マッキンゼー社の調査では、ロボットと自動化の技術によって、2030年までに8億人の雇用が失われると報告されています。
不安を煽る見出しです。連日さまざまなメディアで繰り返し報じられています。
しかし、このような話題は以前にもありました。第一次産業革命が起きた18世紀と第二次産業革命が起きた19世紀にも、人々は同じ危機感を抱いていました。
ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は次のように述べています。「産業化時代の幕開け以来、テクノロジーの移り変わりによって大量の雇用が失われるという懸念が繰り返し生まれてきました。新古典派経済学者は、適応のために苦しい時期が長く続いても新しい仕事が見つけるため、そのような事態にはならないと予測しました。概してその予測が正しかったことは歴史が証明しています。結局のところ、世界の大部分で人の寿命が長くなり、労働時間は減り、一般に健康的な生活を送っています。
農学テクノロジーから、自動化が施された農業が生まれました。産業革命によって、労働者とロボットがいる製造所が生まれました。現在のデジタル革命では、自動化によってあらゆる労働者の仕事が変化しました。
興味深いことに、上記のどの時代も仕事の数は減っていません。ただし、大きく変わったように見えます。
それでは、そのような新しい仕事にどう取り組めばよいでしょうか? 今の環境で子どもが成長できるように、どう教育すればよいでしょうか? その答えを見つけるには、同じビジョンを持つ相手とのコラボレーションが必要です。マイクロンはRaspberry Piのコラボレーションで答えを見つけました。
「老犬」に新しい芸を仕込む
約10年前、エベン・アプトン氏は、将来スマート電子機器とプログラミングが重要スキルになると予測しました。そして、Raspberry Piを創立しました。この会社により、プログラミングは広く普及することになりました。
エベン氏は次のように説明しています。「Raspberry Piは新たなスキルを習得するための再訓練に役立てることができます。これまでずっと製造所で働いてきた人のスキルアップが可能です。」
彼は次のように指摘しています。「数百年にわたり、自動化が雇用を破壊すると信じられてきました。しかし、現実は異なります。実際には雇用の創出をもたらしました。自動化によって生産性が向上し、生活水準は上昇したのです。
Raspberry Piのパフォーマンス、プロファイル、価格を6年以上にわたって実現できたのは、マイクロンとの長きにわたる関係によるものです。マイクロンのメモリソリューションはRaspberry Piの重要部分を構成しています。実際、エベン氏が執筆した製品ブログの最新記事では、最新製品の発売に不可欠な存在としてマイクロンのチームメンバー数名の名前を挙げています。
エベン氏は次のように述べています。「2015年以来、Raspberry Piはマイクロンの独占顧客です。マイクロンとは非常に深い商業関係を築いています。これまで、この関係の中でさまざまなものが誕生したのを目の当たりにしてきました。それらはすべて満足できるものでした。
マイクロンはRaspberry Pi4向けに16GBおよび32GBのLPDDR4をサポートするメモリを提供しています。Raspberry Piの第3世代モデルでは、マイクロンが最適なサプライヤーとなっています。マイクロンとRaspberry Piは理想的な関係を築けていると、ガッターニは述べています。「マイクロンは、信頼できるプロバイダーとして、Raspberry Pi2、3、4に製品を提供してきました。要求される能力の多くを希望の価格でお届けすることができます。」
子犬の教育
Raspberry Piテクノロジーは高齢労働者の再訓練の基盤となると同時に、若年層にとっても有用です。Raspberry Piはもともと、ケンブリッジ大学のコンピューターサイエンス学部に学生を呼び込むための苦肉の策として生まれました。
エベンは次のように振り返っています。「10年前、コンピューターサイエンスを学びたい若者が不足しており、見つけるのに苦労していました。1980年代の8ビットコンピューターが姿を消すと、愛好家もいなくなりました。当時、新しく加わる17歳や18歳の若者がいませんでした。つまり、Raspberry Piは『コンピューターを再興することで、応募者が戻ってくるだろうか?』という質問への答えでした。
「そして、その試みは成功しました。1999年に600人だった応募者は、2008年には200人にまで減少しました。しかし、昨年は1,100人の応募がありました。そして、『コンピューターを好きになった理由はなんですか?』と尋ねると、応募者からは『Raspberry Piとロボット』という答えが返ってきます。」
マイクロン財団でマイクロンのSTEMダイバーシティ支援プログラムマネージャーを務めるキャシー・アミラティ氏は、子どもを対象としたChip Camp、女性技術者の育成を支援するGirls in Tech、ヒスパニックの若者を対象としたリーダーシップサミットなど、複数の年次プログラマー育成プログラムの運営を担当しています。
彼女は次のように述べています。「ほぼすべてのプログラムでRaspberry Piを使用しています。発売開始時に、最初の発注を行い、それ以降ずっと続けています。子どもたちの手に収まるサイズがお気に入りです。30ドルで、独立型のコンピューターが入手できます。これは素晴らしいことです。」
Raspberry Piは教育を重視していますが、これは珍しいビジネスモデルを採用しているためです。同社は「社会貢献」を重視した慈善事業としてスタートしました。エベン氏は次のように説明しています。「私たちも目的は社会問題の解決でした。そのため、社会的に組織を構築することが目的に即した方法だと考えました。このような手法もたまには悪くありません。」
Raspberry Pi財団は今も、デジタルとコンピューティングの力を世界中の人々に届けることに力を注いでいます。
エベン氏は、やりがいを感じると同時に実用的でもあると述べています。価値の低いスキルではなく、価値の高いスキルを多くの人々が習得することは、経済的貢献につながるためです。
彼は次のように説明しています。「価値の高い活動が国を豊かにします。それだけでも喜ばしいうえ、経済にも好影響を与えます。税収の増加につながり、増えた税金を他の目的に使えるようになります。これは素晴らしいことです。報酬が良くなり、関心が沸き、多彩な仕事に活かせます。
さらに彼は続けます。「このスキルはエンジニアリング以外にも役立ちます。他の分野にも応用できる汎用的な論理的スキルです。このようなスキルは医師、弁護士にも役立ちます。あらゆる業務に役立つスキルです。
「最も重要と思われるのは、社会的流動性を促進する強力な原動力となっていることです。私たちは社会的流動性に関する問題を抱えており、恵まれない環境で育った人たちが優位に立つことは非常に困難です。電子工学やソフトウェア工学といった分野では、誰もが優位に立てると断言できます。私たちは常に『コンピュータープログラムはあなたの父親が何者であるかを気にしない』と言っています。」