保存されるため、ハッキングなどの対象になる可能性があることを理解しておく必要があります」とナガラジュは述べます。
上述のセキュリティ対策やイノベーションによって、音声アシスタントの正当性が高まれば、ナガラジュが自身のスマートデバイスに求めるJARVIS水準の有用性と効率性の実現にさらに近づくことができるかもしれません。安心感が得られれば社会的受容が進み、社会的受容が進めばハードウェアの進化がより重視されるようになります。これは、スマートデバイスや人工クラウドコンピューティングデバイスの開発において切実に必要とされているものです。
音声アシスタントは本当にそれほど強力なのか
多くの消費者は、購入した音声アシスタントに対し、全ての指示において文脈を理解して真の要求を把握できる万能なオールインワン型のソリューションを期待します。音声アシスタントはスマートデバイス業界に革命をもたらし、冷蔵庫から車のダッシュボードまで、あらゆるものに搭載されつつはありますが、さらなる成長の余地は常に残されています。
「音声アシスタントはいずれ、ユーザーのことを真に理解し、適切なタイミングと場所に、ユーザーが最も好む方法でソリューションを提供するようになると、広く喧伝されてきました」とナガラジュは語ります。
しかし、既に述べてきたように、音声アシスタントは未だJARVISのような高水準には達していません。とはいえ、現状でもかなりの便利さは有しています。ポップコーンやスナックの最後の一袋を食べ終わった後に、声だけで新しく注文できるのは魅力的ではないでしょうか。これらのデバイスにより、ユーザーは音声インターフェース上で買い物や多くのエンターテインメントを楽しむことができるため、貴重な時間が節約できるほか、思いついた曲を数秒で再生することができます。
しかし、スケジュールの自動調整などのより高度な機能を念頭に置くと、まだ技術の発展の余地があります。ナガラジュによると、単体のスマートスピーカーの設計は比較的単純であり、計算や人工知能による処理の大多数はクラウド上で行われています。ただ、多くの人が思い描く理想の音声アシスタントの水準には、到達していないのです。
「人々は『ほら、これが私のアシスタントです。30ドルで買えます』と考えています。しかし、実際には全ての人に対してあらゆることをできるわけではありません。数年経てば実現しているかもしれませんが、現時点での使用範囲はかなり限られています」とナガラジュは述べます。
2016年のAll About Circuits teardown(All About Circuitsの製品分解記事)を見ると分かるように、Amazon Echoなどのデバイスにはマイクロンのメモリが使用されています。このメモリは、デバイス内部のプロセッサーを支援する役割を持ちます。しかし、さらに高い計算水準への到達に必要な真のイノベーションを実現するためには、デバイス上のメモリの改善と、ハイパースケーラークラウドメモリの向上の組み合わせが必要とされます。これら多くの分野において、マイクロンは業界をリードしています。
そうしたイノベーションの例として挙げられるのが、ナガラジュが一種のパッケージングのカスタマイズと表現する方法です。エンジニアが2種類の技術をデバイス内に組み込むことで、消費電力の面で支援します。これにより、デバイスの小型化が可能になり、マイクロンのメモリが支える強力なAIクラウドに接続できるスマートデバイスがますます増えていきます。
JARVISへの道のり
こうした新技術により、音声アシスタントプログラムの未来は、そう遠くない将来に実現しそうです。
「今後数年で、データが蓄積されていき、アルゴリズムが文脈も理解するようになるでしょう」とナガラジュは語ります。
最終的に音声アシスタントが真価を発揮するのは、人々の時間を取り戻すようになった時です。それこそが、新たなスマートスピーカーを手に入れたり、スマートフォンの音声アシスト機能を使ったりして、音声アシスタントに期待している消費者が切望していることなのです。
こうしたデバイスには既にマイクロンのメモリが搭載されています。目指すべきは上のみです。マイクロンがメモリ性能を上げることは、音声アシスタントの性能向上につながります。ナガラジュは、意外とすぐに自分のJARVISを手に入れることになるかもしれません。