このブログのパート1「ストレージ、テクノロジー、世界が2024年にどうなるかを予測する、パート1:AIブームは誇大広告じゃない、本物!」をご覧ください。
予測2:HDDの終わりの始まり
過去20年間にわたり、ほぼすべての用途で、NANDフラッシュが(通常はSSDの形で)着実にハードディスクに置き換わってきました。初期のiPodとそのHDDを覚えていますか。または、PCの起動に数分待たされたことを覚えているでしょうか。データベース管理者であれば、毎分回転数が15Kや10KのHDDを使って、データベースのクエリを妥当な時間内に完了できるだけのIOPSをなんとか引き出そうとしていたことを覚えているでしょう。それらはすべて、大量のHDDを使用する用途であり、現在では時代遅れとなっています。つまり、HDDの用途として残っているのは、低速ティアのデータセンターまたはクラウドストレージ、監視カメラのビデオストレージの2つのみです。
これらの用途では、HDDは依然として十分に機能します。HDDはまさに1つの目的のために動くからです。HDDは大量のデータストレージを非常に安価に実現します。シーケンシャルな負荷が非常に高く、データの読み取りや取得のパフォーマンスが重要ではない用途では、HDDは依然として王様です。今でもHDDで稼働しているデータは膨大な量に上りますが、ボブ・ディランの曲にあるように、「時代は変わる」のです。それは、人工知能(AI)やデータベースアナリティクスなどの新しい用途でデータセンター内のすべてのデータへの有意に高速なアクセスが求められるためであり、SSDが現在、最も高密度なニアラインHDDよりも大容量かつ高密度であるためであり、また、現在のデータセンターで最も貴重なのはラックの電力で、多くの場合、適切に冷却できるラック内の利用可能スペースが貴重であるためです。
世界初の200層を超えるNANDデータセンターNVMe™ SSDであるMicron 6500 ION SSDを発表した際、マイクロンが市場に投入したのは、1立方インチあたり4.8TBを実現する低コストで高性能なストレージデバイスでした。これは、現在最も高密度な24TBニアラインHDDの1立方インチあたりのストレージ容量の約5倍に相当します。
クラウド会社が、データセンターに必要なすべてのコンピューティングとストレージに加えて、すべてのAIトレーニング・推論システムをインストールする方法を模索している現在、ラックスペースを5分の1に削減できることには大きな魅力があります。また、一定量の作業を行う場合、HDDはSSDの約2500倍のエネルギーを使用しており、これがそのままコンピューティングやその他のアプリケーションで利用する電力と冷却能力の増加につながることは言うまでもありません。実際、スワプナ・ヤサラプ氏とシャシダル・ジョシ氏は2023年のストレージ開発者会議で、SSDのクラウドストレージにおける新たな可能性について興味深いプレゼンテーションを行いました。
誤解しないでいただきたいのですが、NANDの生産能力が拡大し、NANDのコストが低下して、温度の低い用途における総所有コスト(TCO)がさらに魅力的になる中で、HDDはこれからも長い間、使用され続けるでしょう。とはいえ、IDCによれば、2024年、データセンターのビットにSSDが占める割合はわずか12%に過ぎないと予測される中で、データセンターの一部のニアラインHDDをSSDに転換するだけでも意味があります。ビットあたりの価格が高くても構わないというビジョンを持ち、大容量SSDの供給を確保する早期導入者は、競合他社と比べてTCOの面でメリットを得られます。データセンターの電力、冷却、床面積に関する負担を軽減しつつ、ストレージを拡張することができるでしょう。
予測3:PCIe® Gen5をサポートするデータセンターNVMe SSDがついに日の目を見る
データセンターにおけるPCIe Gen5ドライブの採用は、業界の大方の予想よりも大幅に遅れています。採用が進まない主な理由は、技術的な課題と価値提案にあります。技術的な課題には、PCIe Gen4の速度を2倍にした毎秒32ギガトランスファー(GT/s)に関連する、より困難な信号整合性によるホストとエンドポイント間の幅広い互換性の実現に直接関連するものと、以下のような複数の要因による間接的なものの両方がありました。
- PCIe Gen5をサポートするプロセッサーとプラットフォームの遅延。
- 仮想化環境とコンテナ化環境のプラットフォームの、前世代のプロセッサーと比較して期待外れのTCO。
- 高速イーサネットアダプターの展開不足により、多くのサーバー(特に大容量サーバー)で、NICがストレージのボトルネックになっている。
*ジャンボフレームを使用せず、TCPを使用した場合のギガビットイーサネットの概算スループットは、約928Mbpsまたは116MB/秒。
要するに、単にソケット数が不足しており、PCIe Gen5 NVMe SSDの早期導入者として割高な料金を支払うだけの説得力のある理由が欠如しているということです。
しかし、サーバーに占めるAIシステムの割合が急速に増加し(たとえば、TrendForceはAIサーバーがサーバー全体に占める割合が2022年から2024年で倍増すると予測)、大手CPUメーカーがPCIe Gen5対応の第2世代サーバーCPUを導入し、ランダムワークロードでPCIe Gen5リンクを飽和させることができる優れたPCIe Gen5 SSDをより多くのベンダーが導入することによって、2024年下半期にはPCIe Gen5ベースのNVMe SSDの採用と出荷が増加するでしょう。
PCIe Gen5ドライブには、AIなどのデータ集約型アプリケーションにおけるパフォーマンス、スケーラビリティ、効率性の観点から重要なメリットがあります。ただし、データセンターにおけるこのドライブの採用は、さまざまな技術的・経済的要因によって妨げられてきました。業界がそうした課題を克服し、AIシステムの需要が高まるにつれて、2024年以降、PCIe Gen5ベースのNVMe SSD実装が急増すると予想されます。このドライブは、より迅速かつスマートなデータ処理、分析、意思決定を可能にして、データセンター事業者と顧客に競争優位性をもたらします。
2 1ワットあたり62,500読み取りIOPS(Micron 6500 IONのデータシート値)と1ワットあたり25.3読み取りIOPS(2023年5月時点のSeagate Exos 2X18デュアルアクチュエーターHDDの公開データシート値)。