仮想現実(VR)は様々なことの先駆けとなっていますが、エクササイズやフィットネスについてとは違うと思っていませんか? ビデオゲームについてもそうでしょう。部屋でソファに座り込み、ゲームコンソールやOculus VRヘッドセットを片時も離さず、Halo Recruit、Tomb Raider、Fortniteをプレイすることは、楽しいには違いありませんが運動不足の原因以外のなにものでもないと思いませんか?
2014年、米国疾病対策予防センターは、ビデオゲームのプレイに費やす時間は、米国における身体活動量の低下のリスク要因の1つであると特定しました。公的な健康リスクとして、怠惰な「カウチポテト」はカロリーの高いベイクドポテトを食べることと同じランクに並べられたのです。
先日、ワークアウトをVR環境に移行することを目指して設計された新しいアプリケーションと機器について記事を書きました。しかし、皆さんがすでにプレイしているVRゲームはどうでしょう? 健康に良いと思いますか?それとも、肥満の増加に一役買っているのでしょうか?
ゲームは「カウチポテト」族だけのものですか?
VR Institute of Health and Exerciseの創設者であるAaron Stanton氏は、ビデオゲームが受動的な活動にすぎないという意見には反対です。
Stanton氏は次のように述べています。「数年前、AudioshieldというVRゲームをプレイしたのですが、プレイ中に体をかなり動かす必要がありました。」 Steamに、私はこのゲームに100時間から120時間ほど費やしたと指摘されたのを覚えています。本当にエクササイズしているように感じましたし、本当に運動したことになるのなら、このVRセットアップは今までに投資したうちで最高の運動器具だと思いました。トレッドミルやエリプティカル、ローイングマシンを持っていますが、全部合わせても100時間も使ったことなどありません。」
Stanton氏は、2014年にAppleに買収されたテクノロジーベースの書籍分析プラットフォーム、BookLampの創設者兼CEOです。起業家である彼は、常に何か新しいものを作る意欲に燃えていました。自分のエクササイズ体験からひらめきを得た彼は、自らの直感に従いました。
「最初の取り組みは、未知の運動でカロリーとエネルギー消費を測定するのに必要なものは何かを研究することでした」とStanton氏は語っています。「そして、吸気時と呼気時の酸素と二酸化炭素の混合物を測定する代謝測定システムについて学び、運動の過程で身体が消費するカロリーを間接的に正しく計算できるようにしたのです。」
「VRやビデオゲームは、フィットネスのための正当な取り組みになる」という理論を証明するために彼が必要としたのは、1台あたり7万5千〜10万ドルほどかかる洗練されたラボ機器で、通常は研究大学が所有しているものでした。Stanton氏は、サンフランシスコ州立大学(SFSU)の運動学部と連絡を取り、エクササイズの将来にはVRが必須なものになるというアイデアを提案しました。
Virtual Reality Institute of Health and Exerciseを創設したStanton氏は、VRゲームがもたらす身体運動量をもとにベンチマークを定め、各ゲームを評価しました。Stanton氏によると、「『Resting equivalent(休憩状態と同等)』と評価されたゲームがあるなら、違う評価のゲームもあるはずです。」 そして、彼の研究所が突き止めようとしているのが、その「違う評価」なのです。
自転車に乗るのと同じぐらい簡単、そして効果的
たいていの人は、エクササイズにおけるVRの価値を根本的に誤解しています。その価値に対する理解を深めるため、SFSUでは男女各20名を被験者とする研究を実施しました。彼らは主に運動学部の学生で、身体運動を長らく研究し、総じて健康でした。研究者たちは、従来のVO2 maxテストを実施しました。これは、身体能力の消耗を含め、体力をテストするものです。数日後、40名の被験者はテスト機器を装着してVRゲームを30分間プレイしたところ、
被験者のほぼ全員が30分間のある時点で最大能力に達しました。彼らは肺で酸素をそれ以上早く変換できないほどエネルギーを消費していました。人間の身体は少しの時間しかそのように機能できないので、その時点に達すると、数分もしないうちに倒れてしまう状態に到達した、ということです。
最も重要なことに、被験者のカロリー消費率は、 アルプスとピレネー山脈を巡る各ステージで競う自転車レースであるツール・ド・フランスの選手たちに匹敵するほどでした。セッション全体のエクササイズを評価するように求められた被験者は、ほぼ全員が、軽程度から中程度のレベルの運動しかしていないように感じると答えました。彼らの身体は物理的に可能な限界まで動いていたにもかかわらず、頭の中では、トレッドミルで軽くまたは中程度のジョギングをしていたという認識しかありませんでした。
VRフィットネス研究の成長支援と、彼のビデオゲームのランキングシステムの改良を目指すStanton氏の主張は次のようなものです。「VRが本当に得意なのは気を逸らすことですが、エクササイズにとってこれは非常に重要なことなのです。気を逸らされていると、目標を持っていたり、何かに集中している場合と同じように不快を感じません」と述べています。
Stanton氏は、次のように付け加えています。「研究によると、エクササイズを楽しんでいる人はより長く続けられる傾向にあります。それほど苦痛を感じていないのです。」
私たちも知っての通り、活動そのものから得られる本質的な報酬に比べれば、何かを続ける動機付けとして、事後の報酬はそれほど効果がありません。エクササイズを続ける動機としては、その効果はさらに弱いものです。もし、エクササイズに対する内なる動機をVRによって高めることができれば、やる気も高まるでしょう。動機によって、不快感や退屈を克服することができます。
メモリの力で鍛えられる筋肉
Fortniteのプレイを楽しめるのは、各VRセッションを作動させる強靱なメモリテクノロジーがその背後にあるからです。「フィットネスとしてのゲームプレイ」というアイデアを最終的に推し進めることができるのは、優れたVR体験を創出するためのコンピューティングハードウェアの力です。
他のブログや記事でも述べたように、特にVRが関与する高帯域幅のゲーム機能の開発は容易ではありません。そのためにシステムを理解する必要があり、VRを適切に処理できる最高のグラフィックス プロセッシング ユニット(GPU)とグラフィックスメモリを統合させる必要があります。
データスループットにより、より没入感のあるゲーム体験が可能になります。特に3D VR環境のグラフィック レンダリングでは、大量のデータをリアルタイムで処理する必要があります。そのデータをGPUやシステム全体に送るには、高帯域幅のグラフィックスメモリが必要です。システムには、画面に(この場合はVRゴーグルに)ピクセルを描画するのに必要な全データの受信が間に合わない場合に、そのフレーム全体を落として次のフレームに移るメカニズムが組み込まれています。
毎秒60フレーム(fps)以上のフレームレートで実行されているゲームでは、フレームを1つ落としても人間の目ではわかりません。しかし、フレームが次から次へと落ちていくと、人の目ではとらえられなくとも脳の潜在意識がそれを認識し、平衡感覚が失われ、吐き気やめまいを引き起こします。
フレーム落ちも吐き気もなく、没入感のある快適で楽しいVR体験を創出するには、ハードウェア、特にメモリが非常に大きな役割を果たします。VRシステムがスムーズかつ高速に動いていれば、我を忘れてゲームに集中できます。そして、それが身体を動かす必要があるゲームなら、身体も得をします。VRゲームのプレイに長時間を割いても、罪悪感を感じる必要はありません。さあ、ソファから立ち上がってプレイしましょう。身体も喜びますよ。
見逃してしまったら、VRフィットネスシリーズのパートI 『ワークアウトをゲームに変える』をお読みください。VRとフィットネスの未来